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韓国哨戒艦事件巡る国連安保理 米国の朝鮮戦争挑発が失敗 対米従属一辺倒の日本政府

 「韓国」海軍哨戒艦の沈没が「北朝鮮の魚雷攻撃による」と断定して、米「韓」と日本の政府は朝鮮半島に一触即発の緊張状態をつくり、国連安全保障理事会に「朝鮮制裁」決議を求めていた。だが14日の国連安保理非公式協議では、「北朝鮮の関与」に言及せず、関係国に朝鮮半島の緊張を高めないよう強く求める「議長所感」発表で終わった。大嘘つきはアメリカなどの得意技だが、今度ばかりはあまりにお粗末なでっち上げで国際世論にもそっぽを向かれ、朝鮮戦争の挑発は惨めな破産を見た。菅内閣は発足早早、その対米追従の醜態をさらした。
 哨戒艦沈没から2カ月たって発表されたアメリカ主導の軍民調査団の報告は、まず「韓国」国内でその疑問点が多多指摘され、李明博政府が「北の魚雷攻撃」と決めつけるのは戦争を煽るものと猛反発が起こった。50の民主団体が「根拠がない」と声明を出し、抗議集会に調査団の一員であった人が出席して、いかがわしい調査団の実情を暴露した。真相究明を求める世論、同じ民族同士の戦争を拒否する世論が全国を席巻した。
 李政府は「北の脅威」を煽れば、今月2日の統一地方選で圧勝できると踏んでいたが、結果は惨敗だった。「戦争か平和か」を中心に訴えた野党・民主党が、主要7都市と9道(日本の県に相当)の計16首長選のうち7つを押さえて躍進した。選挙民が圧倒的に戦争を拒否していることを示したものだ。
 また今年は、「民族は一つ」をうたった南北共同宣言から10周年を迎えた。「韓国」の民主団体はこぞって朝鮮との関係を破壊してきた李政府に対し、「南北共同宣言」の回復を要求した。南北朝鮮民族の悲願である「平和的自主的統一」の声は、アメリカの指図で北への戦争挑発をする李政府に大打撃を与えた。
 アメリカと李政府は、国連安保理の「制裁決議」に期待を持った。鳩山前首相も「先頭に立つ」と大見得を切った。後を継いだ菅首相も「北朝鮮については、韓国哨戒艦事件は許し難い」とし、李政府を「全面的に支持」していくと、11日の国会で表明した。
 一方、中国とロシアは「北朝鮮魚雷」説に確たる根拠がないと疑問を呈し、朝鮮半島の緊張を煽ることに強く反対した。ロシアは独自の専門家による調査団を「韓国」に派遣し、「その結果から証拠に乏しい」との立場をとった。
 とりわけ中国は、オバマ政府が今回の事件を使って朝鮮のみならず中国に対する戦争挑発をもくろんでいることに警戒心を強めた。今月上旬から中国の庭先である黄海で米韓合同軍事演習が予定され、それに米第7艦隊の原子力空母ジョージ・ワシントン(横須賀が母港)まで参加することになっていた。今年1月から台湾への武器売却、グーグルの内政干渉、オバマのダライラマとの会談などで緊張していた中米関係をさらに激化させるものだった。
 これまで米韓合同軍事演習は朝鮮半島の東側でおこなわれていた。それをあえて黄海に移したことは、北京・天津という中国の心臓部の情報を収集する狙いからで、きわめて挑発的であった。中国紙『環球時報』は八日付紙上で「韓米海軍の訓練のニュースが中国を緊張させ、中国人の反感を招いている」と警告を発した。
 このため、オバマ政府は黄海での演習を今月末まで「延期」し、安保理での結果を見ると手直しをした。李政府の高官も中国の「説得」にあたり、「すでに昨年北への制裁決議をしているから、制裁決議に実益はない」と表明。「非難決議」に格下げせざるをえなくなった。
 国連安保理は14日、哨戒艦事件について当事者から説明と意見を聞く会合を開いた。この会合は、記録に残らない「非公式相互対話」というもので、15の全理事国が参加するものの、「安保理による何らかの決定を前提としない、非公式協議以下」の扱いであった。
 国連が発表した14日の日程表にも入っておらず、通常の議場とは別の会議室で開かれた。しかも、「韓国」と朝鮮双方を対等の立場で招いており、「韓国」側から「大変失望した」との声が出た。
 会合でははじめに「韓国」側から、2時間にわたって「北朝鮮の魚雷攻撃」とする説明をした。続いて朝鮮側が一時間にわたって、調査報告には「まったく根拠がない」と事件への関与を否定する意見をのべた。
 会合では、「韓国」に米・日・英・仏が同調し、数カ国が「理解」を示したが、中国は性急な判断を戒め、ロシアは朝鮮も入れた混成調査団の結成を提案したという。日本の高須・国連大使が「韓国側が示した証拠は非常に説得力がある」と発言したことが異様に映ったという。
 会合後に安保理議長のメキシコ国連大使が「議長所感」を発表した。それは「北朝鮮の関与」に言及せず、関係国に朝鮮半島の緊張を高めるような行為を控えるよう強く求めるものだった。「所感」は決議や議長声明、報道機関向けの声明よりも弱い表現形式である。「安保理で朝鮮名指しは拒否する」とした中国の思惑にそったものである。中ロの強い反対があり、理事国の途上国も納得していないなかで、正式協議がいつ開かれるかわからないし、長期化するというが、それもあてにならなくなっている。
 クリントン米国務長官の助言役をつとめるシャーマン元北朝鮮政策調整官は「緊張を高めず、深刻な結果を生まないやり方が必要だ。朝鮮半島での戦火を望むものはだれ一人いない」と、インタビューで答えている。この発言を100%真に受けるわけにはいかないが、今回の「韓国」哨戒艦事件を利用した戦争挑発策動が失敗し、ホワイトハウスが手直しを始めたといえるだろう。

