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安倍派企業への税軽減は適正か? 作業船に船舶特例を適用 下関市議会・本池市議の一般質問 質疑妨害する前田市長

(2025年6月30日付掲載)

6月議会で一般質問をおこなう本池涼子市議(手前)

 下関市議会6月定例会で、本池涼子市議(本紙記者)は、下関市が故安倍元首相の有力な後援者であるK社の所有する非自航型作業船を「船舶」とし、内航船舶特例適用により固定資産税の軽減措置をはかった件について一般質問をおこなった。「市長の指示によるもの」といわれている本件は、今年3月の選挙前のタイミングでおこなわれており、税金を使った買収とみなされてもおかしくない案件として問題視されていた【本紙既報】。一般質問を通じて、この特例の適用はK社のみに対しておこなわれており市は他社への情報提供もしていないことが明らかになったほか、本来、「船舶」ではないものを船舶扱いしたため、船舶特例の適用に必要とされる書類がないまま、「推進機を有している」という理屈で特例の適用とした実態が浮き彫りになった。行政内の事務手続きの根拠や記録の有無について問われても答弁が曖昧であったうえ、質問されてもいない前田市長が割って入り、「通告があったのは5件だけだ」などといって質疑を妨害する一幕もあった。一連のやりとりを見ていた人々からは「よほど聞かれたらまずいことがあったのか」「あれではおかしなことをやっていると自白しているのと同じだ」と話題になっており、ますます疑念を深めるものとなっている。以下、本池市議の質問と執行部の答弁(要旨)を紹介する。

 

疑念深めた執行部の答弁

 

K社への船舶特例の適用を決定した決裁文書(本紙が開示請求)

 本池 固定資産税について質問する。税とは、地方自治体が地方自治法に基づき行政組織の運営、市民サービスを通じた還元のために徴収しているものであり、なかでも固定資産税は、土地、家屋、償却資産という「所在が明瞭でかつ普遍的なもの」をとりあげており、いずれの市町村にも普遍的な税であり、「地方税としてもっともふさわしい税」ともいわれている。また、課税標準として固定資産の価格を用いているため、景気の動向に左右されず、地方自治体にとっては安定的な収入が得られるため市町村にとってもっとも有力な税である。ただ、物税という性格上、資産の価値を規準に課税されるので、納税者にとっては、景気が悪化したり、所得が下がった場合、負担が大きい課題はある。
 まず、下関市の歳入総額における市税の総額と割合、市税に占める固定資産税の金額と割合について示してほしい。

 

 前田財政部長 令和5年度決算では、一般会計の歳入総額1389億四168万2000円のうち、市税の額は335億8288万8000円。歳入総額に占める割合は約24%だ。うち固定資産税金額147億7146万2000円。市税に占める割合は約44%となっている。 

 

 本池 固定資産税のうち、「土地」「家屋」「償却資産」、それぞれの課税総額を示してほしい。

 

 財政部長 令和5年度決算の現年課税分では、土地39億3008万2000円、家屋70億2621万円、償却資産35億8300万4000円だ。

 

 本池 財政マネジメントプランにおいても「歳入の確保」「市税等の収入の確保」を掲げ、持続可能な市政運営をしていくとされている。税収の確保は適切かつ公平・公正な課税のもとでおこなわなければならないのはいうまでもない。

 

1社のみの不可解な軽減措置

 

 本池 令和7年度に徴収する固定資産税の決定にいたる過程で、ある企業の償却資産である非自航型作業船について「船舶」として認定し、内航船舶特例(特例率2分の1)を適用し課税したことが明らかになっている。通常、非自航型作業船は「機械設備」として課税されており、当然特例はないものだ。手元のタブレットにはこの件に関し情報公開によって出てきた決裁文書がある。まず、ある企業の所有する非自航式作業船のみ特例の適用としたことが事実か。

 財政部長 事実だ。

 

 本池 この問題については公正・公平の観点から疑義が生じている。市政は法に則ることはもちろんのこと、公正・公平に運営しなければならないものだが、その観点から適正であったのか。市政の進め方、市政運営の手続きの観点から適正だったのかについて質問する。
 この企業からの特例適用の申請はいつ、だれから、どのようにあったのか。

