(2026年5月15日付掲載)

構想見直しを求める保育関係者からの請願を全会一致で採択した下関市議会(13日)
下関市の旧第一幼稚園跡地に整備が計画されている「交流型子育て総合支援施設」をめぐり、下関市こども未来部は11日に開かれた文教厚生委員会で、市議会からの指摘を受けて、事業者に委託する前の「基本構想・素案」(2025年10月策定)段階まで戻り、関係者の意見聴取や協議をおこなって構想を見直すことを明らかにした。4月27日に市議会・文教厚生委員会が基本構想のやり直しを指示していたものだ。4月30日には私立保育連盟・私立幼稚園協会・全国企業主導型保育事業連合会下関支部の連名で、関係者への丁寧な説明や意見交換、協議を求める請願が提出され、市側の対応が注目されていたが、素案をたたき台にゼロベースで検討し直す方向となった。市が3月16日に基本構想(案)を示してから約2カ月でふり出しに戻った今回の騒動の経緯と今後について、改めて記者座談会で整理してみた。
利権ではなく叡智を集めた施設を
A 「ゼロベースでのやり直し」を執行部が明らかにした5月臨時議会・文教厚生委員会では、私立保育連盟・私立幼稚園協会・全国企業主導型保育事業連合会下関支部から提出された請願が審議された。
請願は、①方針・方向性の検討に際し、市内の既存の保育・幼児教育事業者との事前の協議を丁寧におこなっていただきたい、②基本構想・基本計画等の策定等、事業の進捗に際し、市内の既存の保育・幼児教育事業者に丁寧に説明し、協議する場を設けていただきたい、③サウンディング調査やパブリックコメント等の意見聴取や公募をおこなう際、市内の既存の保育・幼児教育事業者に確実に周知していただきたい、④機能を検討するに当たり、下関市の保育・幼児教育の状況を踏まえた適切なニーズ調査や必要性の検討を実施していただきたい――と、しごく当たり前のことを要望している。
B なぜこのような原理原則を求める請願が出てきたのかだが、2025年の1年間、あまりにも関係者を排除した形で計画が進んできたからだ。民設民営の「幼保連携型認定こども園」を中心とした複合型施設を整備するといいながら、市内で保育・幼児教育を担っている関係者との協議がないことはありえないが、これがなされていなかった。そのうえ、いつのまにか「幼保連携型」をはずして株式会社でも参入可能な(=設置主体に制限のない)「認定こども園」に変えていたことも3月の文教厚生委員会で発覚した。このとき委員会に示された基本構想(案)には、構想・計画策定を受託した「株式会社紬(つむぎ)」がおこなう事業の写真まで掲載されており、こうした事実をもって、いったいなにが起きているのか、誰がこの事業を主導しているのか、と不信感が広がった。「疑念」といわれるには理由があるのだ。
疑問点も多く残したことから委員会としても「説明を求めていく」としていたところ、構想をすっ飛ばして4月3日に基本計画(案)のパブリックコメントが始まった。これを受けて、市議会も黙っておらず緊急で文教厚生委員会が開催された。4月17日、27日に調査がおこなわれたが疑念が晴れることはなく、説明のたびに足元が絡まって答弁が二転三転するような状況であったことから、委員会は「やり直し」を執行部に突きつけた【既報】。これが請願が提出されるまでの流れになる。
C そして、前記の請願が市と市議会に対して出され、市議会は13日の本会議で全会一致で採択した。「全会一致」ではあるが、そのなかに蠢く感情は複雑であったようだ。その証拠に5月7日の議会運営委員会(以下、議運)や11日の文教厚生委員会で、「なにか文句をいっておきたい」面々が最後まで粘りを見せた。
議会運営委員会 請願に反発する議員も
A 議運(各会派の代表で構成)では創世下関(旧安倍派)の江村副議長・林透議員を筆頭に、請願の審議を六月定例会まで引き延ばそうとした。「臨時議会で受ける請願は緊急性の高いものだけだという議会のルールがある」「急いでやらないといけない理由がない」という主張だった。なかでも粘ったのが林透議員で、「(文教厚生委員会で)白紙撤回というのが出て、すぐ請願が出ること自体がおかしい」などといって、6月定例会に先送りすることを主張していた。議会のルール上、5月臨時議会で審議するのも別段、問題はないといわれてもなお粘っている様子を見て、「6月まで延期して時間を稼ぎ、事業を進めたい側の請願をぶつけるなどの作戦を考えていたのではないか?」という見立てをする行政関係者もいた。
B 結局、多数決で5月臨時議会でとり扱うことが決まったのだが、採決の後にまた林透議員が、「請願の提出のときに所管の委員長が同席していた」「公平公正に進めていくうえで問題がある。提出団体と委員長がつながっているという不信感を持たれかねない」といい始めた。「委員会は中立の立場で請願を審議しないといけないのに、議会運営の基本中の基本となることを無視したもの」であり、「委員会の正当性が疑われるし、今後の委員会の進め方に疑念を持たれる」みたいなことをいっていた。
