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中東情勢巡る記者座談会 自衛隊派遣しアラブの恨みを買うな 米国の侵略が問題の根源

 米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したことに端を発して、世界中が第三次世界大戦突入を懸念するような緊張した局面が続いている。あからさまなトランプの挑発に対して、イランだけでなく中東全域で戦争放火魔ともいえるアメリカへの怒りが高まり、この地域に寄生して戦火をメシの種にしてきた侵略者からアラブ世界を防衛し、叩き出す闘争がくり広げられている。このなかで、中東情勢にどのような立場をとり対応していくのか、各国が問われている。日本政府は11日にも「調査研究」を名目として自衛隊(哨戒機。護衛艦は2月)を中東に派遣することを閣議決定しているが、それはタイミングとしてもまぎれもなく「アメリカの味方」、すなわち「アラブの敵」として名乗りを上げる行為であり、長年にわたってアラブ世界で築いてきた親日感情を覆し、みずから恨まれ、標的となることを意味する。記者座談会で情勢について論議してみた。

 

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  新年早早から慌ただしい展開を見せてきた。世界中が「WW3」、つまり第三次世界大戦に突入するのではないかと重大な関心を注いできた。影響はイランとアメリカの全面戦争というだけにとどまらないからだ。中東政策に失敗し泥沼状況でアメリカが力を失っているなかで、逆に影響力を強めてきたイランに牙を向けている。欧州各国はどのような態度をとるのか、さらにイラン支持を表明した中国、ロシアも含めて世界覇権を巡る力関係はどのように動いていくのか、目先の動きだけでなくさまざまな角度から見ていくことが必要になっている。国際世論や米国内での世論、中東地域での力関係など、すべてが複雑に絡み合いながら事態は動いている。

 

ソレイマニ司令官の出身地であるイラン南東部ケルマーン州でおこなわれた埋葬式(7日)

  発端は、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を米軍が無人機で殺害したことだった。ある日突然、トランプが思いついて他国の軍隊の司令官を遠隔操作の無人機によってピンポイントで斬首するのだから、国際秩序もなにもあったものではない。これが逆にイランなり他国が米軍の司令官をピンポイントで斬首したらどうなるだろうか? アメリカだけがなぜこのような横暴な軍事作戦を世界で展開することが許されるのか? だ。まさに世界一の軍事大国の傲慢さをあらわしている。トランプの一存で実行し、米国議会にも「ツイッターで知らせれば事足りる」などといっている始末だ。後に撤回したとはいえ、イランの歴史的文化財も攻撃対象として公言するなど、国際法とか世界的な約束事、建前なども二の次で、極めて野蛮なものが戦争の指揮棒を振るっている。そのことによってソレイマニに限らず生身の人間が死に、世界が巻き込まれようとしている。愚かにも程がある。

 

  イランでのソレイマニの葬列の空撮がユーチューブにアップされていたが、見たことがないような大群衆の海で、「アメリカに死を!」と叫んでいた。イラン国民に限らない侵略者へのアラブ世界の積年の怒りを映し出していたように思う。ソレイマニ殺害はきっかけであって、それ以前から中東地域は長きにわたって欧米列強の侵略・分断支配とたたかってきた。フセインが斬首されたイラクにしても統治がズタズタに破壊され、国土はミサイル攻撃によって無惨に荒廃させられた。そのもとで民衆は逃げ惑った。宗派の矛盾につけこんで敵対させたり、あるときはアルカイダみたいなテロ組織をアメリカが支援して利用し、あるいはISみたいなものが台頭してきたわけだが、米軍産複合体をはじめとした戦争狂いが世界最大の武器市場にして暗躍し、米メジャーは石油利権を握り、破壊した後は復興利権でチェイニー率いるハリバートンのような米ゼネコンが乗り込んでくるなど、中東地域の戦火を玩具にして懐を肥やしてきた関係は既に広く暴露されている。

 

 「大量破壊兵器」等等は侵攻の口実であり、「テロだ!」とレッテル貼りをするのも常套手段。現実にはアメリカこそが世界最大のテロ国家といっても過言ではないほど、世界中で戦争を引き起こしてきた。軍事力や核の脅威が世界覇権の裏付けとなり、それに対抗する側も核開発に乗りだし、しのぎを削ってきた。

 

  サウジアラビアやイスラエルがアメリカの支柱となってきたが、イラク戦争からこの方の混乱のなかでその収拾に尽力してきたイランが影響力を強め、IS掃討でもイラク国内の民兵組織や人民動員隊とも連携してイラン革命防衛隊が力を発揮していた。

 

 ところが米軍はIS掃討のためにイラクに駐屯している建前になっているが、そのIS掃討作戦で各民兵組織に影響力を持ち、指揮を振るって尊敬を集めていたソレイマニを殺害した。中東地域の安定のために駐留しているのではなく、目的が別であることを自己暴露している。イラクには5200人の米軍が駐屯しているというが、中東地域にはのべ7万人の米兵が配置され、これらは要するに中東全域に睨みを効かせると同時にイラン包囲網でもある。

