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韓国からの観光客8割減少 下関港に見る日韓問題の打撃

 徴用工問題を契機にした日韓関係の悪化で訪日韓国人客の減少が続き、観光地や港・空港などに深刻な打撃を与えている。観光庁が20日に発表した10月の訪日客数の推計調査で、韓国人客は19万7300人と前年同月比65・5%減となった。韓国ともっとも近く、密接な関係を持っている下関市も例外ではなく、訪日韓国人の減少が商業や交通業に影響を与えている。

 

 下関は入国者の98・8%が韓国人で(2018年実績。クルーズ船をのぞく)、その多くが釜山と下関を結ぶ関釜フェリーで入港する人人だ。安い料金で行き来することができることもあって団体客が多かったといわれる。フェリーが到着する朝方にはバスが行列をなし、夕方出港する時間になると荷物を抱えて帰国する韓国人でフェリー乗り場はいっぱいになるというのが日常の光景だった。週末や韓国の休日などには、集団で大型バイクに乗って日本に来てツーリングを楽しむ人たちもいた。しかし、安倍政府が韓国をホワイト国から除外した7月以後、急速に減少しており、9月には前年同月比8割減まで落ち込んだ。日本人の韓国旅行者も減少している。

 

 

 おりしも関釜フェリーは50周年を迎え、10月1日~11月30日までの期間、乗船代金50%割引きキャンペーンを開催しているところだ。観光業関係者や近隣の商業者のなかで、「関釜フェリーから降りてくる人が極端に減っている。打撃が大きいのではないか」「ぽったりさん(日本と韓国のあいだを行き来する行商人)は通常営業だが、観光客の落ち込みがひどい」などと影響を危惧する声は強い。

 

 下関駅前のショッピングモール・シーモール下関内では、以前なら歩けば韓国語が飛びかい、フェリーで訪れた団体客がドラッグストアや100円均一などで買い物をしていたり、地下の食品街で購入した弁当などを食べている姿が頻繁に見られた。それが最近ぱったりと姿を見せなくなったと話題になっている。訪日客の増加に対応して、また政府の「観光立国」のかけ声の下、下関大丸を筆頭に免税対応を整えた店舗も少なくない。だが、免税売上が急増したのもつかの間、ここ最近は減少が続いているといわれる。郊外に出店したイズミなど大手のショッピングセンターやスーパーに客足を奪われるなかで、韓国人観光客は下関駅周辺の賑わいになっていたこともあり、歩く人が減少し閑散とした空気が漂っている。

 

 近隣では、山口宇部空港もここ3年、毎年冬季限定で運行していたソウル線について、エアソウルが観光客数の減少を受けて今年の運行を見送ったほか、大分空港も8月にティーウェイ航空がソウルと結ぶ定期便の運休を決め、国際線が全便運休となるなど、九州・中国地方全域に影響が広がっている。密接に関係を切り結んで来た分、影響が大きく、「韓国との関係がいつ改善するのだろうか」とみなが不安を感じている。

 

 国内メディアが大規模デモや釜山での暴行事件などを、「反日」として報道することが、日本人の韓国旅行者減少の要因になっていることも指摘されており、国内メディアの責任を問う声も上がっている。

 

 下関の場合、多くの関係者は「貿易については心配していない」と話している。IT機器製造用の精密機械の輸出は減少しているものの、これは購入するサムスン側で製品がだぶついている影響のようで、「貿易はお互いに必要な物をやりとりしているので、あまり影響があるとは思えない」といわれている。しかし訪日韓国人8割減といった状況が長引けば、じわじわと影響が広がっていくことが危惧されており、早期の関係改善を求める声は強まっている。

 

 安倍首相の在任期間が歴代最長になった理由として、前田晋太郎市長をはじめ支持者は「安倍総理の外交力」を称えている。しかしその外交の結果、お膝元の下関も深刻な影響を被っている。

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