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「永田町ひっくり返す先頭に立つ」 れいわ新選組、勝負の参院選 失われた30年にピリオドを 山本太郎、山本ジョージの訴え

(2025年7月7日付掲載)

れいわ新選組の街宣に集まった人々(4日、東京・新橋駅前SL広場)

 参院選が3日公示され、投開票日(20日)に向けて17日間の選挙戦がスタートした。れいわ新選組(山本太郎代表)は、北海道、宮城県、千葉県、東京都、埼玉県、神奈川県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県、福岡県の選挙区に12人、全国比例に12人、計24人の公認候補者を擁立し、議席(改選2議席)の倍増に向け、ギアを上げて選挙戦に挑んでいる。山本代表は「日本の〝失われた30年〟は、消費税増税と働き方の破壊の結果」であり、有権者の手で「この政治をひっくり返す」ことを訴え、東京都内を皮切りに九州・沖縄、中国、近畿、北陸、東北など全国各地を駆けめぐる予定だ。第一声を含め、選挙序盤戦の山本代表の訴えと、れいわ新選組公認候補として東京選挙区から出馬した山本ジョージ氏の訴えを紹介する。

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街頭演説をするれいわ新選組代表・山本太郎参議院議員(4日)

 山本太郎 皆さん、生活は苦しくはなっていないだろうか? 賃金が上がりまくって何の問題もないという人がどれだけいるだろうか? 多くの方々はそんな状況にはない。厚労省の国民生活基礎調査では、国民の6割が「生活苦しい」といっている。子どものいる家庭の65%が「生活が苦しい」。そして、国民の6人に1人、高齢者の5人に1人、ひとり暮らし女性の4人に1人が貧困だ。高齢者女性になれば2人に1人、ひとり親家庭では2つに1つが貧困だ。みんなの生活がこんな状況で景気が良くなるわけがない。

 

 給料が上がっているといわれるが、たとえば中小企業でどれだけ賃上げができただろうか? 商工会議所によると、74・3%の中小企業で賃上げができたという。だが中身を見ると、そのうち59・1%が防衛的賃上げだ。つまり、利益が上がらず黒字になっていないが、赤字でも無理やり給料を上げるしかなかった企業が数多い。景気が良くなって賃金が上がっていくという循環になっていない今、このように中小企業が無理をして賃金を上げていくことをいつまで続けられるのかという話だ。

 

 国民は物価高だけで苦しんでいるのではない。日本は先進国で唯一、30年も不況が続いていたところに新型コロナがやって来た。コロナから立ち直る前に物価高になった。いわば三重苦だ。

 

 この三重苦に多くの人々が溺れている、溺れかけている状態にあることをわかっていながら、150日もかけて開かれた先の国会では一体何が議論されたか? どうも溺れかけているみたいだけど、浮き輪を投げる? やめとく? どんな浮き輪を投げようか? 誰に投げる? あの人は泳げそうだな、この人はどうだろうか……モタモタモタモタと何をしているのか! という話だ。

 

 その結果どうなったか? 野党多数の状態にありながら、150日間もの国会の中で今の皆さんの状況を少しでも変えるようなことは何一つ前に進まなかった。4月の終わりになって出てきたものは何か? 選挙前にぶら下げるニンジンのように「食料品だけ1年のみ消費税を減税いたします」(立憲民主党や維新)。それで実際に皆さんの生活がどれだけ楽になるかといえば、平均的な世帯で5300円。ないよりマシだが、それで今の生活が立て直せるか? 無理だ。「2万円差し上げます」(自民党)。ないよりマシだが、それでなんとかなる状況ではない。なぜなら苦しみの原因は、物価高だけではないからだ。

 

 その認識が国会あるかといえば、ない。口を開けば「現在の物価高に対しまして、皆さんの賃金が上がるような経済の循環を……」。寝言は寝ていえ! という話だ。物価高だけではなく、30年の不況にコロナが来て、そこに物価高が加わった状況から国民をどう救うのか。そして中小零細企業が事業を継続できる状態にするために政治が何をすべきかを国会で激しく議論すべきなのだ。そんなことはほとんどおこなわれていない。目先の物価高だけに問題が矮小化されている。

 

