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「風車病」解明へプロジェクト開始 風車の低周波音と健康被害との因果関係探る クラウドファンディングを呼びかけ

(2025年6月18日付掲載)

「STOP風車病」プロジェクトのホームページより

 全国の風力発電周辺住民のなかで、深刻な睡眠障害や頭痛、動悸、耳鳴り、めまいなどの健康被害で苦しむ人が一定の割合で生まれている。これは、風力発電の超低周波音による「風車病」と呼ばれている。しかし、この「風車病」については科学的な解明が進んでいない。そこで、物理学者と医師がタッグを組み、被害者の自宅で超低周波音を定量測定してその実態を解明する「STOP風車病」プロジェクトを開始した。ホームページを立ち上げ、200万円をめざしてクラウドファンディングを呼びかけている。

 

 「STOP風車病」プロジェクトを主催するのは、山形県のNPO法人・ヤマガタ未来塾だ。そして、このプロジェクトを進めるのは、未来塾代表理事の梅木千真氏。東北大学の元教員で、物理学と環境科学を専門とする科学者である。共同研究者は医師の有吉靖氏で、長崎県の離島・宇久島の診療所に長年勤務し、「風車病」の問題に医師として向き合ってきた。

 

 各地の住民たちが苦しんでいる「風車病」は、「風車を止めるか、引っ越すしかない」といわれるもので、症状がひどいので夜間は自宅から遠く離れた場所で車中泊をする人もいるほどだ。しかし現在、医学的症例としては認められていないため、医師は診断書を発行することができず、被害者はなんの補償も受けることができないまま、周囲から孤立して苦しみ続けている。

 

 「風車病」について、環境省は風車の低周波音と健康被害との間に因果関係は認められないという態度をとり続けている。事業者はこの環境省の見解を盾にして「健康影響はない」といって風力発電建設をごり押ししており、行政は超低周波音被害者を積極的に守ろうとしない。

 

 現在、北海道や東北を中心に全国で陸上・洋上の風力発電建設ラッシュが続いているが、そのまえに「風車病」を科学的に解明することが不可欠であり、それによってもし健康被害が発生しても適切な救済措置をとることができる。

 

 「STOP風車病」プロジェクトは、風力発電からの超低周波音を、「風車病」被害者宅で継続的に測定し、科学的な解明を図ろうとするものだ。

 

 「風車病」の原因とされる超低周波音は、可聴音域を含まない低周波領域(20ヘルツ以下)である。

 

「STOP風車病」をとりくむ医師の有吉氏(左)と梅木氏(全国再エネ問題連絡会全国大会)

 梅木氏は「騒音公害はデシベルという単位で、かつ、聴覚に重み付けを加えたA特性、C特性、G特性などで評価されている。しかし、耳には聞こえない超低周波音の場合、聴覚で定義されたデシベルで評価していては、本質がわからない。音とは、物理現象としては気圧の変化だ。そこで気圧の単位パスカルで評価し、“風車病”被害者が不快感を感じたさいに、どのような周波数でどの程度の気圧変化が生じているのかについて、相関性を確認したい」とのべた。

 

 そこで精密騒音計(リオン社製/NL-63)を導入し、現在、騒音の国際標準とされる3分の1オクターブバンドでの解析だけでなく、マイクロフォンが感知した電圧データを直接FFT解析して、周波数スペクトルと音圧データを算出するという。

 

 また、器質的疾患(その人の細胞や組織が病変する疾患。肝炎やがんなど)ではなく機能的疾患であり、外因性疾患である「風車病」は、症状があらわれる「被害現場」=自宅で測定や診断がおこなわれる必要がある。そこで、精密騒音計を「風車病」被害者自宅に設置し、インターネットを介して連続的にデータを取得し解析する。

 

 同時に医師の有吉氏は、頭痛、動悸、耳鳴り、めまい、そして睡眠障害について、その程度を把握して問診票で記録し、超低周波音の音圧強度や周波数との相関性を確認する。

 

 スケジュールとして、8月上旬をめどにクラウドファンディングをおこない、その後、測定装置を発注。11月から来年四月頃まで「風車病」被害者宅で継続的に測定し、研究結果をまとめて来年秋に学会での発表、年末にかけてオンライン報告会や研究報告書の作成を予定しているという。

 

 梅木氏は、「4年前に家族の介護のために故郷に帰ってみると、山形県の遊佐町と酒田市の浜から5㌔以内の海に総出力95万㌔㍗の洋上風力発電計画が持ち上がっていたので驚いた。東京タワーほどの高さの巨大風車を58基も建てるという。“風車病”は人口の5%前後の人が発病するといわれており、私が住む街には10万人いるので、5000人が罹患する可能性がある。そこでこのプロジェクトを立ち上げた」とのべた。

 

 有吉氏は、「私は宇久島に風力発電建設計画が持ち上がった14年前から“風車病”と向き合ってきた。水俣病は、原因不明の病気に苦しむ女児がチッソ附属病院を受診し、厚生省(当時)がその原因をチッソ水俣工場のメチル水銀だと認めるまでが12年だ。しかし“風車病”は、内科医の汐見文隆医師が指摘したのが1990年で、それから35年経っても公式に認められていない。“風車病”を科学的に解明し、世の中に発信したい」とのべている。

 

 ヤマガタ未来塾のホームページアドレスは、https://yamagata-mirai.or.jp/

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