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赤恥かいた妄想右翼

 80年前の今頃、沖縄は占領を企む米軍によって艦砲の嵐に見舞われ、県民の4人に1人が犠牲となった沖縄戦の只中にあった。第二次大戦のなかでももっとも民間人を巻き込んだ血なまぐさい地上戦であり、犠牲者の数だけ見ても、それは昨今のイスラエルのパレスチナ攻撃どころではない、およそ人間を人間と見なさぬ無差別殺戮・蛮行であった。艦砲が降り注ぐなかを老若男女は北へ南へと逃げ惑い、そのなかで沖縄の若き学徒や女生徒たちも日本軍の指揮下でひめゆり学徒隊や鉄血勤皇隊といった部隊に組み込まれ、多くの子どもたちが犠牲になった。二度とくり返させてはならぬ惨劇である。

 

 あれから80年。沖縄戦及びひめゆり学徒隊の悲劇を後世に伝え、平和のために役割を果たしてきたひめゆり平和祈念資料館の展示を巡って、何を思ったか裏金・統一教会に染まった妄想右翼の残党がいちゃもんをつけ、沖縄県民の逆鱗に触れて謝罪に追い込まれている。そう、自民党参院議員・清和会所属の西田昌司である。

 

 西田は憲法記念日に那覇市で開かれた会合で「日本軍が入ってきて、ひめゆり隊が死ぬことになった。アメリカが入ってきて沖縄は解放された。そういう文脈で書いている」と資料館の展示を批判し、「歴史の書き換え」に当たると持論を展開した。その場に集っていた沖縄県神社庁、神道政治連盟、日本会議、統一教会といった右翼勢力の仲間たちを前に、威勢良くぶったそうである。ところがその後発言が問題視され、資料館側がそのような展示をした事実はないと反駁すると、20年以上も前に洞窟で展示を見たとかのうろ覚えな記憶を開帳して右往左往。当初、謝罪や撤回はしないと居直っていたものの、いちゃもんの根拠が不確かで妄想に過ぎないことが暴露され、焦った自民党沖縄県連すらも抗議する展開となり、最終的には批判世論の高まりのなかで謝罪することとなった。

 

 赤恥をかく(全くの恥である)とはまさにこのことで、“妄想右翼”の残党たるや今頃は穴があったら入りたいくらいの心境になってもおかしくないほど、一般的に見てとても恥ずかしい顛末となった。杉田水脈とか西田昌司とか、安倍晋三の子分たちはどうしてこんなのが揃いも揃っているのだろうか? と思うほど、いつもこの調子なのである。こうした輩については「歴史修正主義者」とかの高尚なネーミングではなく、今後は主義もへったくれもないただの“妄想右翼”くらいの呼び名が適当のように思う。歴史を修正するというよりも、そもそも歴史の真実を学ぼうとしていないし、知らないのである。沖縄戦の痛ましい県民の体験・記憶に思いも至らない本土の政治家が、思いつきや印象で上から目線で難癖をつけ、フルボッコにされるのは必然である。立場をわきまえていないという点でいえば、「反知性主義者」ではなくただの馬鹿でもある。歴代自民党の大物政治家たちも、沖縄については沖縄戦への償いを意識して丁重に関わってきたはずだ。それがとりわけ顕著におかしくなったのは安倍晋三以後である。

 

 戦後80年。政治家も含めて「戦争を知らない子どもたち」ばかりが占める世の中になった今、その体験や記憶の継承はこれまで以上に求められている。この80年、体験者がみずからの壮絶な体験を口にして、二度とくり返させてはならぬと後世に平和への思いを託してきたが、被爆者にせよ、沖縄戦を経験したおじいやおばあにせよ、全国の空襲体験者にせよ、戦地にかり出された兵士にせよ、実体験した世代が次々と鬼籍に入っていくなかで、祖父母や曾祖父母たちの厳粛な思いを引き継いでいくことが、現代を生きる世代には課せられている。人間が人間を殺戮する戦乱の世に投げ込まれないために――。節目の年にしっかりと思いを致したい。

 

    武蔵坊五郎        

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