いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

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紛争の当事者でもない者の興奮

 第一次世界大戦から引き続く第二次世界大戦を経て77年を迎えた世界は、いよいよ第三次世界大戦の危機すら感じさせるような物騒な状態に陥っている。このなかで、紛争当事国の片側の政治リーダーを国会に招いて演説させたり、NATOの側に与しなければけしからんといった同調圧力もあるなかで、NATO加盟国でもない日本としてはどのような国際的立場で問題解決のために関わるのかが問われている。

 

 この場合、双方がプロパガンダ合戦をくり広げて“正義”を掲げているなかにおいて、片側だけに与してスタンディングオベーションすることがどのような意味を持つのか、国会議員たちはどれだけ真剣に考えているというのだろうか。まずはこれ以上民衆(いかなる国の民衆の生命も犠牲にしてはならない)が犠牲にならないために国際社会の一員として即時停戦を求める立場が求められるし、どちらにも与しない仲介者として客観的第三者の存在が必要であろう。そのためにはアメリカ万歳の盲目的で奴隷的な応援団になるのではなく、平和を希求する独自の日本外交を展開することが必要だと思うのである。


 こんなことを口にすると、「オマエはロシアの味方なのか!」とすっかりゼレンスキー応援団になってしまった自称平和運動の活動家とかいう方が文句をつけに来られるのだけど、何度もいうようにこの紛争の当事者ではないという立場を前提に「どっちでもねーよ!」なのである。何度も言わせるなよ! と少しばかり胸中はオコというか、なぜあっちかこっちかを迫ってくるのか意味が不明なのである。


 平和を思うなら、どう行動しなければならないのか。事態がエスカレートして第三次世界大戦に突入しかねないような物騒な情勢のなかで、片側のプロパガンダに乗せられて興奮の渦のなかに身を投げたり、どっちかに与して皆が胸ぐらをつかみあい、殴り合いを始めるというのであれば、「オマエら落ち着け!」と押しとどめる存在がいなければ悲劇であろう。その熱狂が場合によっては第三次世界大戦へとつながっているというならなおさらである。紛争の当事者でもない者としては、日本社会が巻き込まれ、事故に誘わないためにどのような態度を貫くことが大切か、いまこそ冷静に判断しなければならないと思う。片足を突っ込んで抜け出せない状態に引きずり込まれるのではなく、世界を平和的に落ち着かせる側で力を発揮することの方が責任重大である。


 あっちか、こっちかで片付けられるほど単純ではない矛盾に満ちた世界のなかで、作り出された熱狂のなかで悲憤慷慨(ひふんこうがい)したり、あるいは片側から石を投げつけて場外から乱闘の仲間に加わるのではなく、「ひとまず落ち着け」と呼びかける者がいないというのは悲劇的である。メディアがプロパガンダ一色に染まり、どのチャンネルも大本営発表のように同じ角度から扇情的に煽っている。国会はれいわ新選組以外はみなゼレンスキー演説に対して台本通りスタンディングオベーションをやり、右へ倣えで欧米側に与する有り様である。極端な話が、この先ロシア討伐なんて始まったら、興奮そのままに参戦するとでもいうのだろうか。シベリア出兵とか、英米にそそのかされて参戦した教訓などどこ吹く風で、またやるとでもいうのだろうか。


 生まれてこの方、当事者でもない喧嘩を仲裁したことはあれど、なぜ喧嘩が始まったのか事情も知らずに片側を一緒に殴ったりしたことなどない。それって、子どもの喧嘩で例えても「あたおか」(頭おかしい)である。あるいは「こんな武器もあるよ」とみずからは手を汚さずに煽ったり、他の学年やクラスで事情も知らないのに「○○君が暴力的だから悪い」と決めつけたりしたこともない。いかなる紛争も事情を知らぬ非当事者にできることは、さしあたり激昂した双方を停戦に持ち込むことぐらいで、その後の和平交渉については、また暴力沙汰にならないよう周囲として配慮はしつつ様子を見守るほかないのである。逆に外野席から争いを煽るヤツの方が卑劣である。みずからは何らの痛みもなく、面白がっているのだから――。


 ウクライナ危機で見ると、歴史的に深く関与してきたバイデン親子であるとか、火を放ってきたアメリカの為政者どもの関与についてまったくスルーするというのもまたイカサマであろう。なぜ今回のような武力侵攻にまで至ったのか、原因についても捉えることは、問題解決の落としどころを探るうえでも疎かにできない。それらをまるでかき消して、寄らば大樹の陰で熱狂を煽る者、片側に与せよと同調圧力を迫ってくる者については、リベラルを掲げる人士であろうとインチキの烙印が押されて然るべきだろう。 

 

武蔵坊五郎       

 

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