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郵便届ける業務否定する民営化  株式上場機に物流拠点化

 「構造改革の本丸」といって小泉政府が強行した郵政民営化から10年になる。2015年11月、「日本郵政」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」3社が株式を上場し、一つの節目を迎えた。「過疎地から郵便局がなくなるのではないか」「今までと同じように配達が維持されるのか」といった危惧に対し、日本郵政グループは「これまで通り全国一律のサービスをおこなう」姿勢を強調してきた。

 だが、現実には株式上場にともなって「黒字化」「収益性の拡大」が迫られ、不採算部門である郵便事業を担う日本郵便は「郵便から物流へ」と業態転換すべく郵便・物流ネットワーク大再編を進めている。総額1800億円を投じ、2018年度までに全国20カ所に巨大な物流拠点をつくる計画だ。
 
 下関―山口往復する非効率 下関局からは80人が異動か

 山口県では、東京北部局に続き全国2局目の大規模区分局となる山口局が完成した。土地面積2万7000平方㍍、建物面積約2万4000平方㍍という巨大な施設だ。これまで県西部は下関局に、県東部は徳山局に郵便物が集まり、そこで県内各地に配達する郵便物、県外に送る郵便物など、郵便番号ごとに区分し、配達を担当する各局に送る作業を担ってきた。この区分機能を新たに開局する山口局に一極集中するものだ。1月30日の開局と同時に徳山郵便局の区分作業が先行して移管し、下関郵便局は2月13日から移管する。


 山口局と同時進行で道央エリア、静岡エリア、新潟エリアでも整備を進めており、中国地方では4月10日に広島局が、5月22日に岡山局が開局する予定だ。日本郵便は全国に70カ所ある地域区分局を廃止・統合し、将来的には3分の1まで減らす構想だ。


 下関郵便局を例に見ると、これまで山口県西部(下関市、山陽小野田市、宇部市、山口市、長門市、萩市)の区分作業をおこなってきた。毎日何台ものトラックが管轄内の各地から郵便物やゆうパック、ゆうメールを積んで乗りつけると、手紙やハガキなどは区分機にかけて郵便番号ごとに、すぐに配達できるよう道順に並べかえ、ゆうパックは手作業で区分するといった作業を下関局でおこなっている。機械で番号を読みとれなかった郵便物は人の手でもう一度確認して振り分ける。区分が終わった郵便物は、再び行き先ごとにトラックに積み込まれ、市内なら長府局、下関東局へ、また県内各地の集配センターへと出発する。下関局は県西部における郵便配達網の拠点ともいえる存在だった。


 2月13日からこの機能が廃止となり、下関市内で投函した手紙、ハガキ、ゆうパック等もすべて一度山口局に運ばれることになる。24時間体制の廃止にともなって、「ゆうゆう窓口」が1月1日から午後6時までの営業へと短縮となるなど、すでに縮小が始まっている。下関局で区分作業に従事していた社員・期間社員は、山口局に転勤するか辞めるかが迫られている。現在下関局で区分作業に従事している社員・期間社員の人数は非公表だが、郵便課全体では110人ほどといわれている。山口郵便局は社員数261人でスタートする予定で、うち新規に雇用した期間社員が80人、残り約180人の大半が下関・徳山両局からの転勤だ(宇部など周辺地域からも若干名が転勤)。単純計算で下関局からは80人前後の社員・期間社員が山口市に異動すると考えられる。退職する期間社員もいるようだ。いずれにしても下関市にとっては大幅な減少になる。


 そして移管後は大型トラックの出入りがほぼなくなるため、駐車場をコインパーキングにして収益を確保するという。駐車場のコインパーキング化は、広島や尾道でも先行しておこなっており、収入が大きいという。

 配達開始繰下げ検討も 集荷締切りは早まる

 郵便物を一度山口市まで運ぶとなると、これまでなかった往復時間が必要となる。1月に入り説明を受けた利用者のなかで、「うちは午後6時まで集荷をお願いできたのが午後5時までになる」「下関局は相当縮小されるようだ」「配達時間は大丈夫だろうか」などと話題になってきた。


