いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「拉致問題」で戦争する愚かさ 話し合いが日本の国是

 最近、小泉政府が主導しマスメディアを総動員した朝鮮民主主義共和国(朝鮮)にたいする、「拉致問題」を理由にした敵視キャンペーンが段階を画している。朝鮮への「圧力」は実質的な制裁段階に入っており、戦争までやるような態勢となっている。それは日本で暮らす在日朝鮮人のなかにも強い圧迫感を与えている。「拉致問題」は重大な問題であるが、そのために戦争をやるというのはどはずれてバカげたことであり、日本人民にとってきわめて不幸なことである。「国際的な紛争は武力によって解決を図ってはならず、話し合いで解決しなければならない」というのは、第二次大戦の痛ましい体験をくぐった日本の、憲法で定められた国是である。小泉首相は靖国問題で我を張って中国、韓国との関係も悪化させてきてにっちもさっちもいかなくなっているが、アメリカに奴隷のごとく従う一方で、アジアの近隣諸国を冒涜し敵視するのは恥ずかしいことである。

交戦状態終結が根本問題


 戦後の“冷戦”構造のなかで、アメリカに従属した日本政府は、朝鮮戦争に加担したのをはじめ朝鮮敵視政策をとってきた。それが2003年9月の日朝平壌宣言発表で、国交正常化によってあらゆる懸案を解決していくことが確認され、日本国民は明るい展望を示すものとして歓迎した。
 ところが、朝鮮側が拉致問題があったことを認めるや、それを逆手にとって、「拉致問題」キャンペーンを繰り広げてきた。拉致行為は許せないことであり、被害家族の怒り、痛みは当然である。しかしこの事件は、戦後の歴代政府がアメリカの朝鮮敵視政策に追随し、朝鮮との交戦状態がつづくなかで起った不幸な事件である。アメリカは日本を基地にして諜報・スパイ活動をやり、ミサイル、潜水艦、海軍部隊、航空機と照準を合わせた包囲態勢をつづけており、それに朝鮮が対抗するという関係が続いてきた。
 したがって拉致問題の解決は、このような戦前の植民地支配とその後の朝鮮戦争以来の交戦状態の終結が根本の問題であり、日本に関しては国交の正常化をして敵対関係を終結させることを通じて、そのもとで話し合いで解決するのが正しい道筋である。ところが、拉致問題をより根本的な原因である力による対決、経済力から武力による脅しにエスカレートさせようとしていることはきわめて危険なことである。
 「朝鮮はテロ国家であり、それに対して戦争で退治しよう」というのは、朝鮮を「悪の枢軸」と名指ししたブッシュのまねごとである。「拉致事件を引き起こしたから戦争で制裁する」というのは、拉致事件の犯罪性とは比較にならない大犯罪である。
 
監視体制作り画策 在日朝鮮人を圧迫


 最近あらわれているのは、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関連施設の固定資産税減免問題である。福岡高裁は熊本地裁の判決を覆して、熊本市の朝鮮会館に課税すべきだとした。小泉政府はそれを機に、朝鮮総連への圧力を強めようとしている。総務省は4月1日付の事務次官通達で、朝鮮総連関連施設の固定資産税減免問題にかんして、各都道府県知事に「施設の公共性などを精査し、課税を厳格に執行するよう」指示をおろしている。
 朝鮮総連関連施設はこれまで、「公民館・集会施設に準じた施設」であり、一部旅券査証発給業務を担う領事館的機能を持つものとして、ほとんどが非課税であった。朝鮮敵視キャンペーンが広がるなか、2003年に東京都の石原知事が先頭に立って、朝鮮総連中央本部など3施設に課税したことを皮切りに、一部の自治体で課税するところが出ていた。
 昨年10月には警視庁が、ある健康食品会社が誇大広告をしたことを「薬事法違反」に問い、同会社の1人が「朝鮮科学者協会」の役員であったことを口実に、同協会の事務所にたいし大がかりな家宅捜索をおこない、2人を逮捕する事件があった。漁船を朝鮮に売ったとか、三菱総研の孫請がミサイル情報を朝鮮に流したとか、朝鮮に売った粉砕器が細菌をばらまく噴霧器に使えるとか、さまざまな容疑で在日朝鮮人を犯罪者に仕立てる事件があいついでいる。
 さらに小泉政府は、朝鮮船籍の船舶検査の強化から朝鮮向け信書の監視強化、自転車とタイヤの中古品輸出規制、食品の原産地表示の徹底などを検討するとしている。それはやがて、改正外為法による送金停止と、特定船舶入港禁止特措法による朝鮮籍船舶の入港禁止まですることを想定している。もっとも効果的なものとして「万景峰号」の入港禁止に踏み切ろうとしている。
 小泉政府は鈴木官房副長官を議長にした拉致問題専門幹事会(宮内庁をのぞく全省庁の審議官クラスで構成)のもとに「法執行班」と「情報収集会議」をおいて、「現行法の厳格な執行をする」としている。この「法執行班」は「厳格化」の例として、以上のような指示を強めているのである。
  「情報収集会議」は、内閣情報調査室、警察庁、公安調査庁、外務省で構成して、朝鮮にかんする情報を交換・共有し、特定の国や特定の団体にたいする全省庁による監視・圧力体制をつくるというものである。そのもとで、在日朝鮮人への圧迫を強めているのである。
  
