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海底レアメタル・レアアース開発は目前か!? 最先端の国際交渉の状況報告 アジア太平洋資料センター・田中滋

(2026年6月24日付掲載)

 今年初めに地球深部探査船「ちきゅう」が、南鳥島(東京都)沖・排他的経済水域(EEZ)内の水深6000㍍の深海底からレアアース泥のサンプルを引き上げた。このことをメディアが「レアアース生産の大半を中国が握るなか、国産化に向けた大きな一歩」と、まるで深海のレアアース商業開発が間近に差し迫ったものであるかのように報じた。アジア太平洋資料センター(PARC)は17日、「海底レアメタル・レアアース開発は目前か」 と題して、最先端の国際交渉の状況を報告する緊急ウェビナーを開催し、深海鉱物資源開発は今、いったいどんな状況にあるのかを明らかにした。解説者の田中滋氏(PARC事務局長)は、この10年余り、鉱物資源の開発をめぐる国家間の軋轢や企業の社会的責任を追及する仕事をしてきた。とくに深海の鉱物資源採掘をめぐっては、PARCが加盟するNGOネットワークのメンバーとして国際海底機構(ISA)の会合にも参加し、国際交渉の現場を見てきた。田中氏の報告の要旨を紹介する。

 

環境影響を危惧 海底レアメタルをめぐり

 

 はじめに深海鉱物資源としてのレアメタルをめぐる状況を話す。

 

 深海とは、水深200㍍以上の深さのところをすべて指す。それは全海洋体積の95%を占めている。その深海における鉱物原料の探査と採掘を、深海採掘と呼ぶ。

 

 深海にどういうレアメタルがあるかだが、まず、多金属団塊(ノジュール)。水深4000~6000㍍のところにあり、多く含まれるのがマンガン、ニッケル、銅、コバルトなどだ。大きなものはグレープフルーツの大きさ程度の石ころで、元はサメの歯とか骨であったものに海水の中のミネラル分が付着し、長い時間をかけて今の大きさになった。深く掘ってもそれ以上に出てくるものではなく、表面にころがっている石を回収して終わりとなる。

 

多金属団塊〈ノジュール〉(米海洋大気庁HPより)

 次に、多金属硫化物(ヴェント)。熱水鉱床ともいう。マグマによって温められた熱い水が地中から湧き出てきて、その中に含まれる金属イオンが海底の冷たい水に触れて固化し、煙突のように積み上がったものだ。銅、亜鉛や金を多く含む。水深1400~3700㍍のところに見られる。

 

多金属硫化物〈ヴェント〉(オーシャン・エクスプロレーション・トラスト)

 三つ目に、コバルト・リッチ・クラスト(クラスト)。水深800~2400㍍のところにあり、海底の岩肌に殻をなすような形で鉱物がこびりついているものだ。これを採掘するには、ドリルのような機械で殻をたたき割ってとる。これも鉱物が深いところまで存在するわけではなく、表面に薄く付着しているものを削りとって回収する。

 

コバルト・リッチ・クラスト(海洋開発機構HPより)

 

 陸上の鉱山では、岩山を深く掘っていき、トロッコやエレベーターで銅などを地上に上げるイメージがあるが、深海のレアメタル採掘は深く掘るというよりも、表面にあるものをはがしていくイメージだ。

 

 深海にあるレアメタルの3種類の鉱床のうち、ノジュールは転がっているものを拾い上げるだけなので、この採掘が間近だといわれ、注目されている。とりわけ太平洋のハワイ沖、クラリオン・クリッパートン断裂帯(CCZ)はノジュールが非常に多く、かつ広範にわたって存在しているといわれている。しかもCCZは特定の国の管轄内ではないところに存在することから、国際機関のなかで注目されてきたし、資源量の調査もおこなわれてきた。

 

 このCCZでのノジュール採掘が、今度の国際海底機構(ISA)の会合で注目される一つのテーマになっている。

 

 この3種類の鉱床をどのように採掘するかだが、削ってはがして持って上がるか(ヴェントとクラスト)、拾い上げるか(ノジュール)の違いはあるが、作業をする船が海水面にいて、垂直上昇管を下に伸ばして採取したものを吸い上げ、船上で選別し、必要ない泥などは戻り管で海に戻す――というのが主流になりつつある設計思想だ。そこで問題になるのが環境影響だ。