 財政部長 地方税法の守秘義務もあるので個別のことは答えを差し控える。

 

 本池 「どのように」はどうか。

 財政部長 同じく差し控える。

 

 本池 守秘義務の根拠法令はなにか。

 財政部長 地方税法22条だ。

 

 本池 聞きとりのさいに企業名や船名などは答えられないといわれた。今この企業について聞いているわけでもなく、市の事務について聞いている。「いつ」「どのように」は答えられると思うがどうか。

 

 財政部長 船舶特例についての適否について話があったということはいえると思う。

 

 本池 文書か、口頭か。

 財政部長 口頭だ。

 

 本池 要望は1回か。

 財政部長 私が知る限りでは一度あったと聞いている。

 

 本池 その折衝記録はあるか。

 財政部長 どこまで記録があるかわからないが、一応事務手続きをするうえで、とっていると思う。

 

 本池 折衝記録があるのか、ないのか。

 財政部長 記録はあると思う。

 

 本池 伺いの対象となっている非自航式作業船は1隻だけか。

 財政部長 個別具体的なことは差し控える。

 

 本池 では、新しくつくった作業船なのか、もともとある作業船に新しい設備をつけたのか、従来のままなのか。

 財政部長 それも個別具体的なことなので差し控える。

 

 本池 答えられないのは地方税法22条か。

 財政部長 そのように認識している。

 

 本池 答弁がないが、(決裁文書には)非自航式作業船については今までは機械設備として課税していたと書いてある。今回初めて、この作業船を軽減した理由を示してほしい。

 

 財政部長 これまで作業船については推進機を有しない浚渫(しゅんせつ)船、砂利採取船は船舶にあたらず、機械設備として課税する旨の通知がなされていたので、申告も機械設備として申告が出ており、それにもとづき課税してきた。

 

 しかしながら令和6年10月、令和7年2月に「非自航作業船に係る固定資産税の課税標準について」との総務省からの通知があり、非自航作業船には、課税客体として「機械設備」に該当するものと、「船舶」に該当するものがあるということが示された。非自航作業船で推進機を有しないものは今まで通り「機械設備」、有するものは「船舶」として課税することが適当であり、船舶として申告された非自航作業船については推進機を有することを確認したうえで、このたび内航船舶の特例を適用するとした。

 

 本池 参考までに、部長がいわれた総務省からの通知がある。10月9日付の通知に続いて、補足説明として1月29日付のものがあるが、どこから当該作業船を「船舶」扱いにすると判断されたのか。

 

 財政部長 1月の通知のQ2の回答で「非自航作業船が固定資産税の課税客体として船舶に該当するか、機械設備に該当するかについて個別に判断される」となっている。船舶に該当するかどうかの判断を推進機の有無で判断したということだ。

 

 本池 非自航型作業船が「機械設備」になるか、「船舶」になるかは、推進機の有無であるといわれたが、(通知は)判断を市町村でしなさいと書いているだけに私には捉えられる。2種類あるという話ではないように思う。


 総務省は「これまでの解釈を変更するものではない」といっているし、実際に1月29日付の文書にも下線付きで書いてあるが、この文書をもって下関市は解釈変更をしたということか。

 

 財政部長 解釈の変更というか、非自航作業船にも「船舶」と「機械設備」があるということが示されたので、それに従って判断したということだ。

 

本当に「船舶」なのか

 

 本池 推進機を有していることが争点になってくるのだろうが、「推進機能を有していることを確認」についての実地調査はいつ、誰がどのようにしたのか。

 財政部長 個別案件なので答えを差し控える。

 

 本池 「だれが」は答えられると思うが。

 財政部長 資産税課の職員が確認した。

 

 本池 財政部長は現地に行かれたのか。

 財政部長 私も最初の協議から一緒にやっているので、私も行った。

 

 本池 通常、特例の適用の場合は部長が行くものなのか。

 財政部長 私も財政部長になって初めての経験だった。今までそういうことがあったかどうか存じ上げない。

 

 本池 現地確認の報告書はあるか。

 財政部長 報告書までつくっているかどうかは今承知していない。

 

 本池 現地確認の根拠はなにか。

 財政部長 法律の条項は定かではない。償却資産は申告にもとづく税なので、申告内容の適否を確認するのに必要な調査だと理解している。

 