「委員長が請願団体と一緒に提出に来た! 癒着している!」という印象を与えようとしたように見えるが、実際には委員長は議長・副議長と一緒に、請願を受ける立場で参加していたようだ。所管委員長が請願を受けることに何の問題があるのだろうか。それを禁止する規程もないらしい。市長への請願提出の場に担当の部長が同席することなんてしょっちゅうあるが、だからといって部長の中立性が損なわれるかというとそんなことはない。単なる難癖だ。現場の切実な思いで請願を出した関係者に「癒着している」といっているようなもので、本当に失礼だと思う。江村副議長(創世下関)も提出の場に同席していて状況を知っているのに林透議員に同調していた。その割に現場で注意はしていないようだし、林透議員が「マスコミも入っていたから」と発言していることから、マスコミにでも吹き込まれたのだろうといわれている。それがどの社なのかも話題になっている。
C まったく問題もないうえ、「中立・公正」などどの口がいうかという感じだ。基本構想(案)が委員会で問題になった以後の3月末、創世下関と公明の一部議員は「紬」が運営する筑紫野市の保育園に視察にまで行っている。創世下関では井川議員、林透議員が参加したようだ。この案件に深くかかわってきたのが創世下関であることはみんなが知っている。しかも、受託者「紬」が実施したサウンディング調査(2026年2月)のさいに、参加する業者を「紬」に紹介したのが井川議員だったという話まである。かなりの人が同じように話しているところを見ると事実なのだろう。
井川議員と「紬」のかかわりは深い。下関市立大学に韓昌完教授(現学長)を招聘することが問題になった2019年当時、「紬」と一緒にHAN研究財団の理事をしていたのが井川議員だ。2018年のHAN研究財団設立時から名前を連ねており、一緒に写っている写真も出回っている(2019年2月辞任)【既報。「紬」と一緒になって動いてきた人たちに「公正・中立」とか「議会運営の基本」みたいなことをいわれても…という感じだ。
A だから井川議員は発言を控えていたのか?議運でも、林透議員が手元の紙を見ながら一生懸命粘っていたが、井川議員自身は「議会の運営の決まりがあると思うので、そこを鑑みて決めたらいいんじゃないかと思います」と他人事みたいに発言しただけだった。
請願を採決する本会議で質疑をしたのも阪本議員だけだ。いろいろ話を聞くと当事者すぎて発言できなかったのではないか。しかし本当にいいことだと思うなら、人にいわせないで自分で堂々と主張すればいいのにと思う。
委員会や本会議 市民からの監視強まる

請願の取扱について審議する文教厚生委員会(11日、下関市議会)
B 5月11日の文教厚生委員会でも、これまた創世下関メンバーの関谷・吉村議員が請願の細かい文言に難癖をつけていた。「確実に周知してほしい」ということについて、「個別にどこかの団体に確実に教えてくださいみたいな文面には問題があるのではないか」(関谷議員)、「関係業者に確実に周知ということが問題だと私は思う」(吉村議員)ということだった。
しかし請願は、下関市内の既存の保育・幼児教育事業者に周知してほしいという要望であったし、市の事業全般ではなく、この子育て施設に関しての要望だ。それをあたかも自分たちに周知をしろといっているようにすり替えて、「それは問題だ」と騒いだ。よく文章を読めば意図が異なることはわかるはずだ。それで、委員会採決では創世下関のこの二人は賛成せず、賛成多数での採択となった。吉村・関谷議員は板挟みで大変だったのかもしれない。
C そんなこんなで若干の攻防はあったのだが、本会議で採決する場面になると創世下関も質疑程度で反対討論はせず、委員会で賛成しなかった2人も含めて全会一致での採択となった。事前に「創世は棄権する」という情報もあったから、賛成するんか~いと思ってしまった。請願は当たり前のことしか書いていないから、反対や棄権する理由があるのか疑問だったが、イチャモンをつけただけで、結局のところ賛成するほかなかったということだ。ちなみに賛成討論も本池議員(本紙記者)だけだった【賛成討論の内容は下別掲】。
A 請願が賛成せざるを得ない内容だったことと同時に、ここまで追い込んだのは、「下関の子どもたちや保護者のために、みんなで協議して進めないといけない」という関係者の動きがあったからだ。この間、保育連盟や幼稚園協会をはじめとした関係者たちが委員会の傍聴に詰めかけ、審議を見守り、現場を担う者の責任に立って声を上げてきた。請願もその一つであり、全会一致の結果は喜ばれている。
