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長射程ミサイル配備中止求め直接行動 1200人が熊本・健軍駐屯地を囲む 「市民の手で止めるまでたたかう」

(2026年2月27日付掲載)

陸上自衛隊健軍駐屯地への長射程ミサイル配備に反対して集まった人々(2月23日、熊本市東区健軍地区)

 今年3月末までに、12式地対艦ミサイル能力向上型(長射程ミサイル)の国内初となる配備が計画されている熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地を「人間の輪」でとり囲む「ストップ!長射程ミサイル・弾薬庫 健軍駐屯地を平和の輪でつなごう!2026」(主催/ストップ!長射程ミサイル・県民の会)が2月23日に熊本市健軍でおこなわれた。配備予定の長射程ミサイルは射程距離が1000㌔をこえ、上海など中国沿岸部を射程圏内に収める。先の衆院選で自民党が大勝し、対中国を想定した軍備増強が全国でおし進められるなか、地元熊本をはじめ全国から約1200人の人々が健軍に結集し、「ミサイル配備反対」の声を上げた。

 

 住宅地の真ん中に位置する健軍駐屯地には、半径2㌔圏内に市民病院、そして保育施設、小中高校、大学など教育施設が57カ所ある。長射程ミサイルの配備によって健軍駐屯地が対中国攻撃(敵地攻撃)の拠点になれば、攻撃される対象にもなり、その場合は市民に被害が及ぶことは自明である。これを想定して九州や沖縄の防衛を統括する西部方面総監部が置かれる健軍駐屯地では司令部の地下化が進められている。反撃を受けた場合、地下の司令部は無事でも住民が暮らす周辺地域は甚大な被害を被り、市街地が廃虚となる関係だ。これは国際人道法が定める「軍民分離の原則」に背くものでもある。それにもかかわらず住民説明会すら一度も開かず強引に配備を進める政府の姿勢に、周辺住民から怒りの声が上がっている。

 

 全国からは、弾薬庫建設が進められる大分や京都、複合防衛拠点の建設計画が持ち上がっている広島・呉、オスプレイが配備された佐賀、また愛知や福岡、長崎、沖縄など各地で戦争阻止の運動をおこなっている市民も結集した。

 

 最初に主催者であるストップ!長射程ミサイル・県民の会の山下雅彦代表が挨拶をおこなった。

 

 健軍商店街のすぐ近くで暮らす山下氏は、昨年11月9日に健軍商店街内でおこなわれた集会に1200人が結集したことに対する感動を語り、「今日の集会もその発展的延長線上にあると思っている。国は頑なに住民説明会を拒んでいるが、私たちは自衛隊も含め、赤ちゃんからお年寄りまですべての命にかかわる問題だから見過ごせないといっているだけだ。当たり前の要求だ。憲法9条のもとで1000㌔先まで飛ばせるような長射程ミサイルを認めるわけにはいかない。少なくとも住民説明会は開くべきだ。もし仮に3月にミサイルが配備されても声を上げ続ける。高市政権のもとで厳しさは増しているが、ここで諦めるわけにはいかない。今日は全国からさまざまな人がここに結集してきている。頭(こうべ)を上げて胸を張り、みんなで手を繋いで次に歩みを進めたい」と訴えた。

 

 参加者全員で日本国憲法の前文を唱和。

 

 「日本国民は…政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」

 

 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理念を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

 

 「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と高らかに読み上げたのち、「右翼の妨害に負けず健軍駐屯地への長射程ミサイル配備ならびに弾薬庫設置の反対を実現するために、団結頑張ろう!」と拳を上げて出発した。

 

建軍駐屯地の外周を「人間の輪」で囲む人々(23日、熊本市)

 健軍駐屯地まで「この街にミサイルいらない」「どこの街にもミサイルいらない」「敵を呼び込むミサイルいらない」「大軍拡大増税反対」「平和が一番」と声を上げながら行進した。

 