 危機の中で戦争を渇望 本性は変わらぬ米国 

 しかし、アメリカ支配層の大ウソをつき、謀略を仕組んで戦争を仕かける本性は変わらない。とりわけ現在、オバマ政府は経済恐慌では「二番底」に陥る瀬戸際にあり、金融独占などのマネーゲームが第二のリーマン・ショックをもたらそうとしている。政治的にも、イラクは無政府状態、アフガニスタンはいくら米軍を増派しても反米武装勢力の餌食になるだけで、タリバン武装勢力の実効支配する地域が国土の9割に及ぼうとしている。NATO(北大西洋条約機構)の欧州各国も相次いで期限付き撤兵を口にしている。
 恐慌と二つの戦争は巨額の財政赤字をつくっているが、製造業の生産が停滞したままでは労働者は賃金切り下げ、首切りと失業に追い込まれ、消費購買力が落ち込む一方である。加えて医療保険改革や移民の規制、軍産複合体への利益供与などに対して、アメリカ人民の怒りは日を追って高まっており、オバマは戦争特需に駆り立てられている。
 鳩山首相の野たれ死にを受けて発足した菅内閣は、昨年の総選挙で票とりのために掲げたマニフェストをことごとく投げ捨てた。アメリカのいいなりで普天間基地の辺野古への移転をはじめ厚木の空母艦載機の岩国移駐など米軍再編を積極的に進め、「4年は上げない」とした消費税を増税し、法人税は減税するし、郵政法案や労働者派遣法改正などは廃案にした。こうして巨額の累積赤字に悲鳴をあげるアメリカに日本の資産を湯水のごとく流し込む構造を維持しようとしている。それは小泉内閣の構造改革とうり二つであり、日本人民の新たな怒りをかきたてている。「韓国」哨戒艦事件で米「韓」と連合し、朝鮮戦争の挑発に加担したのも、民主党内閣が日本を米本土を守る盾として、原水爆戦争の火の海に沈める政治方向だからである。日本人民のあいだでは日本からアメリカの基地をたたき出せ、アメリカの属国はごめんだなど真の独立と平和を要求する声がほうはいとわき上がっている。菅内閣の売国政治と人民の独立要求が激突することは避けられず、日本の戦後史に新しい時代が切り開かれつつある。

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