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米国が朝鮮戦争を挑発 説明ができぬ「北」魚雷説 米軍再編強行と連動 

 「韓国」海軍哨戒艦が沈没した事件をめぐって米「韓」と日本の政府は、「北朝鮮による魚雷攻撃」と断定し、朝鮮半島に一触即発の緊張情勢をつくっている。国際軍民合同調査団の「魚雷攻撃」との判断は、事実関係として説明できる材料はない。アメリカはもっとも積極的に制裁を叫び、鳩山首相も先頭に立って制裁するなどといっている。そのようにして戦争に引きずり込んでいくのだ。普天間基地問題・米軍再編問題でのアメリカの強硬姿勢と民主党政府の追随姿勢は、朝鮮半島における戦争挑発と連動している。この状況は、日本の命運と関わった重大問題としてあらわれている。
 
 日本の命運にかかわ重大問題

 哨戒艦沈没事件は3月26日に、朝鮮半島西海岸で起きた。当初、アメリカ政府は「北朝鮮に特異な動きはない」とし、「韓国」政府も「北の関与よりも、暗礁への乗り上げなど事故の可能性が高い」と発表した。
 ところが20日たった4月16日、哨戒艦の艦尾引き揚げの結果について、合同調査団が「外部爆発の可能性が高い」と発表するや、「韓国」政府の主張が180度変わった。まず国防相が「国家安保次元の重大事態」と北朝鮮との関連を暗示すると、李明博大統領が「すぐ近くに北朝鮮というもっとも好戦的な政府がいる」と名指しした。外交通商省は早速、この事件の国連安保理上程、韓米連合防衛体制強化の検討を開始した。
 2カ月たった5月20日に合同調査団は、「北朝鮮製魚雷の水中爆発が原因」と発表。李大統領は「安保理制裁決議を要請する。軍事的対応も排除せず」と言明し、ゲーツ米国防長官もそれを支持した。鳩山首相も「安保理制裁の先頭を切る」と言明した。
 しかし、「韓国」内では、調査報告書に対して民主的諸団体から一斉に疑問と批判が上がった。例えば、報告書が決定的証拠とした魚雷の残骸が余りにも腐食がひどすぎるとか、事件発生前後の航跡記録や交信記録、生存者の証言など基礎的な資料がないとか、調査される側である海軍が主導する調査はまるで犯人が検察官になったようなもので信用できないとか、最先端監視装備が総動員されたなかで、なぜ北の潜水艇がまったく捕捉されず、魚雷まで発射できたのかなどである。
 軍民合同調査団に野党・民主党推薦で参加したシン・サンチョル氏は、民主団体の集会に出席して、調査団内部の様子について紹介。魚雷の爆発なら船底に破片の傷がついているはずだが、それがない、バブルジェットの水柱を見たものがいない、北の潜水母艦がいつどこから出港し、小型潜水艇がいつ母艦から離れていつ母艦に帰ったのかなどなど、多くの疑問点を出したが、軍側は基礎的な資料すら提出を拒否したことを暴露した。
 また、前大統領府統一安保戦略室の秘書官は、「政府が国民に公開していない沈没原因に関するデータをアメリカが握っている」ことを明らかにした。
 さらにキリスト教と仏教の4宗教団体が24日に、報告書を批判する共同記者会見を開き、「北朝鮮の潜水艇の接近と魚雷発射をまったく認識できなかったことを、簡単に納得できる人は少ない」とした。そして、情報公開を要請する書簡をアメリカ大使館に手渡した。
 こうした報告書への疑惑や批判が噴出することを恐れて、李政府は弾圧に乗り出している。先の民主党推薦の委員に対しては海軍が「名誉毀損」で告訴し、国家安保に直結する公安事件として捜査を開始した。前秘書官に対しては、国防省が告訴した。インターネットなどで報告書を批判する意見が飛び交うことも恐れて「名誉毀損」事件として捜査強化に乗り出している。
 「北朝鮮の魚雷攻撃」として、国連安保理での制裁決議などを求める米「韓」政府に対して、常任理事国の中国とロシアは同調していない。クリントン米国務長官はこの間、哨戒艦問題を協議するため日本、中国、「韓国」を歴訪した。24日には中国で安保理制裁への同調を求めたが、中国の戴国務委員は「確たる証拠がない」としたうえで「関係各国が冷静、適切に問題を処理すべきだ」とのべ、対立した。また、ロシアのラブロフ外相は「韓国」の外交通商相との電話会談で「あらゆる情報を注意深く検討している」と、距離を置いた。

