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人心を操作するSNSの害悪 利便性の裏に潜む支配の罠 各種選挙でフル活用した高市早苗 世論煽動する武器に進化

(2026年5月20日付掲載)

2021年1月、トランプ支持者らが起こした米国会議事堂襲撃事件

 フェイスブック、ツイッター(現在のX)、インスタグラム、TikTok等々のSNSが2010年代を前後したあたりから爆発的に普及し、相当数の人々がパソコンやスマホで些細な冗談や悪口、日常での出来事をつぶやいたり、動画をアップロードしたり、発信はせずとも見るだけだったり、あるいは政治的発言での応酬やバトルなどがそこかしこでやられるようになった。こうしたSNSを為政者の側も政治支配の道具として用いるようになり、SNS戦略の展開を生業とする専門業者まで誕生している状況のもとで、昨今は世論をひねり出す宣伝扇動の手口も露骨なものになっている。2000年代初頭の郵政民営化を巡る小泉劇場は既存の巨大メディアをフル動員した世論誘導だったが、その後テレビ局や大手新聞の権威が廃れたもとで、近年は世論誘導の舞台はSNSが主戦場となり、大企業が支払う広告料もそちらがメインになるなど変化が顕著なものになっている。普段から何気なく触れているSNSなどのソーシャルメディアにおいて、選挙時期になると突然特定の政党の広告ばかりが表示されるようになったり、謀略じみた「大きな声」や雰囲気が人為的に作り出されたり、気味悪い扇動が仕掛けられるカラクリについて見てみた。

 

GAFAが支配する言論空間

 

高市早苗首相

 4月末、週刊文春が今年2月におこなわれた衆院選で、総理大臣である高市早苗陣営が野党の大物政治家を「一度国を壊した素人」などと誹謗中傷するショート動画を次々と作成して投稿していたと報じた。匿名アカウントを介して動画の作成と拡散に公設第一秘書が関与していたというもので、選挙期間中における組織的なネガティブキャンペーン(ネガキャン)をおこなっていたと問題の動画を電子版で公開し、公設第一秘書と陣営メンバーがやりとりしたメッセージの存在も明らかにした。あの選挙では、「高市早苗だけが他党を批判しない」と称賛されていたが、なんのことはない。水面下では界隈が暴れていたことを伺わせるものとなった。

 

 また文春は自民党総裁選においても、対立候補だった小泉進次郎について「カンペで炎上、無能で炎上、ボロがでまくって大炎上」とこき下ろしたり、林芳正について「ピーポーピーポー(救急車の意味)」と揶揄したり、「高市は女神」と称賛する動画などを連投していたことも報じた。

 

 国会答弁でこうした動画の拡散について問われた高市早苗は「わたしは秘書を信じる」といって関与を否定したものの、週刊文春側は公設第一秘書である木下剛志氏がネガティブ動画の作成に主体的に関わっていた事実を示すメッセージを入手しているとして、追及している。

 

 動画作成に携わって逃げ回っていた人物(サナエトークンにも関与)もネガキャン動画について「高市総理自体が認識していたかはわからないが、秘書とやりとりをして実施した。世界ではスピンコントロールは当たり前のようにおこなわれていて、解散総選挙でも中国や北朝鮮、ロシアのハッカーも入り込んで大きな影響を与える状況もあった。外交、防衛の観点から戦うためにもそういうチームが必要」と作成していたことを認めている。

 

 そして、「依頼という形ではなかった。(総裁選で)進次郎さんと高市さんが競っていて、その時に高市さんの動画やSNSが回らなかった。そこで私のところにヘルプが入って、そこから1日で数百本の動画を作って、拡散させた。具体的な指示があったわけでなく、私自身が動画を作ったほうが総理、高市陣営にプラスになると思って自ら主導してやった」とのべ、秘書や高市事務所の関与は否定しながら、自主的にやったと主張している。

 

