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警察は誰を守る組織か?  下関・風力反対リーダー取締

強きを助け弱きをくじく

 「安岡沖洋上風力発電建設に反対する会」の中心メンバーのうち、16日の家宅捜索を断った1人の自宅に、20日の午後7時頃、再び私服刑事が押しかけ、パソコンと携帯電話、手帳、チラシなどを押収していった。今回は山口県警本部から来た刑事を含め総勢八人がかりで踏み込み、捜査令状「威力業務妨害及び器物破損に関する物品差し押さえ許可証」(下関簡易裁判所発行)を見せ、有無をいわせぬ捜査となった。押収品リストとしては「名刺、反対する会の会員名簿、会報」も記されていたが、そのようなものは存在しないので押収できなかった。
 
 ついに県警本部が登場

 刑事は、前田建設工業から提出された写真およびボイスレコーダーをもとに、「前田建設工業は提出した方法書をもとに環境調査をやっており、疑いのない業務妨害であり犯罪である」「器物破損についても、前田建設工業から、機材を横倒しにしたからオイルが漏れたという報告を受けている」といった。これに対してメンバーは「方法書は調査することは認めているが、県知事意見で“住民の同意を得て”といっている。住民の同意は得られておらず、業務妨害には当たらない」「押し売りが物を置いていったのと同じなので返そうとして押し問答をしている約2時間のあいだ、中身を見せることにも応じず、横にしたら液が漏れることもいわなかった。器物破損といっても証拠がなく、元から壊れていたかもしれないし、前田建設が壊したかもしれない」とのべたが、刑事は「正当な理由にならない」といって押し切った。


 山口県警が風力反対の会のリーダーたち4人を家宅捜索していることが報道された後、前田建設工業はホームページ上に見解を発表。「破損した測定機器の点検・修理代や新規購入代として、数百万円以上の多大な損害が発生している」「一般の反対住民の方から、このような悪質な妨害行為を放置すると自分たちの正当な反対活動にまで悪影響が生じかねないので毅然とした対応をして欲しいとの声もいただいていた」「これ以上の放置はできないと判断した」と記した。前田建設の見解は17日からホームページに掲載されている。

 ろくな話を聞かぬその実態

 東京を本拠地としている前田建設工業(準ゼネコン)の告訴を受けて、双方から事情を聞くわけでもなく、一方的に犯人扱いして家宅捜索や尋問をくり広げているのが山口県警である。本部主導の大がかりな捜査で、これはよほど上層部を動かす政治的な力が作用しているに違いないと大話題になっている。というより、「警察はいったい誰を守る組織なのか?」と市民の多くが問題にしている。


 日頃から守られる経験が乏しく、「おい、こらっ!」と呼び止められて自転車盗難を疑われたり、長府前田をはじめとしたネズミ取り(速度違反摘発)の「名所」で嬉嬉としている姿を見せつけられたり、豊前田や唐戸などの商店街では団塊OBたちの天下りポストをつくったおかげで駐禁取締が強化され、客が追い散らされたり、タバコ取締も天下りポスト確保事業で新設されたり、なけなしの懐からお金をとられる経験ばかりである。飲食店は“暴力団追放”ステッカーを法外な値段で買わされ、下関署の上階にはその元締めとなる組織が設置されてOBたちがふんぞり返っているとか、市民病院になるともう何年もマル暴上がりのOBが居座っているとか、警備会社にも代代天下りをねじ込んできて、近年では警視正クラスを迎え入れた某社がすごいとか、安倍事務所の秘書に云十万円渡せば免許減点をもみ消してくれるとか、とにかくろくな話を聞かない。市民生活を守るよりも、「自分たちの生活ばかり守っているじゃないか」と大話題である。


 さらに守っているのはいつも政治家やその周囲、大企業など社会でも上層に巣くっている者たちである。今年に入って川棚マグノリアで起きた婦女暴行事件は、当事者が安倍派同志会の幹部だったこと、周囲にいたのも安倍派の稲村グループであったことから一切手つかずで無罪放免となった。元市長の江島潔や疋田善丸になると、公共事業を巡る巨額見積もりや利権疑惑は山ほどあったのに何も立件されず、政治案件としてみな黙認された事実は下関の関係者ならみんなが知っている。政治絡みで最後には暴力団まで介入していた下関市立大学の問題もしかり、臭い案件には蓋をして葬ってしまった。法律に基づいて平等なのではなく、その匙加減で守られる者と守られない者が明確に区分けされ、検察も警察も巨悪を眠らせて見て見ぬ振りをするのである。「弱きをくじき、強きを助ける」をやられたのではたまらない。


 洋上風力は安倍政府のもとで経済産業省が持ち込んだ国策であり、買取価格を引き上げたのを受けて、そのお膝元で前田建設工業が矢面に立っているに過ぎない。響灘の海底深くに炭素を貯蔵するとか、その他の再生可能エネルギー・エコ利権構想を持ち込んでいるのもみな経済産業省である。前回市長選で擁立こそ失敗したものの、安倍事務所が市長に据えようとしていたのが経済産業省キャリア官僚で、青年会議所が再生可能エネルギー騒ぎをくり広げているのも、焚きつけたのは政治家である。そして前田建設工業は安倍事務所前に事務所を置き、「国策であればなんでもできる」という振舞に及んでいる。


 日本社会全体がすでに法治国家の体を成しておらず、憲法を変える前から骨抜きにしているのが安倍政府である。下関では風力に反対する者が犯罪者として扱われ、山口県警が国策に刃向かう者を非国民扱いし始めたものだから、市民は怒りを通り越して呆れている。
 警察といえば、安倍事務所で長年にわたって剛腕を振るってきた古参秘書たちが山口県警上がりで、中央から地方にいたるまで、そのつながりは歴史的に密接である。

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