いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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漂流する対米従属国の姿映し出す 大義なき解散劇をどう見るか

モリ&カケをごまかし 緊急事態条項盛り込む

 

国連総会で演説する安倍首相

 「大義なき解散」「加計ながし解散」「モリ&カケ隠蔽解散」等等のネーミングが飛び交い、降ってわいた解散総選挙を巡って政局が揺れ動いている。今回の総選挙は、何らかの政策について有権者の信を問うというような大義がまるでないという点で、前代未聞といわれている。安倍晋三が首相をやり続けるためには「今がチャンス」というもので、そのためには私物化政治の象徴として問題視されてきたモリ&カケ疑惑を吹き飛ばしたい、いわば「安倍晋三による自己都合解散」にも見える。しかし同時に、モリ&カケどころではない憲法9条の書き換えや緊急事態条項の創設を公約にしのばせて画策していることを見過ごすことなどできない。選挙を仕掛ける側は当然ながら「今がチャンス」「勝てる」と思い込んでいる。そして、思いついたように「教育無償化」を叫んで釣り餌にしつつ、戦争体制を強めるために利用しようとしている。これに対して、どう大衆的世論を束ねて迎え撃つかが問われている。記者座談会をもって争点を論議した。

 

腐敗堕落した政治構造を暴露


  政局の細細した話をしても仕方がないが、要するに28日に開会する臨時国会で、モリ&カケ疑惑について野党から追及されるのが嫌で仕方がないものだから、冒頭解散しようとしている。「敵前逃亡解散」だ。そして選挙が終わった10月末には、加計学園が今治市に建設している獣医学部の認可(8月は判断延期)が待っている。衆院の任期は来年まで残り1年以上あるが、このタイミングで総選挙を打てば勝てると思っている。多少議席を減らしてでも極力現状を維持しつつ、さらに四年間の実権を握りたいという判断が働いている。改憲案が自民党内でまとまっているわけではないが、首相提案でこの際押し切ろうと大慌てで公約にまとめようとしている。綿密に準備してきたうえでの解散総選挙というより、「今がチャンス!」と見なして後付けで事が動いているような印象だ。モリ&カケを振り払わないと安倍政府はレームダック(死に体)化して使い物にならない。だから解散なのだ。そういう意味では追い込まれている。


  北朝鮮騒動もあって、その度にモリ&カケ疑惑が存在感を失う関係だったが、世界的にも北朝鮮対応が山場を超えて落ち着きを見せ始めた。再び内憂すなわち国内での私物化問題に土俵を引きずり戻されるタイミングで、解散総選挙が動き始めた。まず第一に自己保身が働いている。それでわかったのは、ミサイル問題であれほど大騒ぎしてきたが、政府自身が差し迫った脅威ではないと自覚していることだ。本当に狙われて大変なら、悠長に選挙をしているような国はない。原発もすぐに停止させるのが常識だ。しかし日本政府はそれをやらない。


 ミサイル騒動を巡る日本政府の言動は整合性がないから嘘がすぐに炙(あぶ)り出される。だいたい、北朝鮮のミサイルについては、発射実験の15日前に海域担当のIMO(国際海事機関)及び空域担当のICAO(国際民間航空機関)に通告していたことがわかっている。日本政府も当然知りうる立場にあった。だから前日から公邸に泊まっていたわけだ。わかっていて早朝からJアラートを鳴らして国民を脅かし、直後に安倍晋三がテレビに登場して「国民の生命を守る!」とのべて“毅然と対応する首相”をプロモーションした。危機感を煽って支持率アップに利用した関係だ。モリ&カケでは逃げ回っていたのが、北朝鮮騒動になると嬉嬉として表に飛び出してきた。そして支持率が若干回復したのを見て「今だ!」と思ったのだろう。


  世間では、「解散総選挙ではなくて、やるべきは内閣総辞職だろうに…」と思っている人も多い。それほど、モリ&カケはみなが頭にきている。何をするにも税金をとられて生活は苦しいのに、納めた税金や国有財産がアベ友に流れていくなどあってはならないからだ。この真相究明を求める世論は根強いものがあるし、小手先の選挙テクであったり問題のすり替えで逃れられるのかは疑問だ。それこそ東京都議選の帰れコールや「こんな人たち」発言のように、街頭で権力者と大衆自身がやり合うような選挙になるのかもしれない。「ええじゃないか」みたいな基盤が広範にある。党首が街頭にくり出せずして、何が解散総選挙かという話にもなる。