 集荷や配達がどうなるのか下関局に問い合わせると、山口局へ向かうトラック便の時間に規定され、集荷時間の締め切りが早まることが一番の変化だという。①定時集荷(ゆうパック等、局員がトラックや原付で定時に巡回し集荷している荷物)の時間帯が早まる、②定時以外での集荷依頼については午後3時までの電話申し込みを締め切りとする、③窓口への持ち込みについては遅くとも午後6時30分までに持ち込まなければ1日遅れになるとの説明だった。


 配達については「お客さんに配達する時間が大幅に遅れることはない」という説明だった。ただ、これまでは24時間体制で内務の社員がいたため、早朝から区分作業をおこない、朝7時30分に配達する社員が出勤すると、朝礼後すぐに道順組み立てをして午前9時前には出発していた。しかし今後は午前六時に社員が出勤してから山口局から戻って来た荷物の仕分け作業にかかるので、配達開始時間をくり下げる検討もしているという。細かい動きがどうなるのかは始まってみなければわからない部分も多いという話だった。


 第3種郵便を利用している本紙の場合、各戸に配達する新聞については遅れることはないが県内の支局に送る局留郵便は大幅に変更となった。現行では正午までに持ち込むと12時発のトラックに乗り、午後2時頃には宇部や山口、萩などの指定する局に届いていたため、支局のある地域では発行日に読者に配達することができた。しかし、山口局に移管した後はトラック便の下関出発が午後1時30分となり、県内各地に向かう便が山口局から出発した後に山口市に到着するため、到着は翌早朝になる。「これまで地元に本社があり、長いつきあいだったので特別に体制をとっていた」ため、今後は基本的に当日配達はできないとのことだ。本紙も配達体制の変更を検討しているところだ。

 労働の誇り喪失の危惧 もうけ第一のなかで

 郵便局現場関係者のなかでは、「結局一番大きい人件費を削りたいということ。お客さんにとっても現場にとってもいいことはない」と指摘する人も多い。これまでも公社時代に集配拠点を再編し、全国1048局の無集配化を実施したが、その結果下関市内で無集配化された吉見地区では、下関東局(山の田)の郵便局員が原付に乗って配達に来るようになり、配達時間が遅れがちになったり、暑い日も寒い日も遠距離を走ってくる局員を気の毒がる住民もいる。


 「生産性向上」とは、経営にとっての生産性であり、「全国どこでも一律の料金で、確実に郵便物を届ける」という郵便局の現場を担う側から見ると、生産性の向上でもなんでもない。


 日本郵政グループは、株式上場を前に「さらなる収益性の追求」「生産性の向上」「上場企業としての企業統治と利益還元」を課題にあげ、郵便事業では、減少する郵便物にかわって、ネット販売拡大とともに右肩上がりとなっている宅配事業への参入に本腰を入れる方向で、ゆうパックの取扱個数を6・8億個に拡大(2017年度)、ゆうメール・ゆうパケットの取扱個数拡大をうち出している。物流拠点の再編は、株式上場で「赤字事業」継続が許されなくなるなかで、「郵便から物流へ」と業態転換し、「稼ぐ力を立て直す」方向に、郵便局が舵を切ったものでもある。社員に向けては「黒字化だ」「奪還営業だ」とゆうパック、年賀状、お歳暮等等ノルマが課され、社会問題になった後も自爆営業する人が後を絶たない。社員はボーナスをもらっても回収される対象で、業務ばかりが増えていく。


 近年クロネコヤマトや佐川急便で過重労働から荷物に八つ当たりするドライバーが問題になっているが、郵便局でももうけ第一が強調されるなかで、その誇りが失われていき、「配れなかったから郵便物を海に捨てた」などという話が頻発するようになっている。


 「官から民へ」といってやられた新自由主義改革の結果、「郵便を届ける」業務が否定されていこうとしている。

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