 本池 「どのように」だが、目視で動いたことを確認したのか、推進機があることを確認したのか。

 財政部長 目視で確認した。

 

 本池 作業船が動くのを見たのか。

 財政部長 そうだ。

 

 本池 どれぐらい動けば「船舶」になるという規定はあるのか。
 

 財政部長 ない。

 

 本池 そもそも、どれだけ考えても不思議なのだが、「非自航式」で、推進機能があるとはどういうことか。船舶として登録される「自航式作業船」であればわかるが、非自航式なのに、自分で航行できるということなのか。

 

 財政部長 一般に海の上をざっと動くような航行ではなく、自分で動ける能力があるということだろうと思う。自航作業船は一般の船として航行できるものをいい、それ以外を非自航作業船といわれており、非自航作業船のなかでも、そんなに速くは動けないが自分で推進機の機能を持って動くことができるものと理解している。

 

 本池 例えば他県に工事に行く際には当該作業船はどうやって行くのか。曳船は必要ないのか。

 

 財政部長 必要なものもあるし、必要でない自分で動ける作業船もあると思う。

 

 本池 作業船には、工事区域内を動いたり、船位を保つための「スラスター」というものがあるようだが、「推進機能」とは、まさかそのことをいっているわけではないですよね。

 財政部長 個別の案件は回答を差し控える。

 

 本池 この非自航型作業船の総トン数は。

 財政部長 それも個別の案件なので回答を差し控える。

 

 本池 答えないのはいいが、確認はしているか。

 財政部長 確認はしている。

 

 本池 総トン数の確認か。

 財政部長 そこはちょっと定かではないが、総トン数…で確認していると認識している。

 

 本池 大型船舶か、小型船舶か。

 財政部長 大きいものとは思う。

 

 本池 船舶でないと総トン数はないはずだが、先ほどの答えで大丈夫か。

 

 財政部長 船の大きさは見てはいるが…。トン数までは私は確認できていない。

 

必要書類の提出もなし

 

海洋工事に使われる作業台船(下関市)

 本池 船舶特例を受ける場合には、「償却資産申告書」「種類別明細書(増加資産、全資産用)」と一緒に、「内航船舶動力船舶登録票」「船舶国籍証書」「船舶検査証書」等が添付書類として必要となるようだが、本件の場合、当該作業船が内航船舶である証拠書類は提出されているのか。

 

 財政部長 推進機を有することがわかる書類を出していただいている。

 

 本池 そうではなく、固定資産税の申告の手引きに「申告書と一緒に内容が明らかになる書類等を添付」とある。下関市はホームページになかったが、他自治体のホームページを見ると、内航船舶動力船舶登録票、船舶国籍証書、船舶検査証書が添付書類となっている。そうした書類は提出されているのか。

 

 財政部長 非自航の作業船なので、そういう添付書類はない。

 

 本池 私の手元には、内航船舶特例を受けている船舶に関する申告書の添付書類がある。一つは漁船なので「動力漁船登録票」、もう一つが船舶検査証書になる。いずれも船舶特例を受けるために必要な書類で、みんながこれらを提出して特例を受けている。市としては必要書類として提出を求めているのか。

 

 財政部長 船舶の登録がある場合は求めているが、今回は非自航作業船なので求めていない。

 

 本池 船舶特例を受けるための書類として、みなさんに先ほどいった書類を求めているか。

 

 財政部長 船舶として登録されている場合は添付資料として出していただいている。

 

 本池 今のやりとりでは「船舶」としての証明がなにもない。「推進機能がある」というだけで、どれぐらい動くかの規定もない。推進機能がついて、「これで動きます」といったら必要書類がなくても「船舶」になるということか。

 

 財政部長 国からの通知をもとにこのたび判断したということだ。

 

 本池 質問に答えていただきたい。必要書類がなくても「船舶」として船舶特例が受けられるのかを聞いている。

 

 財政部長 地方税法の世界の「船舶」という概念でいくと、推進機がついていれば非自航作業船でも「船舶」として特例が適用できるという判断をしたということだ。

 

