いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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沖縄県・名護市長選挙 安倍戦争政治覆す歴史的快挙 基地撤去の揺るがぬ力

 名護市長選は安倍政府がこれまでにないほど金力、権力を総動員し、干渉を深めるなかでたたかわれたが、基地撤去を望む沖縄県民の偉大な力を見せつけ、反対派候補が圧勝する快挙となった。政府は投票を有利に導くために、仲井真知事との間で約束した3000億円の沖縄振興費とは別に、石破幹事長が「500億円の名護振興費」を叫んで辺野古移設推進派を後押し、同時に「知事が埋め立てを容認したのだから反対しても手続きは進む」のだと恫喝を加え、あきらめを煽ったが、名護市民、沖縄県民は屈服しなかった。この選挙の勝利は、戦後69年におよぶ米軍支配に対する沖縄県民の断固とした斗争の決意表明にほかならず、沖縄を最前線基地にしてアジア近隣諸国との武力衝突の道を突き進んできた安倍政府にとって、大敗北を意味するものとなった。東京都知事選、山口県知事選とつながっていく3地方選の端緒を切り開く痛快な勝利であり、安倍政府を震撼させる痛烈な審判に全国が沸いている。


 各種調査で自民党政府の敗北が明らかになりはじめた選挙中盤以後、商業メディアの多くは名護市長選の動向を小さく扱いはじめ、政府は「選挙結果にかかわらず、日米合意に基づいて粛々と進めていく」と予防線を張る対応となった。


 選挙後、菅義偉官房長官は、「市長の権限は限定されている。理解を求めるなかで淡々と進める」「埋め立てについては沖縄県の仲井真弘多知事から承認を頂いている。支障は生じない」と述べ、安倍晋三首相も自民党役員会で、辺野古移設について「基本方針にのっとって進めていきたい」とのべるなど、選挙で突きつけられた民意におかまいなく、あくまで日米合意、すなわち米国と約束を交わした米軍普天間基地の辺野古移転を強行していく考えを示した。


 沖縄現地で陣頭指揮をとった石破幹事長は、選挙中に叫んだ500億円の名護振興費は「末松ビジョン」のためのものであり、稲嶺当選によって出るものではないとの見解を示した。そして「負けは負けだが、当初トリプルとかダブル(の差)とかいわれていた。現場によく頑張っていただいた」とのべ、自民党としては移設推進を掲げた末松陣営が「善戦」したと見なし、「予想よりも推進の基盤はある」という理屈で辺野古移転を進めていく方向を打ち出している。「多数決」原理も吹っ飛んだ、聞いたこともないような理論を展開している。


 そして防衛省の沖縄防衛局は21日、辺野古沿岸での環境調査や移設にともなう作業ヤードの設計・調査業務の請負業者を募る3件の入札を公告。選挙で示された民意は聞き置いて、計画には変更も加えず、どこまでも強行突破していく構えを見せている。主権在民といいながらなんのために選挙をやったのかわからず、「民主主義」を否定していく安倍独裁政治の馬脚をあらわしている。


 選挙に勝てば「地元の意志を尊重して進める」といい、敗北すれば「国の専権事項なので、結果に左右されるものではない」という大インチキは、安倍首相のお膝元である山口県では、上関原発計画や米軍基地を抱える上関、岩国で何度も経験してきた。人口3000人足らずの上関町のような小さな町で、地縁血縁関係や子どもや孫にいたるまでの就職先や弱みなどを完全に掌握して町民を抑圧し、ピンポイントで切り崩して選挙を制すると、原発反対の全県世論がいかに強くても「地元のみなさんの政策選択を尊重する」といって、知事が埋め立て合意や許認可を乱発してきた。岩国では、市長選で米軍再編容認派が敗北したさい、「国の専権事項なので、結果に左右されることはない」といい、民意を無視するだけでなく、第1次安倍政府は交付金を凍結する制裁まで加えた。


 名護市長選に対する対応も共通で、民意とか選挙結果が尊重される世の中かと思っていたら逆に国会の議席を独占した為政者が4年間好き勝手に振る舞う政治体制というわけで、もっぱら尊重されるのは米国の意志のみという、民主主義を根本から否定する売国政治の姿を浮き彫りにしている。