 2024年と2024年度、中小零細企業はバタバタと潰れた。負債額1000万円以上の倒産だけで1万件以上だ。倒産件数が過去最高にのぼっている業種は少なくとも28業種。飲食店はもちろんのこと、農家、酪農家がつぶれている。病院、診療所、老人ホーム、介護事業者や訪問介護事業所もつぶれている。歯医者もつぶれている。子どもの居場所である放課後クラブもだ。ありとあらゆる業種で過去最多の倒産件数をマークしている。

 

 何がいいたいか? もう、すぐそこまで迫っているのだ。あなたが医療を受けたくても受けられないような未来が。介護を受けたくても受けられない未来。そして、コメ不足どころではなく、コメ以外さえも手に入らなくなるような状況が近づいている。

 

 この危機感が政治にあるか? ない。そこに緊張感を持ち込ませるためには、国会の空気を読まずに揺らし続ける勢力を拡大する必要がある。

 

税を歪め労働環境を破壊した30年

 

新宿駅東口での街宣(5日)

 「手取りを増やす」。そういう政党もある。でも中身を見ると、手取りを増やすのは給与所得者だけ。今が普通の世の中だったら、それが悪いとはいわない。だが今は30年の不況、コロナに物価高。世界のトップともいえるような経済大国だった日本が、今や極東の転落国家の仲間入りをしつつある状況の中で、経済を立て直すというならば、給与所得者もそうでない人も使えるお金を増やすことなしにこの国は再生できない。

 

 そのためには、まずは国が軍資金を渡す必要がある。減税し、子ども手当を増やす。社会保険料を減免する。悪い物価高が収まるまでの現金給付だ。あなたの消費が誰かの所得に回っていくという循環を最大化していきながら、徹底的に底上げしていく以外にこの国を立て直す方法はない。

 

 れいわ新選組が訴えているのは、消費税の廃止だ。そんなことは無理だ、できるわけがないとよくいわれる。でも、明確にその理由をのべられる人がいるだろうか?「社会保障の財源だから消費税をやめるわけにはいかない」とテレビや新聞、国会ですり込まれ、みんながそう思っている。はっきりいって、それは大きな間違いだ。

 

 消費税が上がるたびに法人税が下げられ続けてきた。つまり、あなたが払ってきた消費税は一部しか社会保障に回していない。消費税収入の約61%が大企業減税の穴埋めに使われているといえる。だから、30年払い続けても社会保障は悪くしかなっていない。あなたが払った消費税は、あなたに返ってくるものではなく、組織票や企業献金で企業側から議員バッジを与えてもらった奴らが、彼らに恩返ししていくために30年続けた税金だ。だから不況の中でも上げられ続け、そのたびに国は壊れた。

 

 消費税とは、消費と投資にかける罰金だ。不況時に消費税を上げるマヌケな国家は、日本以外には存在しない。それによって一人一人が使えるお金がさらに減っていくことが進行した。さらに何が始まったか? 働く人々の環境破壊だ。非正規労働者を四割までに増やした。非正規労働とは、いつでも首が切れる、給料が安い、忙しいときだけ働いてくれという働き方。そのような資本家の身勝手な振る舞いをそのままルール化したのだ。

 

 大企業や資本家がコストである税金を払いたくないから「俺たちの税率を下げ、みんなから取れ」というのが消費税。「もう一つのコストである人件費を削り、もっと安く働かせたい」というのが労働環境の破壊だ。これによって大企業が貯め込んだ貯蓄は毎年過去最高を更新し続けた。

 

 非正規労働者が頭打ちになった先におこなわれたことは何か? 今度は、低賃金で使える外国人労働者の流入だ。それによって労働者の置き換えが始まっている。つまり、人手不足に陥った産業では、給料を上げることさえ叶わない状態になってしまった。たとえば介護、そして農業。農家は「時給10円」という過酷な状態にあり、介護は全産業平均に比べて給料が10万円も低い。人の命を預かる大切な仕事、この国に欠くことができない仕事なのに離職率も高い。「目の前の人たちにために頑張らなければ…」という現場の思いだけでなんとか繋がっている業界だ。あまりにもおかしい。あなたのことは目の中にまったく入ってないのが今の政治だ。だから「見ろ! この国に生きている人々を見ろ!」というような勢力を拡大する以外にない。

 

少数でも本気でやれば政治は動く

 

