いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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度外れた警察組織の腐敗 取り締まる権力の思い上がり

 警察官による犯罪や不祥事が後を絶たず、報道されるたびに「またか…」という感情をみなが抱くようになっている。「正義の味方」「市民の安全・安心を守るお巡りさん」の仮面を剥ぎとってみると、殺人、強姦、窃盗、盗撮、セクハラ、児童ポルノ、痴漢、売春、薬物取引、ひき逃げ、当て逃げ、詐欺、偽装・隠蔽など、近年は警察官自身がありとあらゆる犯罪に手を染めて世間を驚かせている。なぜ犯罪をとりしまるはずの機関から、社会に迷惑をかける犯罪者が次次と出てくるのか? の疑問が高まっている。
 
 警察手帳は犯罪許可証か?


 今年1月25日、大阪市住吉区のマンションで23歳の女性を殺害したことで、交際相手だった大阪府警阿倍野署勤務の26歳の巡査長が逮捕された。被害者女性と被災地・宮城で知りあい、別の女性との二股交際を続け、交際中に片方の交際相手と結婚。それを知った被害者が別れ話を切り出したことにカッとなって殺害した。


 今年の特徴 人としてのモラル崩壊

 9月には埼玉県朝霞市内の住宅でこの家に住む58歳の男性が死亡しているのが発見された。そして殺人と居住侵入罪で逮捕されたのは、埼玉県警の浦和警察署地域課の31歳の巡査部長だった。男性の自宅に侵入し、首を絞めて殺害したうえに金庫から現金を奪って逃走していた。巡査部長は今年3月まで所属していた朝霞署で、被害相談に来た女性と不倫関係になり、女性が借りるアパートの保証人などにもなっていた。自分の家庭と女性との二重生活や借金の返済に困っていたとされている。昨年10月、被害男性の父親が亡くなったさいの状況確認で男性の自宅を訪れており、その家を狙って侵入し、殺害している。


 同じく9月には、20代女性に暴行を加えたとして大阪府警の36歳現役巡査部長を含む警察関係者6人が逮捕された。事件は、昨年12月、この女性と出会い系サイトを通じて直接知りあい、交際していた32歳の元警察官(2013年3月、別の女性との関係で所属長訓戒を受け依願退職)が掲示板やラインで共謀を呼びかけ、36歳巡査部長を含む5人は5000~1万円の「参加費」を支払って参加。大阪市内のホテルで20代女性の両手をヒモでしばり、目隠しをして集団暴行し、女性が逃げ出すまで室内に七時間監禁した。しかし、大阪府警はこの32歳の元警察官を処分保留として釈放した。


 このほかにも、今年だけでも警官の不祥事や事件が数え切れないほど起きている。今年の警察犯罪の一部を見てみると、1月2日に埼玉県警の巡査が、窃盗目的で住居侵入し逮捕。7日には千葉県警成田国際空港警備隊の巡査長が女子高校生のスカート内を撮影し逮捕。19日には北海道警の札幌東署の巡査が女子高校生を押し倒して強制わいせつ容疑で逮捕されている。27日には埼玉県警の巡査部長が強制わいせつ致傷容疑で逮捕。


 2月3日には宮崎県警北署刑事一課巡査部長(34)が10代の女性の胸を触って逮捕され、5日には京都府警舞鶴署地域課の巡査(28)が市内の会社社長の自宅に黒い私服に軍手をはめた姿で侵入し、逮捕された。19日、小学4年の女児を誘拐しようとしたとして群馬県警渋川署の巡査(24)が逮捕された。21日には熊本県警熊本北署の巡査(24)が酒気帯び運転で接触事故を起こし現行犯逮捕されている。


 4月は13日に、大分県警別府署の巡査(35)が売春で逮捕され、同日懲戒免職処分となった。この警官は同性愛者のインターネットサイトを通じて知りあった17歳の男子高校生に2回にわたって接触し、現金2万円を渡してわいせつな行為をしたとされている。14日には広島県警の交番勤務の巡査長(39)が、女性の携帯電話にくり返し電話をかけて「あなたの動画を入手した。ばらされたくなければ…」と肉体関係を迫る強要未遂容疑で逮捕。24日には埼玉県警草加警察署の巡査部長(42)が自転車に乗っていた男子高校生に衝突し、そのまま逃走しひき逃げ容疑で逮捕された。


 5月16日には長崎県警自動車警ら隊の巡査が、官舎内で強姦し逮捕された。
 6月12日、警視庁駒込署の巡査長(35)が女子高生に抱きつき、スカートの中に手を入れるなどして懲戒免職処分。この巡査長は過去に3件、同様の行為をしている。13日には福岡県警小倉北署の20代の警察官が覚醒剤所持で逮捕された工藤会の組員に依頼され、別の組員に罪を被るよう手助けをして書類送検された。


 7月2日には警視庁の巡査(21)が千葉県船橋市で飲酒運転し男性にけがを負わせている。17日には、山口県警の巡査長(34)が2011年に官舎内で知人女性に無理矢理キスをしたことで停職処分となったことが報道され、同日付で依願退職している。また同日、京都府警中京署所属の20代の女性巡査が、パトロール中に当て逃げして道交法違反容疑で書類送検された。5月2日に京都市内を公用オートバイでパトロール中に軽自動車に接触し、そのまま逃走したというもの。


