(2026年5月4日付掲載)

訓練中に砲弾が暴発して3人の乗員が死亡した陸上自衛隊「10式戦車」(4月23日、大分・日出生台演習場)
大分県の陸上自衛隊日出生台演習場で4月21日、実射訓練中に戦車の砲塔内で砲弾が暴発し、搭乗していた自衛隊員3人が死亡、1人が重傷を負う痛ましい事故が発生した。これに対し4月27日、地元市民団体が声明を発出し、大分県庁で記者会見をおこなった。会見したのはローカルネット大分・日出生台、湯布院ミサイル問題ネット、大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会、戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワークの四団体。大分県では敷戸弾薬庫への長射程ミサイル大型弾薬庫の建設をはじめ、日出生台演習場での米海兵隊演習に新たな重火器の追加、湯布院駐屯地へのミサイル連隊の新設など各地で軍拡がおし進められている。そのなかで発生した事故に対し「技術的な問題ではなく、軍拡路線のなかで起きた事故だ」と批判の声が上がった。
「基地周辺住民も当事者になり得る」

記者会見をおこなう市民団体の代表ら(4月27日、大分県庁)
初めに大分敷戸ミサイル弾薬庫を考える市民の会の共同代表である神戸輝夫氏が挨拶をおこなった。神戸氏は「日出生台で陸上自衛隊の3名の方が亡くなられ、1人が重傷という痛ましい事故が発生した。高市内閣が昨年10月に発足して以来、急ピッチで軍拡がすすめられ、大分では長射程ミサイルの弾薬庫が5月末に完成する。対中国、台湾有事を睨んだ動きが、米軍の動きとともに活発化しているなかでの事故だ」と指摘した。昨年8月にも同演習場で陸上自衛隊員2名が落雷によって死亡するなど死亡事故があいつぐなか、「今回の事故は市民や自衛官のなかにも大きな不安を呼び起こしている。沖縄から九州へのミサイル配備が進むなか、われわれは再び戦争をしないという憲法九条のもとで平和を続けていくために行動していきたい」と訴えた。
次に日出生台演習場のある地元の湯布院ミサイル問題ネットとローカルネット大分・日出生台を代表して鯨津憲司氏が発言をおこなった。
同会は地元からの提言として、事故の根本原因が解明できるまでの日出生台演習場での実弾訓練の中止、第三者による調査委員会の立ち上げ、日出生台演習場周辺住民のみならず弾薬運送ルートの沿線住民、大分分屯地(敷戸弾薬庫)周辺住民への説明会の開催を求めている。
鯨津氏は「地元住民としても非常に不安に思っている。調査委員会を立ち上げて調査をするというが、技術的な問題や操作、機械的な問題に焦点を絞るのではなく、もっと広い範囲で調査をして解明してほしい。現在自衛隊は充足率の低下のなかでさらなる装備品の多様化と高度化などの重圧がかかっている。単に機械的や技術的な問題ではなく、自衛官が抱えるいろんな問題が背景にあってこのような死亡事故になったのではないか。内輪の捜査ではなく、公正な第三者による調査委員会を立ち上げて調査することが必要だ」と訴えた。
そして今回の事故が、現職の自衛隊幹部からも「極めて異例」といわれていることに対し、「自衛隊でさえも想定外な事故であったということは、自衛隊や演習場内だけではなく周辺住民や一般市民を巻き込む形で発生することも十分考えられる。日出生台演習場での実弾演習の場合、一般道を通って自衛隊車輌が弾薬を運び込んでいる。不足の事態による暴発ということであれば、その沿線上に住む住民、そして演習場周辺の住民も含めて危険な状態になる。今後の安全管理や再発防止を実行していくうえで、自衛隊だけではなく、一般市民・住民についても安全対策をし、説明をしていくことが望まれる」とのべた。
大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会の葛城知明氏は、「今回の事故が起こったのは、この間の拙速で杜撰(ずさん)な軍拡の結果だと思っている。現在の人命軽視の状況がこのような事故をもたらした」と強く批判した。
