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議員は「反対」の公約覆すな 柳井市議会で上関中間貯蔵計画反対の請願が継続審査に 市民への裏切りと批判噴出

(2026年3月27日付掲載)

中間貯蔵施設反対決議を求める請願の継続審査に7人の市議が賛成した柳井市議会本会議(24日

 柳井市議会で24日におこなわれた最終本会議で、同市住民団体「上関の中間貯蔵施設を考える周防住民の会」(井上重久会長)が市議会に提出した「上関の使用済核燃料中間貯蔵施設計画への反対決議を求める請願書」をめぐる討論・採決がおこなわれ、採決の結果、賛否同数となり議長決裁により「継続審査」となった。同市では、昨年12月におこなわれた市議選のさい、住民の会がおこなった公開質問状で反対を求める請願が提出された場合「同意する」と答えた候補者が9人当選(定数16)し、中間貯蔵施設建設反対派が過半数になったはずだった。しかし今回の採決では、そのうち2人の無所属新人が継続審査に賛成し、もう1人の立憲民主党議員が「体調不良」を理由に欠席したため請願は採択に至らなかった。当選からわずか3カ月で有権者からの負託を裏切り、あえて結論を先延ばしにする継続審査に加担した議員に市民の批判が高まっている。

 

 山口県柳井市に隣接する上関町では現在、中国電力と関西電力による核燃料廃棄物の中間貯蔵施設建設計画が進められている。昨年8月には、事業者である中国電力が実施してきた立地可能性調査の結果について「技術的に対応できない問題はない」とし、町内の候補地が「適地」であると上関町に報告している。

 

 この中間貯蔵施設計画をめぐっては、2023年8月に計画が表面化した直後から、隣接する1市3町(柳井市、平生町、田布施町、周防大島町)の住民の間で「山口県を核のゴミ捨て場にするな」「なぜ関電の核のゴミを引き受けなければならないのか」と建設反対の声が拡大してきた。

 

 その後、周辺市町では住民団体や地元自治会が中心となって住民へのアンケート調査や反対署名をとりくみ、その結果を県知事や地元首長、議会に提出している。また、1市3町すべてでおこなったアンケート調査の結果では、回答した住民の平均74%が中間貯蔵施設建設に反対しており、賛成はわずか4%で、反対世論が圧倒している。

 

 さらに昨年2月におこなわれた田布施町議選では、中間貯蔵施設建設に反対する議員が多数当選し、議会で過半数を獲得。その後、同町内2つの住民団体が議会に反対決議を求める請願を提出し、町議会として中間貯蔵施設建設に反対する決議の可決を実現させている。

 

 このように、中間貯蔵施設建設をめぐっては上関町の周辺自治体で既存政党や企業とはまったく関わりのない市民団体や自治会など住民同士の横の繋がりを基盤とし、着実に反対世論が広がり、それが広く可視化されてきた。

 

 柳井市では2月18日に、「上関の中間貯蔵施設を考える周防住民の会」が柳井市議会に「上関の使用済核燃料中間貯蔵施設計画への反対決議を求める請願書」を提出した。同会は昨年8月にも請願を提出していたが、9月議会の採決で「継続審査」となって結論が先延ばしにされたあげく、12月におこなわれた市議選の実施にともない請願は「審査未了廃案」となっていた。

 

 反対決議を求める請願をまともにとり扱わない議会に対して住民の会は「市議選で反対派を過半数に増やして、3月議会で反対決議をあげよう」との目標を立てた。そして市議選前には候補者に対し中間貯蔵施設に対する態度や、住民が市議会に請願を再提出した場合の判断などを問う公開質問状を送付し、その回答結果とともに中間貯蔵施設の問題について訴えるチラシを作製した。同会はこのチラシを郵便局のタウンプラスを利用して市内の企業や商店などを含む1万5500軒に全戸配布し、中間貯蔵施設問題を市議選の重要争点とするよう市民に訴えかけた。

 

