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祝島 補償金受け取り拒否 43vs15で圧勝

 中国電力の進める上関原発計画の終結か、復活かの大分岐点として全国、全県、全町大注目の中で、祝島漁協総会が1月29日におこなわれ、漁業補償金の受けとりが圧倒的多数で否決された。祝島漁民の受けとり拒否は、二井知事の埋め立て許可、それを受けた中電の原子炉設置許可申請など、先走った手続きを足元から崩壊させる快挙となった。国策とたたかって真の国益を守る全県、全国の世論とつながった祝島島民の団結した力は、あらゆる権力、金力を使い28年間の長きにわたって町民を抑えつけてきた中電の原発支配の構造を根底から打ち崩した。本紙は、記者座談会をもって、現地の状況とあわせてこの間の経過を整理した。
  1月29日、祝島公民館において県漁協祝島支店の総会がおこなわれ、法務局に供託中で5月に国に没収される漁業補償金の半金(5億4031万円)を取り戻すかどうかの可否をめぐって議決が取られた。総組合員68人(正組合員のみ)のうち66人が出席(委任状提出7人)し受け取り反対が43人、態度保留と受け取り賛成をあわせて15人となり、圧倒的多数で補償金受け取り拒否が決議された。
  総会当日、開催時刻の午後五時まえになると、祝島公民館の玄関口では反対運動をねばり強く続けてきた婦人たち十数人が、入場していく組合員たちを激励するために集まり、「絶対に反対でがんばろう」「がんばってね!」と声をかけた。島民の会からはこれまでのように「会場を包囲する」などの通達はおりなかったといわれ、婦人たちの自発的な行動となったが、その数は時間とともに増えていった。補償金受けとりをめぐる攻防は、みんながわがことのように緊張感をもって見守った。
  県漁協側からは、県漁協本店の前田宏総務部長をはじめ幹部数人と室津出身の森友信・常務理事、上田稔上関支店参事が出席。総会は非公開だったので、准組合員や農民、商売人などの部外者は会場外の階段やロビーでの待機となった。だが参加者の怒声が場外にまで聞こえてくるほど総会はのっけから白熱した。
 参加者によれば、県漁協から補償金をめぐる説明があった後、総会の議長を「県漁協本店職員がやる」という提案に漁民の多くが反発。「地元から出すべきだ」の声が圧倒し、無記名投票がおこなわれ、祝島自治会長の出田資氏が議長に選出された。
 次に、採択方法を挙手にするか、無記名投票にするかをめぐって選挙となり、「挙手採決」となった。「受け取り反対」の挙手だけが求められ、推進派組合員のヤジや怒声もあって3回やり直しがあったというが、43人が反対の意志を表示し、態度保留もふくめて手を挙げなかった組合員は15人だった。昨年2月の総会では、35対33の2票差での反対派勝利だったが、今回は議決権の4分の3を占める結果となった。「県漁協職員がひどく動揺した顔つきになり、目が泳いでいた」といわれ、数人の推進派組合員があわや議長に詰め寄って殴りかかりそうになり、県漁協職員が慌てて静止するという一幕もあったという。