 

ハワイ沖CCZの開発 1区画が北海道に匹敵

 

 CCZでのノジュール採掘を考えてみる。CCZの海底の砂は、粒子が非常に細かく、サラサラとしており、何かの拍子にフワッと巻き上がりやすい。そこにノジュールが転がっている。そこで暮らす生物にとっては、ノジュールが唯一、海底で硬い表面として着床できるものだ。たとえばエサを獲るときや何かの足場にするときなど、着床する行為が必要なときに生物たちがノジュールの硬い部分をあてにしていることが観察されている。

 

 3種類の深海採掘で、共通して生じる問題がわかっている。まず絶え間ない騒音が生じる。運搬船の音や鉱物を削る音などだ。とくに水中では音は強く、遠くまで届く。

 

 さらに海底の砂は粒子が細かいので、深海採掘ローバーがノジュールを回収するとき、地面を擦るように動くと、そのとき土煙が巻き上がる。

 

 加えて、船で選別した後に必要ない泥などは戻り管で海に戻すわけだが、水深4000~6000㍍でノジュールとともにとった泥は、水深1000㍍付近で戻り管から排出される。すると3000㍍余りゆっくりと沈降し、その間が土煙(プルーム)で乱されることになる。

 

 土煙といっても、かなり広範に広がることが危惧されている。映画『青の危機』のシミュレーションでは、CCZのある地点でノジュールの採掘がおこなわれ、戻り管からプルームが排出されたとすると、プルームはハワイからキリバスまでの間、直径約2000㌔㍍以上の海域に広がった。

 

 そして、深海生物は大規模な環境変化に慣れていない。ドイツの研究チームがペルー沖深海でおこなった調査でわかったことだが、1989年の調査で見つかった轍(わだち)が、2015年にまだくっきりと残っていることが確認された。26年もの間、深海底はほとんど乱されることがなかったわけで、深海では土砂を動かす・巻き上げる・沈降させるなどの激しい動きにまったく慣れていない。

 

 そこに住む生き物は、極めて静穏な生態系のなかで、光も届かず、音と触角が頼りの生活を送っており、そこで大規模な環境の改変が起こった場合、どんな影響が出るかは計り知れない。

 

 最近、ネイチャー社の査読論文で報告されたが、ノジュールの中に自然発生の1000倍をこえる放射性物質を出すものがあることがわかってきた。放射線量は福島原発事故と比べればさほどではないが、種類がアルファ線であり、体内に取り込むと内部被曝につながる危険性のあるものだ。それが、海洋環境に悪影響を与えることが危惧されている。

 

 さらに、絶滅危惧種に指定されているジンベイザメやオサガメの回遊ルートとCCZが明確に重なっている。それだけでなく、メバチマグロの捕獲地もCCZと重なっている。もっと大きなマグロ類にも影響を及ぼしかねない。海洋哺乳類は音を頼りに動いたり、音を使ってコミュニケーションをとっており、こうした生態系に深海採掘の騒音や土煙がどのような影響を与えるのかは誰にもわからない。

 

 しかも、これはCCZで探査をおこなうTMC社の調査船に同乗していた科学者がリークし、英『ガーディアン』紙が報じたことだが、探査のときに生じた土砂を戻り管で戻すのではなく、船の上から直接海洋投棄していた。「本番でもそれをやってしまうのか」という疑問がわく。

 

 そして、深海採掘のスケールと期間について注目してもらいたい。

 

 CCZでの多金属団塊の採掘権として検討されている範囲は、1区画当たり約7万5000平方㌔㍍で、それは北海道に匹敵する大きさだ。なぜこれだけ広い範囲が必要かというと、先にのべたように、深海のノジュールは表面にころがっているものしかないので、たくさんとるためには面積を確保するしかないからだ。こうしてCCZでの一区画は、人類史上最大の連続的に存在する鉱山区画ということになる。地上の鉱山と比べてケタ違いの大きさで、自然環境へのインパクトを与えてしまいかねない。

 

 しかも、深海採掘はその海域で数年から数十年にわたっておこなわれるので、その期間は周辺一帯でつねに土煙が起こることになる。

 

世界は商業開発にNO 欧州も新興国も

 

