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「パレスチナ人とイスラエル人の殺害に関する手紙」 イスラエルの友人へ、バイデン大統領へ マイケル・ムーア監督が公開書簡

 アメリカの映画監督マイケル・ムーアは、イスラエルの友人に向けた「パレスチナ人とイスラエル人の殺害に関する手紙」(17日)と、イスラエルを訪問中のバイデン大統領への手紙(19日)を公開した。それぞれの手紙のあらましを紹介する。

 

〇       〇

 

 「パレスチナ人とイスラエル人の殺害に関するマイケル・ムーアからの手紙」

 

マイケル・ムーア監督

 私の友人たち、そして愛する人たちへ

 

 土曜日の朝、目覚めたらユダヤ人の1000人もが路上で死んでいたなんて、どこのだれもが望んでいなかった。私はいまだにこのことについて心の処理ができていない。また、これが私の住む世界だなんて信じられない。私はホロコーストの8年後に生まれた。そして今、私はユダヤ人のいとこであるセム族、パレスチナ人の大量虐殺を目の当たりにしている。

 

 残念だ!

 

 アウシュビッツの建設を手伝ったパレスチナ人は1人もいない。
 スペイン異端審問(中世のユダヤ人虐殺)を指揮したパレスチナ人は1人もいない。
 ニューヨークで、ナチスから逃れるためにこの地に停泊しようとしたユダヤ難民のボートを追い返したパレスチナ人は1人もいなかった。

 

 それなのに、パレスチナ人は5784年もの間、次から次へと絶滅の試みに遭ってきた人々の子孫たちによって、虫けら以下のもののように絶滅させられてしまうのだ! いとこたちよ! やめろ! 狂気だ。過去2000年間、あなた方の唯一の真の敵は、今も昔も白人の「キリスト教徒」だ! アメリカ先住民に、アメリカ黒人に、メキシコ人に聞いてみるがよい。大英帝国の先住民や、フランスに支配されたベトナム人など、数え上げればきりがない。そして今週、ガザの人々を一掃するか、シナイ砂漠に強制移住させなければならないというのか? 取り残された人々は、すでに食料も飲料水も絶たれている(人間は水なしでは4日しか生きられない)。

 

 なぜ? パレスチナ人はあなたの土地も水も果樹園も奪っていない。彼らはあなたと同じ預言者を共有している。彼らはフムス(中東の伝統的な家庭料理)を食べ、あなたもフムスを食べる。あなたが南部で有権者登録をしている間に、パレスチナ人があなたを殺害したことはない。白人至上主義者がシャーロッツビルで「THE JEWS SHALL NOT REPLACE US!(ユダヤ人はわれわれにとってかわることはできない)」と唱えながら、たいまつを持って行進したとき、パレスチナ人はいなかった。それはアメリカ人だった。なぜ私たちを罰しないのか?

 

 あなた方はファシスト集団、大量殺戮を求める殺人者集団に政権をとられてしまった。彼らを止める唯一の希望は、すでにそれに気づいている賢明なイスラエル市民が非常に多いということだ。彼らは正面から質している。なぜネタニヤフ首相はガザ国境から軍を撤退させたのかと。6~18時間、救援がなされず、人々は殺されるままだった。そして今、イスラエルのマスコミから、ネタニヤフ政権がハマスを利用し、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府と敵対させるために何年も前からハマスと秘密会談を行ってきたというニュースが飛び込んできた。分断して征服すること、これは最も古いファシストの手口の一つだ。

 

 しかし、イスラエルの平和運動は活気があり、声も大きく、それはアメリカにも存在しないほどのものだ。私たち少数派がイラク侵攻を阻止しようとしたとき、上院の民主党議員29人や『ニューヨーク・タイムズ』、その他の「リベラル派」たちは、私たちを「軍隊を支持しない」という理由で「非愛国者」呼ばわりして糾弾し、対抗した。

 

 しかし一方で、あまりにも多くのイスラエル人が10月7日の真実を知っており、彼らは決して消え去らないだろう。この現在進行中の虐殺のための銀行として存在するアメリカ合衆国に生きる市民は、イスラエルにおける大量虐殺に反対する世論を支持しなければならない。悪になることで悪を倒すことはできない。最も勇気と人間性をもった人たちは、立ち上がって声を上げる。「NO! 断じてNOだ! 私は私がされたことを他の人にするつもりはない」と。

 

「マイケル・ムーアからイスラエルにいるジョー・バイデン大統領への手紙」

 

イスラエルの首都テルアビブで会談するバイデン大統領とネタニヤフ首相(18日)

親愛なるバイデン大統領

 

 これを書いている今、あなたはイスラエルで、起訴され、まもなく刑事裁判にかけられるベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談している。あなたが軽蔑する人物だ。先月、彼がアメリカにいたとき、あなたは恒例のホワイトハウス訪問を拒否した。あなたは、今年の大半をイスラエルの最高裁判所を破壊することに費やしたネタニヤフ首相に嫌悪感を示し、何百万人ものイスラエル国民が、ネタニヤフ首相がファシズムへの動きを止めるよう要求するために街頭にくり出した。

 

 大統領、私の見たところ、あなたがイスラエルに滞在する数時間でやらなければならない仕事は5つある。

 

