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脅迫めいた公営住宅滞納料金の徴収に驚き 下関市が横浜の弁護士法人に依頼

行政ができぬ事を県外の民間にアウトソーシング

 

 下関市(前田晋太郎市長)が、すでに市営住宅を退居した人の家賃滞納分およそ1000件の回収・納付相談について、9月18日付で弁護士法人ライズ綜合法律事務所(神奈川県横浜市)と委託契約を結び、未納家賃のとりたてに乗り出している。しかし、滞納の自覚がなかった人、滞納の事実を知らない保証人も少なからず含まれており、当初「詐偽ではないか」という話も飛びかった。とくに保証人の場合、十数年のあいだ1度も市役所から連絡をしないまま、弁護士事務所に丸投げして債権回収を図るという驚くべき対応をとっており、突然数十万円の督促状が届いたり、電話で恫喝を加えられたというケースが各地で問題になり、その手法に批判が高まっている。

 

 今回、市がライズ綜合法律事務所に委託したのはおよそ1000件、金額にして約5億円だ。対象は、37年前の1982(昭和57)年分から2018(平成30)年分である。プロポーザル方式で公募し、応募があった2社のうち、弁護士法人ライズ綜合法律事務所が選定された。契約書によると、委託料は1363万3920円を上限に、回収額の100分の24(24%)となっている。つまり、回収すればするだけ弁護士法人の収入がアップするという契約だ。

 

 ライズ綜合法律事務所に債務者の氏名、住所、生年月日、電話番号、債権の種類、滞納額・滞納期間、契約していた市営住宅の名称や入退居日などのほか、保証人の氏名、生年月日、債務者との関係(判明しているもの)などの個人情報を市役所が提供し、これにもとづいて弁護士法人が10月半ばから督促状を送り始めたということだ。

 

Aさんの場合 突然80万円余の督促状

 

債権回収通知

 

 Aさんの場合、10月18日付で「債権回収受託のご通知」と題する文書が兄(80代)のところに届いた。封筒には「督促書面在中」という朱印が押してある。文書には、Aさんの兄が保証人として記載されており、2005年5月26日付の「市営住宅未払賃料等」、合計87万1369円の支払いを求めるものだった。これが何カ月分の家賃なのか、延滞金が含まれているのかといった明細もわからない状態だ。

 

 文書には、「当職は下記債権者(下関市建設部住宅政策課)より、貴殿に対する債権回収業務を委託されましたので、本状を以てご通知します。よって今後は、当職が一切の窓口になりますので、当職までご連絡下さい。つきましては、内容確認の上、下記記載の指定銀行口座への振り込みにて、支払いをお願いいたします」と記載されている。

 

 兄は、「債務者」として記載されている名前にも、保証人になったことも記憶がないという。しかも記載している日付からすでに約15年が経過しており、この間に市役所からは連絡もなかった。

 

 このためAさんは当初、詐偽かと思い文書を放置していた。すると約2週間後、11月6日付の文書が再び届いた。今度は「督促状」となっており、「本日に至るまでご入金、並びにご連絡もいただいておらず対応に困惑をしております。ご連絡いただければ、ご相談に乗ることも可能ですが、下記期日迄にお支払・ご連絡がない場合は、支払意思がないものと判断し債権者と相談のもと、しかるべき法的手続を検討させていただきます。従いまして、貴殿が誠意ある解決をなされる意思がある場合、下記期日迄に、全額弁済下さるか、当事務所までご連絡いただきたく通知する次第であります」とある。「法的手段」をちらつかせた脅しにも思える内容だ。

 

 Aさんの兄は重病を抱えており、週3回治療に通う身である。驚いたAさんは、兄にかわって市役所に確認に行った。しかし、住宅政策課の窓口では「委託している」ということ以外、なにも説明しようとしないため、窓口から弁護士事務所に電話を入れた。

 

 「何を根拠に(督促を)ひき受けたのか」と聞くと、市役所から債務者の家賃滞納額と保証人について聞いたという返事だった。しかし、兄に覚えがないため、なにをもって兄が保証人になったことを確認したのか、資料の有無を聞いたところ、資料はないという返事だったという。

 

 15年も放置しておいて、明確な根拠を示さないまま80万円以上を請求され、納得がいかないのは当然だ。Aさんは抗議したが、やりとりのなかで「うちが一任されているので市役所と交渉しないように」と釘を刺されるなどし、互いに怒鳴りあいのような、激しい口調でのやりとりになったという。

 

 一旦電話を切って相談のうえ、「支払わなければいけないのなら仕方がない」ということで、兄の年金から毎月5000円、年金月に1万円ずつ振り込むことにした。12月から振り込みが始まる。兄は一時、施設に入っていたが、現在は自炊をしているため、ぎりぎり月5000円であれば負担することができるという。かりに施設に入っている状態であれば、年金でこの金額を支払うことはできなかった。

 

Bさんの場合 「恐しい口調」に憤り

 

 Bさんの場合、2年前に市営住宅を退居し、そのさい敷金が3万円弱返却されたため、家賃滞納はないものと思っていた。その後2年間、市役所から督促もなかったという。そこに10月半ば、弁護士事務所から約15万円の支払いを求める督促状が届いた。住所が横浜市であり、振込先も三井住友銀行横浜駅前支店となっている。横浜の弁護士から請求される覚えがないため、振り込め詐偽かと思い、記載されている番号に電話を入れたという。