 本池 例えば、課税標準の特例がもうけられているなかに、再エネ設備に関するものがあるが、その場合「特例適用申請書」とともに「再生可能エネルギー発電設備にかかる認定通知書」などの書類が必要とされている。これを出さないまま、発電するからと特例が適用されるか。

 

 財政部長 それは特例の要件に該当するのを確認するための書類だと思っている。

 

 本池 同じことだと思う。固定資産税に限らず、一定の線引きのもとでみなが平等に課税され、厳しくてもみなが課税された税金を払っている。なかには判断が微妙なものもあるのだろうが、そこを崩すと秩序が崩壊する。だから課税する職員もそういう意味では心を鬼にして職務にあたっていると思う。真面目にやっている職員、苦しいながらも真面目に納税している市民がこの船舶特例の取扱いを見てどう思うだろうか。

 

 それから、市が根拠としている1月29日の総務省通知には、「当該非自航式作業船の目的や固定資産台帳の記載等を踏まえつつ」とある。目的から考えなければならないと思うが、そもそもなぜ、船舶に固定資産税の軽減措置がもうけられているのか、説明をお願いする。

 

 財政部長 船舶という資産自体が事業活動で使われる。償却資産なので基本的にはそうだが、あまりその税負担を大きくしないで事業活動を活性化するというか、推進するという目的で、特例がさまざまな種類でされているんだと思う。

 

 本池 それは全体的な話だ。船舶に関していうと、基準になっているのは外航船舶(特例率6分の1)だ。外航船舶は諸外国のそれらと競争関係にあることおよび、我が国の国際収支の改善をはかる必要があること等に鑑み、運賃原価に占める固定資産税の比重をできるだけ低くして国際競争力を培養しようとする趣旨にもとづいて講じられたものであり、内航船舶に対する特例措置は、外航船舶との均衡をはかるために講じられたものであると、このたび地方税に関する書籍を読んで知った。その意味から見て今問題の作業船は「船舶」になるだろうか。

 

 財政部長 国の通知をもとに、地方税法の範疇では船舶に該当すると判断した。

 

 本池 通知の都合のいいところを切りとるのではなく、「当該非自航式作業船の目的や固定資産台帳の記載等を踏まえつつ」となっているので、やはり目的からふり返り、適否の判断をしなければならないと思うがどうか。

 

 財政部長 法律によって船舶の定義も変わっていくと思う。たとえば租税特別措置法では推進機を持たない作業船も船舶として認められるものもあり、地方税法の世界では推進機があれば非自航作業船でも船舶特例の対象になるということだ。

 

他自治体では「適用なし」

 

 本池 当該作業船と同様の作業船に対する賦課の取扱について、他の自治体には照会をかけたのか。

 

 財政部長 いくつか照会したことはあるが、まだそういった判断はなかった。

 

 本池 先ほど、作業船が船舶として扱われていることがあるといわれた気がするが、もう一回お願いする。

 

 財政部長 先ほど申し上げたのは違う法律の話だが、租税特別措置法では船舶の買い換えの対象として推進機能を持たない作業船も船舶の対象になっている。法律によって船舶の扱いが違うものがあることを伝えたところだ。

 

 本池 別の法律を持ち出されても違うと思う。今は地方税法の394条の3の5の話を聞いている。照会をかけたということだが、他の自治体で適用しているところはなかったということか。もう一度確認する。

 

 財政部長 何カ所か聞いた範囲では適用しているところはまだなかった。

 

 本池 その記録はあるか。

 財政部長 あると思う。

 

 本池 これまで確認してきたが、最終的に当該作業船は「船舶」だと判断したのは誰か。その判断が出るまでに庁内で、だれがかかわり、どれほどの協議がおこなわれてきたのか。


 財政部長 外部から適否の確認があったところから、私が資産税課と一緒になって適用の可否を判断した。

 

 本池 庁内で協議がどれほどされてきたのか。

 

 財政部長 表現が難しいが、国の通知とか今までの実務提要とか資料だとかの解釈をしながら資産税課と一緒に私の方で判断した。

 

 本池 その記録はもちろん公文書としてありますよね。

 

 財政部長 逐一、協議の内容を文書としては残していないと思う。

 

 本池 文書として残っていないのか。協議の記録は残さないものなのか。

 

 財政部長 部内の協議でもあったので、協議録まではつくっていないと認識している。

 

