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米軍肩代わりの日本版海兵隊 東アジアの緊張下で進む日本全土の米軍基地化

 トランプ大統領来日と時を同じくして、安倍政府が離島侵攻専門部隊である水陸機動団(日本版海兵隊)配備の動きを本格化させている。来年3月には朝鮮半島に近い相浦(あいのうら)駐屯地(佐世保市)に配備し、2020年代前半には沖縄の米海兵隊基地キャンプハンセンにも配置する調整を加速している。日本への水陸機動団新設は、在日米軍再編によって自衛隊司令部と米軍司令部を統合し、日本全土の若者を米軍指揮下で地上戦に投入する計画の総仕上げである。安倍政府は国会内の数の力で「改憲」を急ぎ、憲法に「自衛隊」を明記しようとしているが、それはいずれ徴兵制にもつながる危険性をはらんでいる。

 

 今年7月、「南西諸島の防衛」を掲げて創設準備が進む「水陸機動団」の中核をなす西部方面普通科連隊が、「水陸両用基本訓練過程」を公開した。ほぼ20代の隊員約80人がエンジン付きボートで出動したり、駐屯地内にあるヘリ水没を想定し座席が水中でひっくり返っている施設から脱出する訓練などを5週間にわたっておこなった。

 

 水陸機動団は「侵攻された離島を奪還する」専門部隊で、米海兵隊がモデルだ。来年3月に約2100人で発足し、相浦駐屯地には司令部と2個の水陸機動連隊が配置される。キャンプハンセンには2020年代に発足する新たな水陸機動連隊(約600人規模)が配置される予定である。

 

 数年前までは自衛隊の訓練も装備も「専守防衛」仕様であるため、一方的に攻撃したり、他国で刃向かう者を制圧し占領する訓練などなかった。だがその基本姿勢を公然と覆し、攻撃専門部隊の運用に踏みきった。それは部隊配置、訓練、装備などがすべて「攻撃・侵攻」仕様へ変わることを意味する。

 

 2013年の防衛計画大綱では、水陸両用車など、これまでなかった新規装備の導入を明記した。その後、陸上自衛隊はアメリカからオスプレイを17機調達したり、水陸両用車「AAV7」を52機調達することを決定している。相浦駐屯地に近い佐賀空港(佐賀県)にオスプレイ配備を計画するのも、「普天間基地返還」と欺き、キャンプハンセンと比較的近い辺野古にオスプレイが使う新型ヘリ基地を作ろうとするのも、日本版海兵隊配備の動きと無関係ではない。日本全土を米軍の指揮棒で動く出撃拠点に変貌させてきた動きは、ここ数年にわたる米軍再編計画の進行を見れば一目瞭然となっている。

 

アジア重視格段に強化

 

 米軍再編で真っ先にアメリカが着手したのは、米陸軍第1軍団司令部(ワシントン)のキャンプ座間(神奈川県)への移転など、アメリカと日本の司令部機能の一体化だった。もともとワシントンにあった米第1軍団司令部は陸軍以外の軍隊も指揮できる新司令部・UEXとなって、キャンプ座間に移転してきた。陸上戦にとどまらず、海軍、空軍、海兵隊との共同作戦などあらゆる戦闘に対応する体制で、守備範囲は中東から北東アジアをふくむアジア全体へ広がった。朝鮮半島有事では、在韓米軍(2万5000人)も指揮する。ここへ陸自が特殊作戦を専門とする「中央即応集団」司令部を設置した。いずれ陸自主力となる部隊で、水陸機動団もこの指揮下に入ることになる。米陸軍第1軍団司令部と中央即応集団司令部の一体化は、陸自部隊がまるごと米陸軍の下請・傭兵として組み込まれたことを意味する。

 

 在日米軍司令部と第5空軍司令部のある横田基地には、航空自衛隊の中核である航空総隊司令部と関連部隊が移転し、日米の共同統合運用調整所を設置した。調整所は米軍と自衛隊間の情報共有や共同運用強化を図る部署だ。航空自衛隊も司令部ごと、米空軍司令部の指揮下に入っている。

 

 そして海軍は米第7艦隊の原子力空母が横須賀を母港化しており、米第7艦隊司令部、在日米海軍司令部と海自の自衛艦隊司令部がすでに一体化している。陸・海・空すべての米軍司令部が自衛隊を直接指揮する体制が米軍再編で整ったといえる。

 

 続いてアメリカが着手したのは朝鮮有事を軸にしたアジア重視体制を格段に強めることと、自衛隊に米海兵隊の役割を肩代わりさせることだった。この増強の要の一つが、厚木の空母艦載機が移転する米海兵隊岩国基地だ。同基地には米軍再編にともなって普天間基地から空中給油機15機が2014年までに移転し、沖合拡張による大滑走路2本体制を整え、空母接岸可能な軍港機能も備えるなど基地強化に拍車がかかった。愛宕山には260戸もの米軍住宅を整備し、4000人規模の米兵や家族の受け入れ体制を作り、外国人が溢れる町へ様変わりしている。

 

 厚木基地からはすでに原子力空母レーガンの艦載機である早期警戒機E2D5機が移転し、今後主力の戦闘攻撃機FA18スーパーホーネット四八機や電子戦機EA18Gグラウラー六機など合計59機の艦載機が移駐する計画だ。空母艦載機は能力維持のために夜間離発着訓練(NLP)を頻繁におこなうことが必要であり、岩国周辺の離島でNLP基地を確保する構想が懸案事項として水面下で動き続けている。

 

 さらに空母艦載機の岩国移転が完了すれば、60機の艦載機が横須賀へ飛来して出港する形態だけでなく、原子力空母が岩国周辺に寄港して艦載機を乗せていったり、空母が先に目的地へ移動して、そこへ艦載機が飛来するなどさまざまなケースがあり得る。それは岩国が否応なく空母打撃群の最前線基地となることを示している。

