いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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SNSと怪文書

 もう30年近くも前のこと、山口県下関市では世襲で衆院選挙区をものにした安倍晋三のデビューと関わって、「ケチって火炎瓶」なる事件が起こった。安倍事務所の私設秘書だった男が工藤会のヤクザに報酬を約束し、下関市長選の際に政敵だった古賀敬章について「朝鮮人」とレッテルを貼り、「北朝鮮に送金している」等々と誹謗中傷する怪文書をばらまく挙に及んだ。ところが支払われた金額が約束された報酬額に満たなかったため、怒ったヤクザが安倍邸や安倍事務所に火炎瓶を投げ込んで騒ぎとなったのだった。

 

 選挙で怪文書がばらまかれ、残り2、3日で形勢をひっくり返したり、あるいは相手陣営を貶めたりという手口は以前の選挙ではままあることだった。男性候補なら女性関係の醜聞を暴露されたり、利権構造を指摘する内部告発など手口は様々。そうして情報戦で世論を宣伝扇動して得票を動かしていくという手口である。いま考えるに、まだインターネットもなかった30年前の「ケチって火炎瓶」事件なんて、人間が手足を使って労力を費やして怪文書をばらまいていたし、ネット上の「炎上」と違って火炎瓶を投げ込まれた安倍邸は本当に炎上していた。原始的ではあろうが、はるかに手はかかっていたように思うのだ。まだ可愛げがあるというか、たかだか古賀敬章を「北朝鮮」といって貶めるために汗をかいていたというか、いかにも安倍晋三的な発想のレッテル貼りというか…。


 突然なにがいいたいのかというと、昨今のネットやSNSを通じた世論誘導や誹謗中傷を考えたとき、それはもう進化して、「ケチって火炎瓶」時期と比べてもあまりにも手軽すぎやしないか? と思うのである。スマホやパソコンからボタン一つで投稿し、インフルエンサーを通じて拡散させたり、巧妙に世論を宣伝扇動していく情報戦の武器として、規模もスピード感もまるで桁違いなのである。怪文書のビラが友人知人の手から手へ渡っていくというようなとろいものではなく、スマホからSNSで拡散するのもボタン一つでフォロワーたちにあっという間である。


 情報伝達の効率化、広域化、拡散スピードの速さという点では確かに進化ではある。しかし、そこには根拠の乏しい情報やデマ、フェイクも入り交じり、ある意味カオスな言論空間にもなっている。溢れすぎである。なかには自民党から資金提供されていたDappiのような情報操作のプロが巧みに世論誘導を仕掛けたり、外国人労働者へのヘイトを煽って人々の感情を高ぶらせたり、いまどきはヤクザに頼まなくても企業に対価を支払ってアウトソーシングする時代である。宗教団体からの資金を背景に組織的に世論誘導をはかっている連中だっているだろう。そうして玉石混淆の情報の大洪水のなかで、なにがなんだかわからないような混沌とした世界が意図的に作り出され、真実が見えにくい構造にもなっている。意図せず影響されたり信じ込まされたり、「ネットで真実に目覚めた!」系の人がバキバキの目つきをしてあらわれたり、影響力はバカにできないものがある。


 全否定でも全肯定でもなく、SNSにはメリットもあるが、負の側面も多いにあると思うのだ。押し寄せてくる情報のなかで、それらすべてが真実ではなく石ころだってゴミだって混ざっているなかで、現代人は共感したり、あるいは違和感を感じたり批判的に受け止めたりしながら、滓を捨てて粋をとっていくほかない。すぐ鵜呑みにして脳味噌が染められるというのではなく、世論誘導に持っていかれない術を身につけることも必要なのだろう。

 

 さて、この参院選を見ていると、SNS界隈はどこからカネが出ているのだろうかと思うほど大暴れで情報戦を仕掛けている勢力がいるではないか。右派宗教団体が姿を変えて飛び跳ねているのかと思うような光景である。作り上げられた胡散臭い熱狂のからくりは、いずれ明らかになるのだろう。


武蔵坊五郎             

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