  為政者にとって、北のミサイルよりもモリ&カケの方がはるかに脅威なのだ。従って、大義もなければ選挙で争う政策の用意もない。しかし、ドサクサに紛れて緊急事態条項など重要な問題をここで強行突破しようとしている。ここは見過ごしてはならない点だ。選挙に勝ったら、「公約していたじゃないですか」と開き直っていく算段だ。モリ&カケ以上に日本社会にとっては重要な問題をはらんでいる。ナチスの全権委任法と重ねて問題視されてきたが、これが実現すれば、一時的であれ緊急事態になれば首相に全権が集中し、法律と同じ効力を持つ政令を勝手に作り出すことが許されたり、言論や報道の自由や国民の基本的人権には制限が加わり、国家権力に絶対的な服従を強いていくことを可能にする。9条に自衛隊を明記するか否か以上に、戦争できる国作りを企んでいる側はこちらを重視している。


  当たり前に考えると、支配の側にとって安倍晋三の代わりならいくらでもいる。バカであるか賢いか、品位があるかないかに関わらず、独占大企業やアメリカに従順で使い勝手が良い人間なら地位を保障されるというのが戦後からこの方の対米従属構造だ。日本の首相は例外なくその物差しで排除されたり取り立てられたりしてきた。岸・佐藤という政界におけるブランド力やパワーを背景にして地位を与えられたのが安倍晋三で、そこに親米右派が投機して今の体制が成り立っている。本人が叩き上げで政治家としての資質を磨いたり、有権者の心を鷲づかみにして首相に上り詰めたという代物ではない。それがモリ&カケみたいな小汚い利権問題で追い詰められてはいるが、本人に暴走する意志があり強行突破できるなら、限界まで突っ走らせてしまえ―という背後勢力の判断も働いている。本人の意図としてはモリ&カケからの逃亡という稚拙な動機かもしれない。また、それを振り払わないと自分の地位も安泰ではないことを感じとっているのだろう。そこに緊急事態条項などをねじ込んで、安倍晋三後の体制もこの反知性主義者を突っ走らせてつくってしまえ! という力が働いている。


 A 日本社会を戦争できる国にしたがっているのはアメリカで、自衛隊の米軍下請化や指揮系統の一元化、安保法制や特定秘密保護法の制定などみな海の向こうが要求してきたことだ。アジアのリバランス政策を動かしており、米軍はグアムや本土に引っ込んで、最前線任務を日本に委ねていく、つまり鉄砲玉にする戦略だ。日本が独立国として世界に武力参戦していく道ではなく、米軍の身代わりで地球の裏側まで出かけ、東アジアにおいては対中国、対北朝鮮、対ロシアの盾になる道へ誘導している。戦後からこの方、日本列島は不沈空母として扱われてきたが、より露骨に肉弾にしようとしている。これを安倍晋三が一つずつ強行突破してきた4年半だった。この選挙であえて緊急事態条項を出してくることは、安倍晋三にとってそれが保身の一つだからだ。モリ&カケで困っているボクですが、これを突破しますよ! というアピールにほかならない。頭にはくるが、選挙の争点をモリ&カケや私物化問題のみに矮小化してはならないと思う。それらも含めて、日本社会がどっちに向いて歩を進めるのかを問わないといけない。独占大企業やアメリカは何をしようとしているのかと無関係ではない。

 

政党政治も国も崩壊    根源にメスを

 

 A 選挙の結果だけを予想するなら、暗澹たる気持ちになるのも無理はない。自民党もだが、野党も大概な状況だからだ。そんなことはいわれなくてもみんながわかっている。「野党がボロボロの今がチャンス」といっても、野党はずっとボロボロで、そのおかげで自民党が与党ポストを手にしてきた関係だ。政党政治が早くから機能していない。その末路が安倍政治なのであって、自民党が強いから政権をとっているわけではない。他が弱いことで「強」のように勘違いしているだけで、成り代わる者がいないことによって安倍政府みたいなものが調子付いている。


