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コロナ撒き散らす米軍基地 沖縄 ノーチェックで入国し基地外行動も無規制

 沖縄県内の米軍基地で今月に入ってから100人を超える新型コロナウイルス感染者が判明し、在日米軍基地が国内有数の感染ホットスポットとなっている実態が浮かび上がっている。現在、日本は米国からの外国人の入国を原則禁じているが、日米地位協定によって、米軍関係者は米軍基地を経由することでノーチェックで入国できるうえ、米軍は基地内での感染情報や医療体制に至るまで「非公表」としているため、入国制限やPCR検査などの防疫措置はおろか感染経路の特定すらできない。自治体や民間を挙げてコロナ感染抑止に傾注するなかで、国内規制の抜け穴である米軍基地からのウイルス拡散は、沖縄をはじめ日本全国民にとって最大の脅威となっている。

 

 在沖米軍基地での集団感染(クラスター)は、7月7日の普天間飛行場(宜野湾市)、9日のキャンプ・ハンセン(金武町)の海兵隊基地で始まった。新型コロナウイルスの潜伏期間は2週間以内とされており、感染から発症までは平均5日間程度とされているため、米軍が発表した確定日から逆算すると7月4日の米独立記念日を前後して感染が広がった可能性が高いと見られている。

 

コロナのクラスターが起きたキャンプ・ハンセン

 沖縄県が両基地における計61人の感染確認を明らかにしたのは11日。在日米海兵隊は8日に公式フェイスブックで「普天間基地で複数の感染確認」を発表していたが、沖縄県に対して所属や人数について公表しないよう口止めしており、公表すればそれ以降の感染情報を伝達しない可能性をちらつかせていたためだ。これへの批判が高まるなかで、11日午後7時頃に玉城デニー知事が、ステーシー・クラーディー在沖米四軍調整官と電話会談し、米側から「県が(数字を)公表することを妨げない」との回答が得られたとして記者会見で公表した。米軍関係者に感染が広がった経緯や基地内の医療体制も含めて米軍側から県への具体的な情報提供はなく、県からの要請で米軍は両基地のロックダウン(封鎖)を発表しているものの、感染は嘉手納基地(北谷町)、キャンプ・マクトリアス(うるま市)、キャンプ・キンザー(浦添市)などさらに多くの基地に広がっている。

 

 在沖米軍基地では、3月に嘉手納基地で米軍初となる2人のコロナ感染者が確認されているが、海外から沖縄に戻ってから感染が判明したというだけで、性別、年齢、容体、渡航歴、行動範囲、居住地が基地の内か外かなどの感染対策に必要な情報は「非公表」とし、国内での行動経路も明らかにしていない。

 

 日米政府は2013年1月の日米合同委員会で「在日米軍と日本国の衛生当局間における情報交換について」(2015年に修正)をとり交わし、「人の感染症」については「指定感染症」「新感染症」など67の疾病を挙げ、「確認した場合は、可能な限り早期に通報する」ことで合意している。ところが米国防総省は3月30日、米軍内における基地別や部隊別のコロナ感染者数などの情報についてすべて非公表とする方針を発表。感染二例目までは米軍医療機関から沖縄県保険医療部に通報があったものの、その後はすべて各基地や部隊のフェイスブックでの発表だけとなり、その実態は闇の中に置かれてきた。

 

 12日から13日にかけても、新たに普天間飛行場で32人、米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)で1人の米軍関係者の感染が明らかになり、嘉手納基地もフェイスブックで新たに1人の感染を明らかにした。3月末からの沖縄県内での米軍関係者の感染者数は99人となり、沖縄県内(米軍関連以外)の累計感染者数(13日現在・148人)をこえる勢いで急速に拡大している。

 (追記:15日にキャンプ・ハンセンで新たに38人の感染が確認され、米軍関係者の感染者は136人となっている。)

 

地位協定による特権

 

