いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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海外権益守る為の日米安保 アルジェリア人質事件  自衛隊法改定急ぐ安倍政府

  アルジェリア南東部イナメナスで天然ガス施設の従業員が武装勢力に拘束され、日本人を含む約40人が殺される事件が起きた。米国はリーマンショック以後、深刻な経済危機にあえぐなか、イラク、アフガン、リビアなどへの露骨な軍事介入を強行。反米斗争が拡大し統治支配が弱体化するなか、資源略奪を意図するプラント建設・整備のため日本から海外にまで動員された労働者の命が奪われる悲劇となった。大企業は、国内工場をつぶし労働者を大量に解雇して、米国の傘のもとで貧困国家めがけて海外へ権益を拡大していく。それは資源を奪い、徹底的に低賃金過密労働を強要するため、アフリカにとどまらずインドや中国でも日本企業が標的にされる関係である。安倍首相は「卑劣なテロ行為を断固非難する」「人命救助を優先する」といったが、情報収集すらできず、何の対応もできなかった。すべて米国頼みだからである。そして今度は海外展開する企業の「邦人警護」を口実に「自衛隊法を改正する」と息巻いている。「日米安保」は他国の侵略から日本を防衛するものではない。「海外権益を守るための安保」の姿を露わにしている。
 
 標的になる大企業の資源略奪

 人質事件で拘束されたガス施設関係者の37人(8カ国)は、国籍を問わず、その家族はもちろん、会社の同僚、海外に派遣された技術者を家族として持つ多くの人人の願いを踏みにじり遺体で発見された。日本人も7人含まれていた。施設は英石油メジャーBPなどが開発し、そこに日本からプラント建設大手「日揮」が社員や下請、関連企業労働者を派遣していた。「開発援助だ」と宣伝され、異国で汗を流す個個の労働者の思いを超え、地元住民からは欧米企業が天然ガスなどの埋蔵資源を略奪していく施設と見なされ標的となった。
 ガス施設関係者を拘束した武装グループは「仏軍のマリ空爆中止」「アルジェリアで拘束されたイスラム主義者の釈放」「空爆を阻止するための仏軍のアルジェリア領空の通行禁止」などを人質釈放の条件として要求した。人質となった英国人男性は「軍がプラントへの突入を試みたが、失敗に終わった。武装勢力は再度突入すれば、われわれを皆殺しにするといっている」と電話で家族に訴えた。
 だが仏軍は空爆をやめるどころか、マリ中部への地上戦まで開始し攻撃をエスカレート。アルジェリア政府も「テロリストとは交渉しないし戦斗は停止しない」と表明し人質事件翌日に軍事攻撃を強行した。この戦斗で多くの人命が失われた。
 軍事侵攻をめぐってアメリカは「北アフリカのアルカイダを粉砕する」(クリントン国務長官)といい米軍特殊作戦部隊の派遣を打診。イギリスは「責任はテロリストにある。われわれはテロとの戦いでアルジェリアに寄り添う」(キャメロン首相)と表明した。隣国のマリ空爆を強行したフランスは「アルジェリアで起きたことは私のマリ介入の決断を正当化できる」(オランド大統領)と居直った。
 安倍は国内世論を意識して「救出に全力をあげる」といったがなにもできず、やる用意もなかった。そのくせアルジェリアには「一国で動くのはいけない。米国などとともに対応すべきだ」と牽制した。アルジェリア現地では独自に情報一つ得ることもできない無力な存在で、イラクやアフガン戦争に敗北し弱り切っているアメリカにくっついていくだけのお粗末な姿を露呈。しかも仏軍の空爆中止を人質解放の条件とする武装勢力に対し、わざわざ日本が米欧の仲間であることを見せつけ、自衛隊派兵を急ぐことに意欲をみせた。それは人質の生命も危険にさらす行為でしかない。「人命第一」というが最初から日本の人質の安全や人命を守る気はなく、大企業の海外権益を守るのが第一なのである。