 北制裁で踊る鳩山政府 「先頭に立つ」と 

 他方、鳩山首相は安保理での制裁決議について「先頭に立って努力したい」とのべ、24日の安全保障会議では、米「韓」との連携強化や独自制裁の検討、貨物検査(海上臨検)法案の早期成立などを指示した。臨検となれば戦争と見なされ、日本との関係も一気に緊張することになる。
 「韓国」の商業新聞が実施した世論調査では、「相応する軍事的対応」には反対が59・3%、賛成が30・7%という結果が出た。このため、哨戒艦問題で24日に国民向け談話を出した李明博大統領は、「われわれの究極的目標は軍事的な対決ではない」「北の即時謝罪及び責任者の処分、攻撃的行為の停止」とのべるにとどめざるをえなかった。
 「韓国」に比べてオバマ政府の方が先走っている。ホワイトハウスは24日、武器輸出を禁じた現在の安保理制裁決議の徹底や、新たな制裁に向けた国際合意の実現をめざすこと、また米軍幹部に対して「韓国」軍と連携して即応態勢を整えるよう指示した。独自の金融制裁やテロ支援国家再指定の検討も始めている。
 そしてそのまま戦争になりかねない軍事演習の具体化を急いでいる。6月には黄海で米「韓」合同の対潜水艦訓練を実施するのに続いて、海上封鎖訓練を実施する計画。それらの具体化のために、6月5日、米日「韓」国防相会談を開くことを決めている。クリントン米国務長官の北京での発言も「北朝鮮はみずからの挑発行為に見合った対価を払うことになる」と居丈高である。
 オバマ政府は今回の哨戒艦事件を北朝鮮の「戦争挑発」と非難している。謀略を仕組み、事件をでっち上げて戦争を起こすのは、アメリカの常套手段である。アフガン侵攻の理由となった「9・11テロ事件」も自作自演というのが世界の定説になっている。「大量破壊兵器保有」を理由にしたイラク侵略もウソであった。今回も、事実関係の説明もできないのに断定すること自体が意図性を暴露している。
 オバマ政府は登場以来、「核廃絶」とホラを吹いてノーベル賞をもらうという茶番をやり、対中国関係でも融和的態度をとってきた。アメリカの金融独占体の暴走による世界的な経済危機とともに、アメリカ国内でのオバマ政府批判と、イラク、アフガンの泥沼化をはじめとする世界における反米斗争の高揚であり、アメリカの支配の危機、政治危機が進行している。
 今回の問題は、朝鮮南北の問題だけではない。アメリカと中国の対立がその背景にある。最近目立つのは、対中国の強硬姿勢である。昨年11月に中国を訪問したオバマ米大統領はまだ「中国封じ込めはしない」といっていた。だが今年に入って、アメリカの軍事戦略や外交政策は明らかに好戦的対決姿勢となっている。
 1月にはアメリカが台湾に総額六四億㌦の武器を売却する計画が判明し、中国が軍事交流の停止を発表した。米インターネット検索大手グーグルが、中国が反政府活動への検閲をやるとして撤退し、米政府は名指しで非難した。2月にはオバマ大統領が昨年は見送ったダライラマ14世との会談に応じた。中国通貨・人民元の相場の問題も、中米間のトゲとなっている。4月の中米首脳会談で、オバマが人民元引上げを求めても、胡錦涛は「外部の圧力で推進しない。切り上げで貿易不均衡問題は解決しない」とはねつけている。
 2月の「4年ごとの国防政策見直し」(QDR)は、「中国の軍事力近代化は、軍事的意図に疑念を抱かせる」と「潜在的仮想敵国」であると規定した。そのため「日韓と緊密に協力し、在日米軍再編で長期駐留を確かにする」とうたった。同月判明した米軍の核戦略を統括する戦略軍の包括的な作戦計画には、潜在的な核攻撃の対象として中国、イラン、北朝鮮、ロシア、シリアの五カ国をあげていた。
 中国経済の発展は、外資の投入によるバブルであり、日本のバブルと同様に、ふくらむまでふくらませておいて叩きつぶすというのはアメリカ金融資本の常套手段である。アメリカはこの事件を利用して北朝鮮に対して戦争を挑発しているが、アメリカの本命は中国への戦争恫喝である。中国が朝鮮に援助しているからというだけではなく、中国市場をわがものにし、植民地化することはアメリカ支配層の100年余りの野望である。
 今日の中米関係は、中国がアメリカ国債の最大の保有国で、最大の貿易相手国でもあり、進出企業でもアメリカが大きな比重を占めている。それはまた、アメリカが世界最大の軍事力をもって中国に圧力をかけ、いいなりにならなければ軍事攻撃もするという対立関係を構築している。
 中国もまた、マラッカ海峡、南シナ海、台湾海峡、尖閣諸島、沖縄周辺海域まで中国の勢力圏とするために、軍備を拡張している。
 アメリカ発の金融・経済恐慌はさらに深刻さを増している。リーマンショックからの脱却といって来たが、五京円といわれるデリバティブ商品は不良債権のままなにも解決していない。そして財政支出で破綻した金融機関を救済してきたが、ギリシャの財政破綻が欧州全体の危機へとすすむなど、国家破産が世界に広がろうとしている。その一方では、世界中に失業者をあふれさせ、賃金の切り下げ、福祉の切り捨て、税金の加重などで労働者や勤労人民を貧困のどん底にたたき込んでいる。このようななかでアメリカ独占財団は、経済恐慌がドル暴落、国家破産に陥るのを新たな戦争で突破する衝動を強めている。

 日本と韓国の動員企む 米国防衛の盾として 

 東アジアでは中国、朝鮮に対する戦争挑発に日本と「韓国」を動員しようとしている。日本全土に展開する在日米軍の再編は、アメリカの指揮のもと自衛隊が下請軍隊として朝鮮や中国に出動・参戦するためだ。日本は米軍基地があるために、報復のターゲットとなり、全土がアメリカ防衛の盾として核戦争の火の海にたたき込まれかねない。「韓国」でも在韓米軍を海外派遣の部隊に再編しつつある。しかし前政府が決めた戦時統制指揮権を2012年に「韓国」軍に移譲するのを延期して、下請軍隊として使う方向になっている。
 日本も「韓国」も、もう一度戦争にかり出されるわけにはいかない。アメリカの軍隊と基地を撤去させ、真の独立を勝ちとることが何よりも重要である。中国や朝鮮、そしてアジア諸国民との真の友好・団結こそ日本民族の誇りである。

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