 消費税が大企業を支え、豊かな一部の人たちをより豊かにするために使われている税だとしたら、あなたはこれからも消費税を払いたいだろうか? そこに何の意味があるだろうか。消費税を廃止すれば、平均的な世帯で年間30万円ほど使えるお金が増える。月に直せば2万5000円。この物価高では、最低そのくらいは必要だ。

 

 それだけではない。中小企業にとって消費税の支払いは非常に重い。法人税は赤字なら納めなくてもいいが、消費税は借り入れをしてでも納めなければいけない。そのため税の滞納のうち54・8%が消費税だ。30年の不況で中小零細企業がバタバタつぶれている。

 

 中小企業はこの国に存在する企業の9割以上を占める屋台骨だ。そして、労働者の7割が中小企業で雇用されている。そんな中小企業の首を絞めるような税金をこの先も続けるのか? 誰のために? 社会保障のためではなく、大企業減税の穴埋めのためだ。軽減税率のアメ玉をもらった新聞も、大企業スポンサーに買われているテレビも本当のことはいわない。

 

 大企業はここ数年で過去最高益を更新し続けている。大企業が12年間で貯め込んだキャッシュは139兆円だ。そして世界で富裕層、超富裕層が二番目に多いのが日本だ。彼らがこの2年間で増やした資産は105兆円。あるところはさらに増やすが、ないところはさらに弱る。これのどこが強い国なのか? 次に光を当てなければいけないのは、この国に生きる人々の側だ。

 

 「失われた30年」を40年にしないためにも徹底した経済政策が必要だ。その第一歩として消費税は廃止する。廃止すれば、当然景気は良くなる。景気が良くなれば、税収が増える。その経済成長こそが一番大きな税収(財源)になるのは当然のことだ。力を貸していただきたい。

 

 「れいわさん、落ち着いて。あなたたちは数が少ない。消費税廃止なんて無理ですよ」とよく嘲笑されるが、ちゃんと政治の動きを見てほしい。2019年に山本太郎が一人で立ち上げたのが、れいわ新選組だ。私たちは1丁目1番地に消費税廃止を掲げたが、国会では誰からも相手にされなかった。みんな冷笑だ。

 

 「おいおい山本君、30年以上も国民が当たり前に払ってきた消費税をいまさら廃止するなんて、誰もできると思うわけがないだろ」「大丈夫か? お前さん。小沢一郎さんとずっとやっていった方がいいんじゃないか?」「一人で旗揚げするなんて、お前の政治家人生は終わりじゃないか」と散々いわれた。

 

 あれから6年。たとえ小さな存在であったとしても国会の中で揺らし続けた。そして、国会の外の皆さんと一緒に揺らし続けた。その結果、どうなったか? 旗揚げから6年たった今参議院選のマニフェストでは、自民党以外のすべての政党が消費税減税を政策に入れている。数が少なくても動くのだ。風穴は開く。その穴を広げることができる。その力を与えてくださったのが皆さんだ。私たちのバックには、宗教も大企業もいない。この国の未来を憂う人、不安に思う人、そういうお一人、お一人が横に広げてくださったことによって、ゼロから14議席にまでなることができた。

 

 そして今、世論調査を見てみれば、消費税減税と消費税廃止、合わて7割以上の国民が「とっととやれ!」と望んでる。風は吹いている。あと一息だ。その先頭に立って戦う者たちに力を貸してほしい。比例の投票用紙には、全国どこでも、ひらがな3文字「れいわ」とお願いしたい。

 

ものづくり大国の再興 国が産業を支えろ

 

 さらに経済政策として大きくやらなければいけないことは、国内製造業の底上げだ。この30年でこれが空洞化した。れいわ新選組が目指すところは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を取り戻すことだ。ものづくり大国日本の再興だ。

 

 アメリカでは、バイデン政権時に「バイ・アメリカン」政策をとった。国内でつくられた製品を国がどんどん買い上げた。年間87兆円ものお金を突っ込んで、ヘリコプターのブレードからオフィス家具に至るまで片っ端から買い上げた結果、年間100万人の新規雇用が生まれ、そして安定した賃金のもとにその雇用が拡大した。国が後ろ盾になって支えることで、弱っていた製造業が力を取り戻したのだ。

 