 こうしたなかで、75カ国1000名以上の海洋科学者や専門家が拙速な深海鉱物資源開発に反対し、「不可逆的かつ甚大な環境破壊が起きないでできる方法が明確に確立されるまでは、商業規模での開発はおこなうべきではない」という声明を発表している。

 

 また、世界最大の自然保護グループである国際自然保護連合(IUCN)は、2020年度総会でモラトリアム(一時停止)決議を可決した。IUCNは、2030年までは深海採掘をおこなうべきではないという上申を国際海底機構に対しておこなっている。IUCNは日本の環境省も加盟している。

 

 さらに、深海採掘はまだおこなうべきではない――期限を決めたモラトリアムか、科学的根拠が十分に見つかるまでおこなわないという予防原則にもとづくpause(待った)かの違いはあれ――という公式表明をおこなっている国が41カ国(ウェビナー当時。現在は43カ国)あり、どんどん増えている。採掘技術が進化しても、これまでに宣言を取り下げた国はない。パラオやフィジーなど太平洋の島嶼(しょ)国はもちろんのこと、スペイン、ドイツ、フランス、カナダなどの先進国、ブラジルやメキシコなどの新興国も入っている。

 

 企業の中でも、深海採掘由来の鉱物を利用しないという声明を発表している企業が幾つも出ている。その中にはBMW、ボルボ、フォルクスワーゲン、ルノーなど大手自動車メーカーや、アウトドアメーカーのパタゴニアなどがあり、これもどんどん増えている。

 

 日本では「深海採掘は必要」「商業開発も間近」「それでサプライチェーンを多様化する」という声が大きく聞こえてくるが、世界に目を向けるとそうした状況がある。深海採掘に期待を高めても、国際的には承認が下りない状況にあるわけだ。

 

ならず者事業者の動き 小国をいいくるめ

 

 それでは、国際交渉の最前線はどうなっているか。

 

 国家の管轄をこえた深海底(「Area」と呼ばれる)における鉱物資源は、国連海洋法条約(UNCLOS)によって、人類共通の資産であるとされている。誰かが独占してもうけていいというものではなく、ここで採掘して得た利益は、人類が広く享受できるようにしなければならないといわれている。

 

 では、実際にどういう事業者に、どういう条件で採掘を許可できるのか。この採掘に関する国際ルールは、国連海洋法条約の下で設置された国際海底機構(ISA)で合意されるものとされ、この間ずっと協議されてきた。しかし、合意はまだほど遠い状況にある。

 

 国際ルールの合意文書の中で、まだ合意に至っていない項目が30項目以上、草案に対する未合意箇所(ブラケット)は数百カ所残っている。とくにこの五年間、ISA事務局は「早期の合意を」と呼びかけてきたが、当面合意にはたどりつけないと見込まれている。「部分合意」「枠組み合意」など合意を早めるための提案が出されても、結局否決されてきた。

 

 6月末からISAにおいて国際ルールをめぐる国際交渉が始まろうとしているが、「環境基準」「利益配分」など各項目の審議時間は限られており、今年中の合意は困難と見られる。

 

 さて、問題のクラリオン・クリッパートン断裂帯(CCZ)だが、すでにここの深海で探査をおこないたいと申請を出し、ISA理事会で承認された国が幾つも出ている。

 

 CCZで探査契約を保有している国家は、英国、ドイツ、フランス、ベルギー、ロシア、中国、韓国、日本、シンガポール、ジャマイカ、トンガ、キリバス、クック諸島、ナウルなど。明らかに、独自に深海採掘の調査船を出す科学技術力も予算も持たない国が混じっている。

 

 「人類共通の資産」という理念のもと、ISAの探査区画の中には途上国のためにとっておく区画がある。一方、探査契約を保有すると、ISAに対して探査計画を出し、実際に探査をおこなわなければならない。そこに目をつけて、民間企業が小国にとり入って探査権、さらには採掘権を確保しようとする動きがここ10年で加速した。The Metals Company(TMC)社は、本社をカナダに置くが、トンガやナウルに子会社をつくり、両国を通じて探査契約を勝ちとって、投資を呼び込み、ノジュール採掘をめざしている。

 

 そしてTMC社は2021年、国連海洋法条約の条文の抜け穴をついて、国際ルールがなく環境基準も定まってないなかで、早期商業採掘開始を迫った。しかし、ISA理事会はこれを拒否した。

 