 

 最初に電話を受けた人物の物腰は柔らかかったものの、次に出てきた「担当者」と名乗る人物は、出るなり「なんやろか」と高圧的な口調で話し始めたという。Bさんが滞納の覚えがない旨を話すと、「覚えてないことなかろうが。自分のことやろうが」というので、Bさんは「市役所に確認させてほしい」といった。すると「委託を受けているからお前が確認する必要はない。お前は払うか払わないか返事すればいい」といった内容の言葉が返ってきたため、Bさんはますます怪しく感じたという。

 

 やりとりするうちに、ようやくわかったのは約15万円の内訳は、平成29年の3カ月分のようだということだった。その担当者は「お前じゃ話にならん。裁判を神奈川でするから、裁判費用もかかるし往復の費用も必要になる。覚悟しろ」という内容を、恫喝するような口調でいい電話を切ったという。Bさんは「担当者という人はまるでヤクザかサラ金の回収業者のようだった」と話す。

 

 驚きつつ市役所に確認すると、「もう任せているので、(市役所の)管轄ではない」という返事だった。裁判を起こされては困るので、10月31日に全額を振り込んだが、その後の11月6日には保証人になっていた兄弟のところに再び督促状が届いていた。

 

 Bさんの場合も、滞納があるという知らせさえあれば支払うことができた。こうした事例が多発しており、「分割払いの相談も市役所ではなく弁護士事務所に相談しろというが、そんな恐ろしい口調の人に一般市民が相談できるのか」「市内の弁護士に委託するならまだしも、県外に委託してとりたてる手法はひど過ぎるのではないか」など、憤りの声が広がっている。

 

問われる役所の責任 滞納解決の努力したか

 

 とくに保証人の場合、まったく連絡がなかったケースが目立ち、「市役所の怠慢ではないか」との指摘があいついでいる。家賃を支払うのは当然のことであり、滞納が3カ月程度続いた段階で、保証人に何らかの連絡が来るのが常識だ。10年以上放置したあげく、10日以内に数十万円支払えと請求するというのは乱暴きわまりない手法だ。

 

 市住宅政策課によると、市営住宅を退居した人の滞納家賃について納付勧奨業務、納付相談業務を外部委託したのは今年度が初めて。滞納があるまま退居した場合、退去時に分納などの誓約書をかわしているが、「長い年月がたつと死亡や転居などで市役所が行き先を捕捉できなくなるため、民間のノウハウを活用し滞納分を徴収するため」と、その理由を説明している。しかし、実際には下関市が提供した住所などで連絡がついているうえ、下関市が発見できない滞納者を横浜の民間業者がなぜ発見できるのか疑問が残る。むしろ上記のような市民の事例を見ると、外部委託し「民間のノウハウ」を活用することで、市役所では絶対にできなかった強硬なとりたてが可能になったことが一番の成果ではないかと見られる。

 

 この業務委託について、5日の市議会・建設消防委員会で報告があり、委員からも手法について多くの質問・意見が出た。このなかで明らかになったのは、保証人に対して市役所から連絡したケースはゼロだということだ。保証人には抗弁権(まずは債務者に請求することを要求したり、差押えなどで解決するよう主張する権利)があるためだという。また、本紙が取材したさいに、1000件のうち、退去後に本人に対して督促をおこなった件数も「長期間にわたるため、わからない」という説明だった。保証人には連絡せず、本人に滞納解消を促す努力をしないまま5億円も滞納をためこんだ市役所の責任が問われる内容だ。

 

 実際に、初めて督促状を送った10月半ばからわずか1カ月半ほどのあいだに、約4300万円(速報値)が回収されたと報告している。弁護士に24%も委託料を払わずとも、市役所が電話の一本でも入れれば、支払う意志のある市民が多く含まれていたということを示している。

 

 「債権管理」という名の下に、一般市民に対して強烈なとりたてがおこなわれている。一方で市議会議長・副議長が私用でタクシー代を公費から支出している疑いを指摘されている問題については、何ら解明もされず、返金も求められないままである。知人が被害にあった男性は、「金を持たない市民からとりたてる前に市議のタクシー代を回収すべきではないか」と憤りを語っていた。

 

 なお、今回請求があったのは家賃滞納分のみで、延滞料金は含まれていない。市議会・建設消防委員会の場で住宅政策課は、「延滞金については納付が終わった時点で計算できることになり、収納時期によって延滞金が決まるので、今後検討する」と説明している。今回納付した額がすべてではなく、滞納時期が長期にわたるほど、延滞金がふくれ上がる可能性がある。

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この記事へのコメント

  1. 酷いです。…仮に、弁護士事務所を通すとしたとしても、なぜ、市外の、県外の弁護士事務所に委託するのでしょうか?ライズさんと市長の間に何かあるのでしょうか?疑念も怒りも深まるばかりです。

  2. ライズから市に(市長に?)キックバックあるんじゃない?

  3. 昨日弁護士事務所から未納金の通知書が届きました。未納したのは自分が悪いですが、5年程前の未納金、何故一度でも連絡くれないの?と思いました
    幸い法律事務所には連絡せず府営住宅の管理の方に連絡すると納付書を送るからそれで払ったらいい。法律事務所には連絡しなくていいと言われましたが延滞金を後で請求されたら納得いかないです

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