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京都Xバンドレーダー 停波要請に米軍が応じず ドクターヘリ搬送17分遅れる

米軍経ケ岬通信所に配備されているXバンドレーダー(京都府与謝群京丹後市)

 京都府京丹後市の米軍経ケ岬通信所に配備されている早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」をめぐり今年5月、救急搬送のために運航していたドクターヘリの負傷者搬送が17分間遅れる事件が起きた。原因をめぐる調査で、地元消防本部の「停波要請」に米軍が応じていなかったことが明らかになっている。

 

 事件が起きたのは5月15日朝、京都府与謝郡伊根町で交通事故が発生し、宮津与謝消防組合消防本部は午前8時50分、ドクターヘリの出動拠点となっている公立豊岡病院(兵庫県豊岡市)にドクターヘリを要請した。ヘリは3分後には離陸し、救急車との合流地点とした米軍基地の東側にある京丹後市の経ケ岬灯台下の駐車場に向かった。ところが、ヘリがそこへ到着するにはXバンドレーダーの強力な電磁波が流れる「飛行制限区域」を通らなければならないため、同消防本部は8時52分、事前の申し合わせ事項に基づいて米軍に停波を要請。5分後、米軍は「停波承認」と回答したが、その7分後に「停波不能」と変更した。そのときすでにドクターヘリは「飛行制限区域」に入っていた。

 

 「飛行制限区域」は、Xバンドレーダーが発する強力な電磁波を避けるために2014年に設けられたもので、米軍通信所の半径、高度ともに6㌔の半円柱状の空域に日本の航空機やヘリの飛行を禁じている。電磁波によってコンピューターなどの機器類の破損や人体にも健康被害が及ぶ危険性があり、ドクターヘリや海難事故などで航空機の運航が必要な場合は、消防機関などが米軍に停波を要請することが認められている。レーダーの配備を認めた京都府は「要請すれば速やかに米側は停波する」としている。

 

 「停波不能」の連絡を受けたドクターヘリは、急きょ旋回して「飛行制限区域」を離れ、4㌔も離れた自衛隊経ケ岬分屯基地内のヘリポートを新たな合流地点に設定し、9時13分に同地に到着。負傷者を乗せて病院に到着したのは、ヘリ出動要請を受けてから約55分後の9時43分だった。一連の騒動によって、人命救助は17分間遅れ、ヘリや搭乗していた医師、看護師、操縦士らはレーダーの強力な電磁波に晒される事態となった。

 

 近畿中部防衛局は今月1日、「消防本部と米軍との間の(停波要請の)意思疎通が円滑におこなわれませんでした」との文書を公表するだけで、なぜ米軍側が停波をしなかったのかの理由については明らかにしていない。同防衛局によると、停波要請に応じなかったのは同通信所の運用が始まった2014年12月以降3回目というが、防衛省は過去2回については公表していなかった。日米地位協定に縛られた日本側の権限放棄が浮き彫りになっている。

 

 京丹後市へのXバンドレーダー(米レイセオン社製)の配備をめぐっては、2013年の日米首脳会談で同レーダーの追加配備を決定し、同年12月の日米合同委員会で航空自衛隊経ケ岬基地の一部とその隣接地を日本側が米軍に提供することを承認。最後の配備地となった京都を含む全国30都道府県に配備されたが、その探知距離は1000㌔とも2000㌔ともいわれ、当初の建前だった北朝鮮のミサイル対応ではなく、中国やロシアも含む広範囲のミサイルや軍用機などの動きを探知するものだ。だが、たとえ探知したとしても短距離の日本に着弾する前の迎撃は不可能であり、その目的は米本土の防衛のための監視である。米国がアジアで戦闘を開始したさいには米軍基地と同様に真っ先に標的になる代物といえる。

 

 京丹後市では、米軍宿舎や厚生施設を建設する2期工事が強行されるなど基地機能の強化が進められており、地元では「停波要請」にすら応じない米軍と、地元合意を遵守しない防衛省への反発が強まっている。

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