いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

いかなる権威にも屈することのない人民の言論機関

文字サイズ
文字を通常サイズにする文字を大きいサイズにする

「国連軍」掲げ、那覇空港の軍事利用を目論む日米政府 大東文化大学教授・川名晋史(参院沖縄北方特別委・参考人)

(2026年7月8日付掲載)

2020年に第2滑走路が整備された那覇空港(沖縄県)

川名晋史教授(3日)

7/3参院沖縄・北方特別委参考人質疑での陳述要旨

 

 米国はこれまで世界中、そして日本(特に日本本土)において基地を返還してきたが、共通する重要な特徴として「不利益変更は認めない」という方針を徹底している。したがって現在の普天間返還に関しても、普天間の現有機能を「十分に代替する」ことが最初から条件になっている。

 

 われわれはこの「十分な」の具体的な中身についてどこまで理解しているだろうか。見落としはないか。30年目を迎えるにあたり、改めてその点を確認する必要がある。

 

 普天間基地は米海兵隊の基地だ。米海兵隊がどこにどれだけの基地を持ち、その中で沖縄や日本がどのような位置づけにあるのか。最新の米国防総省のデータによると、米国の海外基地は世界45カ国に散らばっており、計549あるとされるが、これは少なく見積もった数値と考えられる。少なくとも世界の22%の国が米国の海外基地を受け入れている。

 

 大事なのは軍種別の内訳だ。陸軍が最多で、海軍、空軍と続く。海兵隊の基地は世界に30しか存在しない。彼らはさまざまな場所を循環して移動するため常設の基地はそれほど重要でないという理由にもよるが、その30の基地のうち実に26が日本にある。その大部分が沖縄に存在する。

 

 沖縄の米軍基地面積の7割を占めているのが海兵隊だ。日本以外では、韓国海軍の基地に一部の海兵隊が駐留している程度であり、基本的には日本・沖縄に集中している。その意味において、海兵隊にとって沖縄の基地は非常に手放しがたい貴重なものだ。

 

 たとえば1960年代には、国防総省が沖縄の海兵隊をほとんどすべて米本国に撤退させる計画を立案したことがあったが、海兵隊や海軍省の徹底的な抵抗にあって頓挫した。海兵隊にとって沖縄の基地は、非常に重要な戦略的資産であり、政治的には既得権益にもなっている。他の軍種に比べて非常に粘着性が高い基地であるという点を押さえておく必要がある。

 

普天間の「十分な代替」とは何か

 

 では、普天間基地の「十分な代替施設」とは一体何を意味するのか。この要件は1996年のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)の中間発表の時から一貫した米側の主張だ。しかし、われわれは辺野古に新たな滑走路を建設することをもって十分であると早合点してきた側面があるのではないか。

 

 「十分な代替」を意味するものの中で、この30年間、われわれが十分に認識してこなかった二つの論点がある。

 

 一つは、国連軍の問題だ。国連軍については、日本社会であまり議論されてこなかったため十分に理解されていないかもしれない。簡単に説明すると、1950年6月に発生した朝鮮戦争の際に結成された米国主導の有志連合軍のことだ。正規の国連軍の作り方は国連憲章に明示されているが、その通りに作ることができなかったため、即席で「国連軍風」のものが作られた。当時の根拠となった安保理決議や総会決議はまだ失効しておらず、米国側はこれを有効であると考えている。そのため韓国にある国連軍司令部や日本(横田基地)にある国連軍後方司令部は今なお有効性を保っている。

 

 この時作られた国連軍の基地が日本に7カ所あり、普天間基地はその1つだ。われわれは普天間基地の問題を「アメリカ軍基地」として捉え、その範囲内で検討してきたが、「国連軍」というフレームあるいは補助線を引くと、まったく異なる構図が見えてくる。

 

 国連軍の問題は、まさに「十分な代替施設」が意味する筆頭要件だ。そう断言できる理由として、1996年3月に日米で普天間返還に合意し、発表(同4月)する直前に作られた一次資料がある。

 

 当時、米国側の交渉チームを率いた国防次官補代理のカート・キャンベル氏が作成した文書の中に、米国が普天間を「移設(リロケーション)」するのであれば満たすべき条件が記されている。その最初に登場するのが「普天間は国連軍の基地であるため、代替施設は当然ながら国連軍の機能を充足させなければならない」という条件だ。

 

 普天間基地は、1972年5月15日の沖縄施政権返還以降、一貫して国連軍の基地だ。仮に普天間が返還され、辺野古に新基地が完成したさいには、普天間が持っている現有機能がそのまま移行するため、辺野古の新基地も国連軍の基地に指定される必要があると考えられる。

 

