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国土破壊する尾根筋風力発電 水源を潰し土砂災害を誘発 再エネ連絡会が緊急シンポ開催 国に規制求める署名開始

(2026年1月19日付掲載)

北海道北見市常呂区での風力発電の基礎づくりの現場(2023年7月)

 北海道釧路湿原、福島県先達山、千葉県鴨川をはじめとして、全国各地でメガソーラー反対の住民運動が大きく高まるなか、高市政府はメガソーラーについてFIT・FIP制度による支援を廃止するなど規制強化の方向を打ち出した。全国再エネ問題連絡会(全国80の住民団体・個人が参加)はこの機をとらえて、尾根筋に建設される巨大風車群の方が森林破壊の影響ははるかに大きいとして、17日、緊急オンラインシンポジウム「尾根筋風力発電は国土を破壊する」を開催した。約240人が参加した。シンポジウムでは、山梨大学名誉教授でNPO法人・防災推進機構理事長の鈴木猛康氏が講演をおこなうとともに、風力発電建設計画に直面している宮城県、熊本県、高知県の三つの住民団体の代表から発言があった。連絡会事務局は、森林を破壊する尾根筋風力発電への規制を求める署名を全国一斉に開始することを呼びかけた。

 

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 シンポジウムでは、はじめに動画「メガ風車建設は広大な森林を伐採し、山を削って自然破壊をもたらす」などが上映された。動画では次のような説明があった。

 

 陸上風力発電の風車はどんどん巨大化し、今では最大高さ196㍍の風車の建設が日本各地で計画されている。地震の少ないヨーロッパ向けにつくられた風車が、地震や台風の多い日本に輸入され、山の尾根に建てられようとしている。

 

 風車建設地まで巨大なタワーやブレードを運び込む作業用道路をつくるため、広い面積の森林が伐採され、切土・盛土がされる。福島県阿武隈風力発電事業では、最大20㍍以上の道幅で作業用道路を建設したため、阿武隈山地の約四七㌶の森林が伐採された。

 

 サンシャイン60(東京都豊島区、60階)は高さ240㍍、これに対して巨大風車は196㍍。高層ビルは建築基準法が適用され、構造安全(地震・風圧・積雪・自重などの荷重に対し安全であること)、高さ制限、避難・防火、日照・風環境規制などの厳しい安全基準がもうけられている。しかし、巨大風車は建築基準法の適用を除外されており、こうした規制がない。

 

 山の尾根筋に大型風車を建設する場合、本体工事よりも基礎工事が大半を占め、環境への影響も大きい。尾根地下に巨大なコンクリートの塊が埋設されることになる。一般的な戸建て住宅の基礎に使用されるコンクリート量は46~69㌧だが、メガ風車の基礎に使用されるコンクリート量は約4600~8400㌧になる。戸建て住宅の100倍以上だ。

 

 このような巨大なコンクリートの塊を撤去するのは技術的にも困難で、完全に元の地形に戻すことは容易ではない。地震や台風などのさい、安全なのか。基礎が頑丈なため、逆に山が崩れやすくなっている場合もある。

 

 能登半島地震では、風車の基礎部分と周囲の部分にクラックができていた。この裂け目に雨水がたまると、まわりの地盤から崩壊していき大変危険だと専門家が指摘している。

 

尾根筋がなぜ危険なのか

山梨大学名誉教授・鈴木猛康氏が講演

 

鈴木猛康氏

 次に、鈴木猛康氏が「尾根筋風力発電は国土を破壊する」と題して講演した。

 

 鈴木氏は「美しい山脈があり、そこから流れてきた水が平野をつくり、そこに大雨が降るたびに土砂が供給される。谷口から流れ出たところを扇状地と呼ぶ。そのように地形はつくられている。そこで尾根筋を開発すると、どういうことになるのか」と問題提起し、要旨次のようにのべた。

 

 例えば奥羽山脈に100基の大型風車を建てたとする。尾根筋の風車と風車の間を500㍍とすると、総延長50㌔㍍も尾根が壊されたところが連続することになる。面積にすると200~250㌶もの森林が奥羽山脈から消えていくことになる【下図参照】。

 

 風車やアクセス道路建設のために山を切り開いた場所では、一方の山の切土をし、他方に盛土をする。こうした場所では、木の根も抜いてしまうので、根と共存していた微生物も存在せず、樹木も育たないパサパサの土になる。つまり生態系が破壊されることと、地盤の不安定化がセットで起こる。やがて盛土側が崩壊し、崩壊土砂が下方へと流出し、谷を埋めていくことになる。

 

