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トランプを豚箱に放り込め

 新年早々にデルタフォース(米軍特殊部隊)がベネズエラの首都カラカスを急襲してマドゥロ大統領夫妻を拉致するというとんでもないニュースが飛び込んできた。それはかれこれ30年以上も前にパナマのノリエガ将軍が米軍に捕らえられた際の映像とも酷似していて、「前代未聞」というよりは「またアメリカがやりおった…」と思わせるものだった。独立した国家に武力攻撃をしかけて大統領や要人を連れ去る、あるいは殺害するという行為は通常ならば主権侵害も甚だしく国際法上もあり得ないが、アメリカは圧倒的な軍事力でもって歴史的にそんなことばかりやってきた国である。アジェンデ、ノリエガ、フセイン、カダフィ、その他にCIAが陰に陽に関与して拉致殺害してきた要人等々、あげていけばきりがないほどである。

 

 「逆らったらどんな目にあうかわかっているのか?」の見せしめとしてあえて斬首作戦をやり、台頭するロシアや中国、グローバルサウスの国々などドル支配の枠組みから抜け出そうとする世界に向かって脅しをかける。今回のマドゥロ拉致について世界中が「国際法違反だー!」と連呼したところでトランプ本人はどこ吹く風で屁とも思っていないし、むしろ居直っている。ブーイングを浴びたプロレスラーの如く、脚光を浴びているような調子で本人は自慢気なのである。こうして敵対勢力には「反テロ」などと叫びつつ、みずからのテロは「麻薬取締」等々の正当化する理屈をひねり出して良しとする――。「法の支配」「力による現状変更は許されない」などと綺麗事をいってきた世界たるや、ダブルスタンダードも大概である。

 

 「マドゥロ大統領拘束の狙いはなにか?」。テレビをつけると識者たちが真顔になって討論をしているが、そんなことは深い分析や憶測、想像をしなくてもトランプ本人があけすけに語っている。世界最大の埋蔵量を誇る石油資源をアメリカの石油メジャーが奪い返し、ベネズエラはアメリカが運営する――すなわち植民地支配するというものだ。逆らえばマドゥロ奇襲どころではない攻撃を加えるとロドリゲス副大統領を脅している有り様である。

 

 ベネズエラの石油資源を巡っては、米メジャーを叩き出してチャベス政権のもとで国有化を強化した経緯があり、それは貧困撲滅に力を注いできた同国の国家運営にとって欠かせぬ財政的基盤となってきた。精製が難しい特殊な原油とはいえ埋蔵量は世界最大である。その他にも金やレアアースなどの埋蔵量も豊かで、ベネズエラがこうした資源をいかしながら経済発展を遂げ(アメリカによる経済制裁下にありながらGDPは中南米のなかでも飛躍的に伸びていた)、グローバルサウスとつながって存在感を増すことを阻止し、追い出されたはずの米メジャーはじめとした米国企業が再び力ずくで奪うというものだ。資源略奪の植民地化であり、むき出しの帝国主義である。トランプをはじめとした侵略者の側は、ベネズエラは「元々オレたちのもの」くらいに思っているのである。

 

 「アメリカの裏庭」といわれてきた中南米は、モンロー主義のもとで長年にわたってアメリカから植民地支配されてきた歴史がある。そして各国で流血を伴った反米闘争がくり広げられた末に、近年は多くの左派政権が誕生してきた。それは過酷な植民地支配への反動であり、搾取収奪によって貧困をよぎなくされてきた各国で民衆によって支えられ、揺るぎない基盤を持ったものだ。ベネズエラとて血なまぐさい闘いの末にアメリカ支配勢力を叩き出し、チャベスから続く今日のマドゥロ政権が侵略者アメリカに真っ向から対峙してきた。何も知らない日本人にとって地球の裏側の貧困国家かと思いきやマドゥロ政権下における経済発展はすさまじく、同じく反米を旗幟鮮明に掲げる中南米各国やグローバルサウスのなかでも影響力を発揮する存在となっていた。だからこそ我慢がならず、くさびを打ったというのが今回の事件の狙いであろう。ベネズエラのみならず世界各国に対する脅しでもあるのだ。ただ俯瞰(ふかん)してみると、資本主義国として落ちぶれゆくアメリカの死にあがきのようにも見えるのである。

 

 目下、国際法違反など屁とも思っていない男に向かって、「国際法違反だー!」と何回連呼したところで虚しいだけである。イスラエルのネタニヤフとて同類で、国連がなにをいおうとお構いなしである。野蛮な帝国主義がむき出しの暴力によって支配する世界において、彼らの殺戮や暴走を力ずくでも止めさせる新しい世界秩序、世界各国による力関係を再構築することが急がれている。そのうえで豚箱に放り込まれなければならないのは、マドゥロではなくトランプである。

 

武蔵坊五郎                  

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