 「国連軍は過去の遺物であり、もはや無関係である」と考える向きもあるが、そうではない。特に2018年以降、北朝鮮の「瀬取り」を警戒監視するために国連軍の枠組みが活用されている。日本本土では横須賀、沖縄では嘉手納、普天間、ホワイトビーチといった国連軍基地が使用され、東シナ海や台湾海峡での活動がおこなわれている。そのときフランス軍、イギリス軍、オーストラリア軍などが嘉手納や普天間に入れるのは、国連軍の枠組みが存在するからだ。そうでなければ、彼らが米軍基地を使用できる根拠はなく、その拠り所は国連軍の地位協定(地域協定)にある。

 

那覇空港の「有事」使用

 

米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)

 二つ目の論点は、「長い滑走路」の問題だ。これが現在、沖縄において急速に論点化している。結論からいえば、これは那覇空港を指している。つまり、那覇空港を米軍ないし国連軍に使用させるかどうかが重要な論点として浮上している。

 

 米国側は30年前からこのことを想定していたと考えられる。SACOの中間報告や最終報告、ロードマップ、統合計画など、さまざまな節目で重要な日米合意が取り交わされ、通常は日本語訳された文書を読むが、英語原文と付き合わせると不自然な点が存在する。

 

 それは「コンティンジェンシー(Contingency)」という言葉の扱いだ。どういうわけか日本語では「緊急時」と訳されているが、軍事的な正確な訳は「有事」だ。ちなみに「緊急時」は「エマージェンシー(Emergency)」だ。米国側は文書の中で両方の概念を明確に書き分けているが、日本側の文書ではなぜか「緊急時」という一言で括られており、有事の意味が消失している。

 

 辺野古に建設が予定される滑走路は1200㍍、オーバーランを含めても1800㍍だ。この短い滑走路では実行できない国連軍や米軍の機能をどこかで穴埋めしなければならないが、そのために想定されている民間飛行場が那覇空港だ。

 

 現在のC-17をはじめとする大型輸送機には、基本的に2500~3000㍍級の滑走路が必要となる。那覇空港には2本の滑走路があり、それぞれ2700㍍と3000㍍だ。普天間基地は嘉手納基地の補助飛行場として、空軍から海兵隊が引き継いで相互補完的に使われてきた経緯がある。嘉手納に着陸できなくなった場合の代替飛行場(ダイバートフィールド)として、緊急時に逃がすための長い滑走路が必要となるが、那覇空港はその十分な長さを備えている。

 

 さらに、米国側は当初から「アレスティング・ギア」の存在を挙げている。これは戦闘機が機体不良などで胴体着陸などをよぎなくされた際、機体のフックを地上滑走路のワイヤーに引っ掛けて制動・停止させる装置であり、戦闘機を運用する滑走路には不可欠なものだ。これがすでに那覇空港には設置されている。

 

 長い滑走路を持つ民間空港として伊江島飛行場や下地島空港(宮古島)などの名前が挙がることもあるが、アレスティング・ギアや、機体を修理・整備するための支援施設はない。着陸した機体を長期間放置するわけにはいかないため、そうした周辺の兵站施設を含めた支援体制がなければ、米国側は代替施設とはみなさない。

 

 ウィキリークスの公開文書などからも裏付けられるように、米国は当初から那覇空港を使用する意図があり、日本側の一部もそれを認識していた可能性が高い。仮に那覇空港を国連軍が使用することになれば、大きな議論を呼ぶことになる。

 

那覇空港の「管理権」問題

 

 米軍に関しては、日米地位協定第5条を根拠に那覇空港を利用することが可能だが、過去にその実績はない。一方、フランス軍、オーストラリア軍、フィリピン軍などの国連軍は、国連軍地位協定上、民間の飛行場を利用できない。空港を利用する法的根拠がない。
 米国はこの点を重視してきたと推測される。使用するためには有事の前の段階で、国連軍の合同会議を開催し、那覇空港を国連軍基地に指定する手続きが必要になる。

 

 そこで生じる最大の課題が「管理権」の問題だ。現在、日本における米軍基地問題の多くは、PFAS(有機フッ素化合物)問題を含め、管理権が米側にあることに起因している。諸外国では管理権が受け入れ国側にあるため回避できているさまざまな問題が、日本では米側に管理権があるために顕在化し続けている。

 

 国連軍地位協定上、国連軍基地に指定されれば、管理権は国連軍側(実質的には米軍)に移行する。つまり、現在普天間飛行場や嘉手納基地で起きている管理権に由来する問題が、そのまま人流と物流の拠点である那覇空港に持ち込まれることを意味する。これは沖縄経済全体に甚大な影響を与える恐れがある。沖縄の米軍基地に対して比較的寛容な立場の人々であっても、容易に容認できないことではないか。

 

※その他の参考人質疑要旨はこちら

(見出しは編集部)

関連する記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。なお、コメントは承認制です。