 住民運動の効果もあり中間貯蔵施設問題は市議選の大きな争点となり、開票の結果、中間貯蔵施設に「反対」と答えた候補者が10人当選した。公開質問状に無回答だった現職議員1人が落選したほか、「判断できない」など曖昧な態度を示した新人候補者は、若手候補であっても落選した。これまで無風の選挙が続いてきたなかで、昨年12月の市議選は、中間貯蔵施設問題を市政の重要争点として捉える市民世論の強さを示し、議会内の勢力図を大きく変える選挙となった。

 

 市議選後初めて開かれた3月議会は、住民の会が2月に再度提出した請願が諮られることとなり、その採決結果に注目が集まっていた。請願書では、以下の2点を訴えている。

 

――――――

 1、圧倒的多数の市民が不安を感じ、反対の意思表明もしている上関の中間貯蔵施設の計画に対して、市民を代表する柳井市議会として反対の意思表明をすること。
 2、決定権限を持つ県知事は「周辺市町の住民や自治体の判断も重要」と言っており、柳井市議会で反対表明をすることで県知事の判断に大きな影響を与えることができる。
 国と住民の利害が相反する今回の計画では、「国策という圧力に負けずに市民の安全を優先」することが、市民からの負託を受けた議員としての責任を全うすることである。

―――――――

 

 また請願書では、上関中間貯蔵施設の計画に対しては、柳井市民の圧倒的多数が反対であり、昨年8月に提出した反対署名は4172筆。一昨年の自治会経由のアンケートでは、約4000件の回答のうち、反対は72%で賛成は2%であると指摘。さらに昨年12月の選挙で市議会の議員構成が一新されたことにも触れ、「市民の声を(従来よりもさらに)しっかり聞き、市民に寄り添った議会への進化が期待されている」とのべている。

 

 そして多くの議員たちが選挙で訴えた「子どもたちが未来も安心して暮らせる柳井市」にしていくためには中間貯蔵施設計画が大きな阻害要因だと訴えている。

 

 さらに、核燃料サイクルの当初の柱であった高速増殖炉もんじゅの失敗、再処理工場竣工が27回延期中、MOX燃料加工場竣工が8回延期中、加工済みの燃料は1割しか使い切れない、最終処分場もまったく目処が立たない状況のなかで、中間貯蔵が結果的に永久貯蔵になる懸念が払拭できないと指摘。

 

 そのうえで「地方自治の本質として、柳井市の未来は柳井市民・議会・市長が決めることである。国に押付けられようとしているリスクから市民の安心安全を守るためには、今、反対決議が必要である」と訴えている。

 

可決するはずだった請願 結論先延ばしに

 

 請願はまず、17日におこなわれた厚生常任委員会で審議された。委員10人のうち、選挙前の公開質問状で「反対請願に同意する」と答えていた議員は6人。そのため選挙後の勢力図で見れば票を持たない議長を除き、6対3で請願への賛成が多数を占めるはずだった。

 

 しかし、挙手による採決の結果は4対5で「継続審査」への賛成が多数を占めた。もともと「請願に同意する」といっていた6議員のうち、中本、佐々木の新人2議員が継続審査に賛成した。中本氏にいたっては市議選の選挙公報にも中間貯蔵施設に「反対」と明記し、「私自身が使用済み核燃料中間貯蔵施設について勉強し、皆様に伝えられる存在を目指します」と書いて支持を訴えていた。

 

 継続審査とすべきとした議員らの言い分は「事業計画が出たうえでしっかりとした判断をするべき」「(請願には)大多数の市民とあるが、大多数ではない」「(周防住民の会だけでなく)他の団体による調査の結果も踏まえたい」「市民が反対しているから議会で反対表明するものという部分については意見が異なる」「慎重かつ情報の収集を務めていくことが重要」などだった。

 

 継続審査とは、請願に賛成しない議員らが結論を先延ばしにするためのいわば中間貯蔵施設建設への「消極的容認」である。新人議員らのあまりの変わり身の早さに対し、傍聴した市民の間では「投票した有権者への裏切りではないか」「こんなことをやっていては2期目はない」と怒りの声があがった。また、委員会終了後には継続審査支持に回った新人議員を市民がとり囲んで追及する場面もあった。

 