 一連の主張について、金品の授受もなくボランティアで1日数百本ものネガキャン動画を作成・拡散していたという話を誰が信じるのかである。いずれにしても高市界隈がネガキャン動画を1日数百本単位で作成し、SNS上にせっせとばらまいて拡散させていたことは浮き彫りになった。動画を拡散させようと思えばインスタグラムにせよTikTokにせよ、大金を支払ってブースト(閲覧数を増加させる機能)させることが不可欠で、無名の匿名アカウントが存在感を示して広く世間に見てもらうためには相当額が必要になるが、そうした資金は誰が出したのか? 等々の疑問も尽きない案件である。

 

 ちなみに昨年秋の自民党総裁選では小泉進次郎陣営によるステマ投稿疑惑もとりあげられており、双方が互いにネガキャンや自己称賛によってSNSで印象操作やレッテル貼りに明け暮れていたことを伺わせている。情報戦の欠かせない武器としてSNSを利用して自己プロモーションに励み、相手のネガティブキャンペーンを仕掛けておとしめている実態を物語っている。鉄砲玉ならぬ「動画の弾丸」を1日数百発単位で放っていたというのは尋常でない力の注ぎ方である。そしてでき上がったのは子どもの口喧嘩レベルの低俗な動画でありながら、「スピンコントロール(情報操作)は世界の常識」などと一丁前なことを言ってのけるのである。

 

 選挙になると近年は各政党が切り抜き動画を駆使してプロモーション戦略を展開するのが常套手段になってきた。与党のみならず野党に至るもSNS戦略を果敢に展開し、より露出を増やして空中戦をくり広げている実態がある。どこからカネが注がれたのか統一教会の別働隊とも指摘される参政党が実態に見合わぬ台頭を見せたり、ネット空間を席巻したり、政党の党首たちが演説の「名場面動画」みたいなものを投稿したり、政党の公式アカウントだけではなくいくつもの匿名アカウントを介して称賛動画や他党の誹謗中傷動画をこれでもかと粗製濫造して放り込む光景がある。

 

 ショート動画の編集作成が仕事として発注され、手っ取り早く稼げる仕組みにもなっている。趣味趣向に反して、見苦しいほどこうした動画が人々のスマホやパソコンに露出してくるのは、相当の対価を払ってプロモーションしているからにほかならない。資金の有無によって閲覧数は意図的に伸ばすことができるシステムになっているのである。衆院選で高市早苗が登場する自民党の広告が執拗に出てきたのも、それだけのカネをかけたという事実を物語っている。

 

安倍晋三元首相

 批判されるとすぐに「印象操作だ」「レッテル貼りだ」とくり返していたのが安倍晋三だった。それは印象操作やレッテル貼りを常日頃からやっている人間の条件反射や自己暴露を思わせるものだった。当時の薄気味悪い右傾化なるものの正体も、主としてネット上での大暴れで「大きな声」に見せかけるものにほかならなかったが、それこそ後に支持母体であることが明るみになった統一教会の信者等々が書き込み要員として大量に動員され、組織的なSNS戦略によって作り上げられていたというなら合点がいくのである。

 

 いわゆるネトウヨ(ネット右翼)のみならず、SNS上で拡散させていくことを専門にした企業やプロ、組織がつき、統一司令部のかけ声で一気呵成で仕掛ける。そこに宗教団体の裏金なりなんなり潤沢なカネが注ぎ込まれるなら、右傾化の世論をネットの世界で作り上げることなどいとも簡単にできてしまう芸当なのである。

 

 野党の政治家の誹謗中傷やネガキャンも安倍時代から勢いを増していったのが特徴で、それこそ国会では求められるはずの品位などどこへやら、安倍晋三が好みそうな子どもの口喧嘩レベルの罵倒や誹謗中傷が溢れかえるような、今日のSNSによる印象操作や世論誘導の先駆けとなった時期といえる。「反日」「親中」などとレッテルを貼り、子どものような視野の狭い二元論であっちかこっちかを分断していく手法であったり、空気を作り上げていくという手法が、まさにSNSが台頭していく渦中にあった第二次安倍政権の時代に常套化していったといえる。