 崩壊へ向かう支配基盤 地方選も軒並み敗北 

 しかし、聞く耳のない民意無視の横暴といっても、民意がついていかず、支持を得ることができない権力は宙に浮き上がり、支配基盤は崩壊するしかない。沖縄では知事選が11月頃に控えているなかで、仲井真体制が終焉に近づき、今回の選挙結果に狼狽している姿が強い印象を与えた。県民を裏切った自民党国会議員5人も次回選挙で叩き落とされる運命にさらされている。民主党の自爆選挙によって返り咲いた安倍自民党も、今年に入ってからの地方選では連敗街道まっしぐらで、おも立ったものだけ見ても、青森市長選、名古屋市長選、さいたま市長選、横須賀市長選、川崎市長選、福島市長選、名護市長選と同日に実施された福島県の南相馬市長選でも推薦候補が軒並み敗北。「高支持率」といわれた支配基盤たるや、きわめて脆弱であることを示した。地方の民意と離れた国政というのはあり得ず、暴走する安倍政府が砂上の楼閣にすぎないこと、横暴さの裏側で支配基盤が弱体化している姿をあらわしている。


 今回の名護市長選では、500億円をエサにして利益誘導をやりまくったのが自民党本部及び安倍政府で、選挙で敗北した途端に「やっぱりあげない」などといっている。東京都知事の猪瀬直樹は5000万円が摘発されて知事を追われ、一方で石破茂は500億円の買収供応を公然と展開して逮捕すらされないという、異常な光景について問題にしないわけにはいかない。米国の庇護のもとでの選挙ならば、500億円の買収選挙も許されると思い、警察や検察をはじめとした権力機構もグルになって選挙違反天国をつくろうとしている姿である。石破茂を即刻逮捕することが待ったなしとなっている。


 名護市長選は、有権者である名護市民の意志を突きつけただけでなく、沖縄全県民の基地撤去を求める力が揺るぎないことを示した。政府や国家機構挙げてつぶしにかかった選挙で、金力や権力をはねのけて完全勝利するというのは、全国の経験を見ても決して容易なことではなく、歴史的な勝利となった。


 選挙は争点が鮮明だった。単純に辺野古移転に賛成か反対かという問題以上に、安倍戦争政治を覆す全沖縄の意志を鮮明にあらわすものとなった。安倍政府登場によって特定秘密保護法や安保基本法の改悪、集団的自衛権の行使など戦時国家体制作りが強まり、尖閣では武力衝突すら起きかねない緊張が激化するなかで、沖縄の米軍基地が直接ミサイルの標的にされかねないという切迫した戦争情勢のなかで、米軍基地の存在が大きく問われた。


 名護では辺野古移転が浮上して以後、選挙をすれば何度も推進派が勝ってきた。「国の安全保障のため」といって反対し難い状況をつくり、長年にわたって世論を抑え込んできた。ところが日米安保のもとでの「安全保障」というのが、いったいだれを守るのかという問題が、この間、鮮明になってきた。米軍の下請になって地球の裏側まで自衛隊が出動して鉄砲玉になり、米国や独占大企業の権益を守るために日米同盟の軍事力が展開されていく光景を沖縄県民はまのあたりにしてきた。


 米軍の横暴な事件は止まず、「安保条約」が日本を守るどころか米国本土防衛の盾にする米軍再編を進め、その傀儡である安倍政府が登場すると、憲法改定を叫んで尖閣問題でも大騒動をくり広げ、アジアの近隣諸国にも軍事挑発をくり返す馬鹿げた姿を露わにした。沖縄がもう一度ミサイルの標的にされ、命を失わなければならないという事態まできて、カネの問題ではなく命の問題であり、いったいだれを守るための基地なのかが鋭く問われた。日米安保が実質的に選挙の最大争点となった。そのなかで基地撤去世論が圧勝した。


 沖縄県内では、何年もかけて劇団はぐるま座が『原爆展物語』や『動けば雷電の如く』公演をとりくみ、沖縄戦で米軍によって県民を虫けらのように殺りくされた体験を発揚し、戦後米軍統治下の傍若無人な基地建設と体をはってたたかい、本土と連帯して「安保」破棄・米軍基地撤去のたたかいを発展させてきた沖縄県民の底流に流れている世論を激励してきた。選挙は、二度と沖縄を戦場にしてはならず、売国的な安倍戦争政治と正面から対決する大衆斗争として下からみなが立ち上がって熱を帯び、告示を迎えた段階ですでに勝負あったと見なされるほど圧倒する力を示した。名護市民だけでなくそこには沖縄全県の応援があり、さらに全国が連帯して沖縄のたたかいを注目するなかで、かつて経験したことがないほど権力が介入した名護崩しの攻勢を吹き飛ばした。名護市長選の勝利は、基地の「県外移設」とか「沖縄県民と負担を分かちあう」といって、本土と県民の連帯を内部から攪乱しようとする進歩的装いをした潮流や、商業マスコミが垂れ流す宣伝をうち破り、県民の固い団結を示し、全国の人人を大きく励ましている。