 第一の問題は、日米地位協定によって米軍が日本の入国管理の外側に置かれていることにある。

 

 日米地位協定には「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される」(九条)と定めており、平時・有事にかかわらず、沖縄をはじめ、佐世保、岩国、横須賀、横田、三沢などの在日米軍基地を介した人やモノの出入りについて日本政府は関与することができない。そのため感染の有無だけでなく、いつ、どれだけの人が、どこから入国し、基地外を出歩いているのかを日本政府も地元自治体も知りえず、国内の検疫体制の大きな抜け穴となっている。

 

 それに対して日本政府は、非常時における入国管理強化や情報開示を要求するどころか、「在日米軍の中で感染症の対応が今厳しくおこなわれており、日本外から入ってくることに対して、適切に隔離その他の手続きがおこなわれている」「(米国防総省に従い)詳細情報の発表を差し控えたい」(河野防衛大臣)と米軍発表を丸呑みにしてきた。

 

 現在、米国は感染者が348万人をこえ、世界でも群を抜いたコロナ感染大国となっている。日本政府は4月、米国を入管法に基づく入国制限対象地域に指定し、米国全域からの外国人の入国を原則禁止としている。日本人に対しても検疫所長が指定する場所(自宅、宿泊施設等)での14日間の待機と、国内の公共交通機関を使用しないこと、また全員にPCR検査と保健所などによる定期的な健康確認を実施する追加措置をとっている。

 

 米国でも、米国疾病予防管理センター(CDC)が、日本の危険情報度合いをレベル3(渡航中止勧告)とし、日本から米国への渡航者には入国後14日間にわたって宿泊施設や自宅などで待機するよう命じている。

 

 ところが、米軍基地だけは国による入国管理の対象外であるため、関係者の検疫措置はすべて米軍に委ねられ、それを基地の外から検証することはできない。今回の沖縄でのクラスター発生も、米軍の人事異動にともなって米シアトルから嘉手納基地経由で入ってきた海兵隊員が感染源と見られているが、詳細は明らかになっていない。この到着便は岩国基地や横田基地にも着陸しており、13日には米軍岩国基地でも複数の基地関係者のコロナ感染が確認された。

 

 しかも沖縄県内では、海兵隊員が入国したさいに実施する14日間の隔離を、広大な米軍基地内ではなく、北谷町の民間リゾートホテルを7月1日から2カ月借り切っておこなう計画だったことが明らかになり、「寝耳に水」だった周辺住民や地元自治体からの猛抗議によって中止となった。北谷町の野国町長は10日、沖縄防衛局に対して「詳細な説明がおこなわれないままに米軍施設外の町内ホテルで隔離措置が実施されたことは断じて容認できるものではない。町民の感染防止策の努力を無にするもの」と厳しく抗議し、隊員の基地内での隔離を求めた。

 

独立記念日の乱痴気騒ぎ

 

 在日米軍基地ではこの間、基地内での「厳しい行動規制」とは対照的に、基地外では無規制ともいえる状態が横行していたことが明らかになっている。

 

 在日米軍は4月15日に公衆衛生上の緊急事態宣言(7月14日まで有効)を発し、米軍関係者による基地外のバー、ナイトクラブ、カラオケボックス、パチンコなどの遊興施設への立ち入り禁止をはじめ、基地内外での格闘技系スポーツやコンサート、フェスティバルなど観客が密接するイベント開催を不許可としていた。だが、6月中旬には警戒レベルを五段階中の二番目から三番目のBに引き下げている。沖縄県内では六月、基地外のバーでの米海兵隊員による暴行事件や飲酒による事故や事件が多発しており、基地外での飲酒規制などが野放図に緩和されていたことがわかる。

 

 海兵隊内での感染が判明した後も、隊員やその家族は国内における検疫を受けることもないまま市街地にくり出すだけでなく、米軍が若手隊員の福利厚生活動(特典付きボランティア)の一環としておこなっている民間老人ホームやビーチなどでの清掃、保育園訪問、日本人を基地内に招いた英会話教室のさいにもマスク等の防護具を着用していなかったことが在日米軍の公式SNSに投稿された映像から判明している。

