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ネオニコチノイド(農薬)に起因 宍道湖のウナギ・ワカサギ激減 研究グループが論文

 島根県の松江、出雲両市にまたがる宍道湖のウナギやワカサギの漁獲量が激減していることをめぐり、1993年ごろから周辺の水田で使用されているネオニコチノイド系殺虫剤が関係していることを指摘する研究論文を、産業技術総合研究所(つくば市)や島根県保健環境科学研究所(松江市)などの研究グループがまとめた。

 

ニホンウナギの稚魚

 論文は昨年11月に科学誌「サイエンス」に掲載されたもので、宍道湖周辺の農家がネオニコチノイド系殺虫剤「イミダクロプリド」を使い始めた1993年ごろから、それまでは「迷惑害虫」として苦情が出るほど大量に生息していたオオユスリカ(蚊の一種)が突然見られなくなり、同時に宍道湖の動物プランクトンの大部分を占めるキスイヒゲナガミジンコなど食物連鎖の土台となる節足動物が大幅に減り始め、これを餌とするニホンウナギやワカサギが1994年末ごろには激減したと指摘している。

 

 宍道湖のワカサギは年間約200~300㌧の水揚げがあったが、93年を境に急激に減少し、2001年にはまったく捕れなくなった。ニホンウナギも92年には年間約40㌧ほどの漁獲量があったが、同じ時期から激減し、現在では絶滅の危機に瀕している。長年、激減の原因として湖の貧栄養化、オオクチバスやブルーギルなどの外来種の増加などが指摘されてきたが、実際には湖の有機物の量は近年横ばいであるうえに、海水が入り混じる汽水湖である宍道湖ではバスなどの外来魚は生息できず、実態に即した調査はおこなわれてこなかった。この間、周辺ではネオニコチノイド系殺虫剤の使用が増え続け、これらの魚の数は回復していない。一方、植物プランクトンを餌にするシラウオの減少は見られなかった。

 

 ネオニコチノイド系殺虫剤は、1992年に初めて日本で登録された。従来の農薬に比べて効果に持続性があり、散布回数が減らせるなどの利点から世界で広く使用されているものの、薬剤を含んだ花粉や汁を吸ったミツバチの大量死の報告もある。そのため欧州連合(EU)は2018年4月、欧州食品安全機関(EFSA)の勧告を受け、三種(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)を主成分とするネオニコチノイド系薬剤のすべての作物への使用を禁止している。

 

 その動きと逆行して日本では規制緩和が進められ、その危険性が認知されることなく、稲作、野菜、果樹にも広く使用されている。研究論文では、ネオニコチノイド系殺虫剤は水溶性で、昆虫に対して選択的に毒性を発揮するため、人間を含むほ乳類や鳥類などへの安全性は高いものの、湖や河川に流出してから分解・消滅するまでに時間がかかり、その間に食物連鎖の土台を失わせ、壊滅的な漁獲減をもたらしていると結論づけている。研究者らは、これは日本に限らず、ネオニコチノイドが世界の水界生態系に及ぼす深刻な被害の一例にすぎないと警鐘を鳴らしている。

 

 ネオニコチノイド系殺虫剤の代表的メーカーであるバイエル(モンサントを買収)は「論文の結論に裏付けがない」と反論しているが、同殺虫剤が世界的な節足動物の減少に関与していることを指摘する調査報告が世界各地で発表されている。

 

 日本においてもその影響を調査し、使用基準の厳格化など規制強化に向けた動きが求められている。

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