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福島第一原発 10年たっても再臨界と隣り合わせの現実

 福島第一原発1~4号機がメルトダウン(炉心溶融)や水素爆発を起こすという史上最悪の原発事故から丸10年がたつが、事故の収束そのものの見通しもいまだにたっていない。また、廃炉は決めたものの、メルトダウンを起こした1~3号機の格納容器から核燃料デブリをとり出すことがはたして可能なのかどうかも手探り状態だ。さらに核燃料デブリを冷却するためにいまだに注水を続けなければならないことから、発生する放射能汚染水の処理もめどはない。原発事故から10年たった現状について見てみた。

 

 2011年3月11日の東日本大震災における地震や津波による電源喪失で冷却不能になった福島第一原発1~3号機では、核燃料は2000度を上回る温度になり、溶けて炉心(圧力容器)を突き破るメルトダウンにいたった。燃料の大部分が溶融し、圧力容器の底に溜まった状態をメルトダウンと呼び、さらに高温により圧力容器の底が溶かされて燃料が容器の底を突きぬけることをメルトスルー(溶融貫通)と呼ぶが、福島第一原発ではメルトスルーに至っていたとする専門家もいる。

 

 4号機は地震発生時に定期検査をおこなっていたため運転を停止しており、原子炉内にあった燃料はすべて使用済み燃料プールに移動していたためメルトダウンを免れた。

 

 さらに1号機と3号機が水素爆発。3号機から水素が流れ込んだ4号機も水素爆発を起こし、建屋が大規模に損壊した。2号機は、1号機の水素爆発の衝撃により、設置されていた「建屋の圧力逃しパネル」がはずれたため、水素が外に排出され、かろうじて爆発を免れた。

 

 1~3号機には大量の核燃料デブリが存在しており、注水を続けている。溶け落ちた燃料デブリは圧力容器内部にあった金属製の構造物や格納容器底部のコンクリートと混ざりあい、固まっており、その量は2号機だけで推定約237㌧。1~3号機の合計では約880㌧あるとされる。核燃料の元の重量の数倍にのぼる膨大な量になっており、このとり出しの見通しはたっていない。

 

 現在1~3号機の燃料デブリには、10年たった今もなお注水を続けなければならない。それは燃料デブリ内に含まれるウランが連鎖的に核分裂する「臨界」がふたたび起こる危険性があるからだ。現状では「再臨界」を検知するため、再臨界が起こったさいに増加する「希ガス」の量を24時間体制で計測し、監視をおこなっている。万が一再臨界がおこった場合に備え、ホウ酸水を注入する設備によって核分裂を抑制する対策をとっている。

 

 東電は原子炉内の温度は約15~35℃で維持されていると発表し、もし注水が停止したとしても、制限温度(80℃)に達するまでには約2週間かかる見込みであり、時間的な余裕をもって対応することができるので大丈夫だとしている。

 

先月の福島地震で損壊箇所広がり水位が低下

 

 だが、今年2月13日に起きた最大震度六強の福島県沖地震で10年前の地震での損壊箇所が広がり、1、3号機の格納容器内の水位が低下し、注水量を増やすなど、不安定な状態にある。

 

 とりわけメルトダウンを起こした福島第一原発1~3号機については、10年たった現在も事故が収束したとはとてもいえない状態にあり、再臨界の危険性と隣あわせの緊張した体制をとっているのが実情だ。「福島はアンダーコントロール」などされていないのである。

 

 今年1月には、2、3号機の格納容器の上蓋のような部分の内側に、2京~4京レベルの極めて高濃度のセシウムが付着している可能性があることが確認された。人間がそのそばに1時間もいれば確実に死ぬレベルだ。こうして核燃料デブリの回収はもとより、建屋を含めた解体作業のさらなる難航がよぎなくされている。東電と政府は廃炉を2041~51年に完了する工程表を出しているが、すでに5回も改訂しており、目標どおりの作業完了は実際には不可能であることが明白だ。

 

 さらに核燃料デブリを冷やすための注水で毎日140㌧の放射能汚染水が発生し、第一原発の敷地内には1000基以上のタンクが並び、2月時点で124万㌧が溜まっている。核燃料デブリと接した放射能汚染水は多核種除去設備(ALPS)などを使って放射性物質をとり除いているが、放射性物質トリチウムの除去は技術的に不可能だ。さらにトリチウム以外の毒性の強い放射性物質も含まれている。

 

 国や東電は海洋放出を強行しようとしているが、地元の漁業者をはじめとする国民的な反発が強く、結論を出せないでいる。

 

 10年を経過しても事故の収束すらままならず、廃炉や解体などは緒にもつけない現状にもかかわらず、政府や東電は反省もなく原発の再稼働や新増設に前のめりになっており、福島原発事故の二の舞を引き起こしかねない危険な道を進んでいる。

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