 8月7日には沖縄県警機動隊の巡査長(27)がパチンコ店で女性従業員のスカートの中を盗撮しようとして書類送検された。また同日警視庁の巡査(21)が飲酒運転で人身事故を起こし、同乗者に身代わりで虚偽申告させた罪で懲戒免職処分となった。14日には千葉県警の巡査長が出向先の福島の建物のエレベーター内で、同乗した女性の前で下半身を露出し、公然わいせつ行為で書類送検された。19日には、福岡県警春日署少年課の巡査長が強姦致傷容疑で逮捕。24日には兵庫県警の巡査長(29)が女子大生のスカートの中を盗撮した容疑で現行犯逮捕された。28日には兵庫県警の警察学校教官(37)がバイクの指導を担当していた女性巡査に抱きついたり体を触るなどして懲戒処分され、のちに依願退職した。29日には山梨県警の巡査(22)が飲酒運転で赤信号を無視して路線バスに当て逃げしたとして書類送検され、同日懲戒免職となった。


 9月3日には大阪府警福島署の警部(48)が8月の当直中に捜査車両を使って不倫相手の女性巡査長(33)に会っていたことが明らかになった。16日には大阪府警の巡査部長(27)が路上で30代女性の下半身を触り停職処分。18日には徳島県警の40代の警部が20代の女性警察職員にセクハラ行為をくり返したことで懲戒処分。24日には警視庁滝野川警察署の組織犯罪対策課長(52)が埼玉県内の電車内で帰宅途中の女性の下半身を触るなどして逮捕された。


 今月1日には、福岡県警の警視が詐欺未遂容疑で逮捕された。逮捕されたのは、福岡県警本部で留置管理課の57歳の管理官。今年6~7月静岡と東京に本店のある二つの銀行のキャッシュカードを使い、自分で現金を引き出したにもかかわらず、「キャッシュカードを不正使用された」と装い、銀行に補填を請求して計220万円を詐取しようとしたとされている。2日には兵庫県警の巡査長(29)が女子大生のスカートの中を盗撮し逮捕。5日には栃木県警鹿沼署の巡査(19)が今年3月に駐車中の車内からトートバッグ(5万1700円相当)を盗んだとして窃盗容疑で逮捕されている。

 犯罪撲滅のために 警察自身の自浄が必要

 警察庁のまとめによると、今年の上半期で警察の懲戒処分は132人に上っている。昨年同期と比べ7人減少したといわれているが、なかでもセクハラなどの異性に関係する事件が54人(前年同期比で19人増)と突出している。その内訳は、女性警察官の体を触るなどのセクハラ事案が16人、盗撮9人、強制わいせつ6人、ストーカー行為2人など。その他としては、窃盗・詐欺・横領などが26人、交通事故・違反が25人だった。2013年は処分された警察官が400人を軽くこえ、過去最多を記録した。その後減少傾向にはあるものの、警察官の質の低下は度をこえたものとなっている。


 団塊の世代の退職にともない毎年1万人ほどが新規採用され、現在28万人ともいわれる警察官のうち、20代、30代の若い警官が4割を占めるまでになっている。このなかで、犯罪の内容が職権の悪用といったものよりも、セクハラや強姦など人間としてのモラルに関わるもの、警察官以前に人間としてやってはならない境界線を平気で踏み越えていく者が増えているのが特徴になっている。市場原理主義が浸透する世の中にあって、警察としての使命感もどこへやら、己の欲望を満たすために犯罪に手を染めるのである。ストレスを抱えた下っ端だけでなく、警視や警視正などの幹部も同じようにわいせつ行為や詐欺行為に走っているのを見ると、悪質な人材を抱えてしまったから犯罪率が上昇したのではなく、日頃から世間を侮蔑している警察組織のなかにこそ犯罪者を育む土壌があることを教えている。世間を取り締まるばかりで、取り締まられることのない環境に身を置いた人間たちの思い上がりが、欲望を満たすために躊躇なく一線を越えていく行為につながっているといえる。そうした組織の腐敗を反映して、若い警察官が官舎内や署内で拳銃で自殺をはかる事件も年間に複数起きている。


 表に出る犯罪はごく一部で、警察というだけで処罰が甘かったり起訴されないケースも山ほどある。いまや「警察手帳は犯罪許可証」かと揶揄されるほどで、女子どもを見たら性奴隷くらいに見なしたり、市民生活のために治安を守るべき警察が、殺人事件や誘拐事件を引き起こしたり、世も末といわなければならない状況を迎えている。


 悪党がはびこる世の中にあって、政治家や権力者の重大犯罪は何一つとりしまられたことがなく、警察が銭形平次のように勧善懲悪で活躍する姿など見たことがない。テレビをつければドラマは刑事モノばかりで好感度アップに余念がないが、実際に目にするのはネズミとりに嬉嬉としている警官だったり、自転車盗難の容疑をかけて市民を「おい、こら!」で呼び止め、登録番号をせっせと照会している警官だったり、あるいは団塊世代の天下り先をひねり出すためにタバコ取締条例、駐車禁止取締条例などを行政につくらせ、取締機関でOBたちが食いつないでいたり、世間を食い物にしている姿の方が目につく。暴対法の強化によってヤクザ撲滅が進んだと思ったら、今度は飲食店や商店に警察関連団体が法外に高額な「暴力団追放」ステッカーを売りつけに来たとか、公職ヤクザのみかじめ料徴収かと思うような実態も語られている。警備会社にOBをねじ込んだり、警視正クラスを迎えた警備会社が急成長したとかは、山口県内でも耳にすることである。


 権力者の番犬が国民に牙を向け、治安維持どころかみずから破廉恥沙汰や殺人、誘拐までやってのける時代になった。社会的使命など吹っ飛んだ劣化ぶりを広く世間に見せつけている。犯罪撲滅をやるなら警察自身が我が身を自浄することが求められている。

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