 30年不況が続く日本では、これを徹底的にやる必要がある。日本はものづくりで世界の最先端にいたが、30年も消費と投資が奪われ、空洞化。品物を買う人も、それを作る側の人たちも一番安い値段を競い合うような低価格競争社会になった。これでは社会にお金が回らない。まず、一人一人の購買力を上げていく。これは個人や民間の努力ではできない。だから国からの軍資金が必要であり、それが減税、社会保険料の減免、年金受給額を上げたり、やれることの幅は広い。

 

 まずはあなたが元気になって必要な物を買えるようになれば、その消費は誰かの所得に変わり、それが国の経済を回していく。その当たり前の循環を取り戻すためにも徹底的な底上げをやらせていただきたい。

 

 食料生産に関しても、農業が強い国は農業を国防として捉えている。国を滅ぼすのにミサイルはいらない。食べ物を止めればいい。まさに今の日本が当てはまる。農業従事者の70%以上が高齢者だ。5年後、10年後にこの国に農業は存在するのか? といわれる状態だ。農家が農作物を作るコストを払えないほどの赤字を背負わなければならない状態に置かれているからだ。

 

 この面でもアメリカは、自国の食料生産を維持するため莫大な農業予算を注いでいる。アメリカの年間農業予算を一人当りの農業従事者に換算すると約2000万円。日本は95万円だ。圧倒的な差がある。アメリカは農務省予算の7割を使って、低所得者向けの食料支援策としてクーポンを配布する。その額は20兆円を超えている。低所得者を支えるだけでなく、それによって需要を創出して生産者を守っているのだ。

 

 それくらいの状態にすれば、農業にも労働力移転が起きる。食べていけるからだ。同じように介護にも国が手厚い給付をすることで労働力移転が起きる。そんなこともせずに、安い賃金で働かせるために外国人労働者を引っ張ってくる移民政策などクソ食らえだ。外国人技能研修生とは本来、母国の発展のため力を尽くすために学びに来た人々を。それを安上がりな労働力と見なしたのが日本の政財界だ。よその国の労働力を奪ってくるな。この国において大切な産業をおろそかにするな、といいたい。

 

 今の社会は今で終わるわけではない。この先もずっと続いていく。一部だけが肥え太り、大多数が困窮するような社会ではなく、持続可能な形で国家戦略を立てることが必要だ。

 

与野党茶番の国会に緊張感を

 

「自分はまだ大丈夫」という人も、あなたのラッキーはいつまで続くだろうか? この国は一つの船。この国の経済は一つの船。あなたが大丈夫でも、他の人たちが沈んでいけば、その船自体が沈む。あなたの「大丈夫」も続かないと考えた方がいい。

 

 国民の6割が苦しんでいる国。そこに手を打たない国。中小企業が年間1万件以上もつぶれている国。それでも減税にすら前に進めない国。そんな国の政府は、もはや政府とも呼べず、そんなものは政治とも呼べない。今、私たちの目の前で政治のようなものに見えるものは、ただの強盗、私はギャングだと思っている。この者たちから国を取り戻させてほしい。

 

 60兆円もの軍拡には、大した議論もなく大金をポンと出す一方で、30年間、先進国の中で唯一、経済不況が続く日本の底上げには手を打とうともしない。消費税廃止くらい、とっととやるべきだ。将来世代云々の話ではない。今の世代がなんとかならなければ、未来など来ない。ここまで食いつぶされてきたのだから、そろそろみんなでひっくり返そうということだ。

 

 政治には最大のビジョンが必要になる。その一番大きなビジョンとして、私たちは「生きてるだけで価値がある社会」を掲げている。そんな甘ったれたこと、そんなお花畑みたいなことは無理だと思うのなら、あまりにもひどい社会の中で、一人一人が毒されている証拠だ。今の社会はどうか? 生産性でものが語られる。何かを生み出さなければ、何かの役に立っていなければ、あなたが存在することは意味がないとされる。そんな地獄をこれ以上拡げたくない。

 

 1年間で3万人、2万人という人たちがみずから命を絶っている。子どもたちの自死が過去最多。大人にとって地獄の社会は、子どもにとっても地獄だ。このような地獄を体験させられる国。これを変えていく力を持っているのはあなただ。あなたこそがこの国のオーナーであり、最高権力者だ。総理大臣なんて雇われ店長に過ぎない。あなたの力がなければこの国は変えられない。

