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孤立する米国の軍事恫喝 世界の85%が北朝鮮と国交をもつ現実

平和的解決を求める潮流広がる

 

 国連総会の一般討論演説が19日に始まり、はじめて国連の壇上にあがったトランプ米大統領は、北朝鮮、イラン、シリア、ベネズエラを名指しして「ならずもの国家」と呼び、「米国と同盟国を守らなければいけない場合は、北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢はない」と強い言葉で挑発した。さらに、安倍首相ともども「金正恩政権を孤立させるため、すべての国が協力する時だ」と制裁への協調を訴えた。だが、中国やロシア、インド、ドイツなどの首脳は欠席し、各国からは自国の問題を棚に上げて「米国第一主義」の二重基準を押しつけることへの反感を集め、軍事恫喝路線の孤立ぶりを露呈する結果となった。


 北朝鮮における核・ミサイル開発の根本要因は、朝鮮戦争という血なまぐさい殺戮から続く米朝間の問題であり、東アジア全体を巻き込んだ戦争を回避するためには、双方の対話なしには解決できないことが世界の共通認識になっている。

 トランプは、みずからを「正義の側にいる多数」と呼び、対立する国国を人権侵害や独裁がはびこる「悪しき少数」と主張したが、世界が米国を「正義」で「民主主義」の国家と見なす根拠は乏しく、ブッシュ政府が単独行動主義でイラク爆撃に踏み切った時期と比べても求心力の衰えは隠せない。


 日米政府は、北朝鮮を国際社会から断絶した「孤立国家」と描いているが、北朝鮮との間に国交を有していない国は、日本を含めて35カ国(地域)ほどしかない【地図参照】。米国にくわえて、日本、韓国、台湾、イスラエル、イラク、フランス、アルゼンチン、チリなど、国連加盟国の15%程度だ。大半が親米政府であったり、軍事的、経済的に米国の影響下にある国国である。

 

 一方、国連加盟国193カ国のうち164カ国(85%)が北朝鮮と国交を結んでおり、その数は隣の韓国(188カ国)と比べても大差はない。北朝鮮が核不拡散条約(NPT)から脱退し、核兵器の保有を宣言した後にも、アイルランドやドミニカ共和国、アラブ首長国連邦など8カ国と国交を樹立している。


 また、イギリスやドイツ、スウェーデン、チェコ、ポーランド、ルーマニア、中国、ロシア、イラン、インド、パキスタン、キューバ、エジプト、ブラジルなど24カ国が平壌に自国の大使館を置き、相互設置のイギリスやドイツも含めて47カ国が自国内に北朝鮮の大使館を置いている。東アジアで北朝鮮の大使館がないのは日本、韓国、フィリピン、ブルネイだけであるという事実を見ても、「孤立国」という見方は現実と乖離している。世界の85%の国が北朝鮮から直接情報を入手できるルートを持っている一方で、情報源や交渉手段を米国に頼らざるを得ない側こそ「少数派」であることが浮かび上がる。最近、スペインが北朝鮮の外交官を追放する動きなどもみられるが、それも世界の支配的な動きにはなっていない。


 貿易では、9割のシェアを握る中国を筆頭に、定期便を開通させて共同の鉄道開発にも着手したロシア、鉱山開発や観光事業にも進出するイギリスなどが米朝間の軍事対立から距離を置いて経済的な実利をとり、世界的に稀少なレアメタルやタングステンなどの鉱山資源や油田開発をめぐって投資を拡大している。アフリカ諸国とも親交が厚く、今年2月に金正男が殺害されたマレーシアも、北朝鮮との間では国民が互いにビザなしで渡航できる関係だった。


 表向き軍事対抗措置をとる韓国の文在寅も「対話」への復帰を呼びかけており、最近では米国自身も豊富な地下資源の利権に目を付けて、議員団が超党派で訪朝したり、平壌科学技術大学にスタッフを送り込んでいることが報じられている。
 「米国の側か、ならずものの側か」と同調を迫ったところで、それを忖度して「制裁強化」を叫んでいるのは安倍政府くらいである。

 

米国側からしか見れぬ悲劇

 

 トランプは北朝鮮だけでなく、イラン、シリア、ベネズエラについても「ならずもの国家」と名指しした。イランについては、10年かけて核兵器開発につながるウラン遠心分離器の数を3分の1に削減し、低濃縮ウランの貯蔵量を制限するかわりに、米国がイランへの経済制裁を緩和することを約束した「核合意」(2015年)を「最悪の取引だ」と呼び、一方的な合意破棄をちらつかせた。


 これに対して、マクロン仏大統領は「協議も監視も中止した結果は、北朝鮮の二の舞になる。核合意破棄は大間違いだ」と批判。北朝鮮対応についても「言葉の応酬で圧力を強めるのは妥当ではない」「軍事解決を語ることは、多くの犠牲者を覚悟することだ。われわれがこの地域でやるべきことは平和の構築だ」と牽制した。EUのモゲリーニ外相もイラン核合意が履行されているとの認識で各国が一致していることを発表し、「イラン核合意の内容について再交渉の必要はない」と批判している。


 トランプは、反米・反新自由主義を崩さないベネズエラ政府についても「介入する用意がある」と恫喝したが、周辺の国国が同調する趨勢にはない。米国によるクーデターや軍事侵攻を経験しているブラジル、アルゼンチン、チリ、ボリビア、ウルグアイ、キューバなど中南米の近隣各国がベネズエラへの軍事介入反対を表明し、平和的解決を求めている。


 この世界の流れは、自国の権益拡大のために核軍事力で他国の主権を侵害する「ならずもの」が米国自身に他ならず、その孤立する米国の見解のみを「国際社会」とみなし、そこからしか世界を見えない近視眼的外交の行き詰まりを物語っている。

 

空席がめだった安倍首相の国連演説(20日)

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