いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

インド映画『RRR』 監督 S・S・ラージャマウリ

一昨年から昨年にかけて世界的にヒットした映画『RRR』のポスター

 かつて世界中の市場を席巻したアメリカ・ハリウッド映画は、いまや製作本数も観客動員数も減少続き。それとは対照的に注目が集まっているのがインド映画だ。

 

 現在、インドは映画の製作本数では世界一で、アメリカの2~3倍はある。200以上の言語があるといわれるインドは、ムンバイを製作拠点にしたボリウッド(ヒンディー語)をはじめ、地域ごとに独自に発展した12の映画産業を持っている。一昨年から昨年にかけて世界的にヒットした映画『RRR』(S・S・ラージャマウリ監督)は、インド南部テランガーナ州のハイダラバードを製作拠点にする、テルグ語の映画だ。

 

実在の2人の英雄を主人公に

 

 『RRR(蜂起と咆哮と反乱と)』の舞台は1920年、反英独立運動が盛り上がるイギリス植民地時代のインドである。

 

 主人公の一人コムラム・ビームは、アーディラバード地方の森に住む先住民族ゴーンド人で、虎をも打ち負かす力を持つコミュニティの守護者だ。ビームは、大英帝国インド総督のスコット夫妻に連れ去られた妹のマッリを奪い返すため、ムスリムの修理工を装って古都デリーに潜伏する。

 

 ビームは、もう一人の主人公ラーマ・ラージュが総督指揮下のインド人警官とは知らないまま、協力して一人の少年の命を救ったことから親友となる。ビームは、虎や狼たちとともにマッリが軟禁されている総督邸を襲撃するが失敗し、警官ラーマと激しい格闘の末に捕らえられ、彼から鞭打ち刑を受ける。ラーマはその功労によって特別捜査官に昇進する。

 

 ところがラーマには、人にはいえぬ秘密があった。ラーマの父はイギリスを叩き出すためにインド人民兵を組織した人で、その途上で命を落とすが、ラーマは父の遺志を受け継いで村人全員の武器を持って帰るため素性を偽って警察の中に潜り込んでいたのだ。

 

 ビームの処刑の日、ラーマは決意してビームを救い、2人は祖国の解放のために英軍に立ち向かう。最後には「太陽の沈まぬ大英帝国」の文字が血に染まり、2人は目標を達成した。

 

映画が蘇らせた虐殺の歴史

 

 この映画の中で、インド人の宗主国イギリスへの憤りは、その植民地主義の残酷さの描写にあらわれている。

 

 スコット夫妻はマッリを、貴婦人のサロンで芸を見せる奴隷として連れ去る。まるで野生動物の動物狩りを楽しむように。母親がマッリをとり戻そうとし英軍兵士が銃を構えるが、スコットは「褐色人種の命は銃弾1発にも値しない」といい木の棒で殴り殺させる。

 

 ある村では、天候不順で不作になり、植民地政府への地税が払えなくなると、村長が見せしめのために殺された。また別の村は、イギリスに反抗的だとして、英軍によって女子どもを含めて皆殺しにされた。これらの描写は、平和的な集会を開いていたインド人約2万人に対し、英軍が広場の入り口を塞ぎ、弾が尽きるまで無差別に発砲したアムリトサルの虐殺(1919年)を、インド人全体に想起させたという。

 

 これとは対照的に「母なるインドを守れ」と立ち上がるビームやラーマは、エネルギッシュで誇り高く、インド人の自立と尊厳を示している。

 

 印象深い場面の一つは、ナートゥ・ナートゥのダンスの場面だ。総督の姪ジェニーから社交クラブに招待されたビームとラーマ。彼らが気にくわないイギリス人のジェイクは、タンゴやフラメンコをやってみせて「褐色の虫けらどもに芸術は理解できるか?」といい放つ。ところがビームとラーマは、インドの切れ味鋭い野生のダンスを披露してその場を圧倒し、イギリス女性たちを心酔させた。歌と踊りでは負けないという感情の爆発を見るようだ。

 

 また、ビームが捕らえられ、広場の真ん中で鞭打ちの刑を受ける場面も忘れがたい。総督夫妻は鞭打たれたビームがひざまずき、命乞いをすることを求めるが、打たれても打たれてもビームは立ち上がる。警官ラーマの目には、親友を痛めつけなければならない苦悩の色が浮かぶ。そのときビームは「コムラム・ビームよ」と歌い出す。流血しながらも、母なる大地の女神を歌い、「不滅の炎となってくすぶり続けろ」と歌うその歌は、広場に集まった数千の民衆の心に火を付け、彼らは反乱に立ち上がった。

 

祖国解放への民衆の闘い

 

 最後の場面、武器をラーマの村に届けた後、ラーマから「褒美になにがほしい」といわれたビームは、「読み書きを!」と答えた。それから100年が経ち、民衆の長いたたかいによって暗黒の時代に終止符を打ったインドは、いまや世界一の人口と世界第5位のGDPを持つ新興国の代表となった。その現代インドの人々がこの映画に拍手喝采している。歴史が受け継がれていることを思う。

 

 なお、コムラム・ビームとラーマ・ラージュは、20世紀初頭にインドに実在した民族の英雄である。ただし、2人が出会っていた事実はない。それぞれが数百人を組織して武装蜂起し、何年もたたかったが、最後には捕まり、復活を恐れた軍隊に遺体の形がわからなくなるほど銃撃されたという。しかし現在、ラーマの蜂起は民衆の間で村芝居となって受け継がれ、ビームの武勇は民謡となり、反乱のスローガン「水と森と大地を」は先住民運動のスローガンとして受け継がれているそうだ。

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。