そして熊本・健軍駐屯地に長射程ミサイルが配備されたさいに、自衛隊トップである統合幕僚長が「地元の不安よりも抑止力、対処力を高める効果の方が大きい」と豪語したことを引き合いに、「この言葉に彼らの本音があらわれている。今回の事故が起こったその日に、九州防衛局は日出生台演習場での在沖縄米軍の新たな武器の使用を迫る地元自治体説明会を開いている。厚顔無恥にもこれを同日に開催するという無神経ぶりは何なんだろうか。自衛官が3名も亡くなっているその日にこんな説明をすることがあり得ない。奇しくもこの日は武器輸出の閣議決定がされた日だ」と怒りを露わにした。
敷戸弾薬庫問題を考える市民の会が発出したアピール文では、「重大なのは、今回の事故が『殺傷能力を持つ武器輸出の解禁』を決めた閣議決定のまさにその日に発生したという事実である。政府が武器輸出を拡大し、『戦争のできる国』への転換を加速させるその足元で、自衛官の命が奪われたのである。この矛盾をどう説明するのか。現場の安全も命も顧みず、対米公約と対中国抑止を口実に軍拡を無計画に矢継ぎ早に前倒しで強行する姿勢こそが、今回の事故を引き起こした根本原因である」と指摘している。
そのなかで現在進められている敷戸弾薬庫での長射程ミサイルの弾薬庫建設は、「保安距離の不備、事故時対応の不確実性、非現実的な避難計画――いずれも住民の命を守る観点が欠落している。それにもかかわらず、防衛省は説明責任を果たさず、住民の声を無視し続けている。この姿勢自体が、今回の事故と同根の問題である」として批判している。
葛城氏は、「今回暴発した弾薬がもしかしたら敷戸弾薬庫から運び出されたものかもしれないなど、私たちは事故と敷戸弾薬庫の関連性について危惧を抱いている。戦争は決して抽象的な政策ではない。その末端で命を失うのは現場の人間だ。住民であり、自衛官だ。こんなことを許してはならない。地域に暮らす市民が犠牲になることは十分あるし、長射程ミサイルが飛んでいく先の国の人たちも犠牲になる。こんなことを許してはならない」と強く訴え、実弾演習の全面中止や安保三文書に基づく政策の見直しと撤回、そして敷戸弾薬庫における長射程ミサイル用大型弾薬庫建設計画の即時中止と撤回などを求めた。
「肉片を集め人数で割る」 凄惨な事故現場

日出生台演習場での日米共同訓練(ローカルネット大分提供)
次に、沖縄・西日本ネットワークの池田年宏氏が、同ネットワークが発出した声明についてのべた。沖縄・西日本ネットワークは、現在全国で進んでいる軍拡に危機感を抱いている市民が、「何とかしなければならない」と沖縄・西日本を中心に集ったもので、それぞれの場所でおこなわれている軍拡や基地問題について互いに情報を共有し、それぞれの地域の独自性を尊重しながら、戦争を止めるためのネットワーク作りをしている。
池田氏は「戦争のための訓練によってかけがえのない命が失われたということに深く悲しみを禁じ得ない」とのべ、沖西ネットの発出した声明について語った。
声明では、「厳重に管理されているはずの演習場内でさえ、凄惨な爆発事故を防げなかったという事実は、住宅地に隣接する弾薬庫や、一般道を使用した弾薬輸送がいかに制御不能なリスクを孕(はら)んでいるかを明白に物語っている。保安距離の妥当性に対する疑義、火災などの緊急時における不透明な対応、そして実効性を欠いた『机上の空論』に過ぎない避難計画。これらはすべて、周辺住民の命と生活を一顧だにしない計画の脆弱さを露呈させている」「政府・防衛省には、残虐で危険な兵器を保管する施設が地域住民の日常生活と地続きであるという現実を改めて重く受け止めていただきたい。人の命を奪う、戦争のための施設である弾薬庫の建設やミサイル配備に対し、私たちは自身と全国すべての住民の安全と尊厳を守る立場から、改めて断固として反対の意志を表明する」と訴えている。
そして「現在、世界ではアメリカによる国際法違反の侵略戦争が横行し、国内では中国脅威論が蔓延(はびこ)り、生活苦を顧みない軍事力強化一辺倒の政治が進んでいる。こうした『戦争』に向けて突撃するかのような政治の暴走は、かつての日本軍の無謀な戦争戦略を彷彿とさせる」「今政権内部には、戦争の実相を知らない世代が、空疎な言葉で防衛問題を語っている。いかに軍事がAI化されたとしても、その末端で失われるのは生身の人間の命であり、苦しむのは一人ひとりの民衆だ」としたうえで、今回の事故について、第三者機関による事故の究明と結果の公表、敷戸弾薬庫をはじめとする大型弾薬庫の計画・建設の撤回、九条等の平和憲法を活かした対話による平和友好外交に舵を切ること等を求めた。