 集会会場となった健軍本町公園及び健軍駐屯地周囲には、50人ほどの右翼が20台以上の街宣車で九州中から集まってきて怒号を上げていたが、参加者は整然と健軍駐屯地をとり囲み、道行く人や車に長射程ミサイル配備反対をアピールした。

 

 参加者全員で手を繋いで健軍駐屯地をとり囲んだのち、沖縄・西日本ネットワーク共同代表の具志堅隆松氏(沖縄県)が「私たちは自衛隊の命も守りたい。自衛隊の人が死ぬということは、日本が戦場になるということだ。絶対に日本を戦場にするわけにはいかない。みなさん、自衛隊の命を守りましょう」と訴えかけた。

 

集会参加者の声 「戦争の足音が身近に」

 

健軍本町公園での集会には全国からも市民団体代表が参加した(23日)

 子どもとともに参加していた熊本市内の女性は「衆院選の結果を見ても、このままでは本当に日本が戦争へ進むのではないかという危機感がある。熊本市内には自衛隊関係者が大勢おり、健軍へのミサイル配備は他人事ではない。絶対に戦争にしたくないという意志表示のために、選挙だけでなく何か行動をしなければならないと思って参加した」と話した。

 

 自宅に配られたチラシを見て参加したという市内に住む女性は、「選挙区の木原さん(現官房長官・熊本1区選出)が防衛大臣になったが、住民への説明会すら“必要ない”といっている。この地に住む住民のことを何と思っているのだろうかと腹が立って仕方がない。説明もなしにごり押しで上からのいうことを聞かせるというのはおかしい。日本がこれまで平和できたのは、憲法九条もあるが話し合いを続けてきたからではないのか。“一寸の虫にも五分の魂”といわれるように私たちにも意志がある。その意志表示をするために今日は来た」と憤りを話した。

 

 そして「私には12人の孫がいるが、この子たちのためにも絶対に平和な日本を残していかないといけないと思っている。しかし私たちの世代は戦後生まれで戦争を知らない世代だ。これから日本が戦争に巻き込まれるかもしれないというような危機感を持つ人は少ないと感じる。今は見た目は平和で食べる物がないわけでもなく、さまざまなカルチャーだってある。しかし楽しく暮らせればそれでいいというわけにはいかないと思う。最近はじわじわと思想が狭められているという実感があるし、こうやっているうちに戦争になるのではないかという恐怖がある。相手国まで届くミサイルを配備すれば攻撃されやすくなるのは当たり前だ。でも今日はこれだけの人がミサイル配備反対で集まっているのを見て励まされている」と語った。

 

 別の女性も「高市首相がスパイ防止法を制定しようとしているが、今のうちに子どもに大人が戦争に反対してデモに参加しているという姿を見せておきたいと思った。少しでも今自分にできる行動をしなければ本当にこのまま戦争になりかねないという危機感がある。少し前までは日本政府が戦争なんてするわけがないと思っていたが、最近は第二次世界大戦のときもこうやって少しずつ戦争に近づいていったのだろうかと考えるようになった」と話していた。

 

 大分から参加したという女性は「大分でも住民の反対を押し切って弾薬庫が建設されているが、この健軍に運ばれる長射程ミサイルのための弾薬庫だ。健軍のミサイル配備に反対することと大分の弾薬庫建設に反対することは繋がっている。高市政権になって中国との関係はあからさまに拗れているのに、そのなかで対中国の防衛体制を強化すれば関係が悪化するのは明らかだ。政府は健軍の長射程ミサイル配備を足がかりにこれから日本全国で軍拡を進め、日本を戦争のできる国にしようとしている。それに反対の声を上げる人たちがこれだけ集まったということがとても励みになる」と語った。

 

