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混乱極める豊北病院のその後 コンサル企業「ゲートウェイ」の責任問う声 医師不在が常態化し職員も無給状態 行政が動かぬ不思議

医療法人豊愛会・豊北病院(下関市豊北町粟野)

 「病院崩壊」が危ぶまれてきた下関市豊北町粟野にある医療法人豊愛会豊北病院(伊藤實喜理事長・平石貴久院長)の運営が苦境を迎えている。ボーナス遅配やスタッフへの不誠実な対応が発端となった2019年末の職員一斉退職以降、細々と外来を続けながら翌2020(令和2)年から「再建」に着手し、入院や通所リハビリを再開してきたが、2021年頃には取引先事業者への未払いが再び発生しており、その経営状況が危ぶまれてきた。2022(令和4)年1月には当時の院長兼法人理事長であった入船龍也医師が病院敷地内の自宅で自死するという悲劇も起きた。その後、法人理事長不在の期間を経て現在の体制になっているが、そのもとでまたもやスタッフへの給料の一部未払いや取引先への未払いが起きている。さらに大きな問題として、医師不在をはじめとした違法行為が常態化していることや、入院患者に対する過酷な扱いなど、医療や福祉を度外視した病院経営の実態が「再建」を担ってきたスタッフたちの証言により浮かび上がっている。こうした事実に関して本紙が報道したのが昨年12月で、病院側も未払いに関して会見を開くなどしたが、それから約1カ月間を経て事態は急展開を迎えている。

 

病院側の記者会見から1カ月…

 

  昨年12月以降の動きとしては、12月13日に豊北病院の石川圭一理事が会見をおこなっている。ただ、11月29日に取材に行った本紙には会見の件は連絡もなにもなく、一部のマスコミのみ連絡があったようだ。会見のなかでは、スタッフに未払いとなっている2023(令和5)年6月分の給料については月末(12月末)に払うこと、取引業者への未払い金については黒字化が見込まれる来年(2024年)3月以降におこなっていきたいなどとのべている。

 

  多くの関係者がこの会見を見て「黒字化なんて絶対無理だ」「今の状況でどうやって患者を増やすのか」「被害者が増えるだけだ」という声をあげている。未払いになっている取引業者たちも会見の様子に「まったく申し訳ないなど思っていない」と怒っていた。笑みまで浮かべて平然とのべていたこの石川理事こそ、入船院長が生前豊北病院に連れてきたコンサルタント会社(株)Gateway(以下、ゲートウェイ)の代表だ。もう1人、事務員として12月末まで勤務していたゲートウェイ元代表の川﨑美穂氏がいる。2019年の一斉退職時期を含めて、病院を去ったスタッフたち、取引業者、地域住民までもが口をそろえて問題にしているのがこのゲートウェイなのだ。

 

 12月15日には下関市(保健所)が立ち入り検査をおこなっている。具体的になにを見てどのような指導をおこなったのかは不明だが、そこで医師の不在が指摘されているのは明らかだ。ただ、現段階まで状況はなにも改善されていない。

 

 A 12月28日に支払われる予定だった12月分の給料が全スタッフに全額支払われなかった。その理由として病院内では「一部の心許無いテレビ放送・新聞報道の掲載により、資金繰りにも悪影響が発生。来たる12月25日、ファクタリングの継続も厳しくなってしまいました」(原文ママ)という通知が伊藤實喜理事長、石川氏の連名で伝えられたという。「心許無い」についてはよくわからないが、お金が病院に入ってこなくなったことを報道のせいにしているそうで、なぜ報道されるに至ったのか、どれほど人に迷惑をかけているのかについてはないようだ。この通達のなかでは、遅れた給料は年が明けた1月12日に支払う予定としていたが当日になっても払われず、今度は「22日に払う」としたがそれも払われなかった。次の予定は29日だそうだ。

 

 B 1月20日には石川圭一氏が豊北病院に来てスタッフに状況を説明したという。その内容は、22日の給料の支払いが難しいこと、23~25日にかけてお金を工面してくれそうな東京の会社に本人が面接に行くこと、返事は26日ごろになるだろうとのことだ。さらにその会社の支援が受けられれば29日に12月分と1月分の給料を支払うことができるとか、その場合は豊愛会はなくなって新しい法人になるとか、支援を断られた場合は倒産し給料も払えなくなるなどがスタッフの間に伝わっている。

 

 新法人といっても医療法人の立ち上げは簡単ではないし、事業者への未払いも山ほど抱えているのに今の病院を誰かが買収することも考えにくい。その場しのぎのことをいうのはみなが経験済みなので、一部では時間稼ぎではないかと見られている。取引先業者に対しての支払いも現段階ではなされていないようだ。

 

更なるスタッフの減少 12月分の未払い契機に

 