 

 その後明らかになったところでは、自民党が17万人ものフォロワーを擁するDAPPIなるツイッターのアカウントに対価を支払い、世論誘導に勤しんでいた疑惑もあった。自民党や維新を称賛する一方で野党の誹謗中傷をくり返していたのがDAPPIで、発信元だったワンズクエスト社は自民党を主要取引先として業務を請け負い、主にウェブサイトの企画や制作、コンサルティング、イベントの企画運営などを手掛ける企業だった。

 

 会社が休業日の土日には投稿はなく、すべて平日に会社の回線からログインして投稿がなされ、組織的に業務としておこなわれていることが指摘されたが、裁判では「従業員一人が業務とは無関係に私的に投稿した」と同社は主張。裁判所は最終的に「業務時間の大半を記事投稿に充てていた」と認定し、「社長の指示の下、会社の業務としておこなわれた」と結論づけた。これまたボランティアで業務時間の大半を費やしてやるわけなどなく、相当額の対価が支払われていることが歴然としている事件だった。

 

トランプの手法 国家意思表明もSNS

 

 世論を作り上げ、世間の空気を一方向に染め上げていく――。宣伝扇動の武器として駆使されるようになったSNS。

 

 より露出して閲覧者を増やすためには、前述したように対価を支払ってブーストするという手法も当たり前になっている。英語でBOOSTとは増加や上昇という意味を持ち、カネを払って拡散させることができる。すなわち資金力のある者ほど優位に印象操作やレッテル貼りに興じることができる仕組みである。無名の一般人がユーチューブに投稿しても世間の目に止まらないか相手にされない一方で、そうしたSNSのアルゴリズムのなかでカネを出した投稿は金額規模に応じて人為的に拡散され、人々の目に止まる仕組みにもなっている。ツイッターでもインスタグラムでもカネを払えば、年齢、性別、居住地域、趣味趣向などのターゲットを絞って、見知らぬ人々の目に止まるように拡散させることができるシステムになっている。

 

 あるいはコンテンツの質や投稿回数、おもしろさなどで閲覧者を引きつけ、爆発的な影響力を備えたインフルエンサーと呼ばれる人々がSNS上に存在し、こうしたフォロワーをたくさん抱えて影響力を持った人物が注目を集め、今度は彼らに案件として対価を支払って自社の製品を宣伝したり、飲食店や店舗、企業や旅館などが客集めのためにいかに素晴らしい施設であるか、良い製品であるか、美味しい料理であるか等々を宣伝したりするのも当たり前にもなっている。

 

 インフルエンサーの拡散力によって存在を広く宣伝し、紙媒体ともまた異なった手法で人の目に止まってアピールするというSNS時代ならではの宣伝手法である。選挙になると突然有名なユーチューバーが特定の政党を支持したり、政治家にインタビューなどして好感度アップに協力したりするのも相当額の対価の存在を伺わせるものとなっている。思想信条や政治的スタンスの共鳴というよりもビジネスとしてモデルができあがっているのである。政治家もまた心得ていて、よりフォロワーやチャンネル登録者数の多いインフルエンサーの動画に出たがり、好感度を上げようと「いつもより少し砕けた生身の自分」みたいな振る舞いをしたりといった有り様である。

 

トランプ米大統領

 世界を見渡すと、アメリカのトランプがまさにSNS使いであり、Xへの投稿ですべてを発信する手法をとっている。イラン攻撃であろうが高関税であろうが、すべてXで見解を発信し、世界中を揺さぶるという振る舞いをくり返している。また、その登場と関わってもQアノンなどがSNSを駆使して陰謀論を展開し、国会議事堂襲撃事件まで引き起こしたり、ネットを通じて引きつけた支持者の感情を揺さぶって扇動し、「アメリカ・ファースト」で怒りの感情を高ぶらせるという芸当もやってのけた。バイデンはじめとした政敵をこき下ろすなども日本国内で匿名アカウントから姑息に野党を誹謗中傷するというのではなく、プロレスの如く本人が感情丸出しで展開している有り様である。トランプが日々くり出す罵詈雑言もまたSNS時代の政治支配の新種の様式を思わせるものとなっている。