敵対煽る小泉政府 朝鮮戦争をたくらむ


 この3年近くにわたって小泉政府は「対話と圧力」といいながら、実は「圧力」ばかりをかけつづけ、両国の敵対関係をあおってきた。2004年6月には、朝鮮籍船舶などの日本入国を禁止できる特定船舶入港禁止特別措置法を成立させた。それをたてに、いま日朝間の人的交流の唯一のルートである朝鮮の貨客船「万景峰号」の新潟入港にあたって、税関から海上保安庁、警察など数百人を乗船させて臨検するという大騒ぎをやった。
 朝鮮側は拉致被害者5人の子弟や曽我さんの夫や子弟を日本に送り返したうえで、同年11月の日朝実務者協議に参加した日本代表団に拉致被害者横田さんの遺骨を提供した。同代表団団長は、日本側が提出した150項目の問題についてほぼ8割以上の回答を得て「誠意を感じられた」と語っていた。
 だが、政府は12月に突如、横田さんの遺骨は別人のものとする鑑定結果を発表。日本側の科学警察や歯科大、帝京大3者による鑑定団でも意見が割れ、イギリスの科学雑誌の論文でも日本の鑑定結果は信じられないといわれている問題であった。
 そして3月、今度は船主責任保険に未加入の船舶の入港を禁止する船舶油濁損害賠償保障法を施行した。この法律は七割以上の朝鮮船籍の船舶を閉め出すことを主目的としていた。また、朝鮮への食糧支援も凍結した。
 その結果、朝鮮との貿易取引は2000年の4億6400万㌦が、05年には1億9500万㌦に激減した。朝鮮の貿易総額に占める日本の比重は同期間に23%からわずか7%に落ちこんだ。国士舘大学の小牧輝夫教授は、「拉致問題が進展しないのは日本が経済制裁をしないから、という意見があるが、そうではない。各種規制により日朝貿易は縮小している。すでに日本側の経済制裁は始まっている」と語っている。
 昨年9月の朝鮮半島の非核化にかんする6者協議では、朝鮮が完全な核放棄をし、アメリカは朝鮮を攻撃しないことを盛りこんだ共同声明を採択した。期間中の日朝代表による3回の会談、11月の日朝政府間協議をへて、12月には双方が拉致、安全保障、国交正常化の3テーマについて並行協議することで合意した。
 6者協議の共同声明の実行にあたって、朝鮮が核放棄のまえにアメリカが軽水炉を提供すべきだとするのに、アメリカは「核放棄が先決」を主張して譲らなかった。そして1994年の米朝枠組み合意にもとづいて、核開発につながる黒鉛炉廃止のかわりに軽水炉を朝鮮に提供する事業まで一方的に廃止した。加えて、朝鮮が通貨偽造、麻薬密売などの不法行為でばく大な収益を得ているとの「疑惑」を新たに持ち出して、「金融制裁」に乗り出した。
 これらと並行して、11月の国連第三委員会では、日米欧が提出した朝鮮の人権状況を非難する総会決議案を賛成多数で強行し、そのなかで日本人拉致問題を「組織的で深刻な人権侵害」と規定し、早期解決を求めた。こうして今年2月に開かれた日朝政府間協議では、昨年合意した3テーマを並行協議する形をとりながら、結局日本側が「拉致問題の解決なしに国交正常化はない」と主張して物別れとなった。
 この前後から、安倍官房長官主導で「拉致問題を進展させる」との名目で朝鮮への制裁圧力を強める動きが強まった。それが拉致問題専門幹事会である。
 事態の推移を冷静に見るならば小泉首相がわざわざ訪朝して平壌宣言をしながら、それを覆していったのは、マスメディアが先行して拉致問題制裁の大キャンペーンを張ったからである。その背景には、アメリカのブッシュ政府が朝鮮を「悪の枢軸国家」といい、核の先制攻撃対象として、朝鮮の核開発問題で圧力をかけていること、対朝鮮の戦争で日本を動員しようとしているからである。
 小泉政府がすべての拉致事件に怒っているのでないことは明らかである。戦前の日本帝国主義支配階級の数百万人におよぶ朝鮮人連行という大拉致事件は黙して語らない。中国人連行も同じである。アメリカやヨーロッパで多くの日本人が拉致誘拐されたりしているが問題にはしない。小泉政府が騒ぐ朝鮮の拉致問題は人人を駆り立てる口実であって、そのもっと大きい要因はアメリカの尻馬に乗って朝鮮戦争をたくらんでいるからである。