 

司令官殺害の背景 力失う米とイスラエル

 

  イラクの首相が国会で重要なことを暴露していたが、ソレイマニはサウジアラビアとイランとの和平に向けた使者としてイラクに向かっていたという。サウジアラビアからイラクを仲介して示された和平案に対して、イランからの回答を持って来ようとしていた矢先に空爆されたのだと――。ぎくしゃくしていたサウジとイランの和平が成立すれば、中東は安定化に向かうはずなのに、逆にアメリカがこれをつぶしたということになる。ソレイマニをなぜ殺害したのか? の重要な解だ。それは同時にサウジへの恫喝という意味あいも持つ。

 

 イスラエルとアメリカが中東地域で相対的に影響力を失い、逆にアラブで中心的な存在として影響力を強めるイランに攻撃を加えて恫喝し、その出方を見ながら揺さぶっている。強気に出られるのは世界一の軍事力があるからというただそれだけ。後先がどうなるか心配はなにもしていない風だ。拳を振り上げたり、下ろしてみたりして、要するに米国の軍門に降るか否かを迫っている。核開発云云もそもそもが米国の侵略支配に対抗した産物にほかならないものだ。

 

 一方のイランとしてもここは感情的に出るのではなく、やられたことに対して報復はするが、全面戦争は避けたいという対応だ。しかし、防衛のためのたたかいについては何ら遠慮しないという立場を表明している。アラブ各国と連携しつつ、戦火の拡大ではなく米軍の撤退を求める方向に進んでいる。「戦争ではなくアメリカは出て行け!」が中心問題なのだ。この矛盾はイランvs米国という単純な代物ではなく、侵略者アメリカvsそれと抗うアラブ地域全体という構図のなかにある。分断され、切り裂かれた地域において、米国と対抗するまとまった存在としてイランがおり、譲れないものを持って対峙している。人種や宗派の違いこそあるが、アメリカの侵略支配に対抗するアラブの矛盾が根底にある。

 

  イラク国内でも、この間のIS掃討などを経て武装組織や民兵組織のなかで親イラン勢力が増えているという。イラクの人民動員隊の副司令官をソレイマニと共に殺害したことから、反米感情も高まっているようだ。イラク国内の93%が反米感情を抱いているといい、そのなかに5200人の米軍が包囲されている関係だ。イランが2カ所の米軍基地の倉庫だけを狙って人的被害が出なかったというが、その後の全面衝突を望んでいないから「人命を狙わなかった」というメッセージに過ぎない。状況を客観視したとき、まさに宮田律氏が指摘するように米軍こそが“袋のネズミ”なのだ。

 

  目下、8日のイラク国内2カ所にある米軍基地への十数発のミサイル攻撃で、1人の死者も出なかったということで、トランプとしては「(軍事力は)使いたくない」といい、少し緊張は緩和しているかに見える。しかし、イランも屈服しているわけではない。引き続き緊張関係は続いている。ソレイマニ殺害で米国が挑発したものの、イランも無謀な全面衝突には乗らなかったといえるのではないか。8000万人の国民もおり、国土を戦場にさらすような事態は避けたいと思うのが当然だ。ひとまず「平手打ち」で報復しつつ、中心問題の侵略支配をやめろという本質に迫って「米軍は出て行け!」と求めている。

 

  トランプが強気な根拠は世界最強の軍事力だけだが、仮に全面衝突になったとして、イランを侵略支配して統治することなど到底不可能だ。後先を考えたらアメリカとしてもイランとの全面衝突にのめり込めるほどの体力もなく、むしろアラブ全体の恨みをかってますます孤立する道をたどるほかない。ソレイマニ殺害もアラブ全体の結束を強める効果となった。欧州各国も核合意に留まるフランスやドイツなどは「アメリカは自制すべき」と引き気味で足並みは揃っていない。さらにイラン支持を表明する中国、ロシアも含めたパワーバランスが動くことになり、イランとて経済制裁に苦しんではいるものの世界的に孤立しているわけでもない。

 

  イラク戦争でも空爆はできるが、地上軍をいくら送り込んでも統治はできなかった。その国や民衆が屈服しない限り反乱、反抗は続き、侵略支配・統治などできないことを教えている。シリアやパレスチナなどを見てもひどい攻撃を受けてきたが、どこも屈服していない。従って、イランを米国が攻撃しても中東情勢は余計に泥沼化に拍車がかかり、一層アラブ全体の憤激を呼び覚ますことになる。米軍を何十万人投入しようが完全統治などできる代物ではないのだ。今おこなわれているのはピンポイントで要人を斬首し、ショック療法によって為政者を揺さぶるという手口で、経済制裁とも併せて体制に屈服を迫る意図が丸出しだ。

 

