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逮捕された宮古島・下地前市長 陸自配備用地売却巡る贈収賄容疑 自民党政府とのパイプ役

 沖縄県宮古島市への陸自ミサイル部隊配備計画の受け入れを表明した下地敏彦前市長が12日、同市の千代田カントリークラブ所有地(ゴルフ場)の国への売却をめぐって便宜を図り、所有者から見返りに現金を受けとったとして贈収賄容疑で逮捕された。同地には2019年、陸自宮古島駐屯地が開庁し、宮古警備隊、高射特科隊、西部方面特科隊(ミサイル部隊)、西部方面後方支援隊、防衛大臣直轄部隊など計約700人が配備されている。下地前市長が防衛省と二人三脚で進めた配備地選定については、当初から「疑惑のデパート」と揶揄され、不可解な疑惑が語られてきた。売却から3年後に訪れた突然の逮捕劇に驚きが広がるとともに、国による「トカゲの尻尾切り」との指摘もある。市長選での市民の反撃を契機に、「国防」を掲げて地方を食いものにしてきた国策の一端が明るみに出ている。

 

下地敏彦前市長(前列左)と下地幹郎(2017年)

 逮捕された下地敏彦前市長は県職員出身で、2009年に自民党・公明党の推薦を受けて市長選に出馬し、以来3期に渡って宮古島市長を務めた。2015年には、辺野古新基地建設反対を掲げて翁長前知事が立ち上げた「オール沖縄」に対抗する形で、自民党政府と連携して「沖縄の振興を考える保守系市長の会」(チーム沖縄)を立ち上げ、会長に就任。振興財源を国に依存せざるを得ない離島の条件をフル活用して「国とのパイプ役」としての地位を築き、数々の開発事業への補助金と引きかえに、「国防は国の専権事項」として一連の防衛政策を推進する旗頭となった。2016年には、地元住民の反対を押し切って、防衛省が進める宮古島への陸上自衛隊配備計画の受け入れを表明。だが、4選を目指した今年1月の市長選で「市政刷新」を掲げる現・座喜味市長に敗北した。

 

 今回、逮捕の理由として表沙汰になった疑惑は、防衛省が当初候補地としていた同市福山の大福牧場が「水源地」問題で市民の反発を受けて頓挫した後、下地前市長が同市上野野原の千代田カントリークラブ所有地を候補地として推薦する過程で、土地所有者であった下地藤康・千代田カントリークラブ社長から現金650万円を受けとったというもの。3年前の2018年5月のことであり、当初から売却過程の不可解さが指摘されてきたものの時効直前の逮捕となり、住民のなかでは「なぜ今ごろ?」「遅すぎる」という疑問も語られている。

 

 島民の男性は、「陸自配備計画は当初から疑惑だらけで、下地前市長みずから何度も防衛省に出向いて千代田ゴルフ場の売り込みをしていたことは前市長自身も認めているし、島民にとっては周知の事実。陸自基地になったゴルフ場は、当初は県の防災公園の候補地として指定されていたが、いつの間にかその指定から外され、基地候補地になった経緯がある。ゴルフ場は多額の負債を抱えて倒産し、当初は裁判所に1億6000万円ほどで競売にかけられていたが、防衛省は5倍の8億円で買収した。民有地の売り込みに市長が関与すること自体が不可解だが、その便宜を図った見返りがわずか650万円程度といって信じるものはいないだろう。数々の疑惑が浮上しながら、これまで動かなかった警察が逮捕に動いたのは、小さな罪で大きな疑惑を隠すためのトカゲの尻尾切りなのか、市長職を失って起きた仲間割れなのかわからないが、今後の動向を注視したい」と語る。

 

目に余る市政私物化 背後に代議士の影

 

 下地前市長の主な支援母体は、カジノ業者からの賄賂を受けとった疑惑で「日本維新の会」を離党し、現在は自民党復党を目指している下地幹郎代議士の出身企業・大米(だいよね)建設。防衛省の発注先として県内トップクラスの土建業者で、陸自配備の第一候補地だった大福牧場はその関連企業の所有地でもあった。市長選では下地幹郎代議士を含めグループをあげて全面的にバックアップし、下地市政の下では、陸自関連工事、合併特例債の上限に達するまで乱発したハコモノ事業を総なめにし、総工費120億円の新市庁舎建設も一社で独占。その庁舎建設では島外作業員がのべ7万8000人にのぼり、10億円もの追加費用を正規の手続きをへずに市財政から支出していたことなど、黒々とした利益誘導の実態が指摘されてきた。

 

 自衛隊配備の受け入れをめぐる実務も、地元住民の頭越しに、利害関係者のなかだけで着々と進められ、今回逮捕された下地前市長とゴルフ場所有者の下地藤康氏は「宮古地区自衛隊協力会」の会長と事務局長という間柄だった。

 

 別の島民は「目に余る市政の私物化に反発が高まって今年1月の市長選で、下地独裁体制が崩れたことが大きい。“ただの人”になって庇うものがいなくなり、業者からも恨みを買っているから、不正が暴かれるのは時間の問題でもあった。現市長も自民党から分裂して市長選に出馬しており、土地売却にかかわる一連の事情を知っている。陸自配備が終わった今、国にとっても用済みであり、裏事情を知りすぎた下地敏彦を切ることで疑惑に区切りを付けるという思惑があるのではないか。尖閣列島、台湾有事などの“外の脅威”を煽りながら本土から金と人を送り込み、“国防のため”といって市民の口を封じ、やってきたことは基地マフィア、ブローカー、地上げ屋と同じだった。それは国や政治家の指南がなければできないことでもあり、鑑定価格の5倍という法外な値段で土地を買いとったのも国だ。大規模な国策をめぐる汚職が、その“駒”となった2人だけの問題で済まされるはずがない」と話した。

 

 また、「宮古島では近年、大規模な公共事業や観光ビジネスが盛んになり、国の補助金も注がれたが、その恩恵に群がったのも本土の企業だった。大規模事業を大米建設など一部の大手が独占し、それを本土企業に還流したり、出身代議士が自民党に復党するための資金にもなっているとさえ噂されている。いま下地を逮捕して誰が得をするのか? をよく見ていたらわかる。4選確実といわれていた下地敏彦の市長選敗北は国にとっても想定外であり、本丸への飛び火を恐れて下地逮捕に繋がったのではないか」と指摘していた。

 

 陸自駐屯地近くに住む男性は、「これまで国に守られてきた下地敏彦も市長選で落選し、とうとう国に見捨てられたな……と感じた。まさにトカゲの尻尾だ。トカゲから人間になるためには、このさいすべての膿を出し切るべきだろう。ずっと見て見ぬ振りだった警察が本気で捜査をするとは思えず、ガス抜きという面は否めないが、腐りきった下地市政を市民の手で倒したことが大きな転機になったと思う。防衛省は17日から保良弾薬庫に弾薬を運び込むという。“国防”といいながら私腹を肥やすために島を売り飛ばし、市民に害だけを押しつける自衛隊配備計画の実態こそ世間にもっと知られるべきだ」と語気を強めた。

 

 「モリカケや河井案里事件と同じ。背後でやらせてきたのは自民党政府であり、そこにまで踏み込まない捜査にはなんの意味もない」「宮古島を中国との前線基地にする自衛隊配備計画が持ち込まれてから、こんな疑惑が3年も放置されるほどの無法状態になり、島人は生贄のようにされている」とも語られ、国策によって荒らされた市政の正常化を求める世論が高まっている。

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