 

 れいわ新選組は、国会の中で一番尖った存在だ。国会のなかで一切忖度せず、空気は読めるが、空気は読まない。突破力だけが私たちの自慢だ。

 

 与野党合わせて不甲斐ないとしかいいようがない、ダルダルにたるみ切った国会、居眠りだらけの国会に緊張感をもたらせるのは、れいわ新選組だけだ。私たちのような小さな政党が大きな政党とガチで正面喧嘩していくためには、あなたの一票を横に拡げていただく力が必要になる。この国の復活のためにも、皆さんのために突っ込んでいく。大暴れさせてほしい。数が少なくてもやれることがある。この力をさらに大きくするために、ぜひあなたの力を貸していただきたい。

 

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■命を軽んじる政治、終わりに

   山本ジョージ候補(東京選挙区)の訴え

 

演説するれいわ新選組公認候補の山本ジョージ氏(東京都選挙区)4日

 この国の壊れた政治は、この国の福祉をもボロボロにした。その粗くなった網の目から毎日、毎日こぼれ落ちる人が増えている。そんな社会を必ず変えたい。そのために私を東京から国会に送っていただきたい。

 

 私は36年前に都議会議員になって2期務め、その後、衆議院議員を2期務めた。しかし、その中で秘書給与流用事件という罪を犯した。私の元秘書が対立候補陣営と組んで、秘書給与の流用を告発して事件になったという意味では、政治の世界でよくある権力争いに負けたということかもしれないが、すべて私の不徳の致すところだ。反省している。

 

 私は東京地検特捜部から逮捕され、裁判では争うことなくすべての罪を認め、1年6カ月の実刑という一審判決を受け入れ、控訴審を争わず刑務所に入った。覚悟はできているつもりだったが、内心戦々恐々しながら、果たして刑務所の中にはどんな悪党がいるのかと思いながら入所した。だが、刑務所の実態はまったく違うものだった。

 

社会的弱者で溢れる刑務所

 

 受刑者の多くが、社会の中で被害者として生きてきた社会的弱者だった。重い知的障害がある人、重い精神の障害がある人、認知症のお年寄り、家族との関係が切れたお年寄り。障害があるから罪を犯しやすいということではまったくない。だが、心身になんらかのハンディキャップを負い、日本の社会で生きづらい人たちは、すぐに貧困状態に陥ってしまう。そういう人たちが軽微な罪を犯すことによって刑務所の中に「保護」される仕組みになっていたのだ。

 

 認知症になったら、徘徊してるだけで住居侵入罪となり、身元引受人がいなければ刑務所に入れられる。知的障害者が公園で一人でいた。大声を上げた。近所の学校から通報され、警察が駆けつける。暴れる。振り回した手が警察に当たる。これで公務執行妨害で逮捕だ。身内がいたり、支える福祉やお金があれば、示談や罰金、始末書だけで終わるが、貧困状態にある人については刑事司法は甘く見てくれない。徹底的に調べられて、最終的に刑務所に行くことになる。

 

 この冷たく厳しい社会で、キモい、のろま、生産性がないと蔑まれて、そのうち貧困に陥り、たとえばおにぎり1個を盗む。これは良くないことだが、何週間もろくに食べず、最後におにぎりを1個盗んで、それが2回続けば懲役刑だ。だから彼らは、罰を受けている、罪を償っているというよりも、厳しい社会から刑務所の中へ避難して、なんとか生きながらえているという状態だった。受刑者の7割がそういう人たちだった。

 

 私は日本の最後のセーフティネットは生活保護だと思っていたが、実際はそれが刑務所であり、少年院であり、当時の婦人補導院だったのだ。

 

 そのことに衝撃を受けた私は、刑期を終えて出所後、障害者福祉の現場に行き、彼らと一緒に暮らしながら、一方で厚生労働省や法務省に行ったりしながら、刑務所にいる障害者の問題、つまり本来は福祉が支援をしなくてはならない人たちが放置されている問題の解決のために調査し、国会の法務委員会等でも政策提言をさせていただいた。それによって刑務所のあり方が変わったり、厚労省にもさまざまな制度を作ってもらった。この20年で私が、出所後の就労や社会復帰のお世話をさせていただいた元受刑者の方、あるいは支援に携わらせていただいた生活困窮者の方は2200人をこえる。

