いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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どこに逃げる?

 Jアラートが鳴り響いてわかったことは、日本列島には逃げ場がないことだった。核シェルターもなければ昔のように防空壕もない。いざ鳴ってみて「どこに逃げろっていうんだ!」と困惑した人がほとんどだろう。下関で考えてみると、火の山や隣接の霊鷲山に登れば、頂上に朽ちた要塞の跡や汚い防空壕の跡があるが、十数分ではとてもたどり着けないし、それ以上にミサイル攻撃に耐えうるような代物ではない。27万人の市民が避難する場所などないのである。基地の街・岩国も同様だ。フェンスの向こう側のカリフォルニア州・岩国には米軍が頑丈な地下施設をこしらえてきたが、有事や緊急事態の際に住民を受け入れるような連中ではない。9・11の際には、基地に近づく日本人にサーチライトを照らして銃口を向け、24時間体制で片っ端から身体検査や臨検をやる始末だった。日米安保条約にもとづいて「日本を守る」ために駐留していると聞かされていたのに、いざとなったら米軍は「自分を守る」ことに夢中で、本土帰還の特訓ばかりしていたのだった。

 

 逃げ場所がないのをわかっていて空襲警報だけ鳴らすというのは、大型台風が直撃する度に地方自治体が「全市民避難」を勧告するあの無責任さとも重なる。「とりあえず周知はしましたよ(行政責任は果たしましたよ。それなのに被害にあったのは、あなたの自己責任ですよ)」のニュアンスを含んだアレだ。今回のJアラートの場合、空襲警報の地ならしという側面が大きく、落下する可能性はないとわかっていた確信犯だろうが、逃げる場所もないのに外交努力には関心がなく、もっぱら「(どこかに)逃げろ!」「(どこかに)ミサイルが飛んでくるぞ!」「憎き北朝鮮め、やるか!」みたいにいきり立っているというのは、お爺ちゃんの岸信介や天皇制軍国主義の指導者たちと比較しても無責任極まりない態度ではないだろうか。日本列島を盾にして米本土防衛のために戦争をしようかという者が、どうして防空壕を用意していないのか? そのまま原発を稼働させているのか? と真面目に思う。

 

 東アジアを巡る現在の緊張はアメリカ北朝鮮の矛盾であり、その間に割り込んでアメリカのために日本列島がミサイル攻撃をくらうなどバカげている。防空壕が必要になるような状況に国民を引きずり込むのではなく、無謀な戦争をさせないよう東アジアの緊張緩和のために動かなければ話にならない。ドイツのメルケルが「平和的外交による解決しかあり得ない」と発言してニュースになったが、どうして日本政府がそれをいえないのかである。

 

 その後、事態はアメリカ北朝鮮という範疇をこえて、中国やロシア、韓国など複雑な矛盾関係を為している関係各国が微妙なつばぜり合いを展開し、それぞれがメッセージを発信してパワーバランスを探っている。その埒外に日本政府がいて、唯一「ミサイルが飛んでくる!」と騒いでいるのは、やはり異様な光景だ。だから防空壕を作るというのではなく、防空壕が必要ない国として東アジアでの存在感を築くことが重要だ。                                        武蔵坊五郎

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