 進出企業との矛盾激化 アルジェリア 

 事件の舞台となったアルジェリアは地中海に面する北アフリカの産油国だ。2011年の原油生産量は173万バレル。アフリカ大陸ではナイジェリアとアンゴラに続く3番目の生産量を誇る。原油埋蔵量は122億バレル、天然ガス埋蔵量は283億バレルにのぼり、この豊富な資源をめぐって欧米諸国が争奪をくり返してきた。
 同国はもともと100年以上にわたってフランスの植民地的支配が継続してきた。武装斗争によって1962年に独立するが、その後も欧米諸国は「経済援助」など表向き「民主」的な形をとって隠然たる支配力を行使してきた。1991年には初の複数政党制による総選挙がおこなわれイスラム主義政党「イスラム救国戦線」(FIS)が8割の議席をとって圧勝するが、軍がクーデターで覆しFISを非合法化。その後は内戦が続き15万人もの死者を出す事態となった。欧米企業の権益を脅かす地元武装勢力は徹底的に弾圧された。99年にブーテフリカ現大統領が就任し、最初は武装勢力と対話で武装解除を進めて治安を回復したが、しばらくすると武装放棄を拒んだ勢力に弾圧を加える本性をあらわした。近年はそのうえに市場経済化を進めて貧富格差を拡大させた。高失業率が常態化し国民の不満が高まり武装斗争が活発化している。
 こうしたなか02年から外国による投資が本格化。日本企業は商社だけでなく、インフラ建設やエネルギー関連企業が拠点を開設し権益確保に乗り出してきた。06年には5400億円もの大型事業である東西高速道路には鹿島、大成建設、西松建設、ハザマのゼネコン4社と伊藤忠商事による共同企業体(JV)が参画。しかし武装斗争が激しさを増すなかで2010年2月完成予定だった計画がまだ8割しかできていない。ゼネコンはアルジェリア政府に追加負担を要求する動きとなっている。07年の液化石油ガス(LPG)プラント建設などもIHIと伊藤忠商事など日本企業が受注している。
 今回標的になったプラントは06年にBPがガス生産を開始した。同国は石油と天然ガスが輸出総額の98%を占めている。とくに米軍主導の軍事作戦でリビアのカダフィ政府が崩壊して以来、欧州中心にアルジェリアへの天然ガス依存度が高まっている。イタリアは約4割、スペインは約3割を依存。日本も昨年度11万㌧輸入しており、イナメナスのガスプラントは「アルジェリア経済の生命線」として軍の厳重な警戒監視下に置かれてきた。しかしそのような施設でさえ中はすべて武装勢力に筒抜けで、施設内の配食を担当するアルジェリア人従業員のあいだでストライキの計画も浮上していた。
 アルジェリア国内で失業者が増加するのに、海外の大企業がハイエナのように群がって公共事業を独占し利益をすべて持ち去ることへの矛盾は大きい。欧米メジャーもあいついで進出するなか、「自国政府と投資国の両方に打撃を与えることができる」といって外国人技術者の誘拐事件が頻発。海外進出企業への人民の憤りの強さを反映している。