本件の決裁について

 

 本池 次に、本件の決裁について聞く。まず課長決裁の根拠はなにか。

 

 財政部長 固定資産税の賦課に関する事務は固定資産税課が分掌しているので、課長決裁でおこなっている。

 

 本池 事務決裁規程の何条にあたるか。

 

 財政部長 個別に特例適用のことだけを事務決裁規程に載せてはいないので、課長の決裁事項と認識している。

 

 本池 それぞれの課長の専決事項があるが、事務決裁規程のどこなのかを聞いている。

 

 財政部長 今、事務決裁規程を持っていないが、課長の共通専決というところで、その課の事務の決裁を課長がするので、その部分になろうかと思う。

 

 本池 決裁をとっているのだから、(どこかを)答えられないとおかしい。

質疑に割って入る前田晋太郎市長(6月24日)

 前田市長 今回、本池さんの質問、通告5件なんですよ。5件しか通告してきていない。ずっと部長は答えているけど。本来だったらこれ、通告ないのでわかりませんで蹴られ続けてしょうがない内容をあなたしゃべってますけど、そのあたりどうなんですか。

 

 本池 通告では、この特例適用の件について事実関係をきちんと整理しておいてくれと伝えている。通告は重複を避けるためのものであって、すべての質問を伝えるものではない。全部伝えることもできるが、部長自身がかかわってやっていることだから、ご自分の言葉で責任を持って答えていただきたい。貴重な時間をとらないでほしい。
 事務決裁規程のどこにあたるかは、後でお答えをお願いする。

 

 (※質問終了後、「別表1」の行政一般の項、課長決裁事項のうち「軽易な事項についての照会、回答、通知、進達、申請、届等に関すること」の規程を適用と回答あり)

 

 この決裁文書だが、標題中「内航船舶特例の適用●●●●確認したところ」となっているが、肝心なところが黒塗りで隠されている。黒塗りした理由と、その根拠条文を示してほしい。

 

 財政部長 情報公開条例で個人情報や税情報は公開できないことになっているので黒塗りにしている。

 

 本池 この文書は調定伺いか、方針伺いか。

 財政部長 特例の適用をするという決裁だ。

 

 本池 特例を適用するとき、このような決裁を一回一回とるのか。

 

 財政部長 償却資産の特例適用は年に3000件くらいあり、それを全部一つずつ決裁をとるようなことはできない。今回は初めて非自航作業船に船舶特例を適用するという判断をしようとしたので、決裁を残した。

 

 本池 今回、部長が初めて(現地確認に)行かれた、決裁も初めてということだが、本来、異例に属するものの取り扱いはだれの決裁事項にあたるか。

 

 財政部長 異例というか、地方税法の特例の適用をするという事務的なことなので、通常の資産税課の決裁でとった。

 

 本池 通常ではないと、先ほどから部長がおっしゃっている。初めてやることだと。そういうときはだれの決裁になるのか。

 

 財政部長 初めての適用ではあるが、税法に則った適用なので、通常の事務手続きを踏んだということだ。

 

他社には通知していない

 

 本池 今回、特例の対象とした作業船と同様のものを所有している企業は市内に何社あり、今年度課税対象の作業船は何隻あり、その税額はいくらになるか。

 

 財政部長 償却資産の申告は機械設備の名称であり、作業船かどうかわからないので、作業船だけの税額などはわからない。

 

 本池 今問題にしている作業船と同様のものが市内にあるのか、ないのか、あるなら何隻あるのか、わからないということだ。「船舶」か「機械設備」かはわからないということですよね。

 

 財政部長 償却資産の申告は「機械設備」として出てきているということだ。

 

 本池 推進機を有しているかいないかはわからないということですよね。

 財政部長 そこは確認のしようがない。

 

 本池 このたび、非自航式作業船で推進機能を有していれば船舶特例の適用対象となることを、この企業以外の会社には通知したか。

 

 財政部長 「船舶」として申告が出てきたので、それに対して個別に判断したという事案だ。

 

 本池 (通知を)したのか、していないのか聞いている。

 財政部長 とくにしていない。

 

 本池 先ほど「機械設備」のなかの作業船が、推進機を有しているかいないかわからないといわれた。であればなおさら、関係者がわかるように平等に通知をしなければならないと思うが、していないのはなぜか。