池田氏は「10式の戦車の暴発ということだが、これは日出生台に特化している訓練ではなく全国でおこなっているという。今回は日出生台で3名の死亡事故が起きたが、どこで同じような事故が起きていてもおかしくない。国は抑止力という名の下に軍備増強、住民の安全と尊厳に対する軽視をおこなっている。この軍拡路線は日常の生活を破壊しながら、そして今回命を奪うまでになった。人を殺すための訓練で命が奪われたということを認識しなければいけない。軍拡路線を改めて、対話による平和構築の道を歩んでほしい」と訴えた。
その後、沖西ネットの共同代表であり、熊本で健軍駐屯地への長射程ミサイル配備反対の運動をおこなっている海北由希子氏がオンライン参加し意見をのべた。
海北氏は「熊本県民は家族に一人は自衛官がいるというくらい自衛官は身近な存在だ。今回の事故は、亡くなった方が自分の子どもや夫だったらと考えてしまうくらい他人事ではない。戦車のなかで弾薬が暴発して亡くなったということは、そのご遺体の状態は想像に難くない。元自衛官の方に話を聞いたが、そのようなご遺体は肉片を集めて重さを量り、人数分で割って遺体として処理するという。今回の事故は決して美化してはならず、真剣にリアルに考える必要がある」と訴えた。そして長射程ミサイルが配備された健軍駐屯地でも弾薬庫建設計画が浮上していることに「健軍駐屯地は街のど真ん中にある。私たち住民は、いつ爆発するかわからないという危険な状態に置かれることになる」と憤りを語った。
近年自衛隊では、23年4月に宮古島沖で陸自のヘリが墜落して10人が死亡、24年4月には伊豆諸島沖でヘリ同士が衝突し8人が死亡、25年5月には愛知県犬山市で練習機が池に墜落して2人死亡、同年8月には日出生台演習場で落雷によって2人が死亡するなど重大事故が毎年のようにくり返されている。
会見に参加した男性は「私は事故の背景として、自衛隊のなかに旧日本軍に対する親近感が一層深まっており、そこに命を軽視する思想が入り込んでいると思う。靖国神社に陸自、海自が集団で参拝し、自衛隊の元幕僚長が宮司に入った。このように靖国思想が自衛隊のなかに入れられている。これは死を美化する思想だ」と指摘した。そして「現職の自衛官が中国大使館に乱入したり、自民党大会で自衛隊員が君が代を歌唱するなど、自衛隊そのものの規律が崩れてきている。その一方で死を美化するような状況がこれを生み出している。そして政府・防衛省が責任をとらない。不祥事が起きたり人が死んでも最高責任者が責任をとろうとしない。これが根本的な欠陥だ」と厳しく指摘した。
事故の発生から現在にいたるまで、地域住民や自治体に対して防衛省や自衛隊から一度も説明はおこなわれていない。これに対しても「被害を受ける可能性があり当事者でもある地域住民にどのような状況で何が起きたのか、どのような危険性があるのかなど説明をしてほしい」との意見もあがった。
新たな火器の追加説明 事故同日、九州防衛局
また九州防衛局は、暴発事故が発生した日に大分県や地元自治体に対し、日出生台演習場での米軍実弾砲撃演習における新たな武器の使用について説明をおこなっている。これに対し、ローカルネット大分・日出生台は27日、県に対し質問書を提出した。同会の浦田龍次氏は「戦車の暴発事故が発生し、住民の不安が高まっているなかで、さらに新たな火器を追加しようとする国の姿勢に対し疑問を感じざるを得ない。私たちはどうにかしてこの動きを止めようと思っている」と訴えた。
今回の追加火器の問題は、昨年12月に九州防衛局が大分県をはじめとする日出生台演習場問題協議会(四者協)に対して、在沖米軍の実弾演習において迫撃砲やロケットランチャーなどの対装甲車両火器を追加したいとの意向を表明したことに始まる。
沖縄の負担軽減として日米合意のもとに始まった日出生台演習場での在沖米軍の実弾訓練だが、当初は155㍉榴弾砲のみであったものが十数年前に機関銃などの小火器が追加され、今回新たに対装甲車両火器が追加されようとしている。浦田氏は「最近では沖縄ではやっていなかったような訓練までおこなわれるようになっている。今回の追加火器を受け入れてしまえば、次々と新たな兵器の訓練を日出生台でおこなうための突破口になってしまう。米海兵隊の狙いは本土の演習場で無制限に訓練をすることだ。絶対にこれを受け入れるわけにはいかない」と訴えた。





