長いあいだ「声を上げても変わらない」という空気が下関を覆ってきたが、市民のなかでもこの結果を見て、「やっぱり市民が声を上げることが大事だ」「これが市民の声で市政が変わる一つの事例になるかもしれない」という思いが語られている。
だんまり決め込み 責任転嫁する前田市長

本会議での討論を聞く前田晋太郎市長(13日、下関市議会)
B 一方、3月からこれだけ問題になっているにもかかわらず、複合施設をつくりたいといい出した張本人の前田市長は、4、5月の文教厚生委員会に一度も出席せず、7日の議運でもだんまりを決め込んでいた。文教厚生委員会の宣告を受けてから一度も態度表明をしないまま、「僕は怒ってるぞ」アピールを全身で発していたと話題になっている。
初めてこの件について公の場で発言したのが13日の定例会見だ。それも記者から質問されてのことだったという。その内容が「委員会での対応は確かにまずかった。部長や次長、課長の発言が二転三転し、申し訳ない」と、部長以下職員に責任をなすりつけるものだったからまたびっくりだ。委員会のなかで部長が前任の部下たちのせいにして市役所内をドン引きさせたが、今度は市長が部長も含めて担当部の責任に丸投げしたということだ。「いったい下関市役所はどうなっているのか」とOBたちが心配するのも無理はない。さらに、ゼロからの見直しで完成が遅れるのは議会の責任だといっているようだ。ずさんな答弁は部下のせい。遅れるのは議会のせい。全部人のせいだ。
A だいたい、市長が「こんな複合施設をつくりたい」といい、しかも2030年に完成させるスケジュールで進めさせようとしたから説明が二転三転するようなことになったのではないか。ゴールが決まっていたら、スケジュールは逆算して立てるほかない。基本構想と基本計画が同時に進むなど、説明がつかないやり方になったのは、急がせた前田市長の責任だ。それなのに人のせいにするなんて情けない。
普通のトップだったら自分がいい出したことでなくても、「今回のことはすべて私に責任がある」と謝罪し、切り替えて前に進むところなんだろうが、どうも前田市長は最近逃げる傾向で、「肝心なときはいつも逃げる」と定評になってきている。表向きには「批判もまとめて受け止めるのが真の市のリーダーの責務」とかいいながら。
B もう一点、同じ記者会見で記者からの質問に答える形で「紬以外にできるところはないじゃないか」という主旨の発言もしたという。これが基本構想策定のことを指しているのであれば、一般競争入札(価格競争のみ)だから、「紬以外にない」というのは当たらない。最終の事業者のことを指しているのであれば、「紬」で決まっていたことを暴露したということになる。そうであれば「市長案件」ではなくて特定の業者なり企業への利益誘導で「警察案件」ではないか。実際になんと発言したのか、なぜ報道しないのか市政記者クラブに聞いてみたらいいと思う。
業者ありきでなく 子どもありきで再検討を
A 今後の動きだが、15日には保健部や福祉部、こども未来部が参加して「こども施策調整会議」を開き、どんな機能が必要なのか協議し、23日には私立保育連盟や私立幼稚園協会、全国企業主導型保育事業連合会下関支部、名池保育園、幸町保育園の保護者、貴船自治連合会などの関係者から広く意見を聞く場をもうける予定になっている。「意見をいっぱいいただきたい」とのことなので、おおいに現場からの意見をあげて、議論のスタートにしたらいいと思う。
市長は「紬以外にできるところはない」といっているようだが、それが本当なら無知だとも思う。何をもってそういっているのかわからないが、たとえば白紙になった基本構想に盛り込まれていた食育なんて、かなりの園が力を入れてとりくんでいることは、ちょっと知ろうとすればわかる。そして、今の子どもたちや子育て世帯が何を必要としていて、何が不足しているのかをもっとも知っているのが現場にかかわっている関係者だ。働く保護者の要望はさまざまあるが、現場サイドの実感として、病児・病後保育だったり、休日保育や夜間保育だったり、各園任せになっている発達障害の子どもたちへの対応のサポート体制を充実してほしいなどといった話が、少し聞くだけでたくさん出てくる。耳を傾ければ豊富な知恵が出てくると思う。業者ありきではなく、子どもありきで進めることが大事だ。「紬」が熱心にやっていることを否定するものでもなんでもなく、一事業者の意見のみで市全体の課題を的確に把握することはできないとみんないっているのだ。
B せっかく一から議論するのであれば、民設民営が最適なのかも改めて検討すべき点ではないか。今回の施設に関して、「民設民営」だけは最初から決まっていた。しかし、保育・幼児教育関係者のなかでも市役所内でも「本当は公立でやるのが一番いい」という声は多い。名池保育園も幸町保育園も公立なのだから、公立で建て替えるのも確かに一つの案だ。そうなると財政部の判断も問われる。市長がやるといったことにはポンポン億単位の予算がつくのだから、「国の補助金がないから公立保育園を建てられない」ということはないはずだ。
