(2025年6月23日付掲載)

「米国・イスラエルはイランで戦争をするな」の横断幕を掲げデモ(18日、米ニューヨーク)
トランプ米大統領が22日、米軍がイラン国内の「核施設」を攻撃し、「大成功した」とSNSに投稿し、その後のテレビ演説で「イランの主要な核濃縮施設は、完全かつ徹底的に破壊された」と誇った。イスラエルが突如開始したイラン攻撃に加勢するものだ。2日前にトランプはイスラエルの攻撃を受けたイランの側に「無条件降伏」を求め、外交が機能する2週間の猶予期間を宣言していたが、だまし討ちの先制攻撃によって戦火に油を注いだ。無通告で先制攻撃を受けたイランは徹底抗戦を宣言しており、即時停戦を求める国際的世論に反して中東情勢は全面戦争の危機をはらんで緊迫度を高めている。
トランプは22日のSNS投稿で、イラン国内の3カ所(フォルドゥ、ナタンズ、イスファハン)の核施設を攻撃したとのべ、「主要施設であるフォルドゥには搭載できる限りの爆弾を投下した」「偉大な米国軍人たちに祝辞を贈る。世界でこの任務を遂行できる軍隊は他にない。今こそ平和の時だ!」などと綴った。
イラン原子力庁は同日、核施設が米軍の攻撃を受けたことを認めたうえで「放射性物質による汚染の兆候は確認されず、周辺住民に危険はない」と発表。イラン国営メディアは、米軍の攻撃に備えてフォルドゥなどの主要核施設から濃縮ウランなどの核物質を別の場所に移転していたと明かしている。このイランの事前の回避策がなければ、世界は核戦争(核汚染)の深刻な被害にさらされていたといえる。現在までのところ、国際原子力機関(IAEA)も、現在までにイランの核施設での放射能漏れは確認されていないとしている。
また、イラン外務省は同日、原子力施設を攻撃した米国の行為は、「国連憲章における最も基本的な原則、特に武力行使を禁じ、領土保全と主権を尊重する原則に対する著しい違反であり、国連安保理決議2231にも違反しており、核不拡散体制への大きな打撃となる。このような行為が、国連安保理の常任理事国である米国によっておこなわれたことは、非常に深刻である」と非難する声明を発した。
また「外交プロセスのさなか、イスラエルの『攻撃的行動』を支持することで外交を裏切り、現在、イランに対して危険な戦争を遂行しているのは米国であることを世界は忘れてはならない」とのべ、「米国が国連安保理の常任理事国であることを自負しながらも、いかなる法や倫理にも従わず、ジェノサイドをおこなう占領者政権の利益のために、あらゆる法違反と犯罪を犯すこと」が明らかになったと強調した。イランは22日までに、イスラエルが攻撃を開始した13日以降、イラン国内で400人以上が死亡し、少なくとも3056人が負傷したと発表している。
イスラエルのネタニヤフ首相は、米国のイラン攻撃を「大胆な決断」と称賛し、イスラエルと米国は「完全に連携」して行動したとのべ、トランプ大統領への感謝を表明した。
一方、イランは米国から攻撃を受けた場合、近隣に展開する米軍基地に反撃することを事前に明言している。米軍はイラクに特殊部隊の拠点、バーレーンに海軍第5艦隊司令部、カタールには中東最大の空軍基地があり、約4万人が中東地域に展開している。イラン外相は「国連憲章にもとづけば、イランは自衛権の範囲で合法な報復をおこなう権利を有する」と主張しており、「この米国による明白な侵略に対する(国連や国際社会の)沈黙が、世界を前例のない危機にさらすことを強調する」とのべている。
欧米諸国が主導するG7は、依然として「イスラエルの自衛権支持」を表明しているが、それを除く世界では、虐殺をくり返すイスラエルとそれを支援する米国への非難が圧倒している。グテーレス国連事務総長は声明で、米国のイラン攻撃は「すでに崖っぷちに立たされている地域における危険なエスカレーションであり、国際的な平和と安全に対する直接的な脅威」と指摘し、「この紛争が急速に制御不能になり、市民、地域、そして世界に壊滅的な結果をもたらす危険性が高まっている。加盟国は、エスカレーションを緩和し、国連憲章やその他の国際法のルールに基づく義務を守るよう求める。軍事的な解決策はない。唯一の道は外交だ」と発した。
イラン国連代表部は22日に国連安保理に送付した書簡で、「事前予告もなく計画的におこなわれた露骨な侵略行為と重大な違反は、核拡散防止条約(NPT)にも加盟しないまま非公認の核を持つイスラエル――核兵器の貯蔵と地域全体における平和的核施設を攻撃した前科がある――および、第二次世界大戦中に2回の原爆投下で数百万の民間人を虐殺し、現在、イランの平和的核施設を公然と攻撃したアメリカ合衆国によるものだ」と非難し、「この侵略行為に関する緊急の安保理会合を速やかに開催し、国連憲章に基づく理事会の責任の枠組みの中で必要な措置を講じて、この凶悪な犯罪を犯した者が必ず責任をとるよう求める」と要求している。