  給料が払われなければスタッフが去っていくのは当然で、12月分の未払いを発端にスタッフがやめていっている。なかでも深刻なのは、非常勤で週2日(水・木)来ていた医師までこれまでと同じようには来なくなっていることだ。この医師についても給料が払われていなかったようなのだが、交通費さえも出せなくなったことが影響しているのだと話されている。ただでさえ医師不在状態だったのに、さらに医師がいなくなれば伊藤理事長のみになってしまうのではないか。しかも伊藤理事長も「東京上野マイホームクリニック」で医師をしているためか週2日~3日の勤務となっている。それどころか「豊北病院に来る予定の日でさえいないことが多々ある」「あてにならない」とスタッフのなかで話題になっている。

 

 現在も豊北病院は58床の療養病床を持つ病院であり、外来も通所リハビリもやっている。「常時1名」の医師が必要で、医師不在は完全な違法状態だ。そのほか薬剤師も病院からいなくなっているとか、給料が払われないならやめるといっている専門職もいることが話題になっている。年末年始にかけて混乱に拍車がかかっており、維持・存続は絶望的だ。ちなみに、事務所でお金の管理をしていたゲートウェイの川﨑氏も1月から来なくなっているようで、「逃げたのではないか」といわれている。

 

 しかも病院を去るさいに外来売上の一部を持って出たという話になっている。前からそうだったのだともいわれていて、そうしたお金をどこに持っていったのかはきちんと説明しなければならない。本紙が川﨑氏に会ったさい、自身のことを「事務だけで働いている」スタッフであり「経営には関係していない」といっていたが、そんな人物が現金を持って出るだろうか。なんの支払いなのか、どこに持っていくのかは知らないが、事実であるならよほどの権限がなければできない行為だ。行方がわからず連絡すらとれない状態といわれているが、川﨑氏が皆の前に戻ってきて身の潔白なりを証明すべきだろう。カネを持ち出したのが事実なのであれば、病院に戻すべきだ。

 

 A それとスタッフへの給料に関してだが、実際に受けとっている金額と源泉徴収票が違うことが話題になっている。源泉を見たスタッフが「こんなにもらっていない!」と驚いている。また未払いになっている部分についても払ったように給与明細と源泉徴収票が作られている人もいるようだ。そんな金額もらっていないのに、高額な税金や医療や年金保険料が請求されることになるのだからたまったものではない。一銭ももらってないのに数千万円の源泉徴収票が届いた医師もいるらしい。実際に源泉徴収票を書き換えてほしいと事務に連絡したり、行政機関に相談に行っているのが現実だ。

 

 実際に払われていない(口座に振り込まれていない)金額が払ったことになっていたり、口座に振り込まれた金額と源泉徴収票が違っていたり…。スタッフたちは「私たちの給与はどこに消えたのか」「源泉と現実の差額はどこに払われているのか」と口々にいっているが、これらがなにを示しているのかは明らかだろう。

 

  給料から天引きしていた市県民税を納めていないとか、給料から天引きしていたアパートの電気代を払っていなかったとか、この人たちの倫理観はどうなっているのかと思う。利益を得るためなら人が苦しもうがどうでもいいのだろう。実際の行動がそれを示している。

 

入院患者食事ストップ 一刻も早い解決を

 

  それと入院患者に関してだが、1月20日をもって食事を納入していた業者から食事を止められた話も浮上している。ご飯(コメ)については豊北病院で炊いていたが、そのコメも取引業者に支払いをしていなかったために納入を止められている。対応としてはドラッグストアまで買いに走っていたようだが、今度はおかずの納入も止まったようだ。残っているスタッフが急遽弁当を手配したという話だが、それも1月のことのようで、2月に関しては未定だという。さすがに入院患者用なので通常の弁当ではないと思うが、治療食が必要な人もいるだろうし、どうなっているのかだ。お年寄りの患者を抱えているだけに、食事がままならないという状態は危機的だ。

 

 B これまでも車いすがパンクしていることや、お湯がまともに出ない入浴設備のこと、主要な電気が切れた病室や食堂の状態、消防設備の故障や、酸素の流れる配管が壊れたり、患者の安全や快適な環境のためにお金が使われていない状況は誰の目にも明らかだった。そのうえ24時間ベッドに拘束したり、人員不足のためにオムツの交換回数を減らしたりと直接身体に影響する扱いも起きていた。さらに取引先に支払いをしていないものだから、汚染物を含めた医療系廃棄物が収集されずに山積みになったり、検体を回収してもらえなくなったりということも起きている。これらに加えて患者の命に直接かかわる食事までストップするのだからあまりにもひどい。まず患者が気の毒であるし、一刻も早く救い出さなければならない状況だ。

 

市や県は解決に動け 過疎地の医療のため

 

 A 昨年中からこうした実態が次々と明らかになってきており、新聞でも病院として危機的な状況であることをつまびらかにしているのに、下関市、山口県、厚生局、労働基準監督署などの行政機関の動きが見えず、なにをしているのかといった怒りが関係者のなかで強まっている。