 盛土は大雨が降っても、地震で揺らされても崩壊する。どう崩壊するかというと、元の斜面に戻ろうとするので、盛ったところが崩れていく。さらに切土したところも不安定になっているので、そこからも崩壊は起こる。

 

 一方、健全な山の尾根を見てみると、その地盤には広葉樹の根がしっかりと張っている。そして根と微生物(両者は菌根菌の形で共生している)によって保水の空間ができ、このようにして地盤を安定させ、山の頂上を守っている。

 

 そうした状態のもとでは、微生物が有機態窒素を無機態窒素に変換し、広葉樹がアンモニア態窒素や硝酸態窒素を吸収して、樹木に吸収されない残った部分だけが地下水として流出する。水を浄化してくれているわけだ。地下水は栄養塩を含んでおり、それが沿岸海域に流れていき、海の生態系を支えている。

 

 したがって尾根を開発すると、保水機能も水源涵養機能も地盤の安定も失われてしまう。

 

尾根筋の開発と土砂災害

 

 続いて鈴木氏は、尾根筋の開発と災害との関係についてのべた。

 

 土石流について考えてみると、それは谷口から広がるが、実は尾根から流れてきている。尾根の近くの沢から流れてきて、複数の沢が合流して大きくなって、たくさんの土砂を一気に谷口から流すという現象だ。だから麓の部分だけを守ればよいのではない。一番やってはいけないのは、最上部の尾根筋を壊すことだ。

 

 尾根筋で工事が始まると、雨が降れば川の水が濁る。尾根筋を壊すと保水能力がなくなるので、土砂がたくさん流出する。

 

 山の尾根部分に大雨が降って土砂が流れてくると、それが麓まで流れてきて、麓の集落を襲うようになる。玄武岩や安山岩の柱状節理があるところでは、大きなブロック状の岩石が山の頂上付近から流れてくることもある。それが家々を破壊する。

 

 最後には土砂や流木や濁った水が海に至る。泥が海の底を覆うので海藻類が死滅するし、海面近くの磯にいた生物も死滅する。

 

 つまり、尾根から海まではつながっている。東北にあるような小さな湾とその背面にある山との関係なら影響する範囲は限られているが、奥羽山脈のような大きな山を壊してしまうと、その影響は一気に太平洋にまで及ぶだろう。

 

雨水の流出のメカニズム

 

 関連して鈴木氏は、雨水の流出のメカニズムを次のように説明した【下図参照】。

 

 樹木がある場合、雨が降ると、雨水の20~30%は樹木の葉や枝にトラップされて蒸発散し、大気中に放出される。

 

 さらに樹木の根の部分には、土壌中の微生物の働きによって細かい土粒子の集合体(団粒構造)ができており、その団粒と団粒の間の隙間に雨水をためる。その雨水が連続してつながると飽和状態になって、ゆっくりと地中を流れていく。表面を流れる雨水もあり、両者があわさって渓流になり、河川に流れ込む。それが降った雨水の30~50%だ。

 

 残った雨水は、表層の保水能力のある土のさらに下の岩盤に浸透し、それが地下水になる。それが降った雨水の20%といわれる。

 

 ところが森林を伐採すると、降った雨水は蒸発散もしないし、地中に浸透もせず、ほとんど100%が表面を流れることになる。しかもいったん土壌中に浸透してからゆっくり流れるのではなく、一気に流れるので、洪水が起こり、河川が氾濫する。そのときに土砂も流れるので、土石流を促すことになる。

 

 さて、降雨量に対する表面を流下する雨水の量の比を流出係数という。前述した林地の場合の流出係数は、0・3~0・5となり、メガソーラーやメガ風力のために皆伐した場合は0・9~1・0となる。

 

 開発行為によってもとの流出係数が上昇する場合には、河川の氾濫を防止するために、事業者は河川を改修するか、調整池をもうけて増量分をいったんためてから調整して流出させるようにしなければならない。だが、全国を歩いてみて、風力発電をつくる場合に大きな調整池がつくられているのを見たことがない。

 

風車建てたら何が起こるか

 

 以上のまとめとして鈴木氏は、尾根筋を削って風力発電を建設した結果なにが起こるかを、時系列にそって次のように説明した。

 

 ①豊かな国土・環境。広葉樹と針葉樹が適度に混ざって森をつくっている。広葉樹の根が地山を安定させ、樹木の根と微生物が表層の保水能力を高め、栄養塩とミネラルたっぷりの地下水を供給する【下図参照】。

 

 ②麓の斜面でメガソーラー開発が始まる。里山の樹木を伐採するので、斜面で雨水が流出し、表層崩壊(土砂災害)が起こる。

 