 

 財政部長 申告納税なので、申告時点で「機械設備」として事業者が申告してきているということだ。それをそのまま受け入れている。

 

 (※質問終了後、「申告納税」ではなく、「申告にもとづき決定したもの」と訂正あり)

 

 本池 他の会社が「うちも特例の対象になるかもしれない」とわかるように知らせなければ平等にはならないのではないか。見解をお願いする。

 

 財政部長 「船舶」として申告してきたという事実に対して、市の方で認定するということになろうかと思う。申告が「機械設備」として出てきたものをこちらで、船舶かどうか確認するようなことはするべきでもないかと思っている。

 

 本池 確認しろということではなく、通知をしないのかという質問だ。

 

 財政部長 それぞれの事業者が申告のときに考えることだと思うので、通知をすることは今考えていない。

 

 本池 知らないままだったら、「機械設備」として特例のないまま払い続けることになるが、それは仕方がないということか。

 

 財政部長 国からの通知文書が、作業船を持っている業界団体には同じように行っているので、そこから理解されているのではないかと思う。

 

 本池 通知にもとづいて下関市が特例の対象にすると決めたわけだから、下関市はこうするという判断について通知しないのか。

 

 財政部長 先ほどの通知は業界団体にすべて行っているようなので、それを見て、船舶特例が適用できるのではないかということで、申告が船舶としてあがってきたということだ。

 

 本池 先ほどの答弁に戻るが、非自航式で推進機があり、自分で動く能力があるといわれた。船舶原簿に登録されていない船舶は航行してはいけないとなっているはずだが、航行ができるのか。

 

 財政部長 非自航作業船なので、航行までは行かない。一般的な外海に出たりという航行はできない。

 

 本池 だったら非自航式作業船は「船舶」ではないのではないか。

 

 財政部長 「船舶」の定義をどう考えるかだが、地方税法の船舶特例を適用する範疇では、非自航作業船も「船舶」の対象になるという理解をしていただければ。

 

 本池 今回で終わりではないと思っている。このたび海洋土木の関係者にもお話を聞いた。まず、前提として作業台船をはじめ、大型設備の維持には固定資産税を含め莫大な費用がかかるそうだ。そうした建設機械類が年中稼働していればいいが、当然稼働しない時期もあり、その間も維持費はかかるため大変だということだった。

 

 海に囲まれた日本にとっては大切な業界であり、国土保全や国内産業を守るという公益的な意味で、事業者の実態を調査し減税したり、軽減措置をとることは必要であると思っている。固定資産税の課税庁である地方自治体として、こうした苦境を目の当たりにしているのであれば、業界全体の課題としてとらえ、例えば税制改正を含めた支援策を国に提案していい案件だと思っている。

 

 しかし、先ほどから確認しているように、申し出があった1社だけ、そしていくら推進機能があるといい張っても「船舶」ではないことは明白だ。仮に自航式作業船のような「船舶」であれば、船舶法、船舶安全法、船舶職員及び小型船舶操縦者法などが全面的に適用となり、コストもかかるし制約も受ける。船舶としての自航式作業船を持つか、あくまでも建設機械である非自航式作業船を持つかは各社の事業内容や経営判断で決まるが、都合よく利点だけを受けられるものではないはずだ。

 

 つまり、「船舶」となれば相応の厳しい規制があるが、そうした規制は受けないまま税制面だけ船舶となればこれは不平等感が持たれてしまう。公正・公平な税の在り方がゆがめられていると指摘されるのは当然だと思う。

 

 税の軽減(減免)は、補助金の支給に等しいと地方税の書籍にあった。歳出であれば議会の目にも触れるし、形式上チェックは入る。一方で歳入となるとその一件一件について見ることはほぼないため、軽く取り扱われるきらいがあり、産業振興のための軽減(減免も含め)も、税の公平という根本原則を見失ってしまっては、納税者の信用を失う――とあった。軽減措置すら厳格で慎重な判断が必要であるのに、下関市だけその対象を勝手に広げてしまっていいのだろうか。今回は疑問点について質問したが、これを聞いた市民のみなさんがどう思われるだろうか。公平・公正な市政の運営を求め質問を終わる。

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