ただ、少子化のおり、新たな保育園整備の必要性の有無、規模感の熟議は欠かせない。また、産後ケアしかり、放課後デイサービスしかり、一つ一つの機能の現状把握、課題の整理をそれぞれの関係者を巻き込んで進めていく必要があると思う。「この施設をいい施設にする」ことはもちろんだが、そのことを通じて、市内全体の福祉の向上がどのようにはかられるかという視点が必要だと思う。
A 今回の一件は氷山の一角で、「市長案件」といわれる事業は山ほど始まっている。本紙も一つ一つ調査が必要だと考えている。次の話はもっと大きいが、これもそろそろ本格的に調べないといけない。市の職員も関係者も黙って耐えて諦めてしまうのではなく、こっそりでいいのでどんどん教えてほしいと思う。行政が歪められている状況について、市長が思う以上に「これではいけない」と思っている市民は多い。よりよい下関をつくっていくのは、やっぱり市民の力ではないか。
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「関係者交えた熟議を」 子育て施設巡る請願への本池涼子議員の賛成討論

討論する本池市議
請願第1号「下関市交流型子育て総合支援施設整備事業に関する請願」に対し賛成の立場から討論をおこないます。
今回の請願の内容は、下関市が整備する交流型子育て総合支援施設に関し、下関市内の既存の保育・幼児教育事業者に対し、「事業の方針・方向性の検討にさいし、事前の協議を丁寧におこなうこと」「事業の進捗にさいし、丁寧に説明し、協議の場をもうけること」「サウンディング調査やパブリックコメント等の意見聴取や公募のさいは、確実に周知すること」加えて、「包括的な支援をおこなうための機能の検討については、下関市内の保育・幼児教育の状況を踏まえたニーズ調査や必要性の検討を実施すること」を求めるものです。
この請願が出されるにいたった背景には、令和7年度の事業の進捗に関し、市内で保育・幼児教育を担っておられる方々に対する丁寧な説明、意見交換、協議が適切におこなわれていなかったことがあります。
交流型子育て総合支援施設をめぐっては、3月16日の予算審議、4月17日、4月27日の計3回にわたって文教厚生委員会で審議・調査をしてきましたが、このなかでは、「提案に至るまでの経緯」にかかる答弁も二転三転し、委員の一人としては、市の手続きについてはなにが事実なのかもわからない状態になっていると感じています。
そして、その原因の一つは、今回の請願の内容になっているように、関係者との協議がまったくといっていいほどなされていなかったことにあるのではないでしょうか。議会審議において明らかにすべき事項とされている「市民参加の実施の有無とその内容」ですが、これが適切になされていなかったということになります。
4月17日の調査のさい、大井副市長は「第一幼稚園跡地を子どもや子育て世帯が必要とするサービスを切れ目なく提供できる施設にしたいという思いは執行部はとても強い思いをもって進めている」「よりよい施設にしたい、その思いを信じていただければと思います」といわれました。
「よりよい施設」にするためには、現在、子どもや子育て世帯に対するサービスを提供しながら、下関市の保育・幼児教育を支えてくださっている関係者との協議が必須です。今のサービスにはなにが不足しているのか、どこを補充すべきなのか、その優先度はどうなのか、規模感など、しっかりと議論し、よりよい施設にしていくことが求められます。そして、それはまた、保育・幼児教育にとどまらず、今回導入しようとしている機能一つ一つについても同様のことがいえると思います。
そこを抜きにして突き進んだ結果、既存の保育・幼児教育事業者の事業継続が困難になるというのであればそれは本末転倒であり、そうしたことがないよう、熟議のうえで市が決断すべきことです。現在、病院の統合に関して何度も調整会議が開かれていますが、とくに医療や、今回のような福祉分野においては、今を支えてくださっている関係者との議論なしに、「よい施設」にはなりえません。
私たち市議会議員には、その活動の原則となる「下関市議会基本条例」があります。市民の負託に応え、もって安心で安全なまちづくりをはじめ、市民福祉の向上と、公正で民主的な市政の運営に寄与することを目的としたものです。
そして、市の団体意思の決定機関として、公正性及び透明性を確保し、信頼性を重んじた議会活動をおこなうこと、市民の立場から、適正な市政運営がおこなわれているかを監視し、評価することとなっています。
その原則にたち、交流型子育て総合支援施設整備事業については、関係者と熟議のうえ、必要な機能を備えた施設にしていくことを求め、賛成討論とします。





