 「敗北を織り込み済み」といいながら、告示を迎えるまで負けるわけがないと確信して突き進んでいたのが安倍政府で、だからこそ沖縄選出の国会議員たちや仲井真知事も年末段階で移転容認になびき、買収選挙で勝てると信じて巨額の「振興費」をぶち上げ、裏切りその他の手続きをいっきに進めた。しかし告示を迎えて青ざめたのは彼らで、安倍政府の番頭を担っていた仲井真体制も揺らぐ事態に追い込まれ、11月の知事選で敗北を覚悟しなければならないほど、沖縄のなかで孤立を深めるものとなった。

 全国的な政治斗争必至 売国政府との対決 

 名護市長選の結果は安倍政府を震撼させる内容となった。メディアを動員した「高支持率」の化けの皮が剥がれ、強権といっても宙に浮いて根がないこと、民主主義に対する執拗で暴力的な挑戦を挑んでいるものの、団結した大衆の意志を踏みにじれるものではないことを思い知らせている。「選挙結果にかかわらず進めていく」といい、沖縄県民をあきらめさせようとしているが、実際には政府があきらめるほかなく、安倍暴走政治を頓挫させる突破口を切り開くものとなった。


 一昨年末の衆院選を経て、国会は民主党自爆のおかげで自民党政府が再登板し、「一強体制」となった。しかし国会の狭い枠内だけの独裁であり、民意がついていかなければなんの力も持たない。「高支持率」といいながら、地方選はドミノ倒しで連敗し、都知事選では候補擁立すらできず、ウロウロした挙げ句に除名した者を推薦。山口県知事選でも有権者の審判を極端に恐れているのが自民党で、いまや安倍政府は外交も行き詰まって、内政でもパンクを始めている。国会内は抑えられても民意は抑えられず、横暴に振る舞えば振る舞うほど足下ががたついて、崩壊に向かうほかない。


 名護市長選の勝利は、米軍基地を撤去し、独立と平和、民主主義を勝ちとるたたかいに鮮明な方向を示すと同時に、全県、全国と団結した統一戦線の運動と世論を無限に発展させるなら、いかなる権力であろうと打ち負かすことができることを確信させている。
 また、民意でどのような結果が突きつけられようが米国の意志のみを貫いていく傀儡政府の姿とその売国性を暴露し、これとの全国的な政治斗争が避けられないことを示した。

 名護市長選の勝利喜ぶ声

 高杉のように諦めない行動力が力に    沖縄県本部町 仲宗根須磨子

 最高の気分だ。今度の市長選は国とのたたかいだった。お偉方がいっぱい入ってやったが、市民は揺るがなかった。海にも陸にも絶対つくらせない。今回は相手方も推進をはっきり出したから争点が鮮明だったので、浮動票も全部反対でいった。これは市民だけでなく県民の勝利だ。実際、市だけの話でなく、みな名護に応援に来て、女性たちのところなどでも動きがあり、全県的に盛り上がった。みな知人たちにも連絡したり、投票の動きになっていった。一つ残念なのは、落選した相手方の顔を一度もテレビで映さないこと。早く見せろといいたい。
 基地をつくることとひきかえに金をやるといって、今さら金をもらってなにになるのか。基地ではなく、自分たちの力で地域を発展させ、経済も発展させるのだとの思いは、この四年間にも証明されている。参院選後すぐ市長選にむけた動きが始まったが、北部もみな力を合わせてやった。
 選挙期間中、石破は「(相手方が)当選したら、500億円あげますよ」と平気でいっていた。金で魂を売れといっているのと同じで、これに余計反発が出た。仲井真も腰を痛めているとかいっていたので車椅子で来るかと思っていたら、スニーカーをはいて小走りで回っていた。「東京の密室で沖縄を売り飛ばす話をしていたんだな」「バカじゃないか」とみな話していた。車椅子で来たら、まだ同情票もあっただろうに。
 県民の誇りは守れた。68年間ずっと沖縄は金をばらまけばなんでもできるという政府の差別とたたかってきたので、県民の民意を国に叩きつけた。今からも国はさまざまな形でくるだろうが、自分たちは身体をはってでもたたかおうと語り合っている。
 はぐるま座の演劇に勇気を与えてもらい、本当にこういうときのはぐるま座。高杉晋作のように、諦めない行動力でやるということが力になった。自分たちの手で平和を勝ちとる。今からがたたかいだと話している。ともに頑張りましょう。(50代)

 沖縄の新たな夜明け               沖縄県今帰仁村 謝花 弘
 
 名護市長選は他人事ではなかった。子どもたちの未来を奪うなという強い思いからだ。戦争体験者の一人として、その実体験からして、いかなるものをもってしても、未来永劫に戦争ができる状況を自分たちの住んでいるところに置くということ自体、絶対にあってはならないという思いだ。そのことをもって沖縄の新たな夜明けが始まる。劇団はぐるま座の演劇とも重なる。本土の人たちからもこの選挙の持っている重みを感じてもらえるのではないか。ほっとしているところだ。百歩譲っても合点がいかない。沖縄県民の一人として、訴えてきた一人として、教育行政の集まりでも話してきたし、個人としても教育者としても一歩も譲らないと貫き通した一人だ。だから本当にうれしい。(70代)

 全国的な動きが大切                沖縄県うるま市 伊計光義

 選挙は本当にヒヤヒヤした。政府自民党は金、金で釣ろうとする。稲嶺は平和を訴え、自然を大事に、人人の心を育んでいく方向を訴えていった。本当の意味の基地に頼らない北部振興を訴えていった。結果として、みんなの心がその方向に動いていったことは喜ばしい。心配しているのは、日本政府はなにがなんでも入札してくるだろうし、力で押し通そうとするだろう。それとどうたたかっていくかが問われてくる。仲井真知事はまったく愚かな人間だ。歴史に汚点を残す裏切り行為を見ても、これが沖縄県民かと怒りがこみ上げてくる。稲嶺が通るということは2日前から名護のみなさんの声からもうかがえた。全県の沖縄の心はその線だ。大切なのは全国的な動き、沖縄に対する意識というか、沖縄だけの問題にしてほしくない。全国的に意識を高めていくことが大切だ。頑張りましょう。(80代)

 命かけた斗い始まる             沖縄県那覇市 仲松邦雄

 選挙結果はよかった。大がその上につくくらい、大よかった。山口県は首相を除名しなさい。軍国主義にどんどん向かっている。右傾化そのものだ。劇団はぐるま座に、もっと頑張ってほしい。政府は金をばらまき、こじきをたくさんつくっている。政治家は嘘つきである。今から血を見るたたかいが始まる。国民を死なせても平気という奴らとどうたたかっていくか、命をかけてたたかうときが始まっている。(80代)

 社会動かすのは民衆            沖縄県那覇市 玉城峰子

 一つ一つのコマがゆっくりゆっくり動くのを感じた。みんな沖縄の人たちは芯の部分で身売りすることはない。沖縄は日本そのものですから、アメリカのいいなりで、アメリカの属国のようなものです。独立した一国にならないと世界の平和なんていっておられません。日本人は優しすぎる。奮い立たなければいけないものがあって、選挙結果はそれを教えてくれた。『雷電』の舞台で描かれていたように、社会は政治家が動かしているんじゃない、私たち民衆が動かしているんだということを教えてくれた。2014年の年明けにこういうことができたことは、とてもうれしく元気の出ることだ。(60代)

 国の露骨な圧力はねのけ世直しする時        沖縄県那覇市  野原郁美

 今回の選挙でみんな元気になってたたかう意欲が沸いてきている。「辺野古移設反対はあたりまえだが、県外にというのもおかしい。アメリカに持って帰るのが筋なのにそのことだけは絶対にいわれない。デモくらいやればいいのでは」と職場でも大話題となっている。今の状態はだれが見ても植民地状態だ。この現状を打開しなければならないとだれもが思っていたし、ここ最近は国の圧力が一段と強まり、大量の金をばらまいたり、昨年の年末には国会議員、知事までが懐柔され沖縄県民の怒りは沸騰していた。
 今回の市長選は従来の保守派の人たちの4分の1が稲嶺に投票したということもいわれているが、ここまでくると保守、革新はもう関係ないということがはっきりした。保守であれ革新であれ、根っこは同じ人民大衆なのだと改めて気づかされた。
 戦争体験者の人が、「こんなことは今まで体験したことがない。戦争も今までになく近づいているが、それでも負けていない」と大感動していた。
 これだけ争点をはっきりさせた真っ向勝負のたたかいで勝ったことは本当にすごいと思う。国も焦っているだろうし、もっと露骨に圧力をかけてくると思う。
 しかし、それをはねのけて世直しをするときがきている。

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