 1.慰めの司令官に イスラエル国民に、殺された人々のことをあなたと私たちが一緒に悲しんでいること、この地球上のどこであれ、ユダヤ人が命の危険にさらされることがあってはならないこと、そしてホロコーストのさいに白人キリスト教ファシストの手によって彼らに起こったことが二度と起こらないよう私たちが闘うことを約束すると伝えてほしい。

 

 また、世界は10月7日に捕らえられたイスラエル人の人質が無傷で解放されることを求めており、そして、右翼指導者たちがこの攻撃からイスラエル人を守るために何もしなかったこと、彼らの怠慢と、最高裁判所の無力化に膨大な時間を費やし、占領下のヨルダン川西岸でパレスチナ人を殺害するイスラエル入植者の支援のために軍事資産を配置することでその気を紛らわせたために、何百人もの死者が出たという事実に怒っている膨大な数のイスラエル人に同意していることを改めて表明することだ。

 

 2.最良のジミー・カーターであれ ネタニヤフ首相に、私たちや自由を愛するすべての人々は、イスラエルがパレスチナの市民に対して大量虐殺やジェノサイドを行うことには我慢ならないと伝えよう。復讐のための殺害、「目には目を」は21世紀を乗り切る方法ではない。イスラエル政府には、パレスチナ人および信頼できる調停者とともに話し合い、この紛争をきっぱりと解決するよう伝えてほしい。双方は、すべての暴力をやめることに同意しなければならない。ガザは監獄であってはならない。いうまでもなく、イスラエルは、存在するだけでなく、どこにも行くことはない。
 バイデン大統領、あなたは何が公正か知っているはずだ。私たちが占領に資金を提供し、さらなる戦争の種をまいたのと同じように、あなたはこの平和に資金を提供できる銀行の代表だ。さぁ、あなたが愛するローマ教皇ならどうするか?

 

 3.ミルラ(鎮痛剤)より良い贈り物を携えてヤンキーがやって来た ネタニヤフ首相に、ガザへの水と電気の供給を再開するよう伝えることだ。米国と英国(自分たちの占領でこの混乱を引き起こし、その後狂った地図に作り直した)は、ガザとヨルダン川西岸に大量の人道支援物資を送り、イスラエルが空爆した病院を再建するつもりだ、と。また私たちは、10月7日に破壊されたキブツ――平和を愛し、共同生活を営みながら進歩的思考を持った数多くの良識ある魂が集まっていた共同体――を再建するつもりだと。

 

 4.潔白を示せ、ジョー あなたは率直な人だ。イスラエル人とパレスチナ人に公平を期すなら、口先では「イスラエル支援」をいっているが、実際には75年間、中東における「利益」を「守る」ために、イスラエルという国家に資金を提供し、自分たちの拠点として建設してきたことを公に認めてはどうだろう。
 もちろん、その利益とは石油であり、占領であり、さらに石油であり、侵略であり、情報収集であり、よりさらなる石油であり、イスラム教や褐色人種など我々が「人間以下」とみなす生命体の封じ込めである。イスラエルに核兵器を保有させている(それは良い考えなのか?)。

 

 もちろん、私たちアメリカはイスラエルの雛形を作った。先に撃ち後で追及する(あるいは隠蔽する)。たとえその国が9・11(同時多発テロ)と無関係であっても、復讐のために侵略する。石油会社とウォール街に主導権を握らせる。そして、残された最後の「超大国」として、世界の操り人形の親玉としての仕事を続けようとしている。億万長者クラスが糸を引き、彼らが叫び、飛び跳ねる。

 

 貧しく荒れ果てた人々にとっては苦い薬だが、イスラエルとガザで現在(そして何十年も)起きている混乱と紛争が、アメリカにとって武器メーカーにとって好都合であり、自分たちのものだと主張する石油にとって好都合であることを告白することは、より正直で公平なことではないだろうか? 世界の大半の人々は、その正直な瞬間を歓迎すると思う。

 

 5.パレスチナやアラブの指導者たちと会う ああ、気にしないで。その船はもう出航した。パレスチナ人が「おい、おれたちの病院を攻撃しようぜ!」と決めた後、アラブの指導者たちはあなたと会う本当の意味はないと判断した。それは残念だ。


 ガザとヨルダン川西岸の人々を支援するために1億ドルを送るというあなたの発言を見たところだ。もっと増えることを期待する。あなたはまた、イスラエルが人道支援物資を積んだトラック隊をガザに入れることに同意したともいった。早くそうなることを願っている。占領を終わらせるとか、暴力のエスカレートを緩和するとか、次の狂気を防ぐとか、そういうことは何もいっていない。

 

 バイデン大統領、あなたはイスラエルで一夜を過ごさず、今すぐ飛行機で帰国してください。私がいうのは簡単だが、もしあなたがキブツで1泊か2泊するなら、暴力と戦争、そしてネタニヤフにうんざりしているイスラエルの若者たちと話をするのもいいかもしれない。ちょっと考えてみただけだ。

 

 平和のために


  マイケル・ムーア     

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この記事へのコメント

  1. 柴田武男 says:

    マイケル・ムーアとそれを伝える長周新聞だけは正気のようだ。

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