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山本太郎の政界引退

 れいわ新選組の代表だった山本太郎の政界引退と実質的な解党を意味する名称変更が突如として発表された。この7年にわたって彼らを支え、併走してきた支持者や協力者のなかでは戸惑いを隠せない心境が広がっているのだろう。SNSでも反応は困惑気味である。「空気を読まないバカにしかこの国は変えられない」といって全国津々浦々を駆け回り、現代において草莽崛起(そうもうくっき=身分や権力を持たない民衆が志を抱いて一斉に立ち上がり、社会や国家の変革を成し遂げること)に挑むかの如く時代を象徴する社会運動を牽引してきたが、別の意味でまさに「なにバカやってんだ!」といいたくなるような、肩すかしをくらったような終わり方なのである。内部の事情がどうだったのかはわからないものの、それはもう第三者にはどうすることもできない政党としての一つの区切りなのだろう。

 

 事前に明るみに出ていたのは、代表の山本太郎が時速149㌔で東九州自動車道を走行していたのがオービスに捉えられ、時速69㌔オーバーで検挙され処分されていたことだった。それ自体、時速80㌔制限の高速道路においては狂気のスピードであり、いかに高級で排気量が大きな車であったとしても看過できない極めて危険な運転であることはいうまでもない。自分や同乗者、さらに公道を走る一般車両を巻き込んで生命を危険にさらすような運転であり、誰であろうと許されない申し開きのできない行為なのである。それはすなわちれいわ新選組のような政党にとっては、いかに素晴らしい名演説をしたところで「時速70㌔オーバーが何を偉そうにいってるんだ?」と引き戻されることを意味しており、とりわけ政党の代表としては致命的かつ軽率で、政界引退によって落とし前をつける以外になかった――と思うのである。相当のケジメをつけないといけないだろうと思っていた矢先の政界引退表明でもあり、正直驚きなどなかった。

 

 2019年以後のれいわ新選組の台頭は、既存の政党政治に幻滅し、辟易してきた人々にとって希望を抱かせるもので、腐りきった世の中をどうにかしたい、本気で世の中をまっとうなものにしたいと願うたくさんの人々の支持と協力によって支えられ、既存政党に疎ましがられるなかでもいっきに複数人の国会議員を誕生させるまで躍進して今日に至る。直近の選挙で多少低迷したものの、地を這うように全国津々浦々の街頭に出向いて精力的に支持を呼びかけ、リーダーの山本太郎が献身的にみんなを引っ張ってきたことは誰もが認めるところである。「この国を変える!」と本気で与野党と一線を画し、なんなら机の下で手を握っているような野党のくそインチキについても暴露して国会で大暴れするのだから、当然為政者の側からは睨まれ、組織を潰そうとする力は四方八方から加わったに違いない。そのなかでもちこたえて全国政党として存在することに困難さがともなったことは想像に難くない。

 

 地方議員も増やしていくなかでどう組織化していくか等々も、はじめてのことだらけで大変だったろうことは容易に想像がつく。内部の侃々諤々(かんかんがくがく)も喧々囂々(けんけんごうごう)も様々な思惑や影響、引っ張り等々があったのだろうし、一筋縄ではいかないことだらけだったろう。そのすべては内部の当事者でない第三者にはわかりようがないことである。決して順風満帆だったわけではないだろうが、しかし草莽の人々の思いを束ねてれいわ新選組は存在してきたのだ。

 

 山本太郎の政治生命が終わりを迎えたからといって悲観したり絶望するわけにいかないのは、狂った日本社会が眼前にそのまま横たわっているからである。この7年間にわたって、山本太郎はしっかりと役割を果たして強烈なリーダーとして頑張ってきた。そのことを否定する者などいない。そしてれいわ新選組が彼のリーダーシップのもとで台風の目となって人と人をつなぎ、本物を登場させ、日本の政治状況に一つの風穴を開けたことも疑いのない事実である。この局面において悲観や絶望――すなわち諦めて屈服することが敗北であるなら、諦めず屈服しないことである。れいわ新選組の奮闘と限界性から教訓を汲みとって、リーダーが太郎だろうが次郎だろうが三郎だろうが、次なる世直しの力につなげていくほかない。

 

 国会でれいわ新選組から爆誕した伊勢崎議員が真っ向勝負で孤軍奮闘している折に、もう一方では喧噪がくり広げられて、「なにバカやってんだ…」とつくづく思う。一歩も引けぬ政治情勢のなかで、我々は次を展望するほかない。

 

吉田充春             

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