 

不都合な発信は遮断 権限握るのはGAFA

 

 いまやGAFAと呼ばれる米巨大IT企業(グーグル、アップル、フェイスブック〔メタ〕、アマゾンの総称。マイクロソフトも含めたGAFAMという呼称もある)が世界中の人々が日常的に使う情報インフラのプラットフォームを握り、そこから膨大なユーザーデータを収集、分析してビジネスを展開し、巨万の富を築き上げるまでになった。リーマン・ショック後の各国中央銀行の資本注入・量的緩和によってこれらがさらに巨大化し、コロナ禍を経て一段と巨大化して今日に至っている。

 

ビックテック企業GAFAのロゴマーク

 言論空間を支配するGAFA、すなわちアメリカの巨大IT企業が絶大なる力を有し、資本力を備え、時としてSNSを駆使してカラー革命等々の謀略で各国の政変を仕掛けたりすることから、これらの利用を制限したり、流入を阻止する国もあるほどだ。逆に中国製アプリだったTikTokをアメリカ側が利用規制したり、SNSの危険性について認識しているからこその警戒感にもなっている。GAFAが西側で絶大な権力を持ち始めた一方で、中国の巨大IT企業群も同等かそれ以上の勢いで世界に影響力を広げており、この衝突も顕在化する趨勢になっている。

 

 一見すると誰もが手軽に利用できるSNSではあるが、デジタル言論空間から締め出すことを意味する「BAN」の権限をプラットフォームを提供する側は有している。運営側の判断一つで追い出そうと思えばいとも簡単に締め出すことが可能で、ユーチューブにチャンネルを開設して発信してきたのがBANされて消えていった等々の事例は珍しくない。Xも同じくアカウントを停止されて締め出されるという事例は山ほどある。不特定多数の世論に訴えかけたくても発信源を失い、社会的に存在を抹殺されるという逆パターンもある。クラウドを提供する領主すなわちGAFAが生殺与奪の権限を有しているのである。

 

 斯くしてクラウドベースのデバイスを通して、またAIという人工知能の力までが加わって、人々が自分の意識とシステムとのあいだの双方向を永遠に行き交い、スマホの画面に釘付けにされて有限な人生の時間を奪われ、引きずり込まれていく。好きな動画やテキスト、あるいは音楽を検索して欲望を満たしていたつもりが、そうした好みや趣向についての情報を与えることで緩やかに行動を操作され、おすすめを次々と示し始めて誘導される。そうして個々人の好みを捉えることで今度はデバイス側がおすすめを編集するようになり、そうした画像やテキスト、動画を目にさらすことで人々の好みをも調整するようになる。その無限ループによって、SNSの背後に隠れた巨大なアルゴリズムのネットワークは、アルゴリズムの所有者が儲かるように人々の行動を変えることができるというものだ。SNSではないが、AIが搭載されたアレクサであったり一見すると便利なシステムを通じて、人々の欲望を作り出し、編集する力が加わり、行動を操作するものにもつながっている。政治に限らず、すべての行動が意図せず操作されるという構造である。

 

 こうした「企業によるデジタル・アイデンティティ(自我)の窃盗」が社会的にも取り上げられるようになっている。個人の行動と引き替えに世界中の情報をかき集め、好みや怒りの機微を捉え、見張り、選別し、クラウド企業が個々を誘導していくことへの警鐘である。フェイスブックに投稿したストーリー、TikTokやユーチューブにアップロードした動画、インスタグラムの写真、ツイッターの冗談や悪口、アマゾンのレビューなど、個々人の物語や行動を差し出すことでプラットフォームの所有者たる巨大IT企業だけが情報を蓄積し、再生産する構造になっており、何億人という人々が無償で差し出した情報コンテンツによって世界がGAFAの食い物にされている現実への批判である。

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