 税金支払い承認も拒否 落胆しきった県側

 B 議決採択で反対の勝利を確認した数人の漁民は退場したが、県漁協はそこから「第2の本題」ともいえる「税金の取扱いについて」の説明を開始。「受け取らなくても今年3月末で2600万円の法人税を払わなければならず、それは祝島組合員に負担してもらわなければいけない」と説明。その承認を求めた。場内では、「受け取っていないのに、税金を払う必要があるか!」と断固拒否の声が飛び交った。
 このとき、「補償金10億8000万円を本店にくれてやるから勝手に払え」「県漁協の特別貯金に入っている5億4000万円(補償金の半金)から払えばいい」と、反対派の一部から意見が出された。県漁協側は「それが総意ということでいいか」と確認した。どんな方法にせよ「法人税を払う」ことを承認すれば、祝島が補償金を自分のカネと認めたことになる。瞬時に参加者から「それは受け取ったことになるじゃないか!」「祝島は税金を払うことは認めん!」という声が再び沸き起こり、税金支払いの承認を拒否した。
  二井県政、県漁協側とすれば、祝島が補償金を受け取ることを拒否しても、法人税を払うことを承認させるなら「祝島は補償金を受け取る意志を示した」という理由付けにし、二井知事許可の合法性を言い張る根拠になる。それを、「国税局の指示」をチラつかせて「受け取らなくても法人税2600万円の支払いが必要」「一人あたり40万円払え」と脅しはエスカレートしていた。
  総会の最後まで、県漁協や推進派組合員は、「いつまでも受け取り拒否したって、あんたらは最高裁で負けたでしょうが!」「税金の支払いは国税局の指示なんですよ!」「受け取り拒否を続けるのなら、2年後には1億7000万円を払ってもらうことになる」「拒否した人に払ってもらう」と脅しを畳みかけた。だが「国税だか最高裁だか関係ない!」「祝島は漁業権変更をやっていないし、一銭も受け取っていないものから税金を取れるわけがない」と断固拒否の声が圧倒した。
 漁協合併でぼう大な負債を漁民にかぶせた上に、タダ同然で魚を買い叩く県漁協への怒りも合わさって追及は激しさを増した。追いつめられた県漁協から判断を委ねられた山戸氏が「(税金問題は)みんなで相談する」とのべ、今月半ばの町議選後に改めて税金の扱いについて集会を開くことにして約二時間に及んだ総会は終わった。
  終了と同時にドッと笑いながら漁民たちが会場から降りてきて、入口で待機していた婦人たちに「勝利」を報告。みんな手を取り合って喜び、おのずと拍手が沸いた。隣近所で連れ立って結果を聞きに来る島民も見られ、「よかったね!」「漁師は強いね!」と語り合いながら帰っていった。
 その後、落胆しきった顔つきの前田総務部長ら県漁協本店職員たちが、うつむいて無言で帰っていく姿は、この総会の結果を鮮やかに示していた。金力、権力を駆使したいかなるウソと脅しも祝島島民には無力だった。

 国策覆し内海漁業守る 婦人達を先頭に

  今回の補償金受け取りをめぐる攻防は、まさに国策とのたたかいだった。
 1昨年10月、二井知事が公有水面埋め立て許可を出し、それを受けて中電から関係漁協に残る補償金の半金が支払われた。翌11月には、2000年から争われていた漁業補償契約無効確認訴訟を最高裁が棄却し、「(祝島の)組合員は共同管理委員会と中電との契約に拘束される」という高裁判決を「確定」扱いとした。祝島を除く7漁協ではさっそく補償金が分配され、中電は田ノ浦で山林伐採などをはじめ、商業マスコミも「原発はできるできる」の大騒ぎをやった。県外から大手土建業者が作業員の飯場をつくるなど動き回り、四代などでは中電が「民宿をつくれ」とふれ回ったが、昨年2月の祝島漁協総会で補償金の受け取りが2票差で否決されてからは、工事は頓挫し、夏頃には工事業者は引き揚げていった。12月末、中電は、祝島の補償金受け取り拒否、20カ所以上に及ぶ未買収地の存在をはじめ条件未成立のまま原子炉設置許可申請を提出した。
  そこで激しくなったのが祝島に対する「補償金受け取れ!」の脅しだ。県農林水産部が県漁協職員を連れて祝島に乗り込んで説明会をやると同時に、山口地裁は埋め立て工事への妨害禁止の仮処分決定をし、さらに中電は妨害者に対して4800万円の損害賠償を求める訴訟まで起こした。「受け取らなければぼう大な負担をかぶるぞ」の脅しだ。
 一方、先月22日には二井知事が経済産業省に飛んでいき、民主党政府から「上関原発は従来通り推進する」との返答を引き出すなど、「第三者」の体裁も投げ捨てて「原発はもうできるから諦めろ」のパフォーマンスを繰り広げてきた。中電は祝島の総会の29日、新聞各紙で原子炉設置許可申請に当たってご協力をお願いする全面広告を出した。中電と二井県政の側は、29日の祝島の総会を最大のヤマ場と想定してきていた。
 総会後中電も二井県政も知らぬ顔をし、新聞も素知らぬ顔をしているが、それは逆に、祝島での打撃がどれほど大きいものであったかを物語っている。
  これに対して、祝島では、原発阻止のたたかいは瀬戸内海漁業を守るたたかいであり、国策とたたかって真の国益を守るという意識が強まっていった。
 2票差だった漁協総会から「これではいけない」と婦人たちが下から運動を盛り上げ、田名埠頭でのブイ搬出阻止行動では、寒いなか高齢の婦人たちも連日座りこみを続けて運動を下から支えた。その気迫に満ちた姿は全国的な共感と支持を広げていった。祝島でも「あの婦人たちの行動が諦めの空気を一気に巻き返していった」と語られている。

