いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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長門市長選で起こった大波乱

 桜を見る会の騒動の傍らで、首相の選挙区(山口4区)でもある長門市の市長選(17日)で大波乱が起き、山口県内の政治関係者のなかではどよめきが起こっている。自民、公明推薦の安倍派の現職・大西倉雄(元県議、日置町出身)が3選を阻まれ、新人で元市議の江原達也氏(日置町出身)が当選を果たしたからだ。地元では市議会でも18人中17人が現職陣営の応援に回り、地元政財界のボスたちもこぞって大西支援でまとまっていた。それだけでなく近隣自治体からも安倍派の前田晋太郎下関市長や藤井律子周南市長が決起集会などに押しかけて応援し、安倍事務所筆頭秘書の配川某がつきっきりで指揮棒を振るっていたというのに、まさかの落選という結果を突きつけられたのだった。誰もが大西安泰と見なしていた選挙は、実は水面下で批判世論が根強く、徹底的な草の根選挙によって江原陣営が押し上げられ、とくに「安倍派」にくくられてきた女性たちや若手の反乱ともいえる様相を呈したのが特徴だった。投票率はこれまでよりも高く、有権者のなかで静かに盛り上がっていたことも伺わせた。

 

 長門市といえば、合併した油谷町はそれこそ安倍晋三の祖父である安倍寛の出身地であり、今回の選挙で江原陣営を支えた人人のなかには、「安倍派といっても安倍寛に源流を持つ生粋の安倍派だ」と豪語してはばからない人も少なくない。安倍晋三の安倍派ではなく、安倍寛の安倍派なのだと――。その違いや意味については、地元に精通していない人には恐らくわかりにくいかも知れない。その辺の事情を丹念に取材している青木理著『安倍三代』を読めば幾分理解も早まるだろうが、地元の人人にとって、安倍寛と安倍晋太郎までならまだしも、そこからの安倍晋三は明らかに違いがあるのだ。第二次大戦の渦中に平和主義と非戦の立場を貫き、東条英機を批判して国会でたたかった安倍寛について、地元の人人は尊敬し、息子である安倍晋太郎についても支えてきた。東京生まれ東京育ちの3代目、何なら母方の祖父である岸信介を尊敬し、安倍寛の孫というより、岸信介の孫でありたいのだろう時の首相に対する複雑な思いが古い人たちのなかにはある。それは昨今の安倍派に投機して、桜を見る会でフィーバーしているような連中とはタイプとしてもまるで異なるものがある。

 

 市長選をひっくり返した力は、いわゆる「反安倍」というような単純な代物ではない。深刻な基幹産業である水産業の衰退に直面し、人口減少が著しいなかでもがき苦しんできた長門の住民たちにとって、停滞した大西市政をどうにか変えたいという思いが充満しており、「安倍派でござい」といってポストに座っているだけでは屁の突っ張りにもならないという危機感が背景にあった。それが安倍晋三の安倍派だろうがいい加減にせい! という力が下からつながり、筆頭秘書が奔走しようがどうにもならなかったのである。下関もしかり。安倍派も色色である。 武蔵坊五郎

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この記事へのコメント

  1. 「長周新聞」といふ地方紙が頑張つてをられることを知り、拝読し、感心しました。この「武蔵坊」さんの記事もよいですね。
    鹿児島には、御紙のやうな反骨の地方紙はなささう・・・残念ながら・・・封建・男尊の風習から脱皮できないのか、<忖度・フェイク>全盛か、と嘆くばかり。

    少し歴史を繙いてみればわかるやうに、日本の政治を悪くしたのは、幕末から明治以来も、薩長(長薩)で、例へば、長は松陰の、薩は西郷の、不自然な神格化から解脱することなくては、世界の、普通の民主レベルに達しなと確信します。すべての認識に、全うな論理と科学精神が必要でせう: 故・松原正氏は、「知的怠惰は道徳的怠惰」といふ名言を遺したのだが。

  2. 痛快ですね! 安倍の足元が揺らぎ始めた兆候でしょうか? 青木理さんの「安倍三代」を読みたいと思いつつまだ読んでいませんが、ぜひ読みます。これが安倍衰退の始まりだと、どんなに嬉しいことでしょうか?

  3. ・安倍寛(第二次大戦の渦中に平和主義と非戦)を地元の人人は尊敬

    ・息子である安倍晋太郎も支えてきた

    ・東京生まれ東京育ち3代目、母方祖父の岸信介を尊敬し岸信介の孫でありたい安倍晋三へ複雑な思いが古い人たちのなかにはある

    地元の方には当たり前でも、全国的に知られておらず初耳、目鱗って人多いと思います。
    山口県民はALL安倍晋三応援団だと誤解してました。失礼いたしました。

    ありがとうございます

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