根深い対米従属構造 日本の属国の姿浮彫り

 

  イラク戦争でブッシュが「日本モデル」を目指すのだとのべて日本人としてはハッとするものがあったが、それは支配機構が身も心も屈服して従属構造のもとにひれ伏すことを意味している。世界中を見渡しても、日本ほど「綺麗」に占領支配され、戦後70年以上経ちながら他国の属国に成り下がっている国などない。銃声一発すら飛び交うことなく占領軍が乗り込んで支配できたのは、天皇をはじめとした軍国主義の統治機構が丸ごとアメリカに傀儡(かいらい)として抱えられ、みずから武装解除して国を売り飛ばしたからにほかならない。そして、戦後は国民に塗炭の苦しみを味わわせた罪で処分されて然るべき官僚機構も、大本営発表をやりまくった大手新聞の幹部連中も丸ごと支配機構としての身分を保障され、戦犯の岸信介まで使い勝手が認められてCIAのエージェントとして息を吹き返し、今度は鬼畜米英からアメリカ万歳へと乗り換えて今日に至っている。侵略したアジア諸国へは居直り、アメリカには頭が上がらないという今日の日本政治のルーツがそこにある。アラブの民衆が不屈の抵抗をしているのを見るにつけ、考えさせられるものがある。この違いは何なのだろうかと。

 

  日本社会にとっても中東情勢は決して無関係ではおれない。石油の8割は中東依存で、この地域が戦争状態になれば経済的にも影響は直撃する。なにより、今後の展開如何によっては、イランは米国の同盟国としてイラン攻撃に加担した国や地域を攻撃の標的にすると宣言している。沖縄をはじめとした日本国内の米軍基地から出撃したら、日本列島も「イランを攻撃した敵」として標的になり得るし、ましてや自衛隊が「調査・研究のため」などといって戦闘に加わるなら確実に標的になる。自衛隊員もなぜアメリカの侵略戦争のために鉄砲玉となって死ななければならないのか? 米軍の弾よけにならないといけないのか? と考えるのが当たり前だ。アメリカが挑発しなければタンカーはこれまで同様にペルシャ湾やホルムズ海峡を平和的に航行できるわけで、自衛艦が戦闘力を備えて向かう必要などない。なにが「日本のタンカーを守るため」かだ。自衛隊の中東派遣は何としてもやめさせなければならない。イランは親日国として歴史的に関係を切り結んできた国であり、この信頼を裏切って米国に加担し、アラブの敵になる道を選択することは国益にも反する。

 

  年初からの日本国内の報道を見ていると呑気なもので、ワシントンの発表の追随記事みたいなものばかりだったことに愕然とする。11日にも自衛隊を中東派遣しようかというのに、主体性とか当事者意識みたいなものがまるで乏しいことに特徴がある。世界でツイッターのトレンドが「WW3」なのに対して、国内のトレンドは「嵐(アイドル)」がどうとかなのだ。愚民化も大概にしなければならない。そして、安倍晋三はゴルフ三昧な日日を過ごし、ようやく「エスカレーションは避けなければならない」の官僚作文を棒読みしている始末だ。1月の中東歴訪をとりやめたとか、いややっぱり本人の強い意志で行くのだとかやっていたが、一方で自衛隊の中東派遣は強行する姿勢を見せている。しかも、このような愚行を閣議決定のみで実行しようとしている。安保法制はじめ、この間にやってきたことはアメリカの戦争に引きずり込む体制づくりであり、アメリカから要求されてきたことを丸呑みしてきたものだ。そして、自衛隊は米軍の指揮系統で動くようになり、下請軍隊の配置となった。それが、とうとう最前線に駆り出すところまできた。決して一線を踏みこえてはならないし、アメリカと心中する道に進ませてはならない重大局面だ。

 

  イランに対して恨みなどないのに、アメリカに求められるままに引きずり込まれ、おかげで「敵国」と見なされるバカげた道を進むのか、独自外交を展開して和平に尽力するのかでは、日本社会はまるで異なる未来に行き着く。アラブの苦難の根源はアメリカの侵略行為にあり、それこそイランが主張しているように米軍の撤退、謀略を駆使した政治介入の排除こそが血なまぐさい紛争を終息させる唯一の選択だ。アメリカが世界覇権の座から転落を始め、世界が多極化しているなかで事態は動いており、何でもかんでも米国一辺倒では世界的にも孤立するほかない。対米従属の脳天気、平和ボケで世界情勢からとり残されるのではなく、日本はいかなる国とも敵対ではなく友好平和を求めていくことが重要だ。それが「お花畑」などと呼称されるのであれば、後先考えずに戦争に首を突っ込む者のほうがよほど脳味噌が弛緩しており、「血みどろ畑よりはマシだろうが!」と思う。

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この記事へのコメント

  1. 戦争はアメリカの基幹産業。やめたら国亡ぶ。零落する大国の最後のあがき。戦争やめろ!

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