日本の独立の課題 近隣国との友好不可欠


 小泉政府登場後の5年間に、アメリカの世界戦略にそって日本を戦争に総動員する態勢が急ピッチでつくられた。「日米新防衛協力指針(ガイドライン)」にもとづいて、自衛隊を米軍の下請軍隊として世界中に派遣する態勢がつくられ、アフガン戦争でインド洋に、イラク戦争ではイラク戦場に自衛隊が派遣された。
 また、朝鮮や中国の「脅威」をあおり、ミサイル防衛(MD)システムの日本配備、あまたのスパイ衛星による監視態勢、今回の米軍再編にともなう日本全土の米軍基地化をすすめている。周辺事態法や一連の有事法制をすすめ、「国民保護法」など現代版の国家総動員法をつくり、人民の自由や民主主義をことごとく奪い去り、ファシズム国家に変えつつある。
 それは「改革」の名でアメリカのグローバル化を推進し、日本を植民化して人民生活を破壊し尽くすこととセットで、日本のヒト、モノ、カネのすべてをアメリカの戦争のために提供し、日本を原子戦争の戦場にまでして、ふたたび廃虚にしようとするものである。
 このようなことは、アメリカが日本を動員して武力で世界を支配しようという意図からおきているものであり、テロ対策は人人を動員する口実にすぎない。「テロ撲滅」と称してはじめたイラク戦争は、石油を略奪し、みずからの支配におこうとする目的でしかなかったことが暴露された。朝鮮をテロ国家として敵意を煽るのも、かれらの侵略の意図を実現するための口実としてやっているものである。
 朝鮮との関係は、かつての日本帝国主義の侵略行為の清算がされないまま、さらに日本を基地にしたアメリカの朝鮮戦争がいまなお終結の手続きもされず交戦状態を継続しているという問題を解決することが最大問題である。
 とくに日本に住む朝鮮・「韓国」人は、いずれもかつての日本の植民地支配のなかで来日した人や、強制連行者の子孫であり、納税義務をはたして日本に永住する人人である。日本政府は戦後彼らを教育や福祉、就職、住居などで差別し、治安の対象にして基本的人権を奪い、迫害・弾圧してきた。これらの差別・抑圧をやめるどころか、逆に拉致問題を口実に民族排外主義をあおって日本国民と対立させることは、日本民族として恥ずかしいことである。
 以上のような拉致問題を経済制裁から戦争の口実にするのは、どはずれてバカげたことであり、日本民族にとってアメリカの戦争の肉弾となりついたてとなって再び廃虚にする不幸な道である。日本の独立、民主、平和、繁栄を実現する課題は、朝鮮をはじめ近隣アジア諸国との平等互恵、相互信頼、平和共存の関係を築いていくことと不可分に結びついている。

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