いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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消費税の実質税率は上がっている

 岸田政府がコロナ禍や急激な円安に伴った物価高騰に対する国民生活への緊急支援として、総額29兆円の総合経済対策に乗り出すと大風呂敷を広げている。ところがこれ、よくよく聞いてみると、国民の手元に届くであろう“支援”は「一世帯当り4万5000円の負担軽減」(来年1月~9月までで換算)程度であり、五輪開催やこれまでのコロナ対策で浮き彫りになってきたのと同様に、中抜き企業がガッポリと利益を懐にしまい込んでいくスキームであることが判明して批判を浴びている。


 国民に対する直接支援ではなく、電気会社やガス会社、石油卸といった大企業に補助金を投入するもので、要はその経営を支えることによって電気代、ガス代、ガソリン代の価格を抑制するというトリクルダウン方式である。誰のための支援かはいうまでもない。これらの大企業の経営基盤強化策にほかならないのである。下々(しもじも)の国民はそのおこぼれで滴り落ちてくる雫でも舐めておれというもので、現状では何がどうなっていくのかも極めて曖昧。果たして「一世帯当り4万5000円」相当なのかも怪しい。


 コロナ禍が深刻さを増していた一昨年、経済が急速に冷え込むなかで、安倍政府が慌てまくして国民一人当り10万円を配ったのは、それなりに困っていた国民生活の支えにはなった。それが例え自民党の人気とりであろうと、困っている国民生活の底上げになったならば良しとされる政策である。夫婦2人家族なら20万円、子育てに励んでいる4人家族なら40万円というように、一定のまとまった金額が真水で注がれることで少しばかりの支えになった世帯は少なくなかったし、そのことについて「けしからん!」という世論などなかった。むしろ、日頃はとられるばっかりな側からすると「もらえるものはもらっとけ」と大歓迎でもあった。税金として奪われ続ける総額に対して、そもそも一人10万円などこれといってありがたがるほどの額でもないのだ。


 ただ、その後の円安と物価高が深刻になるなかで、「おかわり」を必要とする状況にはさらに拍車がかかっているのに、岸田政府ったら梨の礫(つぶて)で、なぜ1回こっきりで何らの手立てもしないのか――という世論も高まっている。物価高騰はとりわけウクライナ情勢が激化した今年に入って進行しており、何を買うにも2~3割価格上昇などあたりまえなのが現実だ。それに対して、余りにも政府すなわち日頃から経済的に困っていない連中の反射神経が鈍いのである。


 スーパーに買い出しに行くと、それまでトータルで3000円くらいかな? と思っていた感覚でレジに向かうと、会計で4000~5000円といわれて飛び上がるなんて場面もしばしばだ。畑で野菜を作っている知人がたまにくれるお裾分けの有り難さが身に染みる昨今でもある。ただでさえ物価上昇で食料品すら値上がりしているのに、それに対して1・1倍でかかってくる消費税も本体価格に上乗せされてこれまで以上に持っていかれるようになった。1000円に対してかかっていた消費税が100円なのに対して、同じ品物が値上がりによって1200円になったとして、かかる消費税は120円であり、まるで税率12%になったのと変わらない。それらが合わせ技で効いた結果、3000円程度と思っていたのが4000円ごえのお買い物になったりするのである。


 「総額29兆円の経済対策」のうち、いったいどれだけの金額が国民生活の底上げに寄与するのかは釈然としない。それだけの金額があるなら、第1回目の一人10万円支給の実績からして、一人20万円支給が可能であり、国民に対する直接的な真水投入が最適であることは論を俟たない。あるいは消費税を0%にしたって、昨今の物価高騰を補うには足りないくらいである。物価高とセットで実質税率は上がっているともいえる消費税の悪質さについて、目を向けるべきだと思う。

 

武蔵坊五郎     

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