 

「自己責任」で急増する介護殺人

 

 だが、人々の暮らし向きは良くならないどころか、生きづらさを抱える人たちにとって、ますます過酷な社会になっている。貧富の格差がどんどん広がっている。福祉がまったく機能していないがゆえに加害者になるケースも増える一方だ。要は介護殺人だ。

 

 日本全国で起きる殺人事件の被害者のうち、実に7人に1人が、介護・介助に疲れた身内によって命を奪われていることをご存じだろうか? 先進国のなかでこんな国は日本以外にない。

 

 私も含めてどの家庭にも介護問題はある。介護をする側に回ったとたん、急に社会との関係が断絶する。これまで続けてた趣味もできなくなる。孤独感に苛まれる。介護している認知症の高齢者が同じことをくり返すため、介護する側がノイローゼになる。お金もなくなり、福祉のサービスが受けられない。特養施設も何年待ちかもわからない。そして、ついつい殺めてしまった。こんな人がたくさんいる。

 

 国は保険料は取るが、高齢者福祉のサービスや施設の予算は次々にカットされ、施設もなくなっていく。そして、行き場を失った人たちが、家族によって介護され、家族が共倒れしてしまっているという実態がある。

 

 先日、自殺未遂をした60代の女性と話をした。「なぜ死のうと思ったのか?」と問うと、「実は10年前まで親の介護をしていた。ついストレスが溜まって、一緒に死のうかと思ったこともある。親を看取った後、今度は私が脳梗塞で倒れて下半身麻痺に近い状態になった。まだなんとか歩けるが、いずれ娘に介護を頼むことになるかもしれない。そうなれば、親を介護していたときの自分のような苦労を娘にもかけてしまう。だったら私はみずから命を絶とうと思った」という。採算性、自己責任。そんな価値観で社会がどんどん悪い方へ向かうなかで、居場所を失った人たち、生きる力が弱った人たち、ハンディキャップを負った人たちは、私たちの10倍、100倍も生きづらくなっている。

 

 今、福祉事業所も介護事業所も給料が上がるどころか、国は基本報酬をどんどん削り、障害者の就労のための施設にも採算性を求めて赤字の施設には助成金をカットしている。これからどんどん潰れていく方向だ。受刑者支援の中で聞いた声でも、日本の福祉施設に入っても、刑務所以上の刑務所なのだといわれる。障害者施設も知的障害者の施設も運営予算はカツカツだ。実はあの「津久井やまゆり園事件」を起こした法人にも、私は職員研修で話をしに行ったことがあるが、職員がみんな疲弊していた。障害者の人権というのなら、障害者をお世話する人の人権も守らなければ、絵に描いた餅だ。しかし、そこにまったくお金が回らないのがこの国だ。

 

 そんな人たちも包み込む社会を作る。その先頭に立っているのが、れいわ新選組だ。一人一人を援助しても社会全体を変えなければ、もう間尺に合わない。命を軽んじる政治にピリオドを打つ。そして、生きるための闘いとして今回の選挙に挑んでいる。

 

 そんな思いで東京選挙区から立候補した。れいわ新選組の一員に加わり、即戦力となって日本の政治を変えて見せる。

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この記事へのコメント

  1. ヨコヤマミノル says:

    山本ジョージの著書お薦めです
    図書館で借りれますので一読してください
    山本太郎が東京選挙区で選んだ理由がよくわかります

    菅直人の当時の事務所の杜撰な経理も垣間見れます

    出獄記 (一般書)

    山本 譲司

    お薦め
    新潮ドキュメント賞受賞『獄窓記』の著者が20余年にわたり見つめ続けた日本の刑務所。
    社会の映し鏡である刑務所は時代と共に変化していく。
    死刑囚を収容する東京拘置所と名古屋拘置所、受刑者の3人に1人が無期囚という熊本刑務所、
    障害者や高齢受刑者が増え続ける和歌山刑務所、60カ国以上の外国人受刑者がいる府中刑務所、
    未成年者が服役する川越少年刑務所……。受刑者、刑務官、福祉関係者など様々な視点をつないで描く刑務所の物語。

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