 欧米の支配瓦解が拡大 仏軍がマリに侵攻 

 そしてはっきりしたことはイラク、アフガンへの戦争を仕掛けた欧米諸国による統治機能崩壊が、中東にとどまらずアフリカにも波及している現実だ。比較的安定した国家とされてきたマリでも、一昨年に米国主導の北大西洋条約機構(NATO)軍がリビアのカダフィ政府をたたきつぶしたことを契機に武装斗争が激化し、仏軍が空爆する事態となっている。マリの反政府勢力はもともとカダフィ政府側について反米欧の斗争を展開してきた。だがNATO軍が6カ月間にわたってのべ2万6000機が出撃し約8000回の空爆をやって、カダフィを射殺するなか、高性能の武器を大量に持ち帰りマリで武装斗争を拡大した。そして昨年3月に軍部のクーデターが起きて親米欧的な政府が倒され、反政府勢力が北部全域を制圧。北部では厳格なイスラム法が適用されている。
 これをつぶすため仏軍が軍事介入を開始し、駐留部隊を750人から2500人にまで増強する方針だが、仏軍だけでは手に負えず周辺諸国が多国籍軍を派遣する動きとなり苦戦を強いられている。
 イラクやアフガン戦争は侵略者である米欧軍が敗北し、エジプトやチュニジアは親米独裁国家が打倒された。そして反米国家をたたきつぶしたリビアでは国内の政治も経済も統制はとれなくなり、中東だけでなく北部アフリカにも反米斗争を拡大させている。とくに米国の国家財政は軍事費がかさんで火の車。米軍兵士の犠牲で国内の戦争反対世論が噴出しており、アフリカに米軍を投入する余力もない状態となっている。

 大企業の海外移転加速 米国の核の傘の下で 

 こうしたなかで安倍首相は「世界の最前線で活躍する日本人が犠牲となり痛恨の極み」といいながら、人質事件を利用して「自衛隊が海外進出した企業を守る」と称して自衛隊法改定に乗り出した。たたき台は自民党が野党だった2010年に提出した自衛隊法改定案。現地が危険でも自衛隊が邦人の警護や陸上輸送を可能にすること、また今は「正当防衛」と規定されている武器使用基準を「必要と判断される限度」に緩和することが内容だ。
 アフリカだけでもモロッコ=デンソー、矢崎総業、ブリヂストン、チュニジア=住友電気工業、エジプト=東芝、日産、スーダン=JT、ナイジェリア=味の素、ホンダなど各国にさまざまな企業が進出。アフリカだけでなく中国、インド、タイ、ベトナムなどアジア諸国への海外進出は数え切れないほど多い。どの企業も大小の規模の差はあれ、コスト優先で日本国内の工場をつぶしたり生産を縮小し、現地労働者を安くこき使い資源略奪へと乗り出す性質は共通している。
 これまで米国の核の傘のもとで経済侵略を進めてきたが、どこでストライキや暴動が起きてもおかしくない状態のなかで、「在留邦人の保護、企業の安全」といって自衛隊派遣を世界中に広げさせ、欧米企業とともに海外で経済侵略を加速する日本の大企業を守る侵略軍として自衛隊を本格的に機能させることを意図している。
 かつて「在留邦人の保護」「暴支膺懲」と煽って始めたのが戦前の日中戦争であり、その結果日本人民は塗炭の苦しみをなめたが、それをくり返すのは民族の破滅の道である。
 これらの現実は、アメリカが進める新軍事戦略が国民の生命財産を守るためではなく、それを奪って貧困と失業を強いたうえに海外進出した大企業の権益を守るためでしかないことを示している。米国は中国の核ミサイル攻撃が届く九州、沖縄をはじめ日本列島、台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線のなかから米軍を外に移し、通信ネットワークや精密誘導弾などを駆使した「遠隔誘導戦争」をやる体制を整備している。同時に日本の自衛隊には朝鮮のミサイル問題や尖閣問題を煽ってオスプレイやF35の導入を急がせ、いつでもどこでも戦斗機を出撃させ、迅速な輸送を保障する体制を急ぎ、日本全土の米軍基地化を進めている。それは日本の国内産業をつぶして海外に出ていき、国内の労働者を首にしたり、危険な海外へ派遣したあげく、なにかことが起きれば自衛隊を動員し郷土を再び戦火に巻き込む危険にさらすものである。
 安倍は「テロには屈さない!」と叫ぶが、すべてのテロに屈しないのでなく、「邦人救出」と欺き、イラクやアフガン戦争や対中国戦争をはじめ、アメリカによる巨大軍事テロには卑屈に従う姿勢は一貫している。

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