 全県全国との団結発展 祝島で勝利感溢れる

 B 豊北原発阻止共斗会議が歓迎された。全県で宣伝活動を活発に繰り広げ、岩国、広島、全県の漁民をはじめ各層のなかで、祝島のたたかいに連帯した共同斗争が発展していることを知らせてきた。教育改革という国策による教育荒廃とたたかって子どもたちを勤労人民の後継ぎとして育てる教師集団が祝島で歓迎された。基地問題をめぐってたたかう岩国市民の世論を載せた「岩国基地通信」、再び日本を核戦争の廃虚にさせぬという被爆地・広島市民の声を伝える原爆展を成功させる広島の会のチラシなどが祝島、上関で配布された。
 単なる祝島の応援団ではなく、全県や全国各地で自分たちの課題として戦争と売国政治とたたかって祝島と連帯する決意が記されたビラは非常に喜ばれた。祝島のたたかいは孤立したものではなく、全県、全国と団結して真の国益を守る共同斗争であるという論議が盛り上がった。
 C 総会までの一週間ほどは、「応援よろしく頼むよ!」と声をかけてくる漁民や農家の人たちからも、これまで農作業もなげうって反対運動に献身してきた苦労とともに、「今度の総会はどんな抗議行動よりも大事。中電は一度も祝島にきたこともなく、話し合いのテーブルにもついていないのに“漁業補償は決着”などふざけている」「祝島が補償金を受け取らなかったら困るのは中電と二井知事。この際、徹底的に困らせたらいい」と明るく語られていた。
 推進派の漁民に対しても「結局、中電に利用されて役に立たなければ捨てられるだけだ」という同情的な見方もあった。また94年の田ノ浦地先にあった共同漁業権の放棄、もう少しで原発終結というところまできて再び息を吹き返すという経験をみんなしてきただけに、「今回は絶対に負けられない」という決意があった。
 B 総会から一夜明けた祝島では、晴れ晴れとした勝利感に満ちていた。
 ある漁師は、「瀬戸内海全体の将来を左右する問題だっただけに、祝島の総意で内海漁業を守れてよかった。金をもらってはじめて取られるのが税金だが、平気な顔で“もらわなくても税金を払え”と説明する県漁協はほんとうに漁師をバカにしているし、怒りを通り越してあきれてしまった。総会ではすべての採択で反対が勝利してスカッとしたし、何回やっても同じ結果だという祝島の意志を示した。県漁協の職員が泡を食ったような顔をしていたのが傑作だ。単なる金をもらうかもらわないかだけの総会ではない、それ以上の深い意味のある総会だった」と明るく振り返っていた。
  漁民の中では、県や県漁協の横暴なやり方に怒りがすごかった。そもそも漁協合併で、信漁連がマリンピアくろいや国債先物取引などで勝手につくった二〇〇億円もの借金を各漁協にかぶせたあげく、合併後は魚を安く買い叩き、さらに受け取ってもいない補償金の法人税まで巻き上げようとするヤクザじみたやり方に怒りは沸騰していた。
 祝島漁協では、増資や協力金拠出のために組合員一人につき毎年9万5000円を五年間払わされており、合併前の赤字を補填(てん)するために8万5000円も徴収された経緯がある。
 瀬戸内海全体を死の海にする原発計画を、二井県政の水産行政や県漁協がなぜ推進するのか。それが全県漁民の総意を得たわけではないことははっきりしており、合併でひどい目にあっている全県漁民の重大問題となるすう勢だ。
  中電は原子炉設置許可申請をしたが、祝島が漁業権を断念するという思いこみで二井知事が出した埋め立て許可そのものが先走りであり、全プログラムがガタガタに崩壊することとなった。目立ったドジは、埋め立て許可によって漁業補償金の半金を七漁協に払い、配分してしまったことだ。それは祝島のせいではなく、自分たちが勝手にやったことだ。祝島でウソと脅しの二井知事に対する怒りは相当のものになっている。
  上関町では、9日告示14日投開票の町議選挙がおこなわれる。祝島の補償金受け取り拒否の快挙は、町民の力で原発計画に終止符を打つことができる確信を与えており、俄然全町民の活性化を促している。

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