  小選挙区のトリックが効果的に機能して、「一強」ができあがる構造になっている。図を見てもらったらわかるが、例えば前回2014年の総選挙がどうだったか。全有権者のなかでの支持率ともいえる比例票で、自民党の得票率は17%しかない。公明党を足しても24%。つまり、およそ4分の3の有権者は自公を支持していない。内閣支持率が30%を切るかどうかをメディアが大騒ぎしてきたが、これが実態だ。ところが議席になると3分の2以上を獲得する。

 

   過去の選挙結果を分析しようと思って4回分を洗い出してみたが、比例でも選挙区でも得票を落とし続けているのが自民党だ。2009年の政権交代選挙と比較して2012年選挙で民主党が2000万票以上も失ったおかげで自民党は返り咲くことができた。しかし、その選挙においても実は得票を減らしていた。2014年選挙もほとんど伸びていない。民主党が自民党化して幻滅され、そのことによって安倍政府が息を吹き返したことがわかる。野田政府の自爆解散によって、大政奉還がやられただけだった。自民党としては55年体制を誇ってきた時期と比較しても、得票数においては史上最低ラインをウロウロしている。これは国民的基盤を失って、宙に浮いていることを意味している。選挙としては公明党・創価学会という宗教組織なしには勝つことができない。そんなものが「一強」扱いされ、勘違いして権力の私物化に励んでいるのだから、厚かましいの一言に尽きる。


 E 革新政党もさまざまな内紛や変遷を経て今に至り、自民党も昔の自民党とか保守を名乗っていた者と、現在の安倍界隈の自民党とではまるで趣が異なる。これを「政党政治の劣化」といって片付けられるのであれば世話はないが、劣化した政党が新しい政党によって押しのけられ、没落していくのでなく、引き続き唯一の選択肢みたいにのさばっていることが、全体として安倍政治を補完している。そして投票率は選挙の度に下がり、低投票率であればあるほど自公の組織票が効いてくる。参政権は民衆がたたかいによって勝ちとってきた権利なはずなのに、各政党が腐敗堕落して受け皿がない状態が出来上がっている。そのように有権者を排除することによって、政党政治の堕落もいっそう深刻なものになっている。これは「選挙に行かない有権者がけしからん!」といって罵倒したところで解決するものではない。


  自民党を批判し、日本社会をまともな方向に持っていくことはもちろんだが、同時に現在あてがわれている野党なら素晴らしい日本社会にできると思っている有権者が少ないことも事実だ。ここは政治参加を強め、民主主義をとり戻すために、乗り越えなければならない壁がある。野党共闘なども取り沙汰され、あまりにもひどい安倍政治に対して、ここはNOを突きつけようと動いている人もいる。それは否定しない。限られた状況のなかで、局面を打開するための手の問題は確かにある。


 しかし、もっと根本のところで問題を捉える必要がある。でなければ、その先の未来への展望にはつながらない。

 はっきりいってしまうと、「ガラクタ政党ばっかりじゃないか」という意識が政党政治の漂流状態の根底に流れている。しかも普遍的だ。今回の選挙にどう対応するのかや、何を優先させるかという順位の付け方はあるが、ガラクタがくっついてもガラクタにしかなり得ない。従って、そのようなものとは異なる、新しい政治勢力を大衆的な世論を束ねながら押し上げていかなければ希望がない。一朝一夕にできるものではないが、その課題を見据えて大衆的ムーブメントを起こすことが差し迫った課題ではないかと思う。議員任せ、政党任せのようなことでは世の中は良くならない。腐敗堕落に対して、直接民主主義によって縛り上げていくような力が登場することが待たれている。有権者が冷めているわけではない。持って行き場がないだけだ。


  現状では、おしなべて親米政党ばかりが軒を連ねている。「日共」なども最近、下関では「ミサイルを撃ってくる北朝鮮はけしからん!」と街宣カーを走らせて大騒ぎをくり広げていた。右翼が静観しているのとは対照的で、「大日本興友会かと思ったら共産党だった」と市民を驚かせていた。安倍晋三と同じ立場で排外主義を煽っていたのが印象的だ。あのようにして日和見主義が排外主義に転嫁し、戦争しようかという局面で共犯者に成り下がっていく。恐れが基本にある。米朝の矛盾関係とかはお構いなしに、事の本質を歪めていき、矛先をそらしていく役割を果たす。