 

 感染情報についての公式の情報提供がなく、イベント情報が在日米軍のSNSに投稿されたり、「米軍人が訪れた」との情報が入るたびに、県はその施設の消毒や店舗従業員のPCR検査に追われる。

 

玉城知事

 玉城知事は「日本政府が米軍に対して国民の命を守るためにとるべき協議や措置などを事務方任せにしているのではと憂慮している。どれだけの数の外国からの人が、どこから国境をこえて日本へ入り、どのようにして、どこへ移動しているのか。まったく情報がないなんて異常としかいいようがありません」(13日)と抗議のコメントを発している。

 

 さらに米独立記念日にあたる7月4日には、米軍関係者が沖縄県うるま市勝連の肝高(きむたか)公園のビーチでバーベキューイベントを開催していたこともクラスター発生の原因となった可能性が指摘されている。

 

 同公園では火を使ったり、大音量の音楽を流すイベントは許可されていないが、主催者は公園管理者である県中城湾港分室に使用許可をとらず、昼から夜にかけて七時間近く米軍人や日本人を含む数百人を集めてイベントを実施。当時投稿されたSNS動画には、さながら「野外クラブ」のように大音量でダンスミュージックを流し、大人数が肩を組みながら大声を発する光景が映っており、周辺住民から騒音被害の通報を受けた警察が駆けつけて解散させる騒動となった。同様のイベントは県内各地で目撃されており、感染拡大を懸念する声があがっていた。

 

 ところが米軍側は感染経路にかかわる一切の情報をひた隠しにし、在日米海兵隊は9日、SNSに「米国防総省ガイダンスおよび運用安全に関するガイドラインに基づき、また感染者らのプライバシーを保護する観点から、米海兵隊太平洋基地は今後、報道機関に対して新型コロナウイルスの新たな感染ケースに関する声明を発表いたしません」とのコメントを掲載している。

 

 世界最大の感染発生国から、入国先政府による検疫も受けずに大量の兵士が送り込まれ、自粛規制も敷かずに市中にウイルスをまき散らし、集団感染が判明しても情報を公開しないという異常事態が続いており、沖縄のみならず日本国内における公衆衛生上の最大の脅威となっている。また沖縄県は、重篤化した感染者は原則、海軍病院などの基地内施設に収容するが、症状が悪化すれば県内の医療機関に受け入れるよう米軍側から要請を受けていることを明かしている。

 

 米軍は、世界に点在する米軍基地および米軍関係者の新型コロナ感染情報を「軍事機密」として明らかにしていない。4月には米軍原子力空母四隻の艦内で集団感染があいつぎ、そのうち空母「セオドア・ルーズベルト」は乗組員1000人以上が感染して機能不全となり、実態を告発した艦長が解任される騒動にもなった。日本の横須賀港に停泊中の空母「ロナルド・レーガン」でも集団感染が発生しているが、感染者の所属部隊も人数についても公式発表はない。

 

 今月13日には在韓米軍でも韓国に到着した米軍関係者11人の感染が判明するなど、米軍経由で世界各地にウイルスを拡散している実態がある。

 

 感染拡大抑止のためには、沖縄のみならず国内の全米軍基地を封鎖し、国内法による入国・移動規制と検疫を徹底させなければならず、それすら拒む「ならずもの軍隊」は即刻本国に撤収させることが日本にとっての安全保障といえる。「未曾有の危機」といって国民に対して規制や自粛を求めながら、米軍の無法ぶりは見て見ぬ振りを決め込む日本政府の隷属的な姿勢とともに、日本の安全保障には目もくれず、占領地として横暴に振る舞いながら国民の生命を脅かす在日米軍の性質が改めて浮き彫りになっている。

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