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「SNSという名の国民監視システム」 フェイスブックの個人情報流出が示すこと

 アメリカの大手IT企業、フェイスブックやグーグルが大量の個人情報を流出したことが、たびたび世間を揺るがせている。フェイスブックは公称21億人以上が利用する交流サイトだが12日、2900万人の利用者の個人情報が流出したことを明らかにした。とくに、今回は日本人の情報も流出した可能性があると日本政府に公式に伝えている。日本人の月間利用者数は約2800万人にのぼる。


 フェイスブックの利用者はサービスを無料で使えるが、それは利用者の個人データを対価に広告枠を売るビジネスモデルに裏づけられている。同社はその広告枠で年間400億㌦(約4兆2000億円)も売り上げている。


 このたびの不正アクセス事件は、1400万人については名前から性別、居住地、職歴、宗教、直近の検索履歴、婚姻状況、シェアした訪問地、交流サイト(SNS)、視聴に使ったネット端末など、詳細な情報がアクセスされていた。また1500万人については、名前や電話番号、電子メールアドレス、誕生日や職歴などが流出していた。


 一方、米グーグルは八日、ソフトウエアの不具合から最大50万人分の個人情報が外部に流出する恐れがあるとして、同社の交流サイト(SNS)サービス「グーグル+(プラス)」を閉鎖すると発表した。2015年から18年3月まで、外部のソフトウエア開発会社がサービス内の個人情報--ユーザーの名前や住所、電子メールアドレス、職業、性別、年齢--にアクセスできるようになっていたというのが、その理由である。


 過去にはフェイスブック利用者4億2000万人の個人情報が流出したことで大きな問題となったことがある。また今年4月には、「フェイスブック利用者8700万人分の個人情報のデータが不正に第三者に渡され、それが2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営の選挙対策に使われ」たというニュースが流れた。フェイスブックのザッカーバーグCEOはそのときの電話会見で、「データ保護対策が十分でなかった。これは私の責任だ」と陳謝し、同社は「再発防止策をとったので、今回のような問題は再び起きない」と釈明したばかりであった。

 

エドワード・スノーデン

 こうしたなか、アメリカ国家安全保障局(NSA)の元職員、エドワード・スノーデンがツイッターで、「フェイスブックは監視システムであり、ソーシャルネットワークの名のもとに人人を欺いている」「一般人のプライベートな生活に関する情報を集め、売り上げや収入を得るビジネスは、監視機関とよぶべきだろう」「それらのビジネスをおこなう人は、戦争省から国防省に名称を変更するのと同様に、監視機関をソーシャルネットワークという呼び名に変更して巧みに人人を欺いている」と書いている。


 アメリカ国内で監視社会の実態が明るみに出たのは2012年、スノーデンによる告発がきっかけであった。NSAはマイクロソフトやアップル、グーグルなどIT独占企業と連携して、国民のインターネットや通話データを傍受し、大量保管していたことが白日のもとにさらされた。


 コンピューター・セキュリキィの専門家、ブルース・シュナイアー(ハーバード大学法科大学院フェロー)の著書『超監視社会 私たちのデータはどこまで見られているのか?』(草思社)は、NSAやFBI(米連邦警察)がメタデータの収集・保管に血眼になっており、アメリカこそが国民が、世界でもっとも監視のターゲットにされた社会であることを浮き彫りにしている。

 

メタデータから病歴等まで監視
国民恐れる統治者

 

 メタデータとは文面や映像などのデータに付随するデータ、たとえば電子メールの送受信のアカウントや日付などである。スタンフォード大学が約5000人の被験者を対象にメタデータを分析した実験では、病歴や薬物依存歴、人工妊娠中絶の経験までが第三者に伝わってしまうことが明らかとなった。


 インターネット検索エンジンの検索履歴は、メタデータの理想的な宝庫だとされる。グーグルの元CEO、エリック・シュミットは、「私たちは、あなたがいまどこにいるかを知っている。これまでにどこにいたかも知っている。いまなにを考えているかもだいたい知っている」と豪語している。アメリカ国民の半分は、市町村、性別、生年月日が判明するだけで一人に特定される。そのうえ、インターネットの検索履歴を知られたら、本人が自覚しない個人情報が、よそで形成されることになる。


 フェイスブックやグーグル、アマゾンなどを使っていて、画面に突然、自分にぴったりの広告や、家族の誕生日の直前にふさわしいプレゼントをすすめる広告が出てきて驚くことは、よくある話である。また、人間関係の把握はフェイスブックが力を入れていることである。フェイスブックにアクセスするとき、フェイスブック上でまだ友だちになっていない知人を「知り合いかも?」といい当てられて、背筋が寒くなったという体験も多くの者がしていることである。


 大量監視データがあればターゲットの人物だけでなく、その人間関係を明らかにすることができる。2013年、NSAがすべてのアメリカ人の電話通話のメタデータを集めていることが暴露された。そのなかで、ある特定の人物のデータとともに、その人物が連絡をとっている人物すべてのデータを収集する「ホップサーチ」という捜査手法が批判にさらされた。


 それは、特定の人物が連絡をとっている人物のすべての情報をも収集し、さらにその人物が連絡をとっている人物のすべての情報、さらに……、というように何段階もホップ(跳躍)させて、特定の人物とはなんらかかわりのない数百万人もの情報を収集するというものである。


 スノーデンが暴露したNSAの無差別大量監視プログラム「XKEYSCORE」(エックスキースコア)は「テロ対策」を口実に開発されたもので、大量の情報を検索する「スパイのグーグル」と呼ばれている。個人の名前やキーワードを検索すると、関連するメールや電話の会話、ネットの閲覧履歴など、あらゆるデータを見ることができる。さらに個人のパソコンやスマートフォンにアクセスして、遠隔操作でカメラを起動し盗撮や盗聴をすることもできるといわれる。このプログラムは、日本にも提供されていることも暴露されている。


 こうしたことは、フェイスブックやグーグルの情報流出を一番願っているのはだれかを教えている。そして、世界でもっとも自国民を恐れ、同盟国の国民をも恐れる米国支配層の戦戦恐恐とする姿を、あますところなく暴露している。

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