 ③斜面でのメガソーラー開発がさらに拡大すると、麓で土砂災害が多発する。都市で水害が発生するようになる。河川に土砂が供給されて河床が上昇するし、海に土砂が供給されて海が濁ってくる。

 

 ④尾根筋の森林を伐採して風車を建て、広域に作業用道路をつくると、尾根の保水能力が低下し、大雨のたびに大量に雨水が流出する。水源地の沢があふれ、土石流が発生する。麓の河川の水量が増し、濁るようになる。麓では地下水の水位低下が始まる。

 

 ⑤風車建設が進むと、山腹付近で崩壊が発生し、尾根でさらに保水能力が低下する。大雨のたびに大量に雨水が流出し、沢があふれ、土石流が発生する。麓の河川の水量が増し、濁りが増す。

 

 ⑥風車建設がさらに拡大すると、大雨のたびに大量に雨水が流出する。尾根の保水能力が低下し、次第に麓に向かって土石流が拡大する。麓の河川でも土石流が溢れるようになる。平野でも河川の氾濫が頻発し、地下水は枯渇する【下図参照】。

 

 ⑦さらに拡大すると、山の保水能力はなくなり、大雨のたびに大量に雨水が流出し、麓に向かって土石流が拡大する。麓の河川でも土石流が発生する。平野では河川の氾濫が頻発し、地下水は枯渇する。

 

 ⑧最後には、山ははげ山になり、大雨のたびに大規模土石流が起こり、河川の氾濫が多発する。地下水は枯渇する。海洋汚染が進み、漁業にも影響が出る。山はどんどん削られて、沿岸地形まで変えていくようになるし、居住できるような環境ではなくなる。これが国土破壊だ。

 

 江戸時代から明治の最初にかけて、日本各地にたくさんの砂丘ができたが、これは麓の里山の開発によるものだ。尾根筋に巨大風車を建てることは、それだけにとどまらない。日本列島を代表する一番貴重な山から崩れていく可能性がある。いったん崩れたら元に戻らない。

 

地震や台風と風車との関係

 

 最後に鈴木氏は、地震や台風と風車の関係について次のように指摘した。

 

 1978年の宮城県沖地震の経験にもとづいて、1981年に建築基準法が改正され、新耐震設計法が適用されることになった。地震で壊れても崩壊させない(死者を出さない)設計法へと転換したわけだ。とくに60㍍以上の超高層の建物は、大規模地震における構造物の挙動を精緻にモデル化して、コンピューターによるシミュレーションをおこない、安全性を照査することが義務づけられた。

 

 高さ60㍍以上の風車についても、2007年からこの新耐震設計と性能評価が義務づけられた。しかし情報公開がされておらず、実際にやられたかどうかはわからない。そして2014年、風車は建築基準法の適用から除外された。

 

 一昨年の能登半島地震で、志賀町の酒見風力発電所の風車のブレードの一つが基部の付近から破断し、一部が30㍍ほど飛ばされた。折れ曲がって脆性破壊を起こすブレードが、新耐震設計の性能評価をパスするはずがない。

 

 ブレードが壊れたとき、人に危害が加わらないような防護施設を必ずつくる必要がある。それがつくられていないことが、新耐震設計が適用されていない証拠だ。ブレード自体大変大きいもので、昨年秋田市では死亡事故も起きている。

 

 また、台風による事故も起きている。宮古島では2003年の台風14号で、風車のタワー転倒、タワー座屈、ナセル落下、ブレード破損・落下が発生している。どうして風車事故は発生するのか。それはちゃんとした耐風設計、耐震設計がされていないからだ。

 

全国が繋がろう 住民団体からの発言

 

 講演に続いて、実際に風力発電建設計画に直面している三つの住民団体からの発言がおこなわれた。

 

宮城県

 

 はじめに、宮城県の「加美郡の風力発電を考えるネットワーク」(県内の五つの住民団体で構成)の猪股弘氏が発言した。

 

 加美郡では、JREによる4200㌔㍗の風車10基が稼働しており、その他に日本風力エネルギーとグリーンパワーインベストメントの二つの事業者があわせて最大145基の風車を奥羽山脈の尾根筋に建設する計画が持ち上がっている。

 

 加美町を含む1市4町は、巧みな水管理システムと共生する伝統的な水田農業が評価され、世界農業遺産「大崎耕土」に認定されているが、風力発電の計画地はその源流域にあたる。ネットワークは昨年9月、風力発電計画に対して、①土砂災害発生の不安、②水資源の汚染・枯渇の不安、③豊かな生態系へ与える影響への不安、④低周波音による健康被害の不安などを訴え、条例で水源涵養保安林を再エネ開発規制区域とするよう求める要望書を村井嘉浩・宮城県知事に提出した。

