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全国の非正規公務員の女性たちの声を束ねて 公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)共同代表・渡辺百合子

 2020年の総務省調査によると、地方自治体に勤務する非正規公務員は112万5746人。地方公務員の3人に1人は非正規職員でその8割が女性です。非正規公務員の待遇改善をうたった会計年度任用職員制度が2020年4月に導入されましたが、この年からコロナ禍にも襲われました。コロナ対応では最前線で業務をおこなうエッセンシャルワーカーであるにもかかわらず、待遇改善どころか、勤務時間や月額給与が引き下げられる改悪が全国で発生しました。とくに、「会計年度任用」が厳格に運用されるようになり雇用不安が増大しました。

 

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 2021年3月20日に公務職場で非正規として働く当事者(以下、当事者)と研究者等が集会を開催し、そのつながりから緩やかなネットワーク「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」が生まれました。はむねっと誕生からすぐにとりかかったのが、当事者を対象とした調査です。これは、「全国に散在する官製ワーキングプアの女性たちよ! 団結せよ!」と集会で声を上げた当事者の実態をもっと広く集め伝えたいという思いがあったからです。

 

 翌2022年も継続して調査をおこない、回答者の8割以上を占めた会計年度任用職員の半数にメンタル不調、ほぼ全員が将来不安を感じるという調査結果に危機感を募らせました。さらに、調査結果からは当事者の雇用問題にとどまらず、公務の充実や持続可能性の観点からも多大な問題が生じていることが明らかになりました。その原因は、会計年度任用職員制度の制度設計にあると考え、制度の見直しについて、国や全国の人事委員会に対して要望を上げていきました。

 

 制度導入から3年目となる2022年度末には、全国の自治体で法的義務のない公募が実施されようとしていたことから、それを食い止めるべく、2022年4月21日には、「会計年度任用職員“3年目公募問題”(2022年度末問題)特集」をはむねっとホームページ(以下、HP)に掲載し、情報提供を始めました。また、関係する諸団体の協力を得て、関係省庁(総務省、厚生労働省、文部科学省、男女共同参画局、消費者庁)と懇談をおこない、11月9日には、院内集会を開催するなど国への要望をおこなっていきました。以前から同様に要求を続けていた労働組合や、はむねっとの訴えによって、11月8日厚生労働省がホームページに「国または地方公共団体の方へ 離職する職員の再就職のために」を掲載し、12月23日に総務省が「会計年度任用職員制度の適正な運用等について」を通知するなどの動きはあったものの、多くの自治体で予定通り公募がおこなわれてしまいました。

 

 院内集会後には、雇用主である自治体に直に要求をするべきだと、はむねっとメンバーから声が上がり、送付先の数から「1789プロジェクト」と名付け、各自治体に3通(首長あて、議会議長あて、人事委員会もしくは公平委員会あて)の要望書と、はむねっと2022調査報告を同封し送付しました。当事者の待遇改善だけではなく、行政サービスの継続性の観点からも会計年度任用職員制度の見直しを訴えました。要望を受けて、2023年3月には8つの議会(秋田県男鹿市、井川町、福島県川俣町、埼玉県杉戸町、長野県南相木村、高知県東洋町、高知県本山町、沖縄県伊平屋村)が会計年度任用職員に係る国への意見書を採択するなど170自治体から何らかの反応がありました。

 

 半面、山梨県、島根県、山口県、大分県の4県ではすべての自治体から何の反応もありませんでした。

 

 2022年度末におこなわれた3年目公募の実態を明らかにするため、2023年はむねっと調査は会計年度任用職員に限定しておこないました。その結果、「仕事を続けたかったが雇い止めにあった」が44・0%、「待遇に納得できず辞めた」が21・2%でした。また、公募選考時期については、3月になってからの募集が5・9%、選考が11・7%、発表が36・5%とかなりの比率となっており、「公募のお知らせを読んだ時、人事は会計年度任用職員にも人生があり、守るべき家族がいるという当たり前のことを想像できていないのだと思った」「そのタイミングで不採用とされても再就職に間に合いません」との声が寄せられています。

 

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 長周新聞でも記事(2023年9月15日)にしていただいたように埼玉県狭山市では22年間勤務したベテラン司書が雇用止めにあってしまいました。このように長年勤務し、職務に精通した経験者を「応募機会の公平性」という名目で恣意的に雇止めができる制度となっています。これは、やりがい搾取といわれながらも、目の前の利用者のために待遇の不満を置いてでも働き続けてきた会計年度任用職員の尊厳を踏みにじる行為です。

 

 はむねっと調査や1789プロジェクトが契機となり、地元の住民でもある会計年度任用職員の安定雇用、待遇改善について、議会や労働組合、市民の間で議論され、その待遇が早急に改善されることを期待すると共に、はむねっとも、ひき続き当事者の声を発信し続けていきます。

 

 ※文中の調査、1789プロジェクト反応は全て、はむねっとHPに掲載しています。https://nrwwu.com/

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