 健軍に住む男性は「この地域は自民党や自衛隊との関わりも深く家族が自衛隊で働いているという人がたくさんいるため、しがらみもあって反対の声を上げるのはなかなか難しい。それでも11月の集会は商店主なども住民説明会を求めて発言をしていたが、衆院選で自民党が大勝して、ますます表だって声を上げにくくなっているようだ。でも本当は心の中でたくさんの思いを持っている。戦争をしたいと思う国民など誰もいない。だからこそその人たちの分まで私たちが声を上げ続けて、第2次世界大戦のようにいつの間にか戦争に巻き込まれてしまったという状況を阻止しないといけない」と意気込みを話していた。

 

政治家任せにできぬ 直接行動で意志示す時

 

 集会を終えて県民の会の山下雅彦代表は「1200人もの人々が二度も集まったということは、それだけミサイル配備問題に対する関心や反対の思いが強いということだ。事の重大さを改めて感じている。防衛省は長射程ミサイルを3月末までに配備するといっているが、これが終わりではなくたたかいはまだ続いていく。子や孫たちのためにも続けていかなくてはならない。政府は長射程ミサイルの配備を健軍だけでなく、ここから全国に波及させようとしている。だからこそここで歩みを止めてはいけない。配備がされてからも、撤去を求めるたたかい、弾薬庫建設反対など課題はいくらでもある。長射程ミサイルの配備は、日本が限りなく戦闘行為に入っていくという行動だ。ウクライナやガザの子どもたちと同じ思いを私たちの子どもにもさせるわけにはいかない。ここからまた次のたたかいが始まる」と新たな課題を見据えて語った。

 

 平和を求め軍拡を許さない女たちの会・熊本の海北由希子氏は、アメリカとイランの情勢、台湾有事など本当に自衛隊が出動させられる可能性が高まっている危惧を語り、「私の周りにも自衛隊の人々やその家族、友人がたくさんいる。私たちのたたかいは自衛隊員の命を守るためのたたかいでもある」と力を込めた。

 

 先月おこなった防衛省との政府交渉の場においても防衛省は健軍駐屯地から長射程ミサイルを発射することを否定していないことを明らかにし、「それなのに住民説明会すら開催しない。日本全国で武器の大量配備が進められているが、健軍への長射程ミサイル配備は、熊本だけの問題にとどまらず全国、アジアを巻き込んでいくものだ。攻撃に備えた配備というだけでなく、初の国産長射程ミサイルを世界にアピールし売り出していくためのものでもある。それは多くの人が戦争産業に巻き込まれていく一歩となる」とのべた。

 

 そして、「健軍へのミサイル配備反対運動は、戦争に繋がっていく動きを止めるためのものでもある。衆院選では自民党が大勝したが、私の実感としては高市さんの支持はそれほど多くはないと思っているし、絶対にここから国民が気付き始める。頑張らないといけないのはここからだ。ここまで世論が右に振れたあとは絶対に左に振れる。ここから変わっていく」と確信をのべた。

 

 具志堅氏は「健軍という街の成り立ちからして街のなかに自衛隊の駐屯地があるのはまだ理解できるとしても、これほど市民と近い場所にある駐屯地にミサイルを配備するというのは、軍民分離どころか反撃の対象にされてしまう。国際基準から見ても狂気の沙汰だ。基地があるのとミサイルが配備されているのとでは状況がまったく違う」と指摘した。
 そのうえで「政府は健軍を足がかりに全国に長射程ミサイルを配備し、軍拡をおし進めようとしている。住民説明会も開かず強引に押さえ込みたかった場所のはずだ。それに対し熊本市民が“ミサイルを配備することは地域住民にとって危険要因であるからやめてほしい”と正しく状況を解釈し、これほど大きな反対の意志表示をしたという意義は大きい。あれだけの右翼が集まってきて妨害しようとするのは、この運動が与える影響の大きさのあらわれでもある。これまでは要望があれば政治家を介して政府に訴えていたが、市民の直接行動によって変えていける。政治家が主導で国をつくるのではなく、市民が直接行動によってつくっていくのだということにみんなが気づき始めている。それが今日の行動に繋がっていると思う。本当に戦争になるかもしれないという情勢であるならば、本気でそれを止める運動をしなければいけない」と力強く語った。

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