 

 コメ農家である猪股氏は、「私たちには守りたい山がある。守りたい水がある。守りたい人がいる。そんな思いをもって、今日まで反対運動を続けてきた。町長も反対の意志をあらわしているが、いまだ事業者ははっきりした態度を示さない。雪深い限界集落といわれるこの加美町にメガ風車はいらない。未来の子どもたちのためにこの自然を残したい。国に対してメガ風車への厳しい規制を求める」とのべた。東北の自然豊かなコメどころの水源地を守りたいという願いを込めた。

 

熊本県

 

 次の発言は、熊本県水俣市から。水俣市では今問題になっているのは電源開発による肥薩ウインドファーム(4300㌔㍗×30基)で、水俣市と鹿児島県伊佐市、出水市にまたがる山間部が計画地となっている。

 

 水俣の環境を考える市民会議の永野ユミ代表は、「水俣は水俣病を経験した町として、海を失った。公害は水俣病だけで十分だ。水俣は土地の80%が山であり、山を守ることが海を守ることにつながる。破壊された自然は二度と元に戻らないということを市民は知っている」とのべた。

 

 現地視察をおこなった鈴木猛康氏は、「安山岩溶岩が横と縦、板状と柱状に細かい節理ができて風化している様子をここで初めて見た。そして山全体が水を蓄える構造になっている。そうした景観上もすばらしい貴重な場所で、全部で五十数万立方㍍もの土を動かすような計画だ。建設が進むと、水を蓄える山ではなくなり、豊富な湧水や栄養塩が豊富に含まれた川が失われる。3~4㍍の岩が土石流となって流れてくる可能性もあるし、地下水が濁って海の藻場が破壊され、稚魚を育てる環境がなくなり、海の営みが途絶えてしまうかもしれない」とのべた。

 

 「ちょっと待った!水俣風力発電」の中村雄幸氏は、「風力発電計画地は、水源涵養保安林と土砂災害防備保安林の二つとかぶっているところがある。一番心配なのは土砂災害の危険性と地下水への影響だ。水俣市で二番目に高い鬼岳は市民の水瓶として機能しているが、その真上に風力発電を建てようとしている。山を守ることが海を守り、発展させること――それはすべての市民が共有できることだ。その循環をめざして頑張っていきたい」とのべた。

 

高知県

 

 最後に、高知県の高知本山の風力発電と暮らしを考える会の加藤和氏が発言した。今、高知県では、四国の東西を流れる大河・吉野川の源流域にある国見山の尾根筋に、電源開発が4200㌔㍗の風車を12基建てる計画を進めている。

 

 風力発電計画地の多くは水源涵養保安林に含まれる。事業者がここで工事を始めるには、「利害関係地区」の住民の同意を得ねばならない。昨年六月、その利害関係地区の一つで住民投票がおこなわれ、反対が過半数をこえた。「保安林解除に同意しない」と明確にNOを突きつけた。そこには、本山町南部のほぼ全部の棚田が国見山を水源としているという事情があった。

 

 加藤氏は、「事業者は“説明会を何回もおこなって、地域のみなさんに納得していただいている”という。しかし、説明会は多くの住民が知らないところでやられていた。私たちの地域の場合、事業者が環境アセス評価書の縦覧を終えた後に、説明会をおこなった。そこから私たちの反対運動は始まった」とのべた。

 

 そして、「地域は風力賛成、反対で分かれてしまって、軋轢(あつれき)が生まれた。ある地域では、風車計画が持ち上がったことで同窓会が開けなくなったという。計画地は山の尾根筋で、一番少子高齢化が進んでいるところであり、声をあげられない人も多い。それでも水源の森の将来や低周波音の健康被害を心配している。全国の風車問題で苦しんでいる人が力をあわせて、当たり前の規制を国に求めていこう」と発言した。

 

署名の訴え

 

 全国再エネ問題連絡会事務局は最後に、「水源の森を破壊し、土砂災害発生の危険を高める、山の尾根筋へのメガ風車建設規制を国に求める」署名運動への協力を訴えた。

 

 要望事項は、①保安林内や土砂災害警戒区域および特別警戒区域付近での風力発電施設の設置を原則禁止に、②山岳部・尾根筋・水源地など環境・災害防止上重要な区域における風力発電計画への規制強化を、③自然保護地区周辺での風力発電計画における環境調査・評価の厳格化を、としている。

 

 現在、森林地域につくられる陸上風力発電の計画は、全国で200カ所以上あり、その多くが北海道や東北に集中している。全国の住民団体がいっせいに署名を集め、総選挙後に環境大臣、農林水産大臣、経済産業大臣に提出するとしている。

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