 だが、この状況が示したことは、TMC社のようなどの国にも属さない民間事業者が、ISA
加盟国をいいくるめて、探査契約から商業採掘契約に引っ張っていけるような可能性が存在することだ。環境影響をきちんと評価する技術や予防する技術が追いついていないなかで、深海の鉱物資源を回収する技術だけが先行しており、いったん深海採掘が許諾されれば、あっという間にCCZの広い範囲が採掘にさらされてしまうことになりかねない。したがって当然、国際交渉の場では慎重論が強くなっている。

 

多国間主義無視の米国 トランプは採掘許可へ

 

 小国をそそのかし、脆弱な環境基準のもとで始めようとした深海採掘計画が頓挫すると、TMC社は米国のトランプ政権の下に駆け込んだ。2025年4月、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談。その数週間後、トランプ大統領は、Area(国家の管轄をこえた深海底)内での米国企業による採掘許可申請を受け付ける旨の大統領令に署名した。米国は国連海洋法条約に加盟していない。

 

 なぜ米国が、自分の領海でも排他的経済水域でもない海域で採掘許可を自国の企業に出せるのか。多国間主義をまったく無視した発表だが、その数週間後にTMC社は米海洋大気庁(NOAA)にCCZでの採掘許可申請を提出した。TMC社は、許可が下りればすぐにでも商業開発が始められるとアピールしている。

 

 しかし、これに対して国際社会は猛烈に反発している。とくにISA加盟国のなかでは、これまで探査については、TMC社はナウルやトンガを通じてISAから許可を得て、さんざん調査や機材の確認、設計思想のチェックなどの情報収集をやってきたのに、最後の最後で「米国と一緒にやる」といい、米国だけにロイヤリティが払われることになるのかと、強い憤りが出ている。

 

 したがって今年のISAの会合では、多国間主義や国際法を無視する企業に対してどのような制裁がありえるのか、が大きな争点となる。TMC社の子会社が持っている探査契約を、失格にして資格を取り消すのか、凍結にするのか、背任行為として制裁を科すのか、などさまざまな提案がなされるのではないかといわれている。

 

 また、TMC社がノジュールを海上に引き揚げたとしても、それを製錬しなければ換金できないし、市場で売れなければ意味がない。そして国連海洋法条約では、「加盟国は違法な採掘行為に加担してはならない」と明示されている。ところがTMC社は、ノジュール製錬のパートナーとして日本の大平洋金属株式会社を名指ししている。問題は、日本政府が、非合法に採取された鉱物を精錬することを認めていいのかだ。

 

 さらにTMC社は自社で船を所有しておらず、採掘に必要な船を提供しているのはオランダのオールシーズ社だが、オランダは取り締まらなくていいのか。

 

 仮に米国がTMC社に採掘許可を出しても、それにさまざまな形で加担する企業と、それらの企業が所属する国の責任はどうなのかも、今回のISAの会合で議論されるだろう。

 

 私たちPARCは協力団体のFoE Japanと共同で、大平洋金属に質問状を送った。それに対する回答は「国際的に信認を得たルート」で得られた鉱物を製錬するのが大前提というものだった。ただし、ISAについては明言していない。米国とナウルが信認したら「国際的な信認」なのかは、今後確認していくべき問題だ。

 

 こうした状況を受けてISAでは、国際ルールをめぐって、暫定ガイドラインなど中途半端なルール制定では骨抜きにされかねないと、否定的な意見が増えている。

 

目処ない商業開発 南鳥島のレアアース泥

 

 これまでのべてきたノジュール、ヴェント、クラストに次ぐ、第四の深海採掘として着目されつつあるのがレアアース泥だ。レアアース泥の調査をおこなっている国は日本だけではないが、公式発表などで開発が進んでいるアピールを大々的におこなっている国はほぼ日本に限られる。日本が狙っている鉱床は、南鳥島沖の排他的経済水域内にある。

 

 ISAの協議の場で日本の交渉団は、ISAのルールが適用されるのはノジュール、ヴェント、クラストなど金属系鉱物で、泥は違うルールであるかのように発言するきらいがあるが、その都度、会合で「あらゆる深海の資源採掘にかかわるものなので、レアアース泥も国際ルールに縛られるべきだ」と指摘されている。

 

 また、南鳥島沖は排他的経済水域内なので、ISAの許可がないと開発ができないというものではない。しかし、国際ルールを無視することはできない。

 