  その戦後出発からしてアメリカ解放軍規定であったし、その紆余曲折を掘り下げればキリがないが、戦後72年が経ってみて、「共産党」を看板にする勢力も、そうでない野党もみなアメリカに飼い慣らされて大衆から見放されている。世の中を本気で良くしようという意志も能力も感じさせないから、誰もついていかない。それで安倍政府みたいなものが後進国並の私物化に励んでいるのだから笑えない。目先の総選挙をどうたたかうかもあるが、政党政治や国がぶっ壊れた現状全体にメスを入れなければならない。


  安保法制を巡る闘争でも、長年の沈黙を破ったという積極面はあるが、安倍政府の批判は得意なのに、アメリカについて真っ向から言及することは憚られるという空気が国会前の行動でも強かった。対米従属構造こそが日本社会の諸悪の根源であることは疑いないのに、その現実には目をつむって、まるで独立国であるかのような振る舞いを右派もやり、左派もアメリカについては遠慮して言葉を選ぶ。そして、政治家や官僚機構、メディアにいたるまでもっとも忖度しているのはアメリカなのに、この存在はなかったことのようにして“なんちゃって独立国”状態をやっている。この主体性を放棄した結末が、国家の漂流状態ともいうべき事態を作り出している気がする。安倍政府のもとで、恥ずかしがることなくベールを脱ぎ始めたといった印象だ。これまで破廉恥であるとされたようなことが、恥ずかしくないものだから平然とやられる。


  モリ&カケへの便宜供与とか国有財産の払い下げなども、「大企業だってやっているじゃないか」みたいな調子でやっていてもおかしくない。ODAであれ、海外インフラ投資であれ、国家財政から独占資本の懐への資金移転がやられてきたし、モリ&カケの比ではない。その独占といっても、元を正せば明治時期に官営工場の払い下げであったり官製的な力によって原始的蓄積をしたわけで、出発はモリ&カケと何ら変わらない。これらが後進の資本主義国としてアジア侵略に乗り出したが失敗し、その出口戦略として負けると分かっていながら太平洋戦争に乗り出してアメリカに敗北する道を選んだ。そして、戦後はアメリカに隷属し、民族的利益をみなアメリカに差し出すことで支配の地位を与えられてきた。財閥解体といっても復活したし、A級戦犯でも使い勝手の良い岸信介みたいなのはCIAのエージェントとしてとり立てられ、支配のために利用されてきた。その末裔が安倍晋三だ。


  対米従属に慣れきってしまい、みずから国をどうするか考える力すら失っている。TPPであれ、北朝鮮対応であれ、みなアメリカの尻馬に乗って民族的利益を投げ出していく。なんなら、原発五四基を抱えてミサイル攻撃の標的にさらされてもかまわないというデタラメぶりだ。反知性主義なので、自分の頭で考えることはせいぜいモリ&カケの心配くらいだ。あとはとにかくイエスマン。誰が首相になっても同じだ。この腐りきった政治や経済の構造にメスを入れなければならない。政治が腐敗堕落しきっている根拠はそこにある。そうやって大衆から遊離したもとで、あだ花のように咲き誇っているのが安倍晋三の私物化だ。新自由主義、グローバリズムのイデオロギーを正直に反映している。世のため人のためとか、社会や公共性を第一にして行政や政治がおこなわれるのではなくて、もっぱら一握りの金融資本や独占大企業が強欲に利潤を求め、その片隅で汚れ政治家が暗躍して小銭稼ぎみたいなのがはびこり、統治機構が奉仕する。最上位に君臨しているのはアメリカで、このご機嫌を忖度してさえいれば支配的地位を脅かされることはないわけだ。情けないかな、ゴルフクラブを握りしめてご機嫌取りに行く由縁だ。


  解散総選挙をどう迎え撃つか、旺盛な論議が必要だ。目先のことだけではなく、日本社会の命運を握るものとして、現状認識を突っ込んで深めたり、多面的に分析を加えて展望につなげることが重要だ。新自由主義、グローバリズムに対抗して世界的にはうねりが起きている。この潮流と日本社会も切り離されるわけにはいかない。過渡期ではあるが、資本主義体制が行き詰まっているもとで、しっかりと未来を見据えて運動を作っていくことが求められている。選挙においては、自民党に二度と這い上がれないほどの鉄槌を加えることが絶対だ。

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