 委員会が下した「継続審査」をめぐり、24日の本会議で改めて討論・採決がおこなわれた。本会議直前までの見立てでは、議長を除く15人の議員のうち、7人の議員は請願賛成の意志が固まっており、一方で反対の議員も7人と見られていた。残る1人は平岡実千男議員(立憲民主党・自治労支援、3期目)で、反対請願が可決されるかどうかは平岡氏の1票にかかっていた。

 

 市議選前の公開質問状で平岡氏は、中間貯蔵施設計画に「反対」であり、反対請願が提出された場合は「同意する」と答えていた。しかし当選後からこの3カ月間の振る舞いを見ていた支持者らの間では「実際に本会議でどう出るかがわからない」といわれるほど、明らかに揺らいでいるそぶりが見られていたという。

 

 そのため心配した市民が、17日に厚生委員会で請願の継続審査が決まった直後に平岡氏に連絡したところ、同氏は新人議員2人が請願の継続審査に賛成したことに憤りをのべ、「新人には荷が重い」「この請願に対する判断に政治生命をかける」と継続審査に反対する意志を示していたという。

 

 だが本会議当日、議場に平岡議員の姿はなかった。当日の朝、議会事務局に「体調不良で欠席する」という連絡が入っていた。

 

 1人欠席のまま最終本会議が開会し、議長を除く14人の議員による採決がおこなわれた結果、継続審査に「賛成」が7人、「反対」が7人で賛否同数となり、最終的に山本達也議長による議長決裁で請願の継続審査が決定した。

 

 選挙前に請願に同意するといっていた9人の議員のうち、平岡氏が欠席したほか、厚生委員会での採決結果と同様、中本氏、佐々木氏が継続審査賛成に回った。また、元柳井日々新聞(昨年廃刊)社長の友座氏も、公開質問状では中間貯蔵施設建設に「反対」と答えていたが、請願の継続審査に賛成した。

 

選挙での約束果たせ 地域の未来閉ざすな

 

 本会議での採決の前には、賛成・反対それぞれの立場から議員らが討論をおこなった。請願の継続審査に反対の立場からは、長友、三島、中川、山本澪馬の4議員が反対討論をおこなった。

 

 このうち新人の山本澪馬議員は、継続審査に賛成する議員らの「事業計画の提出や事業者からの説明を受けて、時間をかけて判断すべき」という意見に懸念を抱いているとのべた。その理由として、当初の事業計画になかったものが施設建設後に提案されることがあるからだとし、その具体例として、青森県むつ市の中間貯蔵施設をあげた。

 

 山本議員は、当初むつ市の中間貯蔵施設に使用済み燃料を搬入できるのは東京電力と日本原子力発電の2社だけだったが、操業開始後わずか1年でむつ市は「他社燃料の受け入れ」という変更を提案され、現在受け入れの方向で話が進んでいることを指摘した。

 

 そのうえで「今後(上関中間貯蔵施設の)事業計画が提出され、例えば市民の皆様が仕事を休んで、もしくは育児や介護の合間をぬって何とか時間を作って出席した説明会で事業者からの説明を受け、時間をかけて丁寧に議論を尽くして合意形成のうえで建設がおこなわれたとしても、その後に当初の計画や約束と異なる厳しい提案がなされることは“可能性”ではなく“現実”のものとして起きている」とのべた。

 

 そして最後に「一度施設が建設されれば後戻りはできない。建設の後、そういった変更の提案は一度のみならずさまざまな形でなされるかもしれない。例えば、核燃料サイクルの見通しが立たないことや、最終処分地が決まらないことを理由に、貯蔵期間の延長が将来的に提案されることも考えられる。こうした変更の影響は何十年にも及び次の世代に思わぬ負担を強いることにもなりかねない。事業計画の提出や事業者からの説明を受け、時間をかけて判断したとしても、その先に厳しい未来が見えているとしたら、私は継続審査に賛成することはできない」と訴えた。

 

