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〈論壇〉拉致騒ぎ国際的に孤立 対米一辺倒の小泉政府

 小泉政府は北朝鮮の拉致問題で大騒ぎを演じてきたが、APECでは文章にすることもできず、アジア諸国から相手にされず、そそのかしたアメリカからもあしらわれ、国際的には笑いものとなっている。テロ事件の勢いで拉致問題を騒がせたアメリカはイラクですっかり泥沼に入り、内外で大孤立をする羽目となった。小泉政府だけが尻馬に乗って突っ走り、とり残されてしまったのである。


 北朝鮮の工作機関が、日本人を拉致したのは国家的な犯罪であることに疑問の余地はない。被害者とその家族の苦しみや悲しみは当然のことである。この場合、解決にあたるべき政府が、社会的歴史的な関係をぬきにして、自分側の主張ばかりで一方的に相手側を責めたてるだけでは、国際的に通用するわけがないのは明らかである。そのような肉親を思う心は日本人も朝鮮人も同じである。この機会に、過去数百万の朝鮮人が日本に連行され強制労働でむごたらしく殺された、その肉親の悲しみ怒りも同じものであることに思いいたすことこそ、常識ある民族がやることである。


 朝鮮と日本の関係は、戦前に植民地支配をし、戦争が終わって58年もなるのにその清算もしていない。またアメリカと朝鮮の関係は、日本を基地にして朝鮮戦争をやったがその清算も終わらず、いまだに戦争がつづいている状態である。アメリカ側は戦後、日本や「韓国」に軍隊を配備し、通信も傍受し、偵察機を飛ばし、衛星からも常時監視し、核攻撃を軸とする攻撃態勢をとってきた。朝鮮側がこの攻撃態勢と対峙してきたのはあたりまえのことである。拉致事件はこのような戦争継続状態のなかで起きた不幸な事件である。


 この解決は、まさに小泉首相が朝鮮側と約束したことを実行することであり、国交の正常化をはかり、戦争状態をやめることが根本の問題である。日朝首脳会談で平壌宣言をやり、拉致被害者の一時帰国を約束したが、アメリカが核問題で難癖をつけ、商業マスメディアがそれに追随して大騒動をすると、自分がやった約束を破り、国際的信用もほうり投げて拉致問題を戦争で解決するかのようなバカ騒ぎを演じてきた。そしてアメリカの要求のままに有事法をつくり、情報衛星を飛ばし、イラクへの自衛隊派遣をやり、アメリカに巨額な戦費をふんだくられ、戦時国家づくりに奔走してきた。


 拉致問題でバカ騒ぎをしてきた結果、北朝鮮からも世界からも相手にされなくなって、収拾がつけられなくなっている。世界はアメリカしかいないかのようなぶざまなふるまいの結果が、アジアでもアラブでも世界でもあわれなほどの孤立をもたらした。貧乏な朝鮮がアメリカをむこうに回していいたいことをいっているのに比して、経済大国の日本がアメリカの腰巾着になり、どんどん劣等国になっていくという現実は考えてみなければならない。


 日本は朝鮮、中国、アジアの国国と争うのではなく平和で友好的な関係を築かなければならないというのは、第二次大戦の痛い教訓である。それは北朝鮮を助けるというものではなく、独立し平和で民主主義で繁栄する日本を建設するために死活の重要性を持っている。そのような日本の国益に立った自主外交を完全に放棄し、アメリカにシッポを振るばかりというのでは、日本を滅亡に導くものであり、どこの国からも相手にされなくなるのは当然である。


 世界の人人はいっている。「日本は広島、長崎に原爆を受け、世界でもっともアメリカからひどい目にあっている。なのにアメリカのいいなりになって、世界と対立するのはなぜなのか」と。総選挙において、拉致問題と絡んだ対米従属の孤立外交、戦争動員問題は大きな争点である。「拉致問題のヒーロー」としてメディアが騒いだ安倍幹事長が、地元の下関で人気が強いか恨みが強いかも1つの注目点である。

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