 ISAの国際ルールに準ずる形で、日本は日本の管轄内の海底の環境保全、資源管理をするスチュワードシップ責任がある。したがって、採掘するかしないかの決定は日本が独断でできないわけではないが、国際ルールを尊重する姿勢がなければスチュワードシップ原則に違反することになる。

 

 具体的にどんな問題が起こるか。今、深海採掘の国際ルール制定が課題になっているが、国際ルール制定前に日本が独自のルールで採掘オペレーションを始めたとして、その後に国際ルールが制定されると、そこからあまりにも逸脱する国内ルールは後付けで国際法に違反するものとなり、そのオペレーションは停止させられる可能性がある。そうした何年後かにストップがかけられるかもしれない事業に、一体どの金融機関や投資家が投資するだろうか。

 

 仮に日本が拙速にそれをやったとしたら、世界の国々から日本は白い目で見られるし、報復的に日本のレアアースがNGリストに入れられ、売れなくなる可能性もある。

 

放射能汚染と残泥問題 そもそも採算とれず

 

 さらにそれに加えて、放射性物質と残泥の問題がある。

 

 レアアース泥の開発モデルは【下図】のようなものだ。海底から持ち上げるものが泥なので、泥と海水を混ぜて攪拌(かくはん)し液状化させて、空気を送り込んで空気の昇る力を使って吸い上げる。また、バックホウというショベルカーのようなもので泥をすくい上げ、攪拌してエアリフトで上に揚げる。

 

 この図では戻り管がない。レアアース抽出後の残泥は、海岸に埋め立てるとしている。
 レアアース泥の成分分析がおこなわれているが、注目せざるをえないのがトリウムとウランだ。陸上のレアアース鉱床の場合、問題になることが多いのが、トリウムが多くて放射性廃棄物が生じてしまうことだ。しばしばレアアース泥の中に放射性物質は「ほとんどない」といわれるが、全体量の中で割合が少ないとしても、この放射性物質をどうしていくのかは課題として存在する。

 

 しかも対象のレアアースをとり除くと、濃縮された形でトリウムが残泥に残る可能性もある。そうならない製錬方法が義務づけられているのかどうかも見ていく必要がある。
 そのうえ、残泥はどこに埋め立てるのか。計画には「南鳥島など遠隔離島における活動拠点整備計画に利用」と書いてある。

 

 しかし、南鳥島周辺の「極めて有望なレアアース泥の分布エリア」は2500平方㌔㍍とされている。そこで採掘して引き揚げたものは、99%が残泥になる。一方、南鳥島の面積は1・5平方㌔㍍だ。残泥によって、南鳥島にどれだけの山を築くつもりなのか。南鳥島だけではすまず、埋め立てる島を増やして管理対象地が増大し、どこかで放射性物質が流出する事故が起きないともかぎらない。

 

 そもそも微粒子成分が多い、液状化しやすい泥なので、埋め立てには不向きだ。その上に建物が建てられるのか。それを固めるためのモルタルなどを考えると、埋め立てコストは少々ではない。

 

 また、もし戻り管で海に戻すということになれば、このあたりの日本の漁場は甚大な影響を受ける。

 

 深海底でバックホウを使って泥を回収するというが、超大型化しないと採算にあわない。水深6000㍍の水圧に耐えられるような機材をいったい幾つ投入すれば割に合うのかということだし、しかも大型化すればするほど環境負荷は大きくなる。

 

 結局、海底からレアアース泥のサンプルを持ち帰ったというだけで、すぐに商業開発に進むというわけにはけっしていかない。

 

 まとめると、国際ルールがない状態で深海採掘を開始することはあまりにも無謀だ。そして、深海採掘に関する国際ルールには未合意事項が多すぎるし、TMC社による抜け穴戦略のバックラッシュもあり、暫定ルールの制定には反対国が多い。十分に技術が開発されたところで、その環境影響を評価する必要もあるので、すぐには商業採掘にはなりえない。大前提として、人類は深海環境について評価できるほど十分に生態系を把握できていない。

 

 さらに、太平洋の先住民族が深海採掘に対して強い反対の声をあげている。先住民族は深海底を、散骨されたご先祖の魂が安らかに眠る場所であり、生命が生まれる根源であるとして、文化的支柱の一つに位置づけている。

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