いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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維新の会・橋下徹の慰安婦発言騒動 

 「強固なナショナリスト」と呼ばれる安倍晋三が首相として再登板して以後、中国、韓国、北朝鮮をはじめとした近隣諸国との衝突や緊張激化が絶えず、米国に首脳会談に行けば大統領のオバマからあしらわれ、ロシアや中東を訪問しても格下扱いを受けるなど、日本外交の機能不全と孤立化が際立ったものになっている。このなかで、最近では東京都知事が五輪招致を争っているトルコを侮辱して国際的に恥をかいたばかりだが、大阪市長も負けず劣らずで、「従軍慰安婦は必要だった」「沖縄の米軍は風俗を利用してもらいたい」、と発言して世界を驚かせている。酒場でオヤジがくだを巻いているならまだしも、政治家がわざわざ記者会見し、国内での放言癖丸出しで世界を股に掛けて恥をさらしている。維新の会といえば安倍自民党と連立与党を組むことがとり沙汰され、右傾化の急先鋒として登場したばかりだが、この連中のお粗末極まりない姿と同時に、政治の劣化が想像以上に著しいことをあらわしている。
 今回の慰安婦発言騒動の発端は、日本の植民地支配と侵略を謝罪した村山談話について見解を問われたなかで起きた。慰安婦問題について「なぜ日本だけがとりあげられるのか。慰安婦制度は世界各国の軍が活用した。朝鮮戦争やベトナム戦争でもあった。銃弾が飛び交うなかで命をかけて走っていくときに、精神的に高ぶっている集団に休息をさせてあげようと思ったら、慰安婦制度が必要なのは誰でも分かる」とのべ、「当時の状況で(慰安婦制度を)活用していたのは事実。みずからの意思でそういう職業に就いた人もいたでしょうし、現代社会だって風俗業が職業としてある」「軍の規律維持のために、慰安婦制度は当時は必要だった」という見解を示したものだ。
 さらに、「(今は)認められないが、慰安婦制度じゃなくても風俗業は必要。普天間飛行場に行ったとき、“もっと風俗業を活用してほしい”といったら、米海兵隊司令官は凍り付いたように苦笑いして“米軍では禁止している”と。建前論ではだめだ。そういうものを真正面から活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーはきちんとコントロールできない」「米軍も(慰安婦制度を)活用した。沖縄の占領時代も、日本人女性がそういう商売に携わっていたのは事実。いいか悪いかは別として、あったのは間違いない。なぜ世界で日本が非難されているか国民はもっと知っておかないといけない。軍や政府が国を挙げて慰安婦を暴行脅迫拉致したという証拠が出れば、日本国として反省しないといけないが、今のところはそういう証拠はないと政府が閣議決定(第一次安倍内閣)している」という主張である。
 その後、「軍と売春はつきもの」と擁護したのが石原慎太郎(維新の会代表)で、17日に開かれた維新の会の代議士会では、「たかじんのそこまで言って委員会」(テレビ番組)でお馴染みの西村真悟が「売春婦はまだうようよいるぞ。大阪の繁華街で韓国人に“オマエ、韓国人、慰安婦やろ”といってやったらいい」と発言し、橋下徹を援護射撃したつもりが逆に火に油を注いで騒動は拡大。即日、本人が「韓国人といったのは訂正します」と撤回し、離党届を提出。同党は除名処分を発表することになった。
 国会議員が正正堂堂と自らの主張をのべるのは構わないにしても、維新の会は代表はじめとしてみなが口にガムテープをしなければ自滅する趨勢で、右翼排外主義集団そのものの姿をさらしている。西村真悟にいたっては、新大久保で在特会が「朝鮮人を殺せ!」と叫んでいるのと大差ない思考回路の持ち主であることを露呈した。在日朝鮮人のなかにもさまざまな層がいるなかで、繁華街で見つけたら「おい、オマエ韓国人、慰安婦やろ!」と因縁をふっかけて、いったいなんの意味があるのか? どうなるのか? だけ考えても意味不明で、まともにとりあうことすらバカらしくなるような子どもじみた主張である。いずれにしても、このような脳味噌の持ち主が国会議員をしていること自体の異様さと、メディアに持てはやされて調子付いた挙げ句、こらえきれずに暴れ回るほど、政治が劣化している状況を反映している。
 橋下徹についても「日本防衛にあたってくれている米軍に感謝している」から、「米軍は風俗を利用してほしい」なら、まずは橋下徹の嫁や娘を率先して米軍に差し出すなり、風俗で働かせてからいわなければだれも納得しない。沖縄の米軍犯罪、強姦や婦女暴行が年間件数にしてもすさまじいことは事実で、その後、米軍幹部や米政府高官が沖縄問題をとり上げる橋下発言に対して「懸念」を示していることのインチキもあるものの、ならば「米軍基地を撤去せよ」という沖縄県民の主張とは違い、「風俗を利用して」と提案するところに、売国的で奴隷的な性根があらわれている。戦後、米占領軍に対して自主的に全国から売春婦を募集してあてがった日本政府とそっくりな姿である。
 世界的な反響を伴ったことから慌てたのが日本政府で、安倍首相は国会で「慰安婦の方方がたいへんつらい思い、筆舌に尽くし難い思いをされたことは心から同情する」「歴史認識は政治問題、外交問題にすべきではない」と沈静化に努めた。しかしもともと暴れ回っているのは安倍晋三の仲間たちばかりで、河野談話の見直しや、「政府が発見した資料には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」と閣議決定(07年、安倍内閣当時)した延長線上で、橋下徹が騒いでいるにすぎない。
 戦中、借金に追われて前借り証文で売買された貧乏人の娘たちや、朝鮮人女性たちが慰安婦として悲しい運命を歩んだことは消し去ることのできない事実である。半世紀以上が経過し、当時を知っている戦争体験者が少なくなっているなかで軍国主義の亡霊があらわれ、戦犯の孫が戦争の反省どころか68年前の爺さんの認識そのままに時代錯誤をやりはじめている。まるで“昭和の妖怪”が往生しきれずにさ迷っているような印象すら受ける。この政治たるや国内で強面、世界でバカ扱いされていることに大きな特徴がある。改憲を主張する勢力の自爆が始まっている。

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