 

 病院を去ったスタッフたちは病院の現状を行政機関に対して訴えていたし、一刻も早く患者たちを救出してほしいといってきた。給料未払いについては労基署が少し動いたものの、患者の命や尊厳を守り、働く人たちの生活を守るために必死になって動く機関は皆無だった。一連の対応を見聞きしていると「一応、指導はしましたよ」というものしか感じられない。

 

 12月15日に保健所がおこなった立ち入り検査も「定期検査」であって臨時検査ではない。事前に行くことを伝えるので、例えば書類などをねつ造しようとすればいくらでもその時間はある。豊北病院に関してそれらをどこまで鵜呑みにしているのかはわからないが、状況がどんどん悪化していっているのは誰の目にも明らかなのに、それでも動かない。一斉退職のあった4年前はまだ違ったように思う。

 

 B これほどSOSが発されているのに動かないのは、通報が匿名だったから? 通報した人が今は病院にいない人だから? 入院患者の家族がなにもいってこないから? それとも、病院が“問題ない”といったから?豊北地域から病院がなくなってしまうから? 想像できるのはこんなことだが、あまりにも監督機関がお飾りみたいな対応しかしないのだ。心配していないのだろうか。

 

 入院患者について地域住民に聞くと、患者のなかには身よりのない人も多いようだし、家族が遠方にいて会いに来られない人もいるようだ。経済的に厳しさを抱えている人もいる。家族から通報がないことで躊躇しているのであれば、入院患者の状況を調べればいい話だ。医療関係者たちにいわせると、豊北病院の今の状況は営業停止ものだ。それなのになぜ行政が放置しているのかが理解できない。25日には労基署、26日には中四国厚生局と下関市が立ち入るといった情報もあるが、遅いの一言に尽きる。

 

見逃す事できぬ「元凶」 急がれる患者救済

 

  豊北病院は豊北町の住民にとってなくてはならない病院だった。しかしそれは正常に機能すればの話であって、今の豊北病院は病院とはいえない。第一に患者の命が守られない。はっきりいってしまえばもう時間の問題だ。ここまで豊北病院をめちゃくちゃにしたのは誰なのかについては曖昧にするわけにはいかないし、一斉退職時を含めた元スタッフたち、取引業者、地域住民、医療関係者などみなが東京からやってきたコンサルタント会社・ゲートウェイに怒っている。「地元のワンマンな経営者が失敗した」というものでもなく、ここまでの経緯を見ていると豊北病院に狙いを定めて入り込んだようにも感じる。言葉巧みに人を動かし、病院を無理やり存続させてきたのも診療報酬をはじめとする病院に入ってくるカネを限界まで吸いとっていくためだったのではないかとすら思える。

 

  今後、豊北病院がどっちに転ぶかわからないが、今起きている給料未払いやスタッフの住民税の未払い、事業者への滞納、違法が疑われる数々の事案への対処は、法人理事長が前面に出ることになるだろう。しかし、実権を握っていたのは誰の目から見てもゲートウェイであり、石川・川﨑の両氏だったとみんながいっている。行政も把握しているはずだ。彼らの責任を問うべきだという声は非常に強いし、ここで見逃せば豊北病院に限らず全国の地方の病院でさらなる被害者が生まれるのではないかと心配されている。

 

 少なくとも、お金の流れは彼らしか知らないし、経営の実権が誰にあったのかは曖昧にできない。これで「豊愛会は倒産しました」でゲートウェイの責任は何ら問われずにチャラになるとしたら理不尽過ぎるし、巻き込まれた人々は絶対に納得しないだろう。これまで本紙では「G社」と表現してきたが、今回から「ゲートウェイ」と固有名詞を記すことにした。コンサルタントを生業にする業者は数あれど、同じような病院崩壊がくり返されないために、全国の医療関係者たちにしっかりと記憶に刷り込んでもらう必要があると判断したからだ。

 

 B 豊北地域は医療過疎地だ。もしも豊北病院がなくなったら次の医療体制をどうするか考えなければならない。その負担を考えたとき、「できれば存続してほしい」というのが市や県の本音だったのだろう。それで多少のことは見逃して、再建過程でも適切な指導がなされなかったということを現状があらわしている。そして、スタッフも患者も大変な目にあっている。もっと早く動いていれば救えた命もあったかもしれないし、スタッフが違法行為に手を染めることもなかったかもしれない。

 

 この数日で事態は動くだろうが、もはや「豊愛会」界隈が自力で何かをどうにかできるレベルとは誰も思っていない。医師・スタッフの体制からして物理的に無理があるし、病院崩壊には拍車がかかっている。まず患者を救い出してまともな医療・介護が受けられる施設に移すなり対応が必要だ。市や県には過疎地の医療確保のために全力で動く責任がある。

(1月26日付)

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