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無謀なエルサレム首都認定

 米大統領トランプがエルサレムをイスラエルの首都に認定し、大使館を移動させると表明したことを受けて、アラブ諸国のみならず世界中で批難の声が高まっている。これでは中東和平どころか、イスラエルに反発するパレスチナやアラブ諸国の怒りに火を付け、この地域を巡る血なまぐさい紛争を煽るようなものだからだ。国連すら「イスラエルの首都」とは認めていない土地を、イスラエルに与するアメリカが一方的に「首都である」と認定し、これまでの落としどころであった「2国家共存」という棚上げ案を破壊するというのである。

 

 エルサレムは聖書の預言者アブラハムにルーツを持つユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地として知られ、ユダヤ教の聖地である「嘆きの壁」、イスラム教の聖地である「岩のドーム」、キリスト教の聖地である「ヴィアドロローサ」はきわめて近距離に隣接している。ローマ帝国の支配や十字軍の遠征など歴史的な変遷もあるが、オスマン・トルコが崩壊した第1次世界大戦以後はイギリスの統治の下に置かれ、この三枚舌外交の産物としてユダヤ人国家たるイスラエルが建国され、今日にいたるアラブ世界の矛盾が形作られている。第2次大戦後の1947年には、国連パレスチナ分割決議によって国連管理下の国際都市と定められたが、その後も第1~3次中東戦争など衝突を繰り返し、エルサレムは自分たちの首都であると主張するイスラエルと、パレスチナ国家の樹立を要求するアラブ側は激しく対立してきた。圧倒的な軍事力でパレスチナの民衆を殺戮し、軍事支配を強めるイスラエルに対して、パレスチナ人民はインティファーダ(民衆蜂起)で抵抗してきた。

 

 今回のトランプによる首都認定は、中東でも影響力を失いつつあるアメリカが、いったい何を血迷ったのかと思わせるような無謀さを感じさせる。米軍を何十万人と派遣したところで、アラブ世界の反発は抑えようがないことは歴然としている。また、アメリカにはそのような戦争を遂行する国力など残されていないだろうに、あえてイスラエルとアメリカが孤立化する道に足を踏み込んでいるのである。この無謀さは、あえて和平の「仲介役」としてのポジションから手を引く、つまり手じまいとしての炎上を伴った「首都認定」なのか? はたまたトランプには戦略など何もなく、思い上がりが青天井で、ユダヤロビーはじめとした自分の支援者へのアピールなのか? 等々、その評価は様々だ。いずれにしても、イスラエルが聖地を我が物にするなら、必ずアラブ世界が反発し、紛争が激化することは疑いない。喜ぶのは中東を世界最大の市場にしている武器商人だけである。

 

 世界が反発を強めているなかで、「トランプを支持する」等等の馬鹿げた発言だけはしないよう、安倍晋三なり大臣たちの口を塞がなくてはならない。   吉田充春

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