いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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「住宅地に自衛隊訓練場はいらない」「住民の視点が完全に欠落」 うるま市民集会での地元住民(子育て世代、高校生)の発言から

1200人が参加した「住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会」(20日、沖縄県うるま市石川会館)

「子どもや孫、地域の未来守るため、訓練場NO!」

 

       旭区こども育成会会長 冨着志穂

 

 昨年12月20日、私は旭区評議員会に参加していた。1月の新年会についての話し合いだ。そこで区長から衝撃的な記事を見せられた。それが、このゴルフ場跡地に陸上自衛隊訓練場を新たにつくる計画の記事だった。記事を見た私を含め多くの評議委員がショックを覚えた。頭の中に一つの単語――「なぜ?」

 

 結婚して石川に移り住み、10年前に憧れの旭区に移り住んだ。閑静な住宅街、自治会活動が盛んで地域一体となったお祭り――こんな素晴らしい地域は他にないと思っている。そして計画地の近くには、県立石川青少年の家や老人福祉施設が隣接している。これまで安心安全を考えて地域づくりを頑張ってきた。それなのになぜこの住宅街に訓練場をつくるのか。

 

 12月20日の報道では、ヘリの離着陸、空包射撃、夜間訓練等を目的とした訓練を挙げていたが、2月11日の説明会で防衛省はまた違う内容の説明をしていた。コロコロかわる内容説明に私は怒りを覚えた。県民、区民を騙そうとしていると。そこにいた人たち誰もが思った事だろう。その後の防衛省関係者の発言が載った記事では「近々に想定はなくとも、将来にわたっての可能性は否定できない」とのコメントが載っていた。ということは、(用途を変更しても)このゴルフ場跡地が将来、当初の訓練を目的とした訓練場になることは明白だ。

 

 65年前の宮森小学校への米軍ジェット機墜落事故の悲劇を決して忘れてはならない。私の子ども、孫、地域の未来を守るために意志を表明しようと私は決意した。

 

 私は3児の母だ。子育て世代の私たちが声を大にして訴えたい。住宅街の中に訓練場はいらない。自分たちの地域を自分たちの手で守っていく姿勢を大人が示すことで、子どもたちが受け継いでくれると思っている。

 

 私たち旭区は全会一致で、訓練場NO! 安心安全な旭区であり続ける努力を続ける。

 

「民主主義の国であるなら結論の前に住民と対話を」

 

       球陽高校1年 小橋川 仁菜乃

 

 正義は一つじゃない。だから争いが起きる。しかし、それが国家の正義のためという名の下の戦争に発展したとき、必ず自分の、誰かの、あなたの命、心が奪われる。自分が、あなたが、誰かの命を奪うかもしれない。命より大事な正義があるだろうか?

 

 私は、「正義」の対立を収める力は、憲法に基づくプロセスをへた対話であると考える。皆さんは今、国や地方の行政機関がおこなっている軍事力拡大強化に関する計画が、憲法や法律に基づいた民主的な手続きがなされていると思われるだろうか?

 

 私は、2月1日におこなわれた防衛省による説明を聞き、違和感を覚えた。政府は2014年に集団的自衛権の行使、2022年に安全保障関連3文書の改定を閣議決定し、防衛費を国内総生産の2%まで増額すること、敵基地攻撃能力が行使までできるようになった。日本国内の陸上自衛隊訓練場や地対艦ミサイルの配備、日米合同演習など自衛力を拡大強化している。

 

 しかし、憲法第九条には「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とある。

 

 憲法とは、国家権力が過去にしてきた失敗をくり返さないために制定されたもので、国家の法律体系のなかで一番強い効力をもつ最高法規であり、憲法に違反する法律や命令などは違憲であり無効となる。

 

 私は、憲法の理念に矛盾し、十分な議論がなされず、閣議決定した集団的自衛権の行使、安全保障関連3文書の改定は違法であり、無効と考える。閣議決定したから後戻りはできないという雰囲気が漂っているが、そうではないと思う。民主的な手続きを無視したやり方でつくられた法律を呑み込んではいけないと思う。

 

 私は住民説明会をきっかけに憲法や法律の視点からこの問題を解決したいと考えるようになり、憲法に関する講演会や集会に参加するようになった。最近、石垣市における陸上自衛隊配備の賛否を問う住民投票に関する控訴審判決後のトークイベントに参加した。そこでもこれまで学んできたこととは現状はかけ離れていると感じた。

 

 その内容は、石垣市自治本条例にある「住民の4分の1の署名があれば市長は住民投票をおこなわなければならない」という条例に基づき、住民らが4分の1以上の署名を集めて住民投票を求めたにもかかわらず、「時期を逃した」「国の専権事項」などの理由で否決されたこと、その後の義務づけ訴訟では議会から住民投票に関する条例が削除され、「条例がすでにない」という理由で否決され、地位確認訴訟では「地方自治は間接民主制が基本であり、市民らは投票できる地位にない」という理由で判断が下されるなど、整合性のない決断がくり返されたとのことだった。

 

 うるま市と石垣市で起きている問題に共通しているのは、国や地方行政機関が憲法や法律を都合よく解釈し、「結果が先で議論は後」という間違った流れで進んでいることだ。うるま市勝連地区でも同じことが起きている。

 

 さらに整合性のない判決を出す司法のあり方には、三権分立が成り立っていないと感じる。

 

 このような権力の暴走によって自由と権利という土台が崩れ、国民、地域住民同士の間でも十分な対話ができず、それぞれの正義が対立していると感じる。民主主義とは、国のあり方を決める権利は国民が持っているという政治体制だ。よって国や地方の行政機関は憲法に基づき、計画を策定し、国民に適切な情報公開と説明、住民との対話をへて実行するべきだ。

 

 私たち住民もそれを意識することが重要だと思う。そうでなければうるま市自衛隊訓練場計画が断念されたとしても、またこの場所で同じ問題が起こり、問題の本質的な解決にはならないからだ。

 

 憲法12条でも、国民は自分たちが持つ自由と権利を手放さないように「国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と説いている。正直、このスピーチを考えているときに「休日になんでこんなことを…もっと友達と遊びたい」と思ったりもした。ここにいる皆さんの中にも同じような気持ちになった人はないだろうか。それでもここにいる理由は、自由と権利を守りたいという気持ちがあるからだ。

 

 私はこれからもっと憲法や法律を学び、私たちの暮らしや未来を有意義なものにするため、世代間で自分が持っている知識や経験を交換し、異なる意見を持つ人とも対話し、お互いの意見を尊重しながら、焦らずできることから行動していきたいと思う。

 

【関連】うるま市で「住宅地への自衛隊訓練場計画の断念を求める市民集会」

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