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「TACO」 るトランプ

 ウォール街のアナリストたちがトランプに「TACO(トランプはいつも怖じ気づいて退く)」呼ばわりしていたのが俗語として広まり、日本国内でもイラン情勢を巡るトランプの振る舞いについて「TACOる」等々の表現を目にするようになった。「地球の表面から吹き飛ばす」「今夜、一つの文明が滅びる」といった大言壮語で恫喝したり大風呂敷を広げながら表面上は誤魔化し、実際にはアメリカの無様な敗北という局面まできて、ある意味TACOりつつ最後まで「勝った! 勝った!」と叫び続けるのがトランプなのだろう。「試合には負けたが勝負には勝った」とかの訳の分からない負け惜しみと同じで、この手の類いは精神勝利法で「敗北」を認めないのである。

 

 しかし世間もそろそろ「またトランプが大きいことをいっている」くらいに思って大言壮語を右から左に受け流す雰囲気である。というか、むしろ「四の五のいわずに戦闘を停止して、ホルムズ海峡を安全に航行させろ!」と世界中が思っているに違いない。アメリカのせいで原油が届かず、国民に節約を訴える国や公務員に在宅勤務を求める国だって出てきており、この状態が長引けば長引くほど暮らしや経済への影響は甚大である。いちゃもんをつけて桎梏になっているのは誰の目から見てもトランプなのである。

 

 イランのアラグチ外相がこのタイミングで堂々と訪中したのを受けて、アメリカは急遽「プロジェクト・フリーダム(ホルムズ海峡を逆封鎖して、イラン以外の船舶を米軍が護衛して自由に通航させる作戦)」を停止した。5月中旬に予定されているトランプの訪中と習近平との首脳会談を前にしてTACOったのか、これまで黙ってきた中国の存在は無視できないようである。現状ではパキスタンが仲介してイランと米国は交渉を続けてきたが、中国のみならず影響を被ってきた各国ももっと身を乗り出して停戦につなげていく動きが不可欠で、なかでも5月の米中首脳会談で中国がどのような姿勢を示すのかは大きな注目点である。方や本来なら伝統的な親日国であるイランとの橋渡し役として日本政府が関与できるはずなのに、米国に追随するばかりでホルムズ海峡の安全な航行を取り戻すような関わりは皆無なのが情けない。

 

 石油の国家備蓄がいくらかあって、また政府をしてガソリン価格を補助金で抑えているから表面的には騒ぎになっていないだけで、オイルショック並みのパニックになってもおかしくないのが現状である。それはもう驚くほど日常を支える身の回りのすべてのものが石油由来でできており、「産業のコメ」といわれるナフサが枯渇すれば国内産業も経済も全面的に大ピンチを迎えることになりかねない。農業も医療も影響を被る。200万バレルを積んだ出光丸一隻では国内消費量の1日分にも満たず、安全な航行を早期に取り戻して365日継続的に石油を輸入しなければ、日本国内だけを見ても当たり前の日常や経済活動は戻らず、暮らしが脅かされることになる。

 

 それにしても現代文明の基盤エネルギーとなった「地球の贈り物」である原油のすごさを改めて思い知らされる。それ自体黒いネバネバした物体であるのに、発見して利用するまでに至った人類の営みの過程や、精製して幾重にも異なる成分をとり出して今日に至る産業が発達してきたことなど、単に車や動力の燃料というだけでない存在感に圧倒される。科学的に貪欲に研究して各種製品にしてきた人々の存在やその努力など、想像するだけで感嘆させられるものがある。地球の誕生以来長年月にわたってできあがり蓄えてきた地下物質を有用な資源としてフル活用しまくっているのである。

 

 “T”RUMP
 “A”LWAYS
 “C”HICKENS
 “O”UT

 

 「TACO」るなら早く「TACO」れと思う。ビビッて逃げ出しておきながら「勝った! 勝った!」と叫ぶのはみっともないが、それでホルムズ海峡の安全な航行がとり戻せるのなら、トランプが格好悪かろうがどうでもいいことである。湾岸諸国の米軍基地も一六カ所が壊滅的な打撃を受けて戦闘どころではなく、既に命からがら逃げ出しているのが米軍である。チキン・アウトなのである。

 

武蔵坊五郎       

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