 

 さらに岩国基地には今年1月から8月にかけて、米軍がF35ステルス戦闘機を16機配備した。F35は垂直離着陸が可能で弾道ミサイルの発射を探知する高性能レーダーを備える。このF35は空母艦載機ではなく、最近、佐世保基地配備となった超大型強襲揚陸艦ワスプ(長さ257㍍、幅32㍍)の艦載機である。ワスプは輸送機や攻撃ヘリなど軍用機を31機搭載でき、兵員約2200人の輸送が可能な小型空母レベルの艦船である。それは岩国基地が120機以上の戦闘機を擁したうえに、空母複数体制にも対応可能な極東最大の出撃拠点として大増強されていることを表している。

 

日本全土の米軍基地化

 

 岩国と連動して米海軍佐世保基地の増強が加速している。佐世保基地は空母と艦載機を中心とする空母打撃群と違うが、強襲揚陸艦と水陸両用攻撃部隊で構成される精鋭の急襲攻撃部隊である。1991年の湾岸戦争で強襲揚陸艦が効果的だったとして、米軍はその直後に佐世保をワスプ級強襲揚陸艦の母港にした。その後もジャーマン・タウンやフォート・マクヘンリーなど3隻の水陸両用艦を佐世保に常駐配備した。佐世保の米軍部隊は小回りの効く急襲部隊として、太平洋・インド洋の監視にあたり、米韓演習にも出動した。

 

 この佐世保が、日本版海兵隊の元祖となる水陸機動団の発足地として最終段階に入っている。それは米軍佐世保基地の急襲上陸作戦を肩代わりする自衛隊部隊が米軍主導で育成されていることを示している。この間、アメリカが原子力空母を動員して朝鮮半島付近で軍事挑発を続けてきたが、仮に朝鮮やアジア諸国で一触即発の事態が起きれば、自衛隊の水陸機動団を前面に押し立て、アジア人同士の戦争を煽っていくのがアメリカの戦略の一環である。

 

 そして沖縄では那覇港湾施設、キャンプキンザー、陸軍貯油施設、キャンプ桑江、キャンプ・フォスター、普天間飛行場の全面返還や部分返還をうち出し、海兵隊の兵員約8000人と家族約9000人のグアム移転を進めている。米軍再編計画発表時は「沖縄の基地を縮小し、米兵要員も減らす」といいことずくめの宣伝をしたが、実態はまるで違っていた。米軍とその家族だけ沖縄よりずっと朝鮮半島から離れた後方のグアムに移転させ、そのかわりに沖縄配備の自衛隊を日本版海兵隊として訓練し、米本土防衛の矢面に立たせる内容だからだ。

 

 しかも今後は「返還」した土地管理の費用はみな日本政府に押しつけ、返還地のかわりに新基地を作らせたり、自衛隊基地を米軍が自由に使う体制を加速した。米軍再編では陸上自衛隊にキャンプハンセンを使わせて訓練をする「便宜」を図り、普天間基地返還のかわりに辺野古などに新基地建設を進めてきたが、最初からすべて米軍の要求に基づく計画だったことがあらわになっている。

 

 嘉手納基地をはじめとする米軍機の訓練移転も「騒音や負担の軽減」のためではなかった。実際は訓練移転以上にF22やオスプレイなどもっと最新鋭の戦闘機が次次に飛来した。これも千歳(北海道)、三沢(青森)、百里(茨城)、小松(石川)、築城(福岡)、新田原(宮崎)など全国の自衛隊基地で米軍による飛行訓練の前例をつくり、日本全土の自衛隊基地を米軍基地化することが狙いだった。

 

 米軍再編の目的は米軍の司令部に自衛隊司令部を組み込み、沖縄や各地の個別問題をバラバラにとりあげて分断しながら、日本全土を根こそぎ米軍基地として再編し直すことにある。その具体化として日本の若者を米軍の下請軍である日本版海兵隊に仕立て上げ、岩国基地や佐世保基地を軸にして戦地に投入する出撃体制を強化している。

 

 とくに九州・山口地域の増強が目立っているのも特徴だ。米軍再編の動きと連動し、馬毛島(鹿児島)への空母艦載機訓練場建設計画が浮上している。与那国島に自衛隊が沿岸監視部隊を150人配置し、今後、ミサイル部隊を宮古島(800人)、石垣島(550人)、奄美大島(550人)に配置する計画も動いている。

 

 日本国内ではこうした米軍再編計画と連動して、自衛隊や米軍による土地強制接収などを認めた有事法や秘密保護法、「集団的自衛権」を認める安保関連法があいついで整備された。いずれも「対テロ」「国防」を掲げて実行された法律だが、現実にはアメリカの戦争を日本が肩代わりするものにほかならない。このことによって、「アメリカから守ってもらえる」のではなく、日本社会全体がアメリカの指揮棒で戦争に駆り出される危険、ミサイルやテロの報復を受ける危険が高まっている。今年6月には一般市民の会話や行動を平時から警察が監視し、反政府的な言動があれば逮捕・処罰できるようにする国民弾圧のための共謀罪法まで強行した。

 

 こうした戦争準備の延長線上に日本版海兵隊の創設・配備がある。現在、安倍政府は「改憲」を強行し、憲法で自衛隊が認められていることを明記し、緊急事態条項の創設を狙っている。緊急事態条項を創設すれば、首相権限が格段に強まる。首相が「緊急事態宣言」を出して国民の財産を有無をいわせず没収したり、反政府的な動きを力でねじ伏せることも可能になる。日本を戦争と破滅に導く対米従属政治に対して、直接行動で明確な国民の意志を突きつけることが避けられない情勢になっている。

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