 請願を提出した「上関中間貯蔵施設を考える周防住民の会」の井上重久代表は、柳井市議会の対応をめぐり「市議選後は10対5で勝てると思っていた。継続審査にはならないつもりで議員にも個別にお願いしていたので、こういう結果になることはあまり予想していなかった。時間稼ぎという方向に行ってしまった議員がいたことは残念だし、3人の議員への失望感はかなり強い。いずれにせよ継続審査で時間稼ぎをすることが建設を進める方向であることは間違いない。少しずつ(中間貯蔵施設を)つくる方向で物事が動いていることに危機感がある」とのべた。

 

 一方で「市議選では、事前の公開質問状で請願に同意すると答えた9人の議員が当選しており、柳井市民の中間貯蔵施設反対の意志を選挙で示すことができたという事実が覆ることはない」と語った。

 

 また「昨年12月の市議選では、各候補者に公開質問状を送って中間貯蔵施設建設に反対する請願に同意するかを問い、その答えをチラシにして全戸配布して市民に開示している。これは半分“公約”のようなものだ。なかには選挙公報にも“中間貯蔵施設反対”と書いていたのに継続審査に賛成した人もいる。率直にいって、市民に対する裏切り行為だ」「“事業計画が出てからでないと判断できない”という議員については、事業計画の何をもって判断するつもりなのかというのが私には見えない。使用済み燃料が関西から来るということや、100%の安全は誰も保証できないこと、万が一、福島第一原発のような事故が起きたときに、議員誰一人として責任をとることなどできない。さらに柳井市議会の判断が村岡知事の判断に大きな影響を与えることになる。これらの“前提条件”は、事業計画が出ようが出まいが変わることはない。それだけでも十分判断できるはずだと思う。そのうえで市民の声を聞けば、“継続審査”という判断には至らないはずだ。そういう意味でも、とても残念だ」と話していた。

 

議会状況を市民に周知 住民団体は報告活動へ

 

 住民の会は今後、まずは今回の議会における請願の採決結果と各議員の投票内容をこれまでと同様にチラシにまとめて配布し、市民に報告する予定だという。

 

 議会傍聴に訪れた市民の間では、選挙前には「反対」の立場を表明しながら、請願の継続審査に賛成したり、欠席した市議に対する怒りと失望の声があふれた。

 

 ある女性は、平岡議員が欠席したことについて「市民からの負託を受けた議員でありながら、もっとも重要な最終本会議を欠席するというのはあり得ない。仮に体調が悪かったとしても、議員ならば這ってでも議場という公の場で正々堂々と態度を示さなければならないはずだ。平岡議員は考えられるなかで最悪の選択をしたと思う。“政治生命をかける”といっていたそうだが、今回の件で政治生命が断たれることになると思う。継続審査ということは六月議会でもまた採決があるだろうが、また“体調が悪い”といって欠席するつもりなのだろうか。これからどんな顔をして議員を続けるつもりなのだろうか」と話していた。

 

 別の女性は「意見を翻した佐々木議員の継続審査への賛成討論を聞いていたら怒りで震えてきた。中本議員も子ども食堂をやっているが、子どもたちを目の前にしてよくこんなことができると思う。周囲には“最後は中間貯蔵に反対するから長い目で見てくれ”と話しているそうだが、継続審査に賛成するということは、事業計画の内容によっては賛成する可能性があるということではないか。その条件は何か?カネか? だったら最初から選挙で“反対”などというべきではない。いくら新人議員だからといって、有権者をバカにするなと思う。市民の負託への裏切り市議会として、リコールしたいくらいだ」と憤った。

 

 傍聴した男性は「市議選後から、中間貯蔵反対派議員への切り崩しは議会内でもかなりあったと思う。欠席した平岡議員は、市議選後に総務文教委員会の委員長ポストをあてがわれていたし、山本議長をはじめ推進派からの懐柔もあったのだろう。衆議院選後におこなわれた平岡秀夫(元立憲・山口2区)の報告会にも出席していなかったし、明らかに動きがおかしかった。市議の裏切りは許せないが、こういう切り崩しもあるのが政治の世界なのだろう。だからこそ私たちもまたこの議会の動きをチラシにして市民に報告しなければならない。ただ、一ついえるのは請願に対して議員は誰一人として“反対”といえなかった。これは議員たちが市民のなかで中間貯蔵施設反